第27話：遊希VSエヴァ　作：光芒

　元プロと現プロ同士のデュエル。普通の日ならデュエルフィールドは生徒たちで超満員と化していただろう。しかし、日本に来たばかりのエヴァをそんな環境でデュエルさせるのはさすがに酷だろうと判断した竜司は敢えて竜司と綾香の二人だけが見守る中でデュエルをしてもらうことにした。
　千夏同様純粋にデュエル好き、という様相のエヴァはわくわくしながらデッキ調整をしている。一方の遊希はあまりデュエルに乗り気でないこともあってか、複雑な気持ちでデッキ調整をしていた。

（相手は現プロデュエリスト……あの雑誌で見掛けるまで彼女のことを何も知らなかったから使うデッキがどんなものかも知らない。ただ……）
―――遊希、どうした？

　遊希の心に少なからず動揺があることに気が付いた光子竜が声をかける。しかし、遊希は答えなかった。それはデュエルの前に竜司と綾香から聞いた話が原因だった。

「……特別なカード？」
「ああ。彼女とはかつて大会の決勝で当たったことがあってね」
「その大会に勝てばパパは特別なモンスターカードを手に入れることが出来るはずだったのよ」
「だった、ってことは」
「私は決勝で彼女に負けてしまってね。当時まだデビューしたてで彗星のごとく現れた彼女はとても強かったよ」
「……それを言ってどうしろ、と」
「べっ、別に！ ただそのモンスターには気を付けてってことを言いたかったのよ！」

（特別なモンスター……か。光子竜が彼女の居場所を感じ取った時に波動を感じ取ったと言っていたけど……そのカードは……）

　デッキ調整が終わった遊希とエヴァがデュエルフィールドに立つ。いつも立っているはずのフィールドであるが、今までの時とは違った雰囲気を感じていた。

「遊希サン」
「……何かしら？」
「実は私、あなたに憧れてプロの道に進んだんデス」

　エヴァ・ジムリアという少女は旧貴族の家系に生まれたことを除けば、元々はどこにでもいる平凡な少女だった。ただ人よりデュエルが好きだった彼女はプロのデュエリストに憧れており、とりわけ自分と同い年でプロの世界で大人相手に戦う遊希に憧れて強くなりたい、と願って努力を続けてきたのだ。

「同い年だけどプロの舞台で燦然と輝く遊希サン……私がプロになったのと入れ替わりであなたはプロの世界を去ってしまったのでプロとして相見えることはありませんでしたガ……」
「それでもこうして巡り合った、偶然って怖いわね」
「偶然じゃないデス、これはきっと運命かもしれまセン……このデュエル、私はいちデュエリストとしてあなたの胸を借りるつもりで挑ませてもらいマス！」
「……いいデュエル、できるといいわね」
「ハイ！」
（……調子狂うわね）

　デュエルフィールドが起動し、先攻後攻の決定権を自動で委ねられる。今回は遊希に先攻後攻の決定権が与えられた。

―――珍しいな。
（ホントね）
「最近後攻ばっかりだったから先攻で行かせてもらうわ」
「わかりまシタ！ では行きマス！」
「「デュエル！！」」


遊希　LP8000　手札:5
デッキ:40　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:0　除外:0
エヴァ　LP8000　手札:5
デッキ:42　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:0　除外:0


☆TURN01


「私のターンよ。私は手札から魔法カード、ギャラクシー・トレードを発動。手札のギャラクシーモンスター、銀河新星を墓地に送りデッキから2枚ドローする。そしてギャラクシーカードの効果で手札から墓地に送られた銀河新星の効果が発動。デッキからギャラクシーと名のついた魔法カード、銀河遠征を手札に加えるわ」

　遊希は先攻のドローできないというデメリットをギャラクシー・トレードで回避し、さらに銀河新星の効果でランク8のエクシーズ召喚を行うための必須カードの一つでもある銀河遠征を手札に加えた。
　しかし、手札にはレベル8のモンスターが現状存在しないため、このターンでのエクシーズ召喚は実際には不可能である。それでも遊希のデッキの攻め手はエクシーズ召喚だけではない。

「私は手札からチューナーモンスター、銀河の戦乙女を召喚。そしてこのカードの召喚時に効果が発動。墓地のレベル4以下のギャラクシー、銀河新星の効果を無効にして表側守備表示で特殊召喚するわ」

　戦乙女の効果でフィールドには2体のレベル4モンスターが揃う。この状況なら一見するとシンクロかエクシーズかどちらの手で場を固めるかはすぐにはわからない。
　だが、遊希のエクストラデッキに入っているランク4のエクシーズモンスターはどれも先攻1ターン目に立てるメリットの薄いモンスターばかりだった。そのため自然と遊希の取る手は決められる。

「私はレベル4の銀河新星に、レベル4のチューナーモンスター・銀河の戦乙女をチューニング！ “雄大なる銀河を舞う不死鳥よ、光り輝く翼を翻し永遠の命を紡ぎなさい！” シンクロ召喚！ 飛翔せよ、レベル8！ “銀河の不死鳥”！！」


※銀河の不死鳥（ギャラクシー・フェニックス/オリジナルカード）
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/鳥獣族/攻2400/守1600
チューナー+チューナー以外の「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体以上
(1)：このカードが相手によって破壊され、墓地に送られた場合、次のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。
(2)：このカードを「ギャラクシー」と名のついたXモンスターのX素材としてX召喚に成功した場合、そのXモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分の墓地に存在する「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。


「攻撃力2400……最上級モンスターにしてはそんなに高くないデスネ」
「ええ。でもこのゲームは攻撃力だけで決まるものではない、なんてことは知ってるわよね。このカードは戦闘またはカードの効果で破壊され、墓地に送られた場合、次のスタンバイフェイズに墓地から蘇るのよ」
「つまり何度でも蘇る強固な壁、ということですカ……さすがにいいモンスターを先攻で召喚しマスネ」
「あなた相手だもの、それくらいしないとね。私はカードを2枚セットしてターンエンドよ」


遊希 LP8000　手札:3
デッキ:37　モンスター:1（銀河の不死鳥）魔法・罠:2　墓地:3　除外:0
エヴァ　LP8000　手札:5
デッキ:42　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:0　除外:0


☆TURN02


「では私のターンデス！ ドロー！」

　後攻のエヴァがデッキからカードをドローする。彼女のデッキはモンスター効果による展開と専用のフィールド魔法による手札増強が強みだ。
　しかし、今の彼女の手札では遊希の銀河の不死鳥の攻撃力を上回るモンスターを出すことが出来ず、自慢の【闇氷】デッキの真価を発揮することもままならない状況だった。

（今の手札で出来ることは……多少痛いですがこれしかないデス）
「私は“エクリプス・ワイバーン”を召喚シマス！」


※エクリプス・ワイバーン
効果モンスター
星4/光属性/ドラゴン族/攻1600/守1000
このカードが墓地へ送られた場合、デッキから光属性または闇属性のドラゴン族・レベル7以上のモンスター1体をゲームから除外する。
その後、墓地のこのカードがゲームから除外された場合、このカードの効果で除外したモンスターを手札に加える事ができる。


「そしてメインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行シマス！ エクリプス・ワイバーンで銀河の不死鳥に攻撃！」
「……エクリプス・ワイバーンの攻撃力は1600よ？ オネストでもあるのかしら？」
「残念ながら私のデッキは闇属性メインなのでオネストは入っていまセン。なのでこれは自爆特攻というやつになりマス！」

エクリプス・ワイバーン ATK1600 VS 銀河の不死鳥 ATK2400

エヴァ LP8000→7200

「エクリプス・ワイバーンは返り討ちにされマシタ。ですがこれでエクリプス・ワイバーンの効果が発動シマス。エクリプス・ワイバーンが墓地に送られた場合、デッキから闇属性か光属性のレベル7以上のドラゴン族モンスターをゲームから除外シマス！ 私が除外するのはレベル10・闇属性の“レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン”、デス！」
「なるほど、間接的なサーチというわけね。でもそのカードを手札に加えるには墓地のエクリプス・ワイバーンをゲームから除外する必要がある」
「その通りデス。なのでこのカードの力を借りマス！ メインフェイズ2、私は墓地の光属性モンスター、エクリプス・ワイバーンをゲームから除外し、“暗黒竜コラプサーペント”を特殊召喚シマス」


※暗黒竜コラプサーペント
特殊召喚・効果モンスター
星4/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守1700
このカードは通常召喚できない。自分の墓地から光属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。この方法による「暗黒竜 コラプサーペント」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
(1)：このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「輝白竜 ワイバースター」1体を手札に加える。


（っ……そう来たか……）
「除外されたエクリプス・ワイバーンの効果で除外されていたレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを手札に加えマス。そしてフィールドのドラゴン族モンスターであるコラプサーペントをゲームから除外してレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを特殊召喚デス！」


※レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン（制限カード）
効果モンスター
星10/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
(1)：このカードは自分フィールドの表側表示のドラゴン族モンスター1体を除外し、手札から特殊召喚できる。
(2)：1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。自分の手札・墓地から「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外のドラゴン族モンスター1体を選んで特殊召喚する。


「レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンの効果を発動しマス！ 私は手札の“ライトパルサー・ドラゴン”を……」
「させない。レッドアイズの効果にチェーンしてリバースカードオープン！ レッドアイズを対象に罠カード、ブレイクスルー・スキルを発動するわ！」
「ブレイクスルー・スキル！？」
「これによりこのターンの間、レッドアイズの効果は無効になる。よって手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚することはできないわ！」
「ой！ そう簡単には使わせてくれませんカ……しょうがないデス。私はカードを1枚セットしてターンエンドデス」


遊希　LP8000　手札:3
デッキ:37　モンスター:1（銀河の不死鳥）魔法・罠:1　墓地:4　除外:0
エヴァ　LP7200　手札:3
デッキ:40　モンスター:1（レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン）魔法・罠:1　墓地:0　除外:2