第19話：挽回の一手　作：光芒

☆TURN03


「私のターン、ドローよ」
（っ……タイミング悪いわね）
「私はモンスターをセット。これでターンエンドよ」

　リリーサーの効果で特殊召喚が封じられているため、現状遊希にできることは何もない。せめて今引いたモンスターをセットして壁代わりにする程度だった。


遊希　LP5500　手札:2
デッキ:35　モンスター:1　魔法・罠:0　墓地:7　除外:0
詩織　LP8000　手札:2
デッキ:30　モンスター:1（竜姫神サフィラ）魔法・罠:0　墓地:5　除外:2


☆TURN04


「私のターン、ドローです」

　一方フィールドを支配しつつある詩織にとっては遊希にダメージを与えるためより多くのモンスターを召喚する必要があった。しかし竜姫神サフィラの召喚に重点を置いている詩織のデッキはサフィラ以外の大型モンスターを召喚する手段に乏しい一面もあった。

（今はリリーサーの効果で天都さんは特殊召喚が出来ない状況……でも天都さんならそんな逆境をあっさり乗り越えてくるはず……だったらサフィラ以外のモンスターも出さないと……）
「わ、私は“召喚僧サモンプリースト”を召喚します」


※召喚僧サモンプリースト（制限カード）
効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻800/守1600
(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。このカードを守備表示にする。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。
(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。


「サモンプリーストは召喚に成功した場合、守備表示になります」
「でもサモンプリーストの効果で厄介なのはそこじゃない」
「サモンプリーストの第3の効果、手札から魔法カード1枚を捨てて発動します。デッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚します！ 私が特殊召喚するのはレベル4のチューナーモンスター“ライトロード・アサシン ライデン”です！」


※ライトロード・アサシン ライデン
チューナー（効果モンスター）
星4/光属性/戦士族/攻1700/守1000
自分のメインフェイズ時に発動できる。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。この効果で墓地へ送ったカードの中に「ライトロード」と名のついたモンスターがあった場合、このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで200ポイントアップする。
「ライトロード・アサシン ライデン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。


「ライトロード・アサシン ライデンの効果を発動します。自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送ります」

　ライデンの効果で墓地に送られたのは効果モンスターの“クリバンデット”と魔法カードの“サイクロン”の2枚。どちらも墓地に送って欲しくなかったカードだけあって、この効果は詩織にとってはマイナスに働いてしまった。最も墓地に送られて効果のある儀式魔人や“超電磁タートル”がそう都合よく墓地に送られるわけもないのだが。

「その様子だと落ちたカードはあまりいいものじゃかったようね」
「ええ……でもこのカードで一気に取りに行きます。私はレベル4・闇属性モンスターのサモンプリーストにレベル4のチューナーモンスター、ライデンをチューニング！ “闇より生まれし二対の竜、すべてを飲み込み世界を終わりへ導け！”シンクロ召喚！ 出てきてください、レベル8“ダークエンド・ドラゴン”！！」


※ダークエンド・ドラゴン
シンクロ・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2600/守2100
チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
1ターンに1度、このカードの攻撃力・守備力を500ポイントダウンし、相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る事ができる。


「ダークエンド……そんなモンスターまで入れていたのね」
「ダークエンド・ドラゴンの効果を発動します！ 1ターンに1度、このカードの攻守を500ポイント下げることで相手フィールドに存在するモンスター1体を墓地に送ります！ “ダーク・イヴァポレイション！！”」

ダークエンド・ドラゴン ATK2600 DEF2100→ ATK2100 DEF1600

　ダークエンドの効果で遊希のセットしたモンスター、オネストが墓地に送られる。本来フィールドに出すモンスターではないオネストを壁モンスターとして使わなければならない時点で遊希が苦境にあることは誰の目にも明らかであった。そして詩織は遊希が手詰まりになりつつあることを確認した。

（これなら……）「メインフェイズを終えてバトルフェイズに移行します。まずはダークエンド・ドラゴンでダイレクトアタックです！ “ダーク・フォッグ”！！」

ダークエンド・ドラゴン ATK2100

遊希 LP5500→3400

「続いてサフィラでもダイレクトアタックです！“竜姫の讃美歌”！！」

竜姫神サフィラ ATK2500

遊希 LP3400→900

「っ……！？」
「私はこれでターンエンドです！ ちなみにサフィラはデッキか手札から光属性モンスターが墓地に送られた時に効果が発動するのでこのターンは発動できません」


遊希　LP900　手札:2
デッキ:35　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:8　除外:0
詩織　LP8000　手札:1
デッキ:26　モンスター:2（竜姫神サフィラ、ダークエンド・ドラゴン）魔法・罠:0　墓地:10　除外:2


☆TURN05


「私のターン、ドローよ」

　遊希はカードをドローするとそれを手札に加えてしばらく考え込むように黙ってしまった。詩織のライフはまだ8000のままなのに対し遊希の残りライフはわずか900。ここからの逆転はよほどのことがない限り有り得ない。

「いいわよ詩織ー！ そのまま押し切っちゃえ！」

　詩織の勝ちを確信している千夏は詩織に声援を送る。彼女からしてみれば自分と綾香を破っている遊希よりも詩織に勝ってほしいという気持ちが強かった。
　しかしそんな千夏の隣でデュエルを見守っている綾香の心中は複雑であった。ルームメイトだけにどちらか一方を応援するということは出来ず、出来ればどちらにも後悔のないデュエルをしてほしいという気持ちが強かった。
　だが彼女からしてみればこのまま遊希が無抵抗で負ける姿を見るのも嫌だった。デュエリストとして尊敬している父が見込んだ遊希が負けること、何より自分との圧倒的な力の差を見せつけた彼女が負けることが自分のことのように許せなかったのだ。そんな綾香の想いはいつの間にか言葉となって外に現われていた。

「遊希……あんたは精霊に選ばれたデュエリストなんでしょ！ パパが、私が、みんなが認めたデュエリストがこんなにあっさり負けちゃっていいの！ よくない！ そんなの……私が許さないんだから！」
「あ、綾香？ どうしたのよそんな顔真っ赤にして……」

　自分のことのように必死になっている綾香の顔を見た遊希は無表情から一転、ブフッと吹き出す。

「あ、綾香……あんた必死過ぎよ……笑い堪えられないじゃないの……」
「―――っ！？」

　遊希にそう言われて顔を真っ赤にして黙り込む綾香。しかし遊希はそんな綾香に優しい笑みを見せる。

「でも心配しないで綾香……私はそんなヤワじゃないわ。さて詩織、あなたには悪いけどこのまま終わらせないわ。銀河の戦乙女を召喚！」

　遊希は手札からチューナーモンスター・銀河の戦乙女を召喚する。本来なら効果で墓地の下級ギャラクシーを特殊召喚できるのだが、当然現状特殊召喚は出来ない。

「チューナーモンスターを単独で……もしかして2枚目のオネストでも」
「オネスト出してもその場しのぎにすらならないじゃない。銀河の戦乙女はこのカードを発動するための鍵よ！ 速攻魔法“ハイパー・ギャラクシー”！！」


※ハイパー・ギャラクシー（オリジナルカード）
速攻魔法
(1):手札を1枚捨て、自分フィールドに表側表示で存在する「ギャラクシー」モンスター1体とフィールドに表側表示で存在する攻撃力2000以上のモンスター1体をリリースして発動する。自分のデッキ・手札・墓地から「ギャラクシーアイズ」と名のついたモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。


「【ギャラクシー】の速攻魔法……」
「ハイパー・ギャラクシーは手札を1枚捨て、自分フィールドに存在するギャラクシーモンスター1体とフィールドに存在する攻撃力2000以上のモンスター1体をリリースして発動できるわ」
「フィールドに存在する攻撃力2000以上のモンスター……まさか！」
「そう、フィールドのモンスター。つまり相手フィールドのモンスターもリリースできるということよ！ 私は銀河の戦乙女と詩織のフィールドにいる攻撃力2500の竜姫神サフィラをリリース！！」

　破壊は祝祷の聖歌で防がれ、バトルではオネストでは返り討ち、対象に取ることすら出来ないサフィラをフィールドから離れさせる方法。一つは対象を取らないカードで除去すること、そしてもう1つはリリースしてしまうこと。
　ハイパー・ギャラクシーの発動条件によってリリースされるため、効果解決時にサフィラはフィールドに存在しない。フィールドを離れることでリリーサーの効果を受けれなくなったので、遊希は特殊召喚が可能になったのだ。

（サフィラの弱点は“溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム”や“ヴォルカニック・クィーン”などのモンスターによってリリースされること……まさか天都さんのデッキにもそんなカードが入っていたなんて……）
「私が特殊召喚するのはこのカードよ！ 降臨せよ、銀河眼の光子竜！！」

　ハイパー・ギャラクシーのコストで手札から墓地に送られていた銀河眼の光子竜がフィールドに舞い戻る。

―――やっと私の出番か。
（ええ、存分に暴れなさい！）
「さらに私は墓地の銀河悪魔と銀河の戦乙女を除外し、銀河の冥府竜を特殊召喚するわ！ そしてバトルフェイズ！ 銀河の冥府竜でダークエンド・ドラゴンを攻撃！ “ヘル・ギャラクシー”！！」

銀河の冥府竜 ATK2600 VS ダークエンド・ドラゴン ATK2100

詩織 LP8000→7500

「さらに銀河眼の光子竜でダイレクトアタック！ “破滅のフォトン・ストリーム”！！」

銀河眼の光子竜 ATK3000

詩織 LP7500→4500

「きゃああああっ！？」

　光子竜の一撃を受けて大きくライフを削られる詩織。遊希は詩織に対してのダメージを減らすように念じていたが、光子竜の力が大きすぎたため、少なからず詩織の身体にダメージが行ってしまったようだった。

「詩織、大丈夫？」
（このバカ、存分に暴れろって言ったけど加減をしなさい加減を）
―――無理言うな。
「……ええ、このくらいならなんとも……」
「そう、良かった……私はこれでターンエンドよ」


遊希　LP900　手札:0
デッキ:34　モンスター:2（銀河眼の光子竜、銀河の冥府竜）　魔法・罠:0　墓地:6　除外:2
詩織　LP4500　手札:1
デッキ:26　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:12　除外:2