第47話：乗り越えるべき存在　作：光芒

☆TURN09


「私のターン、ドロー！」

　綾香の手札は今のドローで2枚になる。フィールドに存在するのは守備力1800ながら単体では動けない竜星モンスター。そのため、このドローで何を引くかが綾香の命運を分ける形となった。

「ねえ、一流のデュエリストのドロー運は強いって知ってる？」
「愚問ですわ。当然私のお父様のようなデュエリストのドローは必然。引きたいカードを引きたいときに引けるのですわ」
「じゃあ、その理論だと私は一流ってことかもね！ 私はカメンレオンを召喚！」

　ここで綾香のドローしたカードはチューナーモンスター・カメンレオン。レベル5以上のモンスターが存在する場合は召喚できない、というデメリットがあるが、ジャンク・シンクロン同様に綾香のデッキとは好相性のチューナーモンスターの1体と言える。
　そしてそんなモンスターをここで引き当てられる綾香もまた父譲りのドロー運を持っている。そればかりは美咲も認めるほかなかった。

「カメンレオンの召喚時に効果が発動。墓地の守備力0のモンスター1体を特殊召喚できるわ！ 蘇れ、シュンゲイ！ そして私はレベル4のシュンゲイとレベル1のホロウにレベル4のチューナーモンスター、カメンレオンをチューニング！“天空に輝く星々の光、今秘めたる力を集わせ神々しき幻の竜となれ！”シンクロ召喚！ 降臨せよ！“幻竜星-チョウホウ”！！」


※幻竜星-チョウホウ
シンクロ・効果モンスター
星9/光属性/幻竜族/攻2800/守2200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1)：S召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はこのカードのS素材とした「竜星」モンスターと元々の属性が同じモンスターの効果を発動できない。
(2)：S召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキからチューナー1体を手札に加える。
(3)：1ターンに1度、相手フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。そのモンスター1体と元々の属性が同じ幻竜族モンスター1体を自分のデッキから守備表示で特殊召喚する。


「レベル9の竜星シンクロモンスター……」
「シンクロ召喚したチョウホウが存在する限り、相手はシンクロ素材にした「竜星」と同じ属性のモンスターの効果を発動できない。よってブレード・ハートの効果は封じられる」
「しかし光属性を素材にしていないのでデルタテロスをはじめとしたテラナイトの効果は止められませんわ！」
「……本当はリフンを素材にしたかったんだけどさすがにそこまでは上手くいかないのよね。でもこれでデルタテロスは倒せる！ シュンゲイを素材にしたシンクロモンスターの攻撃力は500ポイントアップするわ！」

幻竜星-チョウホウ ATK2800→3300

「バトル！ 幻竜星-チョウホウで星輝士 デルタテロスを攻撃！“竜星幻凰波”！！」

幻竜星-チョウホウ ATK3300　VS　星輝士デルタテロス ATK2500

美咲 LP4900→4200

「っ……ですがまだ決まりませんわ！ フィールドから墓地に送られたデルタテロスの効果を発動！ デッキから3体目のアルタイルを特殊召喚しますわ！」
「だったらこっちもそれにチェーンしてチョウホウの効果を発動よ！ 1ターンに1度、相手フィールドのモンスターが破壊された時、デッキからその破壊されたモンスターと同じ属性の幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚するのよ！ 来なさい、光竜星-リフン！」
「ではチェーン1でアルタイルをデッキから特殊召喚！ そして特殊召喚に成功したアルタイルの効果で墓地のデネブをさらに特殊召喚！ そしてデネブの効果でデッキからは“星因士 シリウス”を手札に加えますわ！」

　除去効果を持つデルタテロスを何とか倒した綾香であったが、結果的にその破壊がトリガーとなり、美咲に反撃の手を与えてしまった。ブレード・ハートはチョウホウがいる限り動けないものの、彼女のフィールドにはアルタイルとデネブの2体のテラナイトが存在し、また手札には今加えた3体目のテラナイトがいる。
　3体エクシーズでデルタテロスなりトライヴェールなりのテラナイトを出すのはもちろん、強力なバウンス効果を持つ“鳥銃士カステル”のような汎用エクシーズの存在も侮れなかったのだ。

「私はカードを1枚セット。これでターンエンドよ」


綾香 LP6800　手札0枚
デッキ：23　モンスター：2（幻竜星-チョウホウ、光竜星-リフン）魔法・罠：1　墓地：12　除外：1
美咲 LP4200　手札1枚
デッキ：27　モンスター：3（星因士 アルタイル、星因士 デネブ、機甲忍者ブレード・ハート ORU:1）魔法・罠：0　墓地：9　除外：0


☆TURN10


「私のターン！ ドロー！！ 私は前のターンに手札に加えた星因士 シリウスを召喚しますわ！」


※星因士 シリウス
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1600/守900
「星因士 シリウス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の「テラナイト」モンスター5体を対象として発動できる。
そのモンスター5体をデッキに戻してシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。


「シリウスの召喚に成功した時墓地のテラナイトモンスター5体を対象としてその効果を発動！ デルタテロス、アルタイル2体、ベガ2体をデッキに戻しシャッフル！」

　テラナイトはサーチ能力やエクシーズ召喚のしやすさに優れているが、その性質上デッキからすぐにいなくなってしまう。長期戦に備えたスタミナ切れの対策としてシリウスの効果を発動させた。
　倒しても倒しても現れる竜星が相手なのだから、美咲はデュエル開始前に言った言葉などとうに忘れて長期戦も辞さない覚悟だった。このドローカードを見るまでは。

「……私はアルタイル、デネブ、シリウスの3体でオーバーレイ！ 再び降臨なさい、星輝士 デルタテロス！！」
「やっぱり来たわね……でもチョウホウを破壊したら私はチューナーをサーチ出来るのよ。反撃の手はいつでも揃えられるわ！」
「反撃の手？ そんなものこのカードで断ち切って差し上げますわ！ 私は墓地の光属性モンスター・星因士 ウヌクと闇属性モンスター・カゲトカゲをゲームから除外！！」

　この特殊な召喚方法に綾香に嫌な汗が流れる。綾香はひと月ほど前にしたデュエルのことを思い出していた。

「混沌の世界よりおいでなさい！ カオス・ソルジャー-開闢の使者-！！」
「っ……詩織といいなんでこうもあんなモンスター出せるのよ！」

　そのデュエルの相手は外ならぬ詩織である。最初はシンクロモンスターによる攻勢で有利に進めていた綾香であったが、カオス・ソルジャー-開闢の使者-とオネストのコンボによって痛い逆転負けを喫していたのである。

「あのモンスターを超えなきゃ……私に勝ちはない。このデュエルも、今後も……」
「何を言ってらっしゃるの？ 今考えることは1つだけ。私にひれ伏す貴女の姿ですわ！！ 私はカオス・ソルジャー-開闢の使者-の効果を発動！ 幻竜星-チョウホウをゲームから除外しますわ！ 次元の果てに消えなさい！！」

　カオス・ソルジャーの剣によって切り開かれた亜空間に引きずり込まれていくチョウホウ。チョウホウは破壊されて墓地に送られない限り、自身のサーチ効果を発動できないのだ。
　また、ホロウを素材にしたチョウホウがフィールドを離れたことでブレード・ハートの効果を発動することも可能になってしまった。

「チョウホウ！！」
「ブレード・ハートの効果を発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除き、自身を2回攻撃できるようにしますわ！ バトル！ まずはブレード・ハートでリフンに1度目の攻撃！ “電磁抜刀カスミ斬り・一の太刀”！」

機甲忍者ブレード・ハート ATK2200 VS 光竜星-リフン DEF0

「破壊されて墓地に送られたリフンの効果を発動！デッキからヘイカンを守備表示で特殊召喚！」
「ブレード・ハート、“電磁抜刀カスミ斬り・二の太刀”をお見舞いなさい！」

機甲忍者ブレード・ハート ATK2200 VS 地竜星-ヘイカン DEF0

「破壊されて墓地に送られたヘイカンの効果でデッキからビシキを守備表示で特殊召喚よ！」
「っ……どこまでも固い守りですわね！！ デルタテロスでビシキを攻撃！」

星輝士 デルタテロス ATK2500 VS 水竜星-ビシキ DEF0

「破壊されて墓地に送られたビシキの効果でデッキから3枚目のリフンを攻撃表示で特殊召喚する！」
「この猛攻を凌がれるとは……まあいいですわ。足掻かせるだけ足掻かせて仕留めるのもまた一興というもの。メインフェイズ2、デルタテロスの効果を発動しますわ。オーバーレイユニットを1つ取り除き、そのセットカードを破壊しますわ！」
「それにチェーンしてリバースカードオープン！ 竜魂の幻泉を発動！」
「っ！ またしてもそのカードですのね！！」
「この効果で墓地のシュンゲイを特殊召喚するわ！」

　チェーン発動された竜魂の幻泉が破壊されることで、シュンゲイが破壊される。そしてそのシュンゲイの効果でさらにデッキからはホロウが特殊召喚される。

「あれだけ攻めてもまだモンスターの数が変わらないとは……しかしそれもここまでですわ！」
「……どういうことよ」
「貴女のデッキに呼び出せる竜星はあとどのくらい残っているのか……後続を呼べなくなった時点で貴女のデッキはおしまい、ということです。私はこれでターンエンドですわ！」


綾香 LP6800　手札0枚
デッキ：20　モンスター：2（風竜星-ホロウ、光竜星-リフン）魔法・罠：0　墓地：15　除外：2
美咲 LP4200　手札1枚
デッキ：29　モンスター：3（カオス・ソルジャー-開闢の使者-、星輝士 デルタテロス ORU:2、機甲忍者ブレード・ハート ORU:0）魔法・罠：0　墓地：4　除外：2


☆TURN11


（確かにあいつの言う通り……私のデッキはデッキの中の竜星が尽きたらそれで終わる。ここで私が引かなくてはいけないのは……）
「ドロー！ 悪いけどそう簡単にデッキの竜星を尽きさせるわけにはいかないわ！ 困った時の貪欲な壺！」
「貪欲な壺……神がかっていますわね貴女のドロー運は」
「私は墓地のシュンゲイ、ヘイカン、ビシキ、ホロウ、ショウフクの5体をデッキに戻し、2枚ドロー！」

　綾香にとって対峙するモンスター、カオス・ソルジャー-開闢の使者-は乗り越えるべき壁である。しかし、その壁を乗り越える手段はなにも倒すことだけではない。それを今のドローカードで思い知らされた。

「……悪いけど、貴女のカオス・ソルジャーはこれで攻略させてもらうわ！ 手札から魔法カード発動！“精神操作”！！」


※精神操作
通常魔法（準制限カード）
相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターのコントロールを得る。
この効果でコントロールを得たモンスターは攻撃宣言できず、リリースする事もできない。


「精神操作……！」
「このカードであなたのカオス・ソルジャー-開闢の使者-のコントロールを貰うわ！ もっともこのカードは攻撃できないけどね。でも効果は有効よ！ カオス・ソルジャー-開闢の使者-の効果発動！ さっきのお返しよ！ デルタテロスをゲームから除外！！」
「デルタテロス！……なんてこと……」
「そして私はレベル8のカオス・ソルジャー-開闢の使者-とレベル1の風竜星-ホロウにレベル1のチューナーモンスター・光竜星-リフンをチューニング！“静かなる森に眠る大いなる獅子よ、星の力を得て天地に吠えろ！”シンクロ召喚！ 立ち上がりなさい！“神樹の守護獣-牙王”！！」


※神樹の守護獣-牙王
シンクロ・効果モンスター
星10/地属性/獣族/攻3100/守1900
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードは、自分のメインフェイズ2以外では相手のカードの効果の対象にならない。


「バトル！ 神樹の守護獣-牙王で機甲忍者ブレード・ハートを攻撃！“ガイア・ビースト・スタンプ”！！」

神樹の守護獣-牙王 ATK3100 VS 機甲忍者ブレード・ハート ATK2200

美咲 LP4200→3300

「っ！」
「これで私はターンエンド！ さあ、このデュエルを終わらせるわよ！！」


綾香 LP6800　手札1枚
デッキ：21　モンスター：1（神樹の守護獣-牙王）魔法・罠：0　墓地：14　除外：2
美咲 LP3300　手札1枚
デッキ：29　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：8　除外：3