第46話：娘たちの意地　作：光芒

☆TURN05


「私のターン、ドロー！……ねえ、一つ聞いていい？」

　ドローと同時に綾香は美咲に尋ねる。

「……なんですの？」
「トライヴェールの3つ目の効果の発動条件ってオーバーレイユニットを持ったトライヴェールが墓地に送られることで発動するのよね？」
「ええ、そうですわよ。それが何か？」
「私は手札からチューナーモンスター、“ジャンク・シンクロン”を召喚！」


※ジャンク・シンクロン
チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻1300/守500
(1)：このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。


「ジャンク・シンクロン！？ 竜星のデッキではないというの！？」
「シンクロ主体のデッキだから無理なく入るのよ！ ジャンク・シンクロンの召喚に成功したことで効果が発動！ 墓地のレベル2以下のモンスター1体を蘇生するわ！ 蘇りなさい、水竜星-ビシキ！」

　ジャンク・シンクロンの力によってレベル2のビシキが蘇る。これで綾香のフィールドには2体の非チューナーモンスターと1体のチューナーモンスターが揃った。

「3体のモンスターのレベルの合計は……8」
「私はレベル3の地竜星-ヘイカンとレベル2の水竜星-ビシキにレベル3のチューナーモンスター、ジャンク・シンクロンをチューニング！“天空に輝く星々の光、今その力を集わせ高貴なる光の竜を呼び覚ませ！”シンクロ召喚！ 降臨せよ、輝竜星-ショウフク！」

　光り輝く空より先ほどのガイザーとは真逆の光を放つ金色の竜が舞い降りる。綾香のデッキにおいてガイザーと並び立つエースモンスター・輝竜星-ショウフクである。

「シンクロ召喚に成功したショウフクの効果発動！ このカードのシンクロ召喚に使用したモンスターの属性分フィールドのカードをバウンスするわ！」
「バ、バウンス返しということですの！？」
「トライヴェールはオーバーレイユニットを持った状態で墓地に送られることで墓地のテラナイト1体を蘇生する。最初は別のモンスターでトライヴェールをセットカードをもろとも除去しようと思ったけれど、それだと墓地のアルタイル辺りを壁にされるのがオチで反撃の基盤にされちゃうしね。だからさっきのお返しよ！」

　シュンゲイの咆哮と共にトライヴェールと2枚のセットカードがそれぞれデッキに戻される。セットカードは2枚とも罠カードであり、発動することは可能であったが、ショウフクのシンクロ素材にビシキが含まれているため、結果的に罠カードは発動するだけ無駄になるだけなのだ。

「こうも立て続けに大型モンスターの召喚を許すなど……不覚ですわ！」
「実力差よ実力差！ いい加減自分が勝つこと前提で物を語るのはやめなさい！ メインフェイズ1を終えてバトルフェイズ！ ショウフクでダイレクトアタック！“竜星昇天波”！」

輝竜星-ショウフク ATK2300

美咲 LP7200→4900

「っ……！」
「私はこれでターンエンドよ」


綾香 LP7800　手札1枚
デッキ：29　モンスター：1（輝竜星-ショウフク）魔法・罠：0　墓地：7　除外：0
美咲 LP4900　手札2枚
デッキ：33　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：5　除外：0


☆TURN06


「私のターン、ドロー。勝ち誇るのはまだ早いですわ！ 私は手札から2枚目のアルタイルを召喚します！ そしてその効果が発動。墓地のデネブを蘇生しますわ！」

　もし手札に3枚目のテラナイトがあれば美咲はアルタイルの効果で手札から特殊召喚できるベガを蘇生させていただろう。しかし、ここでサーチ効果のデネブを蘇生したということは今の彼女の手札にはテラナイトがいないということが推測できる。
　しかし数多く存在するエクシーズモンスターの中でもランク4ならびに下級モンスターの中で最も高いレベルであるレベル4のモンスターにはとりわけ強力な効果を持ったモンスターが多いのだ。

「そしてそのアルタイルの効果にチェーンして手札の“カゲトカゲ”の効果を発動しますわ！」


※カゲトカゲ
効果モンスター
星4/闇属性/爬虫類族/攻1100/守1500
このカードは通常召喚できない。自分がレベル4モンスターの召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚できる。
このカードはシンクロ素材にできない。


「チェーン2でカゲトカゲを特殊召喚！ そしてチェーン1でデネブを蘇生しますわ！」
「っ……またフィールドに3体のモンスターが……」
「そして特殊召喚に成功したデネブの効果でデッキからデネブ以外のテラナイト、星因士 ベガを手札に加えますわ。そして私はフィールドのアルタイル、デネブ、カゲトカゲでオーバーレイ！ 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！ エクシーズ召喚！！“3つの星が天に大三角を描く時、夏の空より光を力に変えし騎士が舞い降りる！”撃ち果たしなさい！“星輝士 デルタテロス”！」


※星輝士 デルタテロス
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2100
レベル4モンスター×3
(1)：X素材を持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時には、相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
(2)：1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
(3)：このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。手札・デッキから「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。


「X素材を持ったこのカードが存在する限り、私がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時貴女はカードの効果を発動できませんわ」
「つまり激流葬みたいなカードは発動できないってことよね……」
「その通りですわ。そしてデルタテロスの効果を発動！このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、フィールドのカード1枚を選択して破壊しますわ！ 破壊するのはもちろんその目障りなドラゴンですわ！」

　ショウフクが素材にしたのはヘイカンとビシキであるが、ヘイカンで防げるのはあくまで“戦闘による破壊”であり、モンスターの効果による破壊には対応していないのだ。そしてデルタテロスの持つ光の剣がショウフクの身体を真っ二つに断ち切ってしまい、ショウフクは無残にも破壊されてしまう。しかし、自分のモンスターの破壊を無駄にする綾香ではなかった。

「この瞬間、墓地のリフンの効果が発動！ 自分フィールドの竜星が破壊された時、このカードは墓地から特殊召喚できるわ！」
「墓地からモンスター効果！？」
「蘇りなさい、リフン！ さあ、これで壁モンスターが出来たわ。そしてデルタテロスの破壊効果は1度だけしか使えない」
「っ……しつこい女は殿方に嫌われますわよ！ バトルフェイズ、デルタテロスでその壁モンスターを攻撃！ “スターライト・トライアングル”！！」

星輝士 デルタテロス ATK2500 VS 光竜星-リフン DEF0

「自身の効果で墓地から蘇ったリフンはフィールドを離れた時ゲームから除外されるわ」
「そう何度も何度も蘇られてはたまりませんわ。私はこれでターンエンドしますわ」


綾香 LP7800　手札1枚
デッキ：29　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：7　除外：1
美咲 LP4900　手札1枚
デッキ：31　モンスター：1（星輝士 デルタテロス ORU:2）魔法・罠：0　墓地：6　除外：0


☆TURN07


「私のターン、ドローよ」

　前のターンはリフンの効果でなんとか防ぐことができた。しかし、そう何度も上手くいかないことは外ならぬ綾香自身が理解していた。

（……竜星を警戒してくれるといいんだけど）
「私はモンスターをセット。これでターンエンドよ」


綾香 LP7800　手札1枚
デッキ：28　モンスター：1　魔法・罠：0　墓地：7　除外：1
美咲 LP4900　手札1枚
デッキ：31　モンスター：1（星輝士 デルタテロス ORU:2）魔法・罠：0　墓地：6　除外：0


☆TURN08


「私のターン、ドローですわ。さて、あのセットモンスター……」

　普通のセットモンスターならデルタテロスの効果で破壊すればいい。しかし、竜星は如何なる形であっても破壊されて墓地に送られればデッキから別の竜星をフィールドに特殊召喚できる。モンスターによって攻撃表示守備表示の差があるとはいえ、大きなダメージは期待できないのだ。

（デルタテロスの破壊効果は強力。でもそれゆえに無駄撃ちはしたくない……）
「私は手札からベガを召喚。そしてベガの効果で手札から“星因士 シャム”を特殊召喚しますわ！」


※星因士 シャム
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1400/守1800
「星因士 シャム」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。相手に1000ダメージを与える。


「シャムの召喚・特殊召喚に成功した場合、相手に1000ダメージを与えることが出来ますわ」

綾香 LP7800→6800

「何よそのしょっぱい効果」
「1000のライフを軽んじる者は1000のライフに泣くのですわ。私はレベル4のベガとシャムでオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！ エクシーズ召喚！“心に刃を潜めし者よ、二対の小太刀で闇を切り裂け！”駆け抜けなさい！“機甲忍者ブレード・ハート”！！」


※機甲忍者ブレード・ハート
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/風属性/戦士族/攻2200/守1000
戦士族レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の「忍者」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。
このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。


「ブレード・ハートは1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで自分フィールドの忍者1体に2回攻撃出来るようにするのですわ。そしてブレード・ハート自身も忍者！ ブレード・ハートの効果を発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除き、ブレード・ハートはこのターン2回まで攻撃が可能！」

　これで美咲のモンスターはデルタテロスも含めて計3回まで攻撃が可能になった。普通のデッキならこれだけでライフの大半が吹っ飛び、致命傷となる。しかし、それをさせないのが綾香のデッキの強みでもあった。

「そしてバトルフェイズ！ ブレード・ハートでセットモンスターを攻撃ですわ！“電磁抜刀 カスミ斬り”！！」

　ブレード・ハートの一撃がセットモンスターを切り刻む。しかし、そのセットモンスターは美咲が警戒していた竜星ではなかった。

機甲忍者ブレード・ハート ATK2200 VS 破面竜 DEF 1100

「ま、またしても破面竜！？」
「破面竜は破壊されるわ！ そしてデッキから3体目の破面竜を特殊召喚！！」
「っ……デルタテロスの効果を使っておけば……ブレード・ハートで2度目の攻撃！」

機甲忍者ブレード・ハート ATK2200 VS 破面竜 DEF1100

「破壊された破面竜の効果でデッキから炎竜星-シュンゲイを守備表示で特殊召喚！」
「デルタテロスでシュンゲイを攻撃しますわ！」

星輝士 デルタテロス ATK2500 VS 炎竜星-シュンゲイ DEF0

「破壊されたシュンゲイの効果でデッキから“風竜星-ホロウ”を守備表示で特殊召喚よ！」


※風竜星-ホロウ
効果モンスター
星1/風属性/幻竜族/攻0/守1800
「風竜星-ホロウ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「風竜星-ホロウ」以外の「竜星」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。
(2)：1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。自分フィールドの「竜星」モンスターのみをS素材としてS召喚する。
(3)：このカードをS素材としたSモンスターは、魔法カードの効果を受けない。


「っ……結局1のダメージも与えられませんでしたわ……」
（馬鹿な、この私がここまで止められるなんて……いいえ、これは運が悪いだけのことですわ。下を向いてはお父様に笑われてしまいます！）
「私はこれでターンエンドですわ！」


綾香 LP6800　手札1枚
デッキ：25　モンスター：1（風竜星-ホロウ）魔法・罠：0　墓地：10　除外：1
美咲 LP4900　手札0枚
デッキ：30　モンスター：2（星輝士 デルタテロス ORU:2、機甲忍者ブレード・ハート ORU:1）魔法・罠：0　墓地：7　除外：0