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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第143話:七星将軍の襲撃

第143話:七星将軍の襲撃 作:光芒




「そのまさかです。我ら精霊の世界に……人間がいます」

 オーバーハンドレッド・ナンバーズこと七星将軍の1体であり、主に祭事や傷つき病んだ精霊たちの慰撫を担う“No.103 神葬零嬢 ラグナ・ゼロ”はそう断言した。
 七星将軍の紅一点であり真面目でたおやかな彼女は決して下らない冗談を言うタイプではない。その場にいた他の七星将軍たちはすぐに彼女の言葉に嘘偽りのないことを察した。

「マジかよ……どっから入り込んだんだ!?」
「誰かが手引きしたとかだろうな」

 何かしらの戦争状態に突入した際、七星将軍において先陣を駆って切り込む役目を担っている“No.105 流星のセスタス”は右手に握りこぶしを作り、それを広げた左手に打ち付けた。
 戦闘や武芸に関しては七星将軍の中でも最も得意とするが、計略や欺瞞の苦手なセスタスを支えつつ策を講じることの多い“No.106 巨岩掌 ジャイアント・ハンド”は彼の隣で冷静に原因を分析する。

「手引きをした?……そんなことできるやついるのかよ」
「例えば、ここにいない2体とかな」

 ここにいない2体―――七星将軍はその名が示す通り、元々7体の精霊からなる集団だ。しかし、今現在皇城の詰所にいるのはそのうちの5体だけだった。

「ジャイアント・ハンド……お前はシャイニングと時空竜を疑うってのか!?」
「疑うわけじゃない。だが、この精霊界で人間界に繋がる扉を開けるのは我らが皇と七星将軍くらいだろう?」
「っ……」

 ジャイアント・ハンドの言う“シャイニング”とは“No.104 仮面魔踏士 シャイニング”のことである。七星将軍の中では最も知力に優れており、精霊皇の軍師のような役割を担っている。
 しかし、その知力にかまけて他者を見下す傾向があり、それを自覚した上で振る舞っているため七星将軍の中でも浮いた存在であった。それでも精霊皇はそんな彼の知力を信頼し、臣下として、友人として重用している。

「で、そのシャイニングの奴はどこにいる?」
「今日も地下の研究室に。もう3日ほど籠っていますわ」
「シャイニングって名前なのに暗い部屋に籠っているのか。名前に似合わない奴だな」
「せめて時空竜がいてくれれば……」

 光り輝く翼を持った天使のようなモンスター“No.102 光天使グローリアス・ヘイロー”は頭を抱える。七星将軍において副長のような立ち位置にある彼は個性の強い面々をまとめる役目が多く、常に気苦労の絶えない日々を過ごしていた。
 しかし、七星将軍という集団が存在しているのはまさにグローリアス・ヘイローがいてくれるから、というものがあり、普段は億尾にも出さないが、彼らは皆グローリアス・ヘイローのことを心から信頼している。
 そして、そんな彼の悩みはすっかり皇城に登城しなくなった時空竜にあった。七星将軍において最も清廉潔白で義に厚い性格を持っている、と言えた時空竜が有事において不在がちなのは精霊界においては十分に痛手であった。





 かつて七星将軍たちによって職務を放棄した時空竜を追討するかどうか、という協議が為されたこともあった。しかし、それは他ならぬ精霊皇によって阻止された。

「皇よ、時空竜を何故咎めないのですか?」
「……光子竜の時もそうだったが、私は苦楽を共にした仲間をこれ以上失いたくないのだ」
「……」

 七星将軍は性格や価値観の違いはあっても精霊皇には絶対の忠誠を誓っている。そのため時空竜を武力で処罰するということは精霊皇の意志に背くことになるのだ。





「……時空竜には今度改めて話を聞いてみるとしよう。ラグナ・ゼロ、人間たちはどこにいる?」
「はい。魔術師領域のブラック・マジシャンの居城にいますわ、お兄様」

 ラグナ・ゼロは地図を広げ、魔術師領域のブラック・マジシャンの居城を指さす。そんな時、七星将軍たちの部屋の扉が大きな音を立てて開け放たれた。開け放たれた扉の前にはまるで奇術師のような恰好をしたモンスターが立っており、彼は大あくびをしながら部屋へと入ってきた。彼こそが軍師であり、七星将軍の頭脳ともいえるシャイニングである。

「なんだか物騒なことになってるみたいだなぁおい」
「シャイニング、久しいな」

 上座に座る七星将軍の長が寝ぼけ眼の彼に声をかける。

「おう、7日ぶりだっけ?」
「3日ぶりだ」
「そうだっけ? 部屋に籠ってると日数もわからなくなるもんだぜ。で、なんだっけ、人間?」
「ああ。お前の統治する魔術師領域に侵入した」
「マジかよ、めんどくせーな……でも状況が状況だ。とっ捕まえちまっていいぜ。人間を看過するわけにはいかねえもんな」

 基本的にその領域で逮捕権を発動するにはその領域を統括する者に許可を取る必要がある。七星将軍の1体であるシャイニングは魔術師領域の最高統括者であり、彼が許可を出したということは統括者でなくともその領域で他の七星将軍や精霊が動くこともできるのだ。

「わかった……セスタス! ジャイアント・ハンド!」
「おう!」
「任せろ」

 七星将軍の筆頭であり、精霊皇に次ぐ位置にいる存在―――“CNo.101 S・H・Dark・Knight”の指示の下、七星将軍たちは行動に移すのであった。












「あの……私、見たんです。天都 遊望、銀河眼の時空竜を使役する少女が青眼たちを時空竜の力で無理やりカードに変えたのを……」

 もちろん綾香は直接見たわけではない。デュエルに敗れた時、何故かその時の記憶を見ることができたのだ。思えばそれも精霊使いとしての力が目覚めていたからこそ見ることができたのかもしれない。

「直接見た訳ではないのだろう? 俄かに信じがたい話ではあるが……精霊の中でも力の強い方である青眼たちを従わせられるなどそれこそ七星将軍以上の力を持たないと不可能な話だ」

 そして何より人間界へと渡り、一度死んだはずの命を蘇らせて精霊に転生させる。そんなことができる精霊などそうは存在しない。
 そして幼くして命を落とした少女が精霊となって生まれ変わり、死に分かれた姉を連れて精霊界へと渡るなどということなど下手な小説でも書かないような出来事にブラック・マジシャンは舌を巻くばかりだった。

「……そして攫われた親友を助けるためにお前たちは人間界から精霊の力を借りて精霊界にやってきた、と」
「信じがたい話デスヨネ……」
「ああ。だが、現に私の目の前にこうしてお前たちがいる。なら疑う余地はないだろう」

 ブラック・マジシャンは精霊皇の下で自分の領地を統括している立場にある。言わば精霊界の行政官であり、行政官として世界の安定を保つのも彼の責務である。
 もし責務に忠実に動くのであれば、本来精霊界には存在しないイレギュラーである綾香たちをここで捕縛して然るべき機関に差し出すのが普通のことだ。しかし、このブラック・マジシャンは変わり者としても有名であった。

「……その少女、天都 遊望は銀河眼の時空竜様と共に行動しているのだな?」
「ああ」
「ならば竜領域にいる可能性が高いと思われるな……ブラック・マジシャン・ガール、地図をここに!」
「はい!」

 師匠の命に応じてすぐにできるように、と部屋の外に控えていたブラック・マジシャン・ガールが精霊界の地図を持ってきて机の上に広げた。比較的使い古された地図であるが、精霊界の位置が手に取るようにわかるものであった。ブラック・マジシャンは自分たちの居城がある魔法使い族モンスターの住まう魔術師領域にチェスの駒のような目印を置く。

「ここが我らのいる魔術師領域だ。そしてここから北へ行って精霊界の最北端にある広大な領域……ここが竜領域だ」
「うわっ、遠っ。そして広っ」
「竜領域は精霊界で最も広い領域だからな。だが、幸い時空竜様は竜領域の統括者だ。この地図にある赤い点……ここが時空竜様の所在地になる。まあその場にいるとは限らないが」
「なるほど……目的地がはっきりとしているのはいいですね。しかし、ここまでどうやって行けばいいのでしょうか?」

 移動手段、という意味では光子竜たちに乗って空を飛べばいい話である。しかし、外の世界からの侵入者である自分たちが堂々と空を飛んで移動すればまず間違いなく異分子と見なされて攻撃を受けることだろう。
 仮にそれらを潜り抜けて無事竜領域の遊望と時空竜たちの下へと駆けつけたとしてもその時には既に皆満身創痍であり、そんな状態で遊希を助けられるわけがない。そのため極力余分な戦闘は避けて行きたかった。

「それも一理あるな。そうだな……我ら魔術師領域の東に位置する戦士領域は友好関係を築いている。少し回り道をすることになるが戦士領域なら私やかつての私の戦友たちの顔が利くからここを通っていくと良い」
「えっ、精霊界に仲のいい悪いなんてあるの?」

 精霊界は今でこそ精霊皇の下で1つに統括されているが、精霊皇やNo.たちが現れる前はかなり荒れていたという。ドラゴン族と戦士族・魔法使い族の連合は数度の小競り合いの経験があり、天使族と悪魔族は理由もないのにその種族名や名前から互いを敬遠しあっている。
 魚族・水族・海竜族の住む水領域(ウォーター・フィールド)と獣族・獣戦士族・鳥獣族の住む獣領域(ビースト・フィールド)は今でも【海皇】と【炎王】が激しく対立していた過去があることからしこりが生じており、精霊界も決して一枚岩ではないのが現状だ。
 最も恐竜族と爬虫類族、植物族と昆虫族のように生活習慣の近い種族や共存共栄が望める種族は統括者の有無に関係なく良好な関係を保てていたりするのだが。

「お前たち人間の世界にもよくあることだろう。何者にも相性というものがあるのだ」
「何かなぁ、あんまり聞きたくなかったわー」

 少しがっかりした様子を見せるスカーライトに、ブラック・マジシャンは自嘲気味に「これでもマシになった方だ」とつぶやく。何にせよ彼ら精霊たちの粉骨砕身により今の精霊界の安寧が保たれていると言ってもいいだろう。

「さて、思い立ったが吉日。準備を済ませるか。誰か、戦士領域の彼に連絡を―――」

 ブラック・マジシャンがそう指示を出しかけた時である。彼の居城を強い揺れが襲った。地震でも起きたのだろうか、と思って身を屈める綾香たちがその揺れの正体が自然現象ではないことをすぐに知る。

「ブラック・マジシャン様!」

 居城の警護を担当していた“魔導戦士ブレイカー”が駆け込んでくる。ブレイカーはブラック・マジシャンに耳打ちをすると、少し焦った様子を見せて部屋を駆け足で出ていった。

「ブラック・マジシャン!? どうしたの!!」
「お前たちはここに隠れていろ。決して外に出るな!」

 普段は冷静沈着なブラック・マジシャンであるが、この時ばかりは焦っていた。極力素早く行動しようと思っていた彼であるが、まさかこんなにも早く綾香たちの存在が感知されるとは思っていなかったからだ。











「“スターダスト・インパクト”!!」

 Dark Knightによって差し向けられた先鋒、流星のセスタスの燃え盛る拳が彼らを迎撃に出た魔法使いたちを吹き飛ばす。モンスターとしても精霊としても遥かに格上のセスタスをブラック・マジシャンの配下たちが止められる術などあるはずがなかった。

「おいセスタス。あまりやりすぎるなよ」
「わかってるって! でも久々の戦いだから俺の拳もウズウズしてるんだよ」
「まあ精霊界は平和だったからな、気持ちはわからんでもないが」

 暴れまわるセスタスに釘を刺すジャイアント・ハンド。セスタスに比べて頭の回る彼であるが、それでもどちらかというと軍事担当であるため戦うことは嫌いではない。迫りくる魔法使いたちを自分の効果で無力化した後に指で弾く形で押しのけていた。
 そんな中、部屋の外で待機していてブラック・マジシャンより一足早く動いていたブラック・マジシャン・ガールが現場へと駆けつけた。彼女は仲間の魔法使いたちが倒れている光景に目を背けつつも、杖1本でセスタスとジャイアント・ハンドの前に立ちはだかった。

「あなたたちは七星将軍の……! どういうつもりですか!?」
「どうもこうもねえよ、お前のお師匠様のブラック・マジシャンが人間を匿っているってことはわかってんだ。そいつを引き渡せばすぐに帰るよ」
「そんな……だからといってこんな酷いことを……!」
「悪いがブラック・マジシャンを呼んでくれないか。俺たちが用があるのは彼1人。君を傷つけるつもりはない」

 いつでも戦えるという姿勢を取るセスタスに対し、最悪の場合を除いてはできるだけ女性に手を上げたくはない、という信条を持つジャイアント・ハンドは冷静にブラック・マジシャン・ガールを説得する。
 しかし、彼女にとって第一に従うべきは師匠であるブラック・マジシャンであり、ブラック・マジシャンが綾香たちを竜領域へと連れていくと判断した以上、ここで話に応じるわけにはいかなかった。

「駄目です。私は……師匠であるブラック・マジシャンの意に従うだけです!」
「そうかい。じゃあ……痛い目にあってもらうしかねえな!!」

 セスタスの燃え盛る拳に光が集まっていく。彼の拳は鉄をも砕く力を秘めており、戦乱が起きた時にはその拳で相対する精霊を何百体も倒してきたものだ。当然まともに食らえばブラック・マジシャン・ガールであっても命の保証はない。

「っ……!!」
「スターダスト・インパクト!!」
(お師匠様……!!)


―――ブラック・マジック!!―――


 拳が見えない力によって弾かれた。セスタスは拳に強い痺れが走り、その手を引っ込める。セスタスの拳がブラック・マジシャン・ガールに直撃しそうになった瞬間そこに割り込んだブラック・マジシャンがその攻撃を弾き返したのだ。
 チッチッチッチッ、と指を振りながら割って入ったブラック・マジシャンは綾香たちと対峙した時と同じように杖の先を下にして戦意はないことを表わしながらも咄嗟に応戦できる体勢を取っていた。

「これはこれはセスタス様にジャイアント・ハンド様。このような辺境の城に何用でしょうか?」
「ネタは上がってるんだぜ。人間とそれに与する精霊を出しな」
「……ブラック・マジシャンよ、お前も我らと同じく精霊皇に仕えて精霊界の統治を行う身だ。異世界の者は精霊界にいてはならない。ならばお前が取るべき行動は一つしかないと思うのだが?」

 ジャイアント・ハンドの言うことは間違ってはいなかった。彼らは決して戦いに来たのではなく、精霊皇の下で精霊界の安寧を保つことを責務としており、それを果たすためにここまでやってきたのだ。
 ブラック・マジシャンも責任ある立場にある以上、精霊界に危険を及ぼす行為を見過ごすことは避けたいと思っている。しかし、彼はここで綾香たちを引き渡すことを最善の選択とは思っていなかった。

「申し訳ありません。私はその要請に従うわけにはまいりません」
「何故だ?」
「私は人間たちがこの世界に害を及ぼすことはないと判断したからです」

 ブラック・マジシャンは綾香たちがこの世界に来た理由を光子竜の存在を隠しつつありのままにセスタスとジャイアント・ハンドに伝えた。
 時空竜と彼が蘇らせて精霊をへと転生させた少女が綾香たちの親友を攫って精霊界にやってきているということ、人間界で目覚めた精霊であるスカーライトとスターダストの力を借りてこの世界にやってきたこと。そしてその親友を助けることだけが自分たちの目的ということを代弁した。

「やっぱり時空竜の奴が絡んでいたのか……」
「あの野郎、今度見つけたらぶん殴ってやる!」
 
 疑念の1つに過ぎなかった時空竜の関与が真実味を増したことでセスタスは怒りを露わにし、ジャイアント・ハンドは天を仰ぐ。

「原因は七星将軍の1体にあるのです。彼女たちに罪はありません」
「そうか……確かに人間たちの行動には理解できた。だが、それならば猶更その人間たちはを見過ごすわけにはいかないな」

 仲間の過失は自分たちの過失。時空竜が一因であることを考えると、ますます自分たち七星将軍が主体となって事の解決にあたらなければならなかった。それを考えると自分たちの目が黒いうちは綾香たち人間を好き勝手にのさばらせていくわけにはいかないのだ。

「そういうことだ! スターダスト・インパクト!」
「っ、ブラック・マジック!」

 セスタスとブラック・マジシャンの攻撃が炸裂する。攻撃力こそブラック・マジシャンとセスタスは同じ2500であるが、精霊としての力や格は七星将軍である2体の方が上回り、ブラック・マジシャンはブラック・マジシャン・ガールら配下を守りながら戦わなければいけない分不利であるのは明白だった。

(っ……こうなれば自分の身体を捨てても押し留める他ないか……)

 ブラック・マジシャンが一人決意を確かにした瞬間であった。

「ブラック・マジシャン!!」

 城の奥から綾香たちが七星将軍たちが荒らしまわった城の入口に駆けてきたのは。そしてそこにはブラック・マジシャンの話にはいなかった光子竜の姿もあった。

「っ、何故出てきて……」
「へっ、おびき出す手間が省けて……ってお前は光子竜じゃねえか!!」
「ったく……私はそこまで有名人なのか」
「有名も何も、お前は時空竜が処刑したと……それも欺瞞だというのか?」

 動揺する2体に対し、光子竜は「私に聞くな」と素っ気なく返す。そんな中、2人の少女がデュエルディスクを展開して前に進み出た。千夏と詩織である。2人は言葉を交わさずとも同じことを考えていた。

「千夏……詩織?」
「綾香、エヴァ。ここは私たちが引き受けるからあんたたちは先に行って」
「そんな……2人を置いてなど行けまセン!」
「私たちの存在はもうバレています。早く行かないと遊希さんの身に何があるかもわかりません」

 セスタスとジャイアント・ハンドはよもや精霊でもない人間の少女たちが自分たちに向かってくるとは思ってもいなかった。
 千夏と詩織は精霊使いでもなければ精霊自体でもないため七星将軍の威光が通じないというのもあるが、まさか精霊である自分たちに対してデュエルモンスターズによる戦いを挑むのだから開いた口が塞がらないといった様相だった。

「おいおいマジかよ……お前ら人間の小娘が俺らとやろうっていうのか?」
「あら、人間の小娘って嘗めてると痛い目見るわよ!」
「少なくとも……あなたたちの手を焼くくらいの力はあると自負しています」

 No.ですら及び腰になる自分たちに向かってくる。その気概をセスタスは買った。彼は向こう見ずなところもあるが、同時に熱血漢でもあり、堂々とした戦いを好む男だった。

「そうか……なら受けてやるよ。お前らみたいなのは殴ったら木っ端微塵になっちまうもんな!」

 そう言ったセスタスの身体が光に包まれる。精霊の中でもNo.とりわけオーバーハンドレッド・ナンバーズともなれば次元を越えることは元より、その姿を人間に変えることも容易だった。

「に、人間に化けた!?」

 セスタスが変化したのは小柄ながら浅黒い肌が特徴的な少年であった。その傍らでジャイアント・ハンドもまた人間へと姿を変え、セスタスは真逆にモヒカンヘアーが特徴的な筋肉質の大男へと変身した。

「これで俺たちも人間のやり方に則ってデュエルができるぜ。ちなみに俺は人間の世界では“アリト”って名乗ってたからアリトって呼んでくれよな!」
「まあお前は元々人型だからいいとしても俺はこんな身体だからデュエルするんだったら人の姿にならないと駄目なんだけどな……ああ、俺は人間界では“ギラグ”と名乗っていた」

 アリトとギラグ、と名乗ったセスタスとジャイアント・ハンドは腕を変化させてデュエルディスクとデッキを作り出した。
 オーバーハンドレッド・ナンバーズたちは精霊皇の指示や自分たちの判断で人間界に赴いては調査活動も行っていたのである。人間界のことを知らなう彼らであったが、そんな彼らもデュエリストとなることで人間たちの世界のことを学んでいたのである。

「へえ、精霊なのに人間の姿になれるなんて凄いじゃない! ますます楽しくなってきちゃったわ!」
「……精霊の方とデュエルをするのは怖くもありますが、楽しみでもあります。どうか後悔のないデュエルをしましょうね」

 千夏と対峙するアリトことセスタス、詩織と対峙するギラグことジャイアント・ハンド。人間と精霊による異色のデュエルの火蓋が切って落とされた。




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光芒
今回の話で登場したセスタスとジャイアント・ハンドが変身した姿ですが、まんまアニメZEXALのアリトとギラグです。最も姿形こそアニメのままですが、設定などは大きく変わっております。

次回以降の話ですが、当初は千夏&詩織とセスタス&ジャイアント・ハンドのタッグデュエルにする予定でしたが、両者のデッキが活きにくいのと作者の文章力の欠如(主に後者ですが)によってシングルデュエルとなりました。
時系列こそ同時進行ですが、最初に千夏VSセスタスのデュエル、次に詩織VSジャイアント・ハンドのデュエルを描く予定です。

最後にお知らせです。
最近は投稿していませんでしたが、オリカの投稿を始めました。
【玻星光(グリスタール)】というカテゴリーのオリカであり、後々この小説にも登場する予定なので、もしお暇であれば見てやってください。よろしくお願いします。

(2016-08-05 17:05)
ター坊
アリト、ギラグ!!
意外なキャラが登場しましたな。山での修行やバー・リアンでのコントなどギャグ色が強いコンビですがこちらはイケメン度が上がっているようで。千夏とアリトは性格が熱血系で似てるので楽しみです。 (2016-08-05 22:39)
光芒
>ター坊さん
アニメ本編では萌えキャラにハマったり遊馬とアッー!な関係になりかけた2人ですが、こちらではそういったギャグシーンはまずないと言っていいでしょうね。一応ギラグ(ジャイアント・ハンド)は女性に優しいというアニメ版に近い設定があったりしますが。
千夏とアリトは似たもの同士なので立場が違ったらきっと意気投合していたでしょうね。この2人の熱血さを活かしたデュエルが描ければと思います。

ちなみに次回投稿では精霊世界に登場するキャラのキャラ紹介ページを作ろうかな、と思っています。 (2016-08-06 10:39)

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89 第67話:不滅の戦士! 幻影騎士団 1429 2 2016-01-30 -
126 第68話:不可解なこと 1482 2 2016-02-02 -
77 第69話:千夏との誓い 1312 3 2016-02-05 -
72 第70話:あの日、あの時 1386 4 2016-02-08 -
124 第71話:黒幕との接触 1579 3 2016-02-10 -
141 第72話:決別の時 1696 3 2016-02-12 -
114 第73話:思いを一つに 1412 3 2016-02-15 -
101 第74話:邪なる同調 1497 2 2016-02-17 -
45 第75話:精霊の奇跡 1401 4 2016-02-19 -
110 第76話:星天の再会 1397 2 2016-02-22 -
112 第77話:ペンデュラムの脅威! 1442 4 2016-02-24 -
120 第78話:渾身のドロー 1656 2 2016-02-26 -
100 1万アクセス突破記念企画開催! 1848 0 2016-02-26 -
55 第79話:覇王黒竜の目覚め 1412 4 2016-02-28 -
44 第80話:進化する銀河龍 1493 2 2016-03-01 -
132 第81話:変わらぬ友情 1469 7 2016-03-03 -
109 第82話:集う決闘者 1702 6 2016-03-04 -
132 第83話:小さくたって決闘者 1714 7 2016-03-05 -
100 第84話:決意を秘めた決闘者 1442 9 2016-03-07 -
73 第85話:歩み始めた決闘者 1526 13 2016-03-08 -
117 第86話:真意を告げた決闘者 1597 7 2016-03-09 -
105 第87話:ポンコツ揃いな決闘者 1611 7 2016-03-10 -
63 第88話:とにかく可愛い決闘者・1 1516 10 2016-03-11 -
93 第89話:とにかく可愛い決闘者・2 1549 8 2016-03-13 -
90 第90話:五人五色な決闘者 1446 6 2016-03-14 -
126 遊希たちが4月改訂を語るようです 1481 8 2016-03-16 -
74 第91話:夕刻迎えし決闘者 1386 6 2016-03-16 -
88 第92話:解き放たれた決闘者 1628 6 2016-03-18 -
71 第93話:秘密を打ち明けた決闘者 1744 7 2016-03-20 -
66 第94話:一計案じる決闘者 1269 8 2016-03-22 -
75 第95話:絆深める決闘者 1445 10 2016-03-23 -
74 第96話:矛を交える決闘者・1 1400 9 2016-03-25 -
116 第97話:矛を交える決闘者・2 1321 6 2016-03-27 -
111 第98話:矛を交える決闘者・3 1418 7 2016-03-29 -
73 第99話:矛を交える決闘者・4 1404 7 2016-03-31 -
84 第100話:熱戦の決闘者・1 1379 6 2016-04-02 -
121 第101話:熱戦の決闘者・2 1426 10 2016-04-05 -
80 第102話:熱戦の決闘者・3 1438 11 2016-04-07 -
72 第103話:熱戦の決闘者・4 1389 6 2016-04-09 -
104 第104話:熱戦の決闘者・5 1516 6 2016-04-11 -
94 第105話:熱戦の決闘者・6 1452 6 2016-04-13 -
60 第106話:決戦に臨む決闘者・1 1393 6 2016-04-15 -
119 第107話:決戦に臨む決闘者・2 1459 11 2016-04-18 -
76 第108話:別れの時を迎える決闘者 1459 10 2016-04-20 -
69 番外編前編について遊希たちが語るようです 1487 6 2016-04-21 -
100 第109話:2通の手紙 1572 11 2016-04-23 -
92 第110話:青き眼のアトラクション 1486 6 2016-04-25 -
122 第111話:新時代のデュエル 1437 6 2016-04-27 -
83 第112話:ドラグーン 1357 6 2016-05-01 -
104 第113話:アクセラレーション! 1432 7 2016-05-03 -
107 第114話:熱気溢れしサーキット 1246 6 2016-05-06 -
131 第115話:新たなるブラックフェザー 1304 5 2016-05-10 -
128 第116話:疾走の果てに 1507 7 2016-05-12 -
49 第117話:ノンストップ・ガールズ 1531 6 2016-05-14 -
71 第118話:夏の終わり 1465 9 2016-05-16 -
113 第119話:謎の美少女 1510 4 2016-05-19 -
83 第120話:真・究極 1384 8 2016-05-21 -
54 第121話:遊希の動揺、遊望の微笑 1339 4 2016-05-23 -
60 第122話:聖夜の悲劇 1303 6 2016-05-25 -
53 30000アクセス記念企画を少々。 1223 5 2016-05-27 -
76 第123話:姉として 1341 3 2016-05-29 -
68 第124話:対峙する竜と龍 1387 3 2016-06-01 -
55 第125話:顕現せし遊望の精霊 1446 5 2016-06-03 -
58 第126話:No.(ナンバーズ) 1443 4 2016-06-06 -
102 第127話:届かぬ言葉 1420 7 2016-06-08 -
71 30000アクセス記念企画 1631 4 2016-06-10 -
63 第128話:白紙のカード 1361 6 2016-06-14 -
119 第129話:青空の下で 1261 3 2016-06-17 -
128 第130話:白いドラゴンとの邂逅 1522 4 2016-06-20 -
68 第131話:試練のデュエル 1355 4 2016-06-23 -
60 第132話:第四の精霊 1283 5 2016-06-26 -
109 第133話:舞い降りる閃珖竜 1416 4 2016-06-29 -
65 第134話:親友に託された力 1297 3 2016-07-02 -
97 第135話:涙の誓い 1326 4 2016-07-06 -
96 第136話:次元転送装置 1284 3 2016-07-09 -
92 第137話:新たなる竜星 1439 5 2016-07-12 -
56 第138話:綾香の忘れたもの 1312 4 2016-07-15 -
132 第139話:決闘者たちの選択 1236 5 2016-07-19 -
99 第140話:2人の真意 1292 7 2016-07-24 -
64 第141話:精霊界への旅立ち 1327 4 2016-07-28 -
64 第142話:黒き魔術師と弟子 1280 3 2016-08-02 -
117 第143話:七星将軍の襲撃 1332 3 2016-08-05 -
89 精霊界 登場キャラクター(9/14更新) 1356 0 2016-08-07 -
70 第144話:英雄と炎拳・1 1261 5 2016-08-10 -
71 第145話:英雄と炎拳・2 1230 4 2016-08-14 -
64 第146話:騎士王の覚醒 1231 6 2016-08-17 -
81 第147話:竜姫神と岩の合成獣・1 1376 3 2016-08-21 -
72 第148話:竜姫神と岩の合成獣・2 1271 2 2016-08-23 -
47 第149話:過去への鎮魂歌 1315 7 2016-08-26 -
87 50000アクセス記念企画~短編集・1~ 1334 3 2016-08-28 -
83 第150話:機械の身体に宿る心 1146 0 2016-08-31 -
55 第151話:空を超えて 1122 0 2016-09-03 -
117 第152話:竜と機械の大会戦 1207 0 2016-09-08 -
55 第153話:竜領域のナンバーズ 1244 0 2016-09-13 -
80 50000アクセス記念企画~短編集・2~ 1484 7 2016-09-17 -
102 遊希たちが10月改訂を語るようです 1295 4 2016-09-19 -
80 第154話:望まぬ戦い 1184 2 2016-09-23 -
67 第155話:正しさと過ち 1164 4 2016-09-27 -
59 第156話:少女の決意 1278 2 2016-10-01 -
119 第157話:遊希に起きた異変 1379 4 2016-10-05 -
111 第158話:未知なるデッキ 玻星光 1323 3 2016-10-08 -
114 第159話:玻璃の如く純粋に 1304 2 2016-10-12 -
108 第160話:限界を超えて 1267 3 2016-10-15 -
130 第161話:決戦 1276 3 2016-10-18 -
98 第162話:精神の成長 1251 2 2016-10-21 -
47 第163話:聖なる珖放つ神の竜 1281 4 2016-10-24 -
41 第164話:絆が紡いだ道 1383 6 2016-10-27 -
68 第165話:戦いの終わり 1334 4 2016-10-30 -
60 番外編 Trick or Treat 1206 5 2016-10-31 -
111 第166話:終わりの始まり 1414 9 2016-11-04 -
107 第167話:最期のワガママ 1458 4 2016-11-07 -
121 第168話:声なき再会の誓い 1328 4 2016-11-10 -
90 番外編:11月11日 1207 5 2016-11-11 -
70 第169話:七皇激突 1155 3 2016-11-15 -
48 第170話:怒りに生まれし竜 1131 3 2016-11-17 -
130 第171話:紅き新星竜 1445 5 2016-11-19 -
79 第172話:未来を賭けた戦い・1 1331 4 2016-11-22 -
119 第173話:未来を賭けた戦い・2 1243 3 2016-11-24 -
126 第174話:未来を賭けた戦い・3 1230 4 2016-11-28 -
134 第175話:神の目覚め(修正済) 1238 5 2016-11-30 -
149 第176話:ゴッド・ナンバーズ 1608 5 2016-12-02 -
103 第177話:次元を越える想い 1477 4 2016-12-05 -
139 第178話:天地創造の龍 1462 3 2016-12-07 -
108 第179話:希望への道 1372 3 2016-12-09 -
134 第180話:別れの時 1273 4 2016-12-11 -
106 第181話:少女たちの帰還 1225 5 2016-12-13 -
58 遊希たちが1月改訂を語るようです 1171 7 2016-12-15 -
121 第182話:バースデイ 1426 3 2016-12-17 -
95 第183話:星龍皇覚醒・1 1249 3 2016-12-19 -
110 第184話:星龍皇覚醒・2 1247 4 2016-12-21 -
81 第185話:星龍皇覚醒・3 1133 4 2016-12-22 -
99 番外編:一番のプレゼント 1226 5 2016-12-25 -
119 第186話:星龍皇覚醒・4(修正済) 1335 3 2016-12-26 -
99 星龍皇 設定・カード紹介 1336 0 2016-12-29 -
65 第187話:星龍皇覚醒・5 1231 4 2016-12-30 -
99 番外編:新年 1228 4 2017-01-01 -
78 第188話:星龍皇覚醒・6 1102 2 2017-01-04 -
116 第189話:星龍皇覚醒・7 1224 3 2017-01-07 -
58 第190話:神星龍皇と課せられた運命 1409 3 2017-01-09 -
130 エピローグ:未来 1686 10 2017-01-13 -
92 番外編:2月3日 1202 4 2017-02-03 -
91 番外編:愛と友情のチョコレート 1044 4 2017-02-14 -
82 番外編:桃(色)の節句 1114 4 2017-03-04 -
128 感謝とお知らせ 1272 2 2017-05-04 -
84 番外編:Gift 1138 2 2017-12-25 -
142 ゴブリンと青眼(ブルーアイズ) 1102 2 2018-01-14 -
114 アフターストーリー:星乃 綾香編・1 1757 2 2018-05-24 -
84 アフターストーリー:星乃 綾香編・2 1003 2 2018-05-28 -
95 アフターストーリー:星乃 綾香編・3 920 2 2018-05-30 -
123 アフターストーリー:星乃 綾香編・4 1062 2 2018-06-03 -
115 アフターストーリー:星乃 綾香編・5 1089 4 2018-06-06 -
53 アフターストーリー:陽川 千夏編・1 845 2 2018-08-14 -
67 アフターストーリー:陽川 千夏編・2 847 3 2018-08-20 -
105 アフターストーリー:陽川 千夏編・3 878 3 2018-08-23 -
65 アフターストーリー:陽川 千夏編・4 870 2 2018-08-25 -
39 アフターストーリー:陽川 千夏編・5 782 3 2018-08-30 -
63 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・1 913 2 2018-09-01 -
205 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・2 1029 3 2018-09-07 -
95 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・3 751 0 2018-09-09 -
65 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・4 860 3 2018-09-12 -
122 番外編:願う幸福 1447 2 2018-12-25 -

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