第3話：銀河眼の光子竜　作：光芒

「銀河眼の光子竜……！ 遂に現れたか、精霊！！」


※銀河眼の光子竜（ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン）
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
このカードは自分フィールド上に存在する攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースし、手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時、その相手モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事ができる。この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に戻る。
この効果でゲームから除外したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、このカードの攻撃力は、そのエクシーズモンスターをゲームから除外した時のエクシーズ素材の数×500ポイントアップする。


　デュエルディスクに反応して姿を現した光子竜がフィールドに舞い降りる。普通モンスターが動くのは戦闘時のみなのだが、光子竜はまるで生きているかのように首や翼を動かしている。
　それこそがカードに描かれているだけの普通のモンスターと精霊の最大の違いであり、その様は対戦相手のミハエルやカメラを通してデュエルを見ている他の受験生たちにも理解できた。最も遊希と光子竜のように脳内で意思疎通が取れる、ということは遊希当人以外は知らないことではあったが。

―――さて、私の力を発揮する時だぞ遊希。
（いちいちうるっさいわねあんたは。わかってるってば）
「……メインフェイズ1を終了し、バトルフェイズに移行します。精霊がどうとか言ってる前にまずはこのモンスターの攻撃を受けて貰います。銀河眼の光子竜でミハエル先生にダイレクトアタック！」

　銀河眼の光子竜が周囲の光を吸収し、力を大きく高めていく。カードはデュエルディスクによって映し出されている立体映像であり、実際人体には影響を及ぼすことはない。しかし、精霊のカードだけあってか、モンスターから放たれるオーラは他のモンスターのそれとは比べるまでもなかった。

「“破滅のフォトン・ストリーム”！！」

銀河眼の光子竜 ATK3000

ミハエル　LP8000→5000

「ぐっ……ぐおおっ！！」

　銀河眼の攻撃技、破滅のフォトン・ストリームをもろに受けてミハエルの身体が大きく後ろにのけ反る。しかし一気にライフを3000も削り取られるのだから無理もない。

「バトルフェイズを終えてメインフェイズ2に移行。私はカードを2枚セットしてターンエンドです」
「待った……リバースカード、オープン！ 速攻魔法“サイクロン”を発動する！ 私から見て右側のカードを破壊する！」

　ミハエルはエンドフェイズにセットしていたサイクロンを発動する。セットしたカードは通常魔法・永続魔法を除いてそのターンのうちには発動できないため、エンドフェイズにサイクロンを発動することでそのカードを破壊する。デュエルの常套テクニックであり、基本的なサイクロンの使い方でもある。

「……そのセットカードが破壊されます」
「リビングデッドの呼び声か……やっかいなカードを破壊出来て何よりだ」

　転んでもただでは起きない、それはプロデュエリストとして活躍したミハエルの意地でもあった。


ミハエル LP5000　手札2枚
デッキ:34　モンスター:0　魔法・罠:1（神の居城-ヴァルハラ）墓地:2　除外:1
遊希 LP8000　手札3枚
デッキ:31　モンスター:1（銀河眼の光子竜）　魔法・罠:1　墓地:5　除外:0


☆TURN03


「私のターン、ドロー！……さて、折角の精霊だがすぐにご退場願わなければならない」
「……戦闘もしくは効果で光子竜を除去できるカードですか。そのデッキだと思い当たるカードは1つしかありません」
「その思い当たるカードが来たのだよ。私はヴァルハラの効果で天使族モンスター1体を特殊召喚する！ 現われよ、大いなる太陽の化身！ “マスター・ヒュペリオン”！！」


※マスター・ヒュペリオン
効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2700/守2100
このカードは、自分の手札・フィールド上・墓地に存在する「代行者」と名のついたモンスター1体をゲームから除外し、手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分の墓地に存在する天使族・光属性モンスター1体をゲームから除外する事で、フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。
フィールド上に「天空の聖域」が表側表示で存在する場合、この効果は1ターンに2度まで使用できる。


「【代行者】および【天使族】のキーカード……ここで引き当てられるのはさすがと言うべきですかね」

　やれやれ、と遊希は首を振る。しかし、そうも楽観視してはいられない。

「そうだ。真のデュエリストは引きたい時に引きたいカードを引けるのだ。マスター・ヒュペリオンの効果！ 墓地の天使族・光属性モンスターであるヘカテリスをゲームから除外して発動する！ フィールドに存在するカード1枚を選択して破壊！ 対象は……当然銀河眼の光子竜！！ 消えろ！！」

　マスター・ヒュペリオンの放った灼熱の光弾が銀河眼の光子竜に直撃する。光子竜は雄叫びを上げながら崩れ落ちて行った。精霊のカードがあっさり破壊されたことで控室でデュエルの行く末を見守っていた生徒たちからはどよめきの声が挙がる。しかし遊希はその程度のこと、とばかりにあっけらかんとしていた。

―――ぐおおっ！ まさかこの私がこんなにも早く……
（……何それっぽいこと言ってんのよ）
―――まあ少しは苦しむ素振りを見せないとな。墓地に送られるのは慣れている。
（まあそのうちまた呼んであげるからそれまで寝てなさい）

　遊希と光子竜が脳内でそんなやり取りをしていることなど知ってか知らずか、得意気に鼻を鳴らすミハエル。先程ダイレクトアタックを決めた遊希であるが、今度は自分がダイレクトアタックを決められる恐れがある。

「ふん、精霊と言えども所詮はモンスター。破壊してしまえば恐るるに足らん。さあ次はこちらの番だ！ バトルフェイズに移行し、マスター・ヒュペリオンでダイレクトアタック！！“ハイぺリオン・ブラスト”！！」

マスター・ヒュペリオン ATK2700

遊希 LP8000→5300

「これでライフポイントの差はわずか300！ まだまだデュエルは判らんぞ！ 私はこれでターンエンドだ！」


ミハエル LP5000　手札2枚
デッキ:33　モンスター:1（マスター・ヒュペリオン）　魔法・罠:1（神の居城-ヴァルハラ）墓地:1　除外:2
遊希 LP5300　手札3枚
デッキ:31　モンスター:0　魔法・罠:1　墓地:6　除外:0


☆TURN04


「私のターン、ドロー」

　光子竜を失った遊希であるが、その表情には焦りなど一切見受けられなかった。それどころかカードをドローした遊希の眼がより一層輝く。ミハエルは遊希が何かいいカードを引いたことを悟った。

「ミハエル先生、私の後にはあと何人くらい受験生が控えているんですか？」
「何だ藪から棒に。そうだな……君が受験番号62だからあと40人前後といったところか」
「そうですか……結構いるんですね。じゃあその人たちを待たせるのもあれなんで、このターンで終わらせちゃいますね」

　気だるげに言い放つ遊希。彼女の手にはこのデュエルを終わらせるに十分なものが揃っていた。