第185話：星龍皇覚醒・3　作：光芒

　フィールドに現れたのは雄山羊の角を持った龍の頭が1つと狼と龍と蛇が合わさったような頭を2つ生やした多頭の龍のようなモンスターだった。
　属性が地属性であり、かつこのモンスターのシンクロ素材となったウィルムゼクンドとウィルムヴァインがそのまま融合したかのような姿を持っている。真星龍皇のモンスターはいずれも同じ属性を持った星龍皇モンスターの特徴を有しているのだ。

真星龍皇 ラードゥウィルム DEF2900

「私ね、このデッキに触れてみてなんとなくなんだけど……わかったことがあるの」

　星龍皇はおろかその進化前にあたる玻星光のことについても遊希はよくわかっていない。皆が言うには「精霊界で遊希が生み出したカードたち」らしいが、遊希からしてみれば気づいたら自分の手元にあったカードであるという程度の認識しかなかった。
　それでも巡り巡って自分の元にやってきたカードたちであり、このカードたちを持っている時はかつて自分がギャラクシーデッキを使っていた時と似たような親近感を覚えていた。しかし、遊希はこのデュエルを通してこの星龍皇たちの正体が朧げではあるが、わかってきたような気がしていた。


「詩織の儀式、千夏の融合、エヴァと綾香のシンクロ、そして私のエクシーズ。これは……みんなの絆から生まれたカード。みんなの力で生まれたカードたち。私は、そう思うんだ」


　星龍皇は現在この世界に出回っている4つの特殊な召喚法である融合・儀式・シンクロ・エクシーズ、それぞれ4つの召喚法を1つで網羅しているデッキだ。そして玻星光が星龍皇に進化したその時、遊希は変貌した自分であっても心の底から友として接してくれる、心の底から愛してくれる仲間たちの暖かさに触れていた。
　確証こそ持てないが、このカードたちはやはり遊希と綾香・千夏・詩織・エヴァの5人の友情が実らせた果実であり、結晶といっていいカードたちなのである。

「……もしそれが事実なら、私たちにとってはそれほど嬉しいことはないデス。それだけ遊希サンの中で私たちが大きな存在だということなのですカラ……」
「エヴァ……」
「でも、今はデュエル。故に私はそのデッキに勝たないといけないのデス！」
「ええ、私もそう思う。だから、私も今持てる全力を出してあなたを倒すわ！ シンクロ召喚に成功した真星龍皇 ラードゥウィルムの効果を発動！」


※真星龍皇 ラードゥウィルム
シンクロ・効果モンスター
星8/地属性/幻竜族/攻2800/守2900
幻竜族チューナー1体＋チューナー以外の「星龍皇」モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した時、このカードのS素材とした「星龍皇」と名のついたモンスターの数だけ自分のデッキから「星龍皇」と名のついたモンスターをゲームから除外して発動できる。この効果でゲームから除外した「星龍皇」と名のついたカードの数だけ相手の手札をランダムに墓地に送る。
(2):自分のメインフェイズ時にゲームから除外されている自分の幻竜族モンスター1体を墓地に戻し、フィールドに存在するカード1枚を選択して発動できる。選択したカードを破壊する。
(3):このカードが破壊された場合に発動できる。自分の墓地に存在する「星龍皇」と名のついたモンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。
「真星龍皇 ラードゥウィルム」の効果はそれぞれ1ターンに1度までしか発動できない。


「ラードゥウィルムのシンクロ召喚に成功した時、このカードのシンクロ素材とした星龍皇モンスターの数だけデッキから星龍皇モンスターを除外して効果を発動するわ！ デッキから星龍皇 ラスタウィルムと星龍皇 ウィルムダシクを除外し、相手の手札を2枚ランダムに墓地に送る！」
「ハンデス？ 玻星光の時には無かった効果が……」

　真星龍皇 ラードゥウィルムは名前の共通点やシンクロモンスターであることからわかるように遊希がかつて綾香とのデュエルで使った“玻星光 ラードーン”の真の姿である。その時は墓地肥やしと墓地除外による1枚破壊というシンクロモンスターとしては申し分ない効果を持っていたが、星龍皇へと進化することで更にハンデスと被破壊時に後続を墓地から蘇生する効果を備えていた。
　ラードゥウィルムの両脇の首から放たれた光によって、エヴァの手札がランダムに墓地に送られる。攻撃力・守備力は共に3000にあと一歩届かない数値であるが、先攻1ターン目から相手の手札を最低でも2枚まで墓地に送ることができる、というのは相手にとっては十分すぎるほどの痛手となるものであった。しかし、それでもエヴァの表情に大きな変化は見られなかった。

（……まさか）
「ゲームから除外されたウィルムダシクの効果で除外されている星龍皇 ラスタウィルムを特殊召喚するわ」

　遊希のフィールドには千夏をワンショットキルするのに貢献したラスタウィルムがこれまた守備表示で特殊召喚される。エヴァのフィールドにカードは存在しないため、ラスタウィルムの効果は発動できないが守備力はラードゥウィルムを上回る3000であるため、先攻で壁として召喚するのにもうってつけのモンスターと言えた。

「私は……カードを2枚セットしてターンエンド。ターン終了時にウィルムヴァインの効果で特殊召喚されたウィルムサーフィは手札に戻るわ」

　先攻の遊希は高守備力のモンスター2体をフィールドに特殊召喚しつつ、シンクロ召喚で生じる手札損失を防ぎ、後攻であるエヴァの手札を先攻ながら2枚も削った。普通のデュエリストからしてみれば、上出来すぎるほどの先攻1ターン目であったが、遊希の中にはある心残りがあった。
　それは相手があのエヴァ・ジムリアということである。遊希を追いかけて入れ替わるようにしてプロの世界に入った彼女はその美貌と愛嬌、そして実力を以て瞬く間に世界的スターとなった。今のアカデミアにおいて遊希と実力伯仲しているデュエリストは彼女以外にいないだろう。そして、そんな彼女だからこそ守備力3000程度の壁ならあっさり超えられる布陣を敷いて来るのだ。


遊希 LP8000　手札：3
デッキ：35　モンスター：2（真星龍皇 ラードゥウィルム、星龍皇 ラスタウィルム）魔法・罠：2　墓地：4　除外：1
エヴァ LP8000　手札：3
デッキ：39　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：2　除外：0


☆TURN02


「私のターン、ドローデス！」

　普通ならば後攻を手札6枚で迎えるはずだったエヴァであるが、ラードゥウィルムの効果で2枚削られてしまったため、手札4枚で初ターンを迎えることとなる。トレーディングカードゲームに共通することとして、ハンドアドバンテージというものは【インフェルニティ】のようなハンドレスデッキを除けば極めて重要視されることの1つである。

「……手札6枚のところ4枚というのはやはり取れる戦術の幅が狭まってしまいマスネ」
「確かにそうだけど、本当にそう思ってるの？」
「……ええ。デスガ、取れる戦術の幅が狭まろうとも最初からやることを決めていれば迷う必要は無くなりマス！ 私は闇氷竜 サラマンダーを召喚しマス！！」

　エヴァのフィールドには冷気を纏った小さなトカゲのようなドラゴンが現れる。炎の精霊としての認識が強いサラマンダーであるが、地域や伝承によっては水や氷の精霊としても扱われ、火に焼かれても死なないことから古代では不死の生物としても扱われた。
　そのモチーフ通り、このモンスターが持つ効果は召喚成功時に墓地の闇氷と名のついたチューナーモンスター1体を蘇生することができるのだ。そして、このモンスターこそ遊希が危惧していたモンスターの1体でもあった。

「……ハンデスが裏目に出たようね」
「一見強い効果であるハンデス。しかし、それは時に相手を助けてしまうのデス！ サラマンダーの効果で墓地のチューナーモンスター、闇氷竜 バジリスクを特殊召喚しマス！」

　エヴァのフィールドにもチューナーと非チューナーモンスターが一組揃う。遊希がエヴァの得意とするシンクロ召喚を披露するのであれば、自分も十八番であるシンクロ召喚で対抗する。いちデュエリストとして、そしてプロデュエリストとしても。

「私はレベル4の闇氷竜 サラマンダーにレベル4の闇氷竜 バジリスクをチューニング！！“仄暗い深海に眠る罪深き魔竜よ、嫉妬の咎を背負いあらゆるものを幻惑せよ！” シンクロ召喚！ 来るのデス！ 闇氷魔竜レヴィアタン！！」

　七つの大罪のうち“嫉妬”の罪をその身に背負う竜が氷を突き破りその姿を現した。

「……やはりそのカードよね」
「シンクロ召喚に成功したレヴィアタンの効果！ そしてラスタウィルムを対象にシンクロ素材として墓地に送られたバジリスクの効果が発動しマス！」

　レヴィアタンのシンクロ召喚成功時の効果はフィールドのカード1枚をバウンス、バジリスクの効果は対象にしたモンスター1体を破壊する効果だ。この2つの効果がそのまま通ればダイレクトアタックを許すこととなる。

「だったらその効果にチェーンしてリバースカードを発動するわ！ ラードゥウィルムを対象に速攻魔法“星龍皇輪廻（ドラグリステル・サンサーラ）”！！」


※星龍皇輪廻（ドラグリステル・サンサーラ、オリジナルカード）
速攻魔法
(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「星龍皇」と名のついたモンスター1体をゲームから選択して発動できる。選択したモンスターをゲームから除外する。その後、このカードの効果で除外した「星龍皇」と名のついたモンスターの元々の攻撃力分自分のライフを回復する。
(2):墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動できる。ゲームから除外されている「星龍皇」と名のついたモンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
「星龍皇輪廻」は1ターンに1枚までしか発動できず、「星龍皇輪廻」の(2)の効果はこのカードが墓地に送られたターンには発動できない。


チェーン3（遊希）：星龍皇輪廻→真星龍皇 ラードゥウィルム
チェーン2（エヴァ）：闇氷竜 バジリスク→星龍皇 ラスタウィルム
チェーン1（エヴァ）：闇氷魔竜 レヴィアタン


「チェーン3！ フィールドのラードゥウィルムをゲームから除外し、私のライフを2800回復する！」

遊希 LP8000→10800

「チェーン2のバジリスクの効果でラスタウィルムを破壊しマス！ チェーン1のレヴィアタンの効果はフィールドに表側表示で存在するカードがないので不発になりマス。デスガ、これで遊希サンのフィールドはがら空きデス！ バトル！ 闇氷魔竜 レヴィアタンで遊希サンにダイレクトアタックデス！ “ブリザード・ジェラウス・バースト”！！」

闇氷魔竜 レヴィアタン ATK2900

遊希 LP10800→7900

　この4連戦においてはじめて遊希のライフが削られる。それでも星龍皇輪廻の効果でライフを事前に回復していたため、実質的にライフを100失っただけであった。

「ウー、これだけやって100ダメージデスカ……やっぱり強いデス」
「そりゃ相手があんただもの。全力を出さなければすぐにやられちゃうから」
「……デスガそれでこそ遊希サンデス！ 私はカードを1枚セットしてターンエンドデス！」


遊希 LP7900　手札：3
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：1　墓地：6　除外：2
エヴァ LP8000　手札：2
デッキ：38　モンスター：1（闇氷魔竜 レヴィアタン）魔法・罠：1　墓地：3　除外：0


☆TURN03


「私のターン、ドロー！ 私は墓地の星龍皇輪廻をゲームから除外して2つ目の効果を発動！」
「墓地から魔法カード！？」
「このカードをゲームから除外することでゲームから除外されている星龍皇1体を自分フィールド上に特殊召喚する。帰還しなさい、ラードゥウィルム！」

　次元の壁を突き破り、ラードゥウィルムが遊希のフィールドへと舞い戻る。星龍皇というカードには綾香たちとの友情以外にも込められているものがある。それは光子竜や遊望ら精霊界に残った者たちとの絆。例え次元の壁が阻もうとも、その障害を超えるだけの絆を結んでいる。次元を超える想い―――それもまた星龍皇の力の1つなのだ。

「ラードゥウィルムの効果！ 1ターンに1度、ゲームから除外されている幻竜族モンスター1体を墓地に戻すことでフィールドに存在するカード1枚を破壊するわ！ 私はゲームから除外されているウィルムダシクを墓地に戻し、闇氷魔竜 レヴィアタンを選択して破壊する！“ラードーン・グラヴィティ”！！」
「っ！？」
「さっきのお返しよ、バトル！ 真星龍皇 ラードゥウィルムでエヴァにダイレクトアタック！ “ラードーン・アース・ブレス”！！」

真星龍皇 ラードゥウィルム ATK2800

「させマセン！ リバースカードオープン！ 永続罠、リビングデッドの呼び声デス！ 墓地の闇氷魔竜レヴィアタンを特殊召喚しマス！」
「リビングデッド……攻撃は中止するわ。バトルフェイズを終えてメインフェイズ2に移行するけど、そのまま何もせずターンエンドよ」


遊希 LP7900　手札：4
デッキ：34　モンスター：1（真星龍皇 ラードゥウィルム）魔法・罠：1　墓地：6　除外：1
エヴァ LP8000　手札：2
デッキ：38　モンスター：1（闇氷魔竜 レヴィアタン）魔法・罠：1（リビングデッドの呼び声）墓地：3　除外：0


☆TURN04


「私のターン、ドローデス！ どんどんいきマス！ 私は闇氷竜 ヒュドラーを召喚！ そしてヒュドラーの効果で闇氷竜 ウロボロスを墓地に送りマス！」

　闇氷竜 ヒュドラーの召喚成功時の効果はデッキから任意の闇氷チューナー1体を墓地送りにするもの。そしてその効果で墓地に送られたチューナーモンスター、闇氷竜 ウロボロスは闇氷の効果で墓地に送られた場合にある効果を発動できる。その効果はこれまで何度も対峙してきた遊希を苦しめてきたし、そしてその効果は何度もこれまで遊希の仲間として、友として戦禍を潜り抜けてきたエヴァを助けるものであった。

「ヒュドラーとウロボロス……私が言えることじゃないと思うけど、その2体のコンボも大概よね」
「アハハ……私もそう思いマス。ですが、それくらいの力があるからこそこのデュエルは面白いンデス！ 闇氷の効果で墓地に送られたウロボロスを墓地から特殊召喚しマス！ そしてレベル4の闇氷竜 ヒュドラーにレベル4のチューナーモンスター、闇氷竜 ウロボロスをチューニング！」

　ヒュドラーの身体が4つの星に、ウロボロスの身体が4つのリングへと変化する。遊希同様、エヴァは人間界に帰ってきたときに精霊の力を失ってしまった。そのため今の彼女は精霊使いではない。
　しかし、精霊使いでなくなったとしても遊希と同じようにエヴァも自らの精霊とは強い絆を結んでいた。そしてその絆は遊希が言うように、次元の壁に阻まれる程度のものではない。その証拠がカードとしてエヴァの手の中に残っていた。





―――“王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻みなさい！”―――





―――シンクロ召喚！！―――





―――吠えろ！！ レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト！！―――





　レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト。銀河眼の光子竜同様精霊だったそのカードにはもはや魂は宿っておらず、一介のカードに戻ってしまっていた。それでもかつて精霊を宿していたカードであったために他のカードとは醸し出すオーラというものが違っていた。　

「スカーライト……！！」
「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果を発動しマス！ このカード以下の攻撃力を持つフィールドに特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのライフを相手ライフに与えマス！“アブソリュート・パワー・フレイム”！！」

　スカーライトはプロテクターのようなものを付けて肥大化した右腕を大地に叩きつける。地割れが起きた大地からはマグマのように灼熱の炎が吹き上がり、それは飢えた獣の如く脈動しては遊希のラードゥウィルム、そしてエヴァ自身のモンスターであるレヴィアタンをも構うことなく飲み込んでいった。

遊希 LP7900→6900

「ごめんなさい、レヴィアタン……」
「まさか自分のモンスターまで破壊してくるとは……でもダイレクトアタックはさせない。ラードゥウィルムが破壊されて墓地に送られた場合にその効果を発動！ 墓地の星龍皇 ラスタウィルムを表側攻撃表示で特殊召喚するわ！ そしてラスタウィルムの効果でスカーライトの効果を無効にする！」
「ですが、効果を無効化したところで攻撃力ではスカーライトの方が上デス！ バトル！ レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトで星龍皇 ラスタウィルムを攻撃！ “灼熱のクリムゾン・ヘル・フレイム”！！」

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ATK3000 VS 星龍皇 ラスタウィルム ATK2500

遊希 LP6900→6400

「ちっ……！！」
「私はこれでターンエンドデス！」


遊希 LP6400　手札：4
デッキ：34　モンスター：0　魔法・罠：1　墓地：8　除外：1
エヴァ LP8000　手札：2
デッキ：36　モンスター：1（レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト）魔法・罠：0　墓地：7　除外：0


☆TURN05


　これまでの展開とは打って変わって遊希が押される流れになりつつあった。可能な限り少ないターンで詩織と千夏を倒し、スタミナの温存を図っていた遊希であったが、その後を見据えた慎重さを突かれた結果エヴァにリードを許す形となってしまっていたのである。
　スカーライトの直接攻撃のみならばあと2回はライフで受けることができるが、スカーライト以外のモンスターを召喚された時点でその目論見は崩れる。そのためスカーライトに戦闘破壊されず、かつスカーライトの効果で破壊されないモンスターを出さなければならない。そのような都合のいいモンスターが果たして何処に存在するのか、と言われてしまえばそれまでなのだが、遊希はその条件を満たすモンスターを知っている。

「私のターン、ドロー！！……私は手札から魔法カード、星龍皇の煌めきを発動！ 手札の星龍皇 エルタウィルムをゲームから除外し、デッキから2枚ドローするわ！」
「エルタウィルム……圧倒的なパワーで千夏サンをワンショットキルしたカードデスネ」

　しかし、エルタウィルムは他の星龍皇の効果ならいざ知らず、自身の効果で特殊召喚するには自身以外にも星龍皇が2体除外されていなければならず、星龍皇の効果で特殊召喚に成功したところでフィールドにはエルタウィルム1体しか存在しないため、強化されても攻撃力は3600止まり。仮にそのターンでスカーライトを破壊してバーンダメージを与えたとしても、次のターンにスカーライトに帰還されてしまえば攻撃力は同じ3000のため、スカーライトの効果で破壊されてしまう。
　エヴァ相手なのだから時はそれほど稼げないだろう。それならばその残された時の間にスカーライトから守りつつ勝つための布陣を作り上げる。それをこなさなければまず押し切られてしまう。遊希にはタクティクスの緻密さが求められていた。

「相手フィールド上にのみモンスターが存在する時、手札からこのカードはリリースなしで通常召喚できるわ！ 来なさい、星龍皇 ウィルムアンサル！ 妥協召喚したウィルムアンサルの攻撃力・守備力は半分になるけどね」

星龍皇 ウィルムアンサル ATK2800/DEF2400→ATK1400/DEF1200

「そして手札から魔法カード、死者蘇生を発動！ 墓地のウィルムダシクを特殊召喚するわ！」
「レベル8のモンスターが2体……儀式、融合、シンクロ……やはり」
「そう。エクシーズ、私の力よ！ 私はレベル8の星龍皇 ウィルムアンサルとウィルムダシクでオーバーレイ！！」

　ウィルムアンサルとウィルムダシクの2体の魂が水色と緑色の光となって天空へと昇っていく。2体の星龍皇の魂は1つとなり、全身を鈍い銀色に輝く鎧を纏った蒼き炎の翼を持つ龍皇を呼び覚ました。





―――“遥かなる天空において輝く星々よ。今その輝きを1つに繋ぎ、誇り高き蒼炎の龍皇となりてこの地に降臨せよ！！”―――





―――エクシーズ召喚！！―――






―――“真星龍皇 ドラコニスウィルム”！！―――





※真星龍皇 ドラコニスウィルム（オリジナルカード）
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/炎属性/幻竜族/攻3000/守2700
「星龍皇」と名のついたレベル8モンスター×2
(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターンの終了時まで自分フィールド上に表側表示で存在する「星龍皇」と名のついたカードは相手のカードの効果の対象にならず、戦闘およびカードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードにX素材が存在しない場合に発動できる。自分の墓地に存在する「星龍皇」と名のついたカード1枚を選択してこのカードのX素材にする。
(3):このカードが相手によってフィールドを離れた場合に墓地の「星龍皇と名のついたモンスター1体をゲームから除外して発動できる。エクストラデッキから「真星龍皇 ドラコニスウィルム」以外の幻竜族モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
「真星龍皇 ドラコニスウィルム」の効果はそれぞれ1ターンに1度までしか発動できない。


　遊希が精霊界において綾香とのデュエルで使用した“玻星光 ドラコニス”。そのモンスターの真の姿がこの真星龍皇 ドラコニスウィルムである。蒼く光る炎と銀色の鎧を見纏った龍皇はスカーライトをその眼で見据えると、まるで威嚇するかのように咆哮する。精霊ではないにも関わらず、ドラコニスウィルムとスカーライトはまるで互いに呼応するかのように唸り声をあげるのであった。











〇後書き
ラストデュエルの真っ最中ですが、次回投稿は「番外編」となります。
本編の雰囲気とは全く異なるために続けて読む際はお気を付けください。

そして投稿日時ですが……12/24日深夜（12月25日の午前2時前後）に投稿させて頂きます。内容はだいたい投稿日からどのような内容かは察して頂けるはずです。
ちなみに……物凄くアレな話です。ハロウィン番外編やポッキーゲーム番外編並みにキャラが壊れます。キマシタワーがまた一棟建築されるような……そんな感じです。