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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第58話:畏怖を纏う死兵

第58話:畏怖を纏う死兵 作:

遊次達Nextの4人は、ニーズヘッグが企てる≪セカンド・コラプス計画≫の全貌を知る。
それは神楽天聖が開発し、イーサンも建造に携わっていた≪パラドックス・ブリッジ≫という装置を政府から奪い、空間に大穴を穿ち、この世界とモンスターワールドを繋げるというもの。
もしそれが実現すれば、14年前の≪コラプス≫のように、この世界に制御不能のモンスターが現れ、数千・或いは数万の人々が犠牲になってしまう。
しかしこれは、この世界に降り掛かる未曽有の危機に立ち向かうための計画だった。

その"危機"とは、8ヶ月後にこの世界に衝突する直径500kmもの隕石。
そしてこの隕石は、モンスターワールドから現実世界に現れたモンスターであった。

2年前、隕石の飛来を感知したデュエリア政府は、パラドックス・ブリッジを使い、モンスターワールドそのものを破壊することで、隕石とこの世界の繋がりを断つ≪モンスターワールド侵攻計画≫を企てていた。
しかし謎の人物"X"により、ニーズヘッグCEOであるオスカー・ヴラッドウッドにこの情報がリークされ、彼らはモンスターワールドとこの世界の両方を守るために≪セカンド・コラプス計画≫を始動させた。

遊次達は、コラプスで崩壊したドミノタウンの人々を救うために、なんでも屋を始めた。
あの悲劇から14年、ドミノタウンの人々は苦しみと哀しみに苛まれながら、なんとか立ち上がって来たのだ。
しかし、ニーズヘッグが計画を実行に移せば、パラドックス・ブリッジが存在するドミノタウンが、再び崩壊することは免れない。
町から人々を避難させたとしても、溢れ出る数多のモンスターを止めることなど不可能だ。
コラプスとは桁違いの死者が出るだろう。
遊次達は、それを見過ごすことができなかった。

彼らの計画への代案は、見つかっていない。
それでも、今彼らを止めなければ、多くの犠牲が出ることは間違いない。

遊次は、悲劇を起こさせないために。
灯は、遊次が積み上げてきたものを無駄にしないために。
イーサンは、大切なものを守るために。
怜央は、ようやく動き始めた子供達の未来を壊させないために。
ニーズヘッグの計画を止める決意をした。

遊次とオスカーのオースデュエルが始まる。
遊次が勝利すれば、ニーズヘッグの計画はオースデュエルの法的制約によって中止となる。
しかし敗北すれば、二度と彼らの計画に関わることができなくなる。

世界の命運は、このデュエルに懸っている。


「デュエル!」
遊次のデュエルディスクのランプが光を灯す。

「俺は手札から『爆炎の予告状』を発動!」

■爆炎の予告状
 通常魔法
 ①:このカードは発動後、墓地に送られる。
 このカードの発動後2回目の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。
 ②:このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
 相手フィールドのカードを全て破壊する。

しかし、発動後はフィールドからカードが消えるだけで、何も起きない。

「ん…?今何かした?」
オスカーの後ろで、ルーカスが目を細める。

「このカードは、発動した時点では何も起きない。
発動から2ターン後に墓地から除外されて、
墓地から除外された時に相手フィールドを全部破壊する恐ろしいカードだぜ」

遊次は得意げに笑みを浮かべる。

「ふーん…。まあ兄さんはそんなことじゃ動じないよ」
ルーカスの言葉通り、オスカーは眉一つ動かさない。
まるで、遊次の言葉の裏に隠されたトリックも全て見透かしているように。

「俺のフィールドにモンスターがいない時、
『妖義賊-脱出のシェパード』は手札から特殊召喚できる!」


■妖義賊-脱出のシェパード
 効果モンスター
 レベル3/地/獣/攻撃力900 守備力1100
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
 以下の効果から1つを選択して発動できる。
 ●相手の墓地のモンスター2体を選び、自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
 ●相手はデッキからモンスター2体を選ぶ。自分は選んだモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。


そのモンスターは、シェパード犬の顔を持ちながら、整った二足歩行の姿勢で立っている。
首元にはシルクのスカーフが巻かれ、風になびいて優雅に舞う。
カーキ色のジャケットを羽織り、下からは白いシャツの襟が見える。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mbD8bgW
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「シェパードの効果発動!フィールドの妖義賊を1体リリースして、相手の墓地かデッキから2体のモンスターを、効果を無効・攻守を0にして特殊召喚できる。
シェパードをリリースして、お前のデッキからモンスターを2体頂くぜ!」

オスカーはデッキから2枚のカードを遊次へと投げ渡す。

「お前から奪った『アームドホラー・シルヴォラス』と
『アームドホラー・ケルヴァラク』を効果無効・攻守0で特殊召喚する!」

シルヴォラスは、武闘家のような姿をしたアンデット族モンスターだ。
その体は朽ちた衣を幾重にも巻き付け、所々に古代の呪符を象った蒼い装飾が輝いている。
頭蓋の上には鹿の枝角を模した骨飾りが生え、木の実を連ねた数珠が垂れ下がっている。
手には鎖の先に吊られた香炉を握り、そこから立ちのぼる瘴気が夜気に溶け込み、青白い炎のように揺らめいた。
その双眸は蒼い不気味な光を放っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dH5BQM1
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


ケルヴァラクは、大きな槍を携えた上級アンデット族モンスターだ。
全身は黒鉄の鎧に覆われ、髑髏の顔の眼窩から青い光が漏れ、冷ややかな輝きが周囲を照らす。
青白い炎を宿した燭台が片手からぶら下がり、揺れるたびに鎧の影が不気味に伸びる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/OXS7xax
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

遊次はオスカーから奪った2枚のカードを見つめ、その効果を確認する。

(アンデット族で、装備魔法がキーになりそうだけど…それ以上はわからねえ。
あの社長、人前であんまデュエルしないから、どんなデッキ使うか知らねえんだよな…)

オスカーが人前でデュエルをしないのは、デッキの情報を知られないためだろう。
これまでも影で暗躍し、オースデュエルで思い通りに事を運んできたことが伺える。

「あれだけ正義ヅラしておいて、泥棒みたいなデュエルだな」
ルーカスが煽るような笑みを浮かべる。

「泥棒じゃねえ、義賊だ!義賊は正義のために盗むんだ!
俺は手札から『妖義賊-駿足のジロキチ』を召喚!」

■妖義賊-駿足のジロキチ
 効果モンスター
 レベル4/地/獣/攻撃力1600 守備力800
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」モンスターを1枚手札に加える。
 ②:このカードがリリースされた場合、
 相手フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。
 その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

現れたのはほっかむりを被ったねずみ男のモンスターだ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/6MJzyaS
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「ジロキチの召喚時、デッキから妖義賊モンスターを1体手札に加えられる。
手札に加えるのは『妖義賊-戴火のプロメテ』だ」

遊次がデュエルディスクを上に掲げると、その両端からPゾーンが飛び出す。

「俺は『妖義賊-戴火のプロメテ』をPスケールにセッティング!」

■妖義賊-戴火のプロメテ
 ペンデュラムモンスター/チューナー
 レベル4/火/炎/攻撃力1000 守備力200 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
 このカードを効果を無効化して自分フィールドに特殊召喚する。
 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
 自分のデッキの上からカードを5枚めくり、
 その中から「ミスティックラン」カード1枚を選んで手札に加える。
 残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。
 【モンスター効果】
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在しない場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
 相手の除外状態のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 ③:このカードがフィールドからEXデッキに表側表示で加わった場合に発動できる。
 このカードをPゾーンに置く。


遊次の頭上に、火の玉のモンスターが浮かび上がる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「プロメテのP効果発動!
相手から奪ったカードが場にある時、デッキから5枚めくって、妖義賊カードを1枚手札に加える!」

遊次はめくった5枚を表にする。
めくられたのは妖義賊の秘技、妖義賊-夜駆けのシチベエ、妖義賊の連携陣、妖義賊の見参、妖義賊-山嵐のユライの5枚だ。
オスカーの視線はこれらのカードに注がれている。

「俺は罠カード『妖義賊の秘技』を手札に加えて、残りはデッキの一番下に戻す」
遊次はめくった5枚から、1枚を手札に加える。

「『妖義賊-雲龍のリヘイ』は、相手から奪ったカードが俺の場にある時、手札から特殊召喚できる!」


■妖義賊-雲龍のリヘイ
 ペンデュラムモンスター
 レベル6/闇/幻竜/攻撃力2300 守備力1700 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:手札を1枚捨て、自分の墓地の「予告状」魔法カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを除外する。
 この効果を使用するターン、自分は除外した「予告状」魔法カード以外の「予告状」魔法カードの効果を発動できない。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 Pゾーンのこのカードをデッキに戻し、デッキから「ミスティックラン」Pカード1枚をPゾーンに置く。
【モンスター効果】
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地に送って発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」罠カード1枚を手札に加える。


現れたのは、花柄の着物を纏った龍の頭を持つモンスターだ。
手には槍を携えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/kl0jjqA
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「俺はレベル4『妖義賊-駿足のジロキチ』と、
お前から奪った『アームドホラー・ケルヴァラク』でオーバーレイネットワークを構築!
ケルヴァラクはレベル7だけど、このモンスターをX召喚する時、相手から奪ったモンスターをレベル4として扱える!」

遊次のフィールドに黒い渦が発生し、2体のモンスターそれに呑まれてゆく。

「夜に這い寄る不敵な魔の手、その技巧で勝利を奪い取れ」
口上を唱えると、黒い銀河が逆流し、新たなモンスターが姿を現す。

「エクシーズ召喚!ランク4!『妖義賊-怪盗ルパン』!」

■妖義賊-怪盗ルパン
 エクシーズモンスター
 ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500
 レベル4モンスター×2
 元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。
 ②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。
 自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動する。そのカードを除外する。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


現れたのは、黒いハットを被りマントを纏った怪盗の姿。
手には白い手袋、目元には白い仮面を着けている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC
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「さらにプロメテのP効果発動!
フィールドに妖義賊がいる時、プロメテは効果を無効にしてPゾーンから特殊召喚できる!」
遊次の頭上から、火の玉のモンスターがゆらゆらと降り立つ。

「いくぜ!俺はお前から奪ったレベル4『アームドホラー・シルヴォラス』に、
レベル4『妖義賊-戴火のプロメテ』」をチューニング!」

プロメテが光の輪となり、シルヴォラスがその中を通ってゆく。

「亡霊の囁きが幻影の賢者を呼び覚ます。光なき檻より甦り全てを欺け」

「シンクロ召喚!現れよ!『妖義賊-幽玄のカリオストロ』!」


■妖義賊-幽玄のカリオストロ
 シンクロモンスター
 レベル8/闇/悪魔/攻撃力2700 守備力1000
 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをS素材としている場合、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
 ②:相手フィールドのモンスターが効果を発動した場合、
 自分フィールドの元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地へ送って発動できる。
 その効果は「このカードのコントロールを相手に移す」となる。


一本の光が迸り、魔力の渦が螺旋を描いたその中心に、異形の影が姿を結んだ。
それは全身を幾重にも巻かれた黒布に覆われ、まるで意志を持つかのように、布が風もなく舞い踊る姿。
眼孔の奥で鈍く輝く紅き両目が、瞬時に空気を凍らせた。
左右の腕には鋭く湾曲した双刃を携えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/k8GA3wQ
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「S素材となったプロメテの効果発動!
EXデッキに表側で加わった時、このカードをPゾーンに置く!」

プロメテは再び遊次の頭上に浮かび上がる。

「俺はこれでターンエンドだ」

--------------------------------------------------
【遊次】
LP8000 手札:2(妖義賊の秘技)

①妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700
②妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
③妖義賊-雲龍のリヘイ ATK2300

Pゾーン:妖義賊-戴火のプロメテ

【オスカー】
LP8000 手札:5
--------------------------------------------------

イーサンは遊次の盤上の2体のモンスターを見つめる。

(相手モンスターを素材にしたルパンは、相手ターンに墓地の予告状を除外できる。
つまり、いつでも爆炎の予告状で相手フィールドを破壊できるってことだ。
さらに相手モンスターを奪う『妖義賊の秘技』を手札から発動できて、カリオストロは相手から奪ったカードが場にあれば、相手フィールドのモンスター効果を"書き換える"ことができる…。最高の初動だ、遊次)

遊次は今、強力な妨害効果を3つ備えており、そのどれも強力だ。
しかしオスカーは、相手ターンに使用できる効果を持たない「雲龍のリヘイ」に、意味ありげな視線を送る。

「俺のターン…ドロー」
オスカーは低くくぐもった声で、淡々と自分のターンを開始する。

「『アームドホラー・ファイノメネウス』を召喚」


■アームドホラー・ファイノメネウス
 効果モンスター
 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1600 守備力1200
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
 デッキから「アームドホラー」モンスター1体を墓地へ送る。
 ②:手札の「アームドホラー」カードまたは「ホラーアームズ」カード1枚を墓地へ送って発動できる。
 自分はデッキから1枚ドローする。
 このカードが装備カードを装備している場合、この効果でドローできる枚数は2枚となる。


現れたモンスターは、骸骨の顔に冷たい輝きを宿した眼を光らせる、アンデットの詩人だ。
全身を覆う漆黒のローブと堅牢な甲冑は、ところどころに深い紫の布地が走り、威圧感を強めている。
片手には分厚い魔導書を携え、もう一方の掌からは青白い旋律のような光が溢れ出す。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/7qvP48d
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「ファイノメネウスの効果発動。
召喚時、デッキから『アームドホラー』モンスターを1体墓地へ送る」

遊次はオスカーの一挙手一投足に目を凝らしている。
灯は盤面の状況を見つめながら、どう動くべきかを思案する。

(遊次のカリオストロは、相手から奪ったカードを墓地に送って、相手モンスターの効果を書き換えられる。
でも今は相手から奪ったカードがない。
だから手札で発動できる罠カード『妖義賊の秘技』で早く相手モンスターを奪って、いつでもカリオストロの効果を使えるようにすべき…だよね)

カリオストロは相手の発動した効果を無効にし、さらにコントロールまで奪う強力な力を持つ。
自分の場を崩す危険な効果を書き換えることで、防衛策にもなり得る。
しかし今は発動条件を満たしていない。

普通ならばその条件を常に満たしておくことで、どんな状況にも対処できる状況を作ることを考える。
灯も同じように考えた。
オスカーが召喚したファイノメネウスを奪うことで、カリオストロの効果条件を満たすべきであると。

「俺は『アームドホラー・メラブエル』を墓地へ送る。
墓地に送られた『アームドホラー・メラブエル』の効果発動。
効果で墓地へ送られた場合、『ホラーアームズ』装備魔法を1枚、デッキから手札に加える」

しかしまだ遊次は手札の「妖義賊の秘技」を一向に発動しようとしない。

「…手札に加えるのは『ホラーアームズ・マレフィックアイ』」

(手札の罠カードでモンスターを奪うと思っていたが、違うらしい。
俺の思惑から一手ずらすことで、体勢を崩そうというわけか)

その意図は、オスカーにも一瞬で理解できた。
一般的な感覚を持つほとんどの者は、この瞬間を見ても、何も感じることはないだろう。
ただモンスターが召喚され、効果処理が行われただけだからだ。

しかし、ここにいるのは皆、一流のデュエリストだ。
この何の変哲もないプレイの裏にあるお互いの思惑を感じ取ることができた。

(兄さんには、神楽遊次の手札の罠カード、ルパン、カリオストロ…3手の妨害が見えている。
だから兄さんにとっての勝算は、奴の妨害効果を全部踏んだ上で、盤面を崩す一手を打つこと。
つまり"4手目"こそが、兄さんにとっての"切り札"…)

ルーカスはオスカーが召喚したモンスターを見つめながら、考えを巡らせる。
その脳内には、お互いチェスの駒を3つ所持した状態で、オスカーが4つ目の駒に手を伸ばす絵を思い浮かべていた。

そして同様に怜央も、遊次の意図を感じ取っていた。
怜央はオスカーを見つめながら、彼がどう動くかに目を凝らしている。

「普通なら、カリオストロの条件をとっとと満たすために、今あのロン毛野郎が召喚したモンスターを奪うってのが定石に見える。相手の効果を無効にできる効果は、常にスタンバイさせといた方が安心だからな」

怜央は灯達だけに聞こえる小さな声で、その考えを口にする。
隣のイーサンも怜央の言葉に首を小さく縦に振る。

「あぁ。だからオスカーが1手目で召喚してくるのは、"奪われてもいいモンスター"である可能性が高い。
『妖義賊の秘技』って地雷を踏むためのな」

(だから遊次はそれを読んで、あえて罠カードを使わなかったんだ。
もしここでオスカーさんの想定が崩れれば、遊次にとってチャンスが生まれるかも…)

灯にも遊次の意図が見えてきたようだ。
遊次はオスカーの次の一手を待ちながら、脳内で作戦を組み立てる。

(こっからは、お前が想定してた"2手目"に俺の"1手目"が飛んで、お前の"3手目"に俺の"2手目"が飛ぶ。
そうなれば、お前が隠し持ってた"切り札"を出さざるを得ねえ。
その時、俺はまだ駒を余らせてるってわけだ)

遊次の見えている3つの妨害に対して、それを踏む3手をオスカーは用意しているはずだ。
その後の4手目こそ、オスカーの真の狙いである可能性が高い。
しかし遊次はオスカーの想定を1つズラすことで、
真の狙いである"4手目"に、自分の妨害を当てられる状況を作ろうとしているのだ。
カリオストロの効果が使用可能にならないというリスクは負うものの、その分のリターンは存在する。

(相手が投げる餌に食いついてるだけじゃ、思惑通りに動くことになっちまう。
だからこそ≪防衛ライン≫を下げるんだ…!)

遊次は心の中でニヤリと笑う。
オスカーは一瞬の思考の後、再び淡々とデュエルを続行する。

「永続魔法『アームドホラー・カースエンブレイス』を発動。
このカードが存在する限り、俺の装備魔法は相手の効果で破壊されない」


■アームドホラー・カースエンブレイス
 永続魔法
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分のフィールドの「アームドホラー」魔法・罠カードは相手の効果で破壊されない。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 手札から「アームドホラー」モンスター1体を特殊召喚する。
 ③:自分フィールドの「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。
 手札・デッキから「ホラーアームズ」装備魔法カード1枚を選び、そのモンスターに装備する。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


オスカーの前に、骨で構成された巨大な両腕が現れる。
爪が長く、細長い。まるで魔女の腕を思わせる。

「『アームドホラー・カースエンブレイス』の効果発動。
1ターンに1度、手札のアームドホラーを特殊召喚できる。
現れよ『アームドホラー・ペルフェゴル』」


■アームドホラー・ペルフェゴル
 効果モンスター
 レベル7/闇/アンデット/攻撃力2500 守備力1900
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:墓地の「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ②:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 (このカードが装備カードを装備している場合、2体まで相手モンスターを対象にできる。)
 そのモンスターを破壊する。


現れたのは、巨大な斧を携えたアンデットの戦士だ。
全身を覆うのは緑青に蝕まれたような古代の甲冑で、そこから骨のような身体が覗いている。
鎧の継ぎ目からは青白い瘴気が漏れ出し、まるで肉体そのものが呪いに浸食されているかのようだ。
頭部には角を持つ兜が固定され、その奥で光る眼窩は蒼炎のように揺らめいている。
握られた大斧の刃には古代文字のような紋様が刻まれ、同じ瘴気が脈動しているのが見て取れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/rtDjWFa
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遊次は現れたモンスターの迫力に少し驚いた後、その効果を見てニヤリとする。

「おっと…こいつはさすがに通すわけにはいかねえな。
手札から罠カード『妖義賊の秘技』発動!このカードは妖義賊が場にいる時、手札から発動できる!」


■妖義賊の秘技
 通常罠
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターのコントロールを得る。
 自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合、
 この効果は手札からも発動できる。
 ②:自分・相手ターンのエンドフェイズ時、このカードが墓地に存在し、
 自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
 このカードを自分フィールドにセットする。
 この効果でセットしたこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。


「このカードは相手モンスターを1体奪う効果だ!
『アームドホラー・ペルフェゴル』は頂くぜ」

遊次のフィールドのカリオストロが自身に巻かれた黒布をペルフェゴルへと勢いよく伸ばし、捕らえる。
そして遊次の場へと一瞬で移動し、ペルフェゴルはオスカーへと向かい合う。

「やった、これでカリオストロの効果も使えるようになったね!」
灯は小さく両手の拳を握る。

「ペルフェゴルはモンスター破壊効果を持ってる上に、
装備魔法を装備してれば、破壊できる対象が2体になっちまう厄介な奴だ。
しかもさっきお前が手札に加えた装備魔法は、俺の表側カードを1枚無効にする効果。
そんだけつえーカードがありゃ、"普通なら"俺の布陣はすぐ破られてたかもな?」

遊次は得意げに笑みを見せる。
もしオスカーの1体目のモンスターに遊次が「妖義賊の秘技」を使っていれば、
次に現れるペルフェゴルには、ルパンかカリオストロの効果を使うしかなかった。
しかし遊次は手札の「妖義賊の秘技」を温存したことで、
この局面でもまだルパンとカリオストロの効果を保持できている。
それが相手にプレッシャーを与えることは言うまでもない。

だがオスカーは相変わらず動じることなく、表情を崩さない。
自分が優勢だという自覚を持っていながらも、遊次の中には言葉にできない不安が広がっていく。

「永続魔法『アームドホラー・カースエンブレイス』の効果発動。
お互いのターンに1度、アームドホラーに『ホラーアームズ』装備魔法をデッキから装備させる。
『ホラーアームズ・スティジアンウィング』を
『アームドホラー・ファイノメネウス』に装備」


■ホラーアームズ・スティジアンウィング
 装備魔法
 アンデット族モンスターにのみ装備可能。
 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:装備モンスターは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にならない。
 ②:相手は装備モンスター以外のモンスターに攻撃できない。
 ③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
 このカードを手札に加える。


ファイノメネウスに、黒鉄の翼が装備される。
骨格は機械のように節で分かれ、表面には焼けた鉄と霜のような白錆が入り混じる。
薄く伸びた金属膜には細かい裂け目が走り、内側を通る青白い光が脈打つたび、ひびの縁が微かに開閉する。
動くたびに節の隙間から蒸気が漏れ、鎖とヒンジが金属音を立てる。
まるで生命の代わりに機構そのものが呼吸しているような、冷たく不気味な翼だった。

「スティジアンウィングを装備したモンスターは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にならない」

(…これであのモンスターには、爆炎の予告状が効かねえってわけか。
でも、あのモンスターを守って何か意味あんのか?
手札を1枚墓地に送ってカードをドローする効果しかねえぞ…)

遊次はファイノメネウスの効果を見ながら首をかしげる。
遊次の中で、また言葉にできない不安が少しずつ大きくなる。

「墓地の『アームドホラー・メラブエル』の効果発動。
装備カードを装備したモンスターが自分フィールドに存在する時、このカードを墓地から特殊召喚できる」


■アームドホラー・メラブエル
 効果モンスター
 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1500 守備力1500
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
 デッキから「ホラーアームズ」カード1枚を手札に加える。
 ②:墓地の「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。
 (このカードが装備カードを装備している場合、
 「アームドホラー」魔法・罠カードまたは「ホラーアームズ」カード1枚も対象にできる。)
 そのカードを手札に加える。
 ③:自分フィールドに装備カードを装備したアンデット族モンスターが存在する場合に発動できる。
 このカードを墓地から特殊召喚する。


現れたモンスターは、古びた法衣をまとった髑髏の魔導士だ。
頭部は仮面のように半分が金属で覆われ、空洞の眼窩に青白い光が燃えている。
右手は符文を描いた光輪を生み出し、左手で小さな星屑のような粒子を操る。
胸元には骨のペンダントが吊り下がり、布地のあちこちには天体を思わせる紋様が縫い込まれている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RFhvQr5
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「装備魔法『ホラーアームズ・マレフィックアイ』を発動。
『アームドホラー・メラブエル』に装備する」


■ホラーアームズ・マレフィックアイ
 装備魔法
 アンデット族モンスターにのみ装備可能。
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手の表側カード1枚を対象として発動できる。その効果を無効にする。
 この効果の対象となったカードを対象とする効果は、このカードがフィールドに存在する限り無効となる。
 ②:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
 このカードを手札に加える。


「あの装備魔法は…」
灯は先ほどの遊次の言葉から、その装備魔法の恐ろしさを知っていた。
それは、表側カードの効果を無効にする効果。
カリオストロがこの効果の対象になれば、効果書き換えという強力な後ろ盾が消えてしまう。

(あの装備魔法を止めるには、ルパンで爆炎の予告状を除外して、フィールドを全部破壊するしかねえ。
でもホラーアームズって装備魔法には、墓地へ送られても1ターンに1度手札に戻ってくる共通効果がある…。
それじゃ破壊は意味ねえ…)

遊次は迷いを見せる。

(さあ、どうする?神楽遊次。
無意味とわかっていながら破壊効果を使うか?それとも、カリオストロを見捨てるか?
"どちらか"しか選べないんだよ)

ルーカスはこの状況を、ニーズヘッグとNextの問答と重ねた。
一部の犠牲を払って世界を救うか、無謀とわかっていても別の方法を探すのか。

しかし、遊次は前を向き、凛々しい表情を見せた。
まるで、ルーカスの内心への答えを出すかのように。

「進むべき道ってのは、見えねえとこにあるもんだ。
俺はこのデュエルでそれを証明してみせる!」

遊次は手札の1枚のカードを表にする。

「手札の『妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル』の効果発動!
相手から奪ったカードがフィールドにある時、このカードを手札から捨てて、
自分の『ミスティックラン』と相手モンスターを入れ替える!」


■妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル
 効果モンスター
 レベル3/風/魔法使い/攻撃力700 守備力1200
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、
 このカードを手札から捨て、自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体と、
 相手モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスター2体のコントロールを入れ替える。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 ②:相手モンスターが自分の「ミスティックラン」モンスターまたは
 元々の持ち主が相手となるモンスターと戦闘を行う攻撃宣言時、
 墓地のこのカードを除外し、攻撃対象となったモンスター以外の
 自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
 攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。


フィールドには、全身クリーム色にオレンジ色の水玉模様がついたパジャマのような服を着た少年のモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ldmy2aw
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「なに…!?」
思わぬ一手。第3の選択肢に、ルーカスは目を丸くする。

「俺の場の『妖義賊-雲龍のリヘイ』と、お前の『アームドホラー・メラブエル』を交換だ!」

オイレンシュピーゲルは煌びやかな光をばらまき自由に宙を舞いながら、指先でリヘイとメラブエルに触れる。
手を叩くと、そのモンスターの位置が一瞬にして入れ替わる。

(最初に1歩後ろに下がって相手の動きを崩した後、さらに予想外の方向から飛んでくる飛び道具…。
ヴェルテクス・デュエリアを経て、やはり遊次の思考力は格段に上がっている…!)

イーサンは遊次の背中に信頼の眼差しを送る。

そしてチェーン1で発動した装備魔法が、遊次のフィールドのメラブエルに装備される。
メラブエルの片目に単眼の装飾具が深く食い込む。
黒鉄で鋳造された環は、まるで呪縛の鎖の一部のように眼窩を覆い、その中央に埋め込まれた宝玉が不気味な赤黒い光を脈打たせている。
光は生き物のように揺らぎ、時折、血管を模したような紋様が器具全体に浮かび上がる。

(『雲龍のリヘイ』はこれまで一切効果を発動していない。
相手ターンに発動できる効果もない可能性が高い。
その理由は、オイレンシュピーゲルで交換するためだったんだ)

あくまで後ろでデュエルを見ているルーカスにリヘイの効果は見えていない。
それでもその推測は当たっている。

(でも兄さんは、相手ターンで発動する効果がないモンスターが棒立ちしてる違和感に絶対気付いてる。
それに…これで完全にアイツの手は割れたしね)

ルーカスは口角を上げる。
そしてオスカーには変わらず一切の動揺が見えない。


「『アームドホラー・ファイノメネウス』の効果発動。
手札のアームドホラー、またはホラーアームズカードを1枚墓地へ送り、カードをドローする。
装備カードを装備している場合、ドローする枚数は2枚となる。
手札の『アームドホラー・テューロバス』を墓地へ送り、2枚ドローする」

「墓地へ送られたテューロバスの効果発動。
このカードが効果で墓地へ送られた場合、デッキから『ホラーアームズ』カードを1枚墓地へ送る。
『ホラーアームズ・バンシーヴェイル』を墓地へ」

遊次は手札から墓地へ送られたテューロバスの効果を確認し、驚きを露わにする。
同時に、オスカーは手札から1枚のカードをピックアップする。

「全ての手筈は整った。魔法カード発動。
『アームドホラー・ネザーリバーブ』」


■アームドホラー・ネザーリバーブ
 通常魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の墓地の「アームドホラー」モンスター1体と「ホラーアームズ」装備魔法カード1枚を対象として発動できる。
 対象のモンスターを特殊召喚し、そのモンスターに対象の装備魔法カードを装備する。
 ②:自分の墓地の「アームドホラー」カードまたは「ホラーアームズ」カード3枚を対象として発動できる。
 そのカードをデッキに戻し、墓地のこのカードを手札に加える。


「このカードは墓地の『アームドホラー』モンスターと『ホラーアームズ』装備魔法を1枚ずつ対象として、
そのモンスターを特殊召喚し、対象の装備魔法を墓地から装備させるカード。
墓地の『アームドホラー・テューロバス』を復活させ、
墓地の『ホラーアームズ・バンシーヴェイル』を装備させる」


■アームドホラー・テューロバス
 効果モンスター
 レベル4/闇/アンデット/攻撃力1700 守備力1000
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
 デッキから「アームドホラー」モンスター1体を手札に加える。
 ②:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
 デッキから「ホラーアームズ」カード1枚を墓地へ送る。
 ③:自分・相手メインフェイズに発動できる。
 「アームドホラー」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分のフィールドから選んで墓地へ送り、
 その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。


現れたのは、朽ちた軍服を纏う骸骨の海賊。
黒く焦げた外套の下からは、海藻のようにほつれた布が層を成して垂れ下がっている。
右腕には古びた銃を握り、銃身の表面には青く光る宝石が埋め込まれている。
胸骨の隙間や眼窩からは冷たい蒼光が漏れ、腰には巨大な錨を鎖で吊るしている。
全身を包む衣の縁はぼろぼろに裂け、そこから霊気が滲み出している。

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さらにバンシーヴェイルが装備されたことで、アンデットの海賊の背後に青白い帳が立ちのぼる。
それは霧のように形を変えながら、やがて黒き魔女の輪郭を描き出した。
裂けた口元からは声にならぬ叫びが漏れ、薄闇そのものが震える。

■ホラーアームズ・バンシーヴェイル
 装備魔法
 アンデット族モンスターにのみ装備可能。
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:装備モンスターは相手の効果を受けない。
 ②:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
 このカードを手札に加える。


「バンシーヴェイルを装備したモンスターは相手の効果を受けない。
さらに特殊召喚されたテューロバスの効果発動。
デッキから『アームドホラー』モンスターを1体手札に加える。
『アームドホラー・エタナフォラス』を手札に」

効果を受けない装備魔法を装備している以上、この効果をカリオストロで上書きすることはできない。

「我が2体のモンスターは耐性を得ている。
貴様はもう、俺の歩みを止められない」

黒いマントを翻すオスカー。
黒鉄の翼を携えたアンデットの詩人と、死の魔女を背にするアンデットの海賊。
それはまるで"畏怖"そのものを纏っているようだった。
風など吹くはずのない社長室に、死の風が吹いているような感覚を覚えた。

遊次は1歩後ろに下がりながら、その視線は海賊のアンデットに向けられていた。

「『アームドホラー・テューロバス』…融合召喚を行う効果を持ってるモンスターか。
しかも装備魔法を装備して効果を受けないせいで、俺は融合召喚を止められねえ」

テューロバスはフィールドから融合素材を墓地へ送ることで融合召喚する効果を持つ。
テューロバス自身は効果を受けないため、爆炎の予告状もカリオストロも効かない。
もう1体のファイノメネウスも破壊耐性を持っているため、爆炎の予告状で破壊されない状態だ。
これでは確実に融合召喚が通ってしまう。

「ずっとそいつを隠し持ってたのは、融合召喚こそがお前の"切り札"だからだろ。
ホントは俺の妨害効果を全部潰した後、融合っていう切り札を切りたかったはずだ。
でも俺が≪防衛ライン≫を下げたおかげで、まだルパンもカリオストロも効果を残してる」

「絶対に止めてやるよ。お前の企みを、全部…!
それが俺の"覚悟"だ!」

それは、このターンにオスカーを食い止めるという意思表示であり、
セカンド・コラプスを止めるという確固たる意志の表れだった。

「やれるものならやってみなよ」
しかし、その言葉を聞いたルーカスは、オスカーの後ろで腕を組み、遊次を嘲笑う。

広大な社長室に暫しの静寂が訪れる。
そしてオスカーが小さく息を吸うその瞬間、激戦が始まることを誰もが予感した。

「『アームドホラー・テューロバス』の効果発動。
1ターンに1度、フィールドのモンスターで融合召喚を行う。
俺は装備カードを装備したアンデット族モンスター2体で融合!」

ファイノメネウスとテューロバスは紫色の渦へと呑まれてゆく。

「奈落の誘いに抗いし不屈の英雄。その朽ちぬ魂は絶望をも支配する」

「融合召喚!
現れ出でよ、『アームドホラー・ディオメデウス』」


■アームドホラー・ディオメデウス
 融合モンスター
 レベル6/闇/アンデット/攻撃力2600 守備力2000
 装備カードを装備しているアンデット族モンスター2体
 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが融合召喚した場合に発動できる。
 自分のデッキ・墓地・手札から装備魔法カードを2枚まで選び、このカードに装備する。
 この効果に対して相手はカードの効果を発動できない。
 ②:相手モンスターが効果を発動した時、このカードに装備されている装備カード1枚を墓地へ送って発動できる。
 その発動を無効にし除外する。
 ③:自分の墓地のアンデット族モンスター2体を除外して発動できる。
 このカードを墓地から特殊召喚し、墓地または除外状態の装備カード1枚をこのカードに装備する。


現れたモンスターは、黒鉄の鎧をまとった亡霊の騎士。
鈍く金を帯びた装甲は幾重にも重なり、胸部と腰には骸骨を模した装飾が施されている。
兜の奥は暗く沈み、表情は読めない。だが、その沈黙そのものが威圧となって空気を支配していた。
手にした剣は長く、刃に埋め込まれた青い紋が静かに脈動している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/SSDQ8Ua
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「融合素材に装備カードを要求するモンスター…!?」

異質な融合召喚条件。
そして今までのモンスターとは明らかに"格"の違うその姿に、遊次は思わず身震いする。

「融合召喚によって墓地へ送られた2枚の装備魔法の効果発動。
ホラーアームズは1ターンに1度、フィールドから墓地へ送られた場合、手札に戻る」

「さらにアームドホラー・ディオメデウスの効果発動。
融合召喚時、デッキ・墓地・手札から装備魔法を2枚、自身に装備する。
この効果に対し、貴様は効果を発動できない」

「ディオメデウスの効果により、デッキから『ホラーアームズ・ディアボリックキャノン』と
『ホラーアームズ・インファーナルクロー』を自身に装備する」

ディオメデウスの両肩に、白骨を捩じり合わせた双砲──『ディアボリック・キャノン』が装備される。
砲身は脊柱のように節を連ね、表層の亀裂から青黒い瘴気がゆるやかに漏れ出す。
骨の継ぎ目には古びた金属が絡みつき、僅かな揺れに応じて鈍く軋む。
砲口の奥では淡い光が脈を打ち、骨の内部を伝って微かな熱が滲む。

■ホラーアームズ・ディアボリックキャノン
 装備魔法
 アンデット族モンスターにのみ装備可能。
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:装備モンスターの攻撃力は1000アップし、装備モンスターは1度のバトルフェイズで2回攻撃できる。
 ②:装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。
 デッキ・墓地から「アームドホラー」モンスター1体を特殊召喚する。
 ③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
 このカードを手札に加える。


続いて右腕に、黒鉄を捩じり鍛え上げた巨大な爪──『インファーナル・クロー』が装着される。
金属の表層は焼け焦げた痕のように赤黒く、節の継ぎ目には溶岩の名残を思わせる亀裂が走る。
爪の根元からは微細な蒸気が漏れ、内部に閉じ込められた熱が呼吸するように脈動していた。
刃先は骨のように白く変色し、長く湾曲して掌の先を覆う。

■ホラーアームズ・インファーナルクロー
 装備魔法
 アンデット族モンスターにのみ装備可能。
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:装備モンスターが相手モンスターを攻撃する場合、
 ダメージステップの間だけその相手モンスターの効果は無効化される。
 ②:装備モンスターが相手モンスターを破壊した場合に発動できる。
 そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
 ③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
 このカードを手札に加える。


黒き鎧の騎士には不相応なキャノンと爪が装備されている。
そのアンマッチな姿は、言葉に表せない畏怖を纏っていた。

「チェーン1・チェーン2で発動した墓地の装備魔法の効果により、これらのカードは手札へと戻る」

オスカーはバンシーヴェイルとスティジアンウィングの2枚を手札に戻す。

「ディアボリックキャノンを装備したモンスターは攻撃力が1000アップし、2回攻撃が可能となる」

アームドホラー・ディオメデウスATK3600

「さらにディオメデウスは自身の装備カードを1枚墓地へ送ることで、発動した相手のモンスター効果を無効にし除外できる。
この効果は自身に装備カードが装備されている限り、何度でも使用可能だ」

「なんだって…!?そ、それじゃあ…!」
導き出される答えは、遊次達を一気に絶望へ叩き落すものだった。

「ディオメデウスの装備カードは2枚。
貴様のルパンとカリオストロは、すでに効力を失っている」

装備カードを墓地に送ることでルパンの効果もカリオストロの効果も無効化され、除外される。
つまり、遊次はもうオスカーに対して一切の抵抗を許されていない。
ディオメデウスの融合召喚に最低4枚のカードが必要。
それもフィールド上だけで揃えなければならない。
しかしこの融合モンスターはそれに見合う強さを持っていた。

圧倒的に優勢だった遊次は、たった1体の融合モンスターによって、戦況を全て覆されたことになる。

「相手への妨害行動を手前で行わず、極限まで引くことで相手に手の内を吐き出させる…。
それが≪防衛ラインを下げる≫という意味なのだろう」

「しかし…俺が貴様の戦線を陥落させる条件は"融合召喚の成立"。
貴様が死守すべきラインは、貴様の想像よりも遥か前にあったのだ」

オスカーは、遊次の見えている3つの妨害を全て踏み、その上で"4手目"で切り札を切ってくる…遊次はそう踏んでいた。
だからこそ相手の想定を裏切り、オスカーが使う"4手目"に対して、妨害効果を残す作戦を取った。
しかし、融合召喚が成立した時点でルパンとカリオストロの両者を潰せることなど、完全に想定外だった。


「で、でも…まだ遊次のフィールドには4体もモンスターがいる。何も負けるわけじゃ…」

灯は希望的な言葉を口にするも、その瞳は不安げなままだ。

(だが、ここまでやってオスカーの手札はまだ6枚もある。
対する遊次は罠カードとオイレンシュピーゲルの2枚も切らされ、リソースはない。
まずいぞ、これは…)

イーサンは頭の中でだけ灯の言葉を否定する。
誰しもオスカーが圧倒的に優勢であることを痛いほど理解していた。

「『アームドホラー・エタナフォラス』は、
自分の場にレベル5以上のアームドホラーが存在する場合、手札から特殊召喚できる」


■アームドホラー・エタナフォラス
 効果モンスター
 レベル6/闇/アンデット/攻撃力2200 守備力1700
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドにレベル5以上の「アームドホラー」モンスターが存在する場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
 デッキから「アームドホラー」罠カード1枚を手札に加える。
 ③:相手が魔法カードの効果を発動した場合に発動できる。
 その効果を無効にして破壊する。


現れたのは、黒き外套を纏う骸の王。
嘴のような仮面の奥で青白い光が瞬き、背後には淡い光輪が浮かぶ。
その身は、骨と朽ちた羽根で構成された巨鷲のアンデットにまたがって飛行している。
鷲の胸骨の奥で蒼光が脈打ち、鎖に吊られた宝石が微かに揺れている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/gC6iDvp
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「エタナフォラスの特殊召喚時、効果発動。
デッキから『アームドホラー』罠カード1枚を手札に加える。
『アームドホラー・テネブラスチェーン』を手札へ」

本来はカリオストロで効果の書き換えが可能だが、その効果はディオメデウスによって無効化されてしまうため、ただ指を咥えて見ているしかない。
遊次は奥歯を噛み締め悔しさを露わにする。

「手札の『ホラーアームズ・スティジアンウィング』をエタナフォラスに装備」
エタナフォラスの背に、機械の骨格のような黒鉄の翼が装備される。

--------------------------------------------------
【遊次】
LP8000 手札:0

①妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700
②妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
③アームドホラー・メラブエル ATK1500
④アームドホラー・ペルフェゴル ATK2500

Pゾーン:妖義賊-戴火のプロメテ

【オスカー】
LP8000 手札:5(バンシーヴェイル)

①アームドホラー・ディオメデウス ATK3600
 装備:ディアボリックキャノン、インファーナルクロー
②アームドホラー・エタナフォラス ATK2200
 装備:スティジアンウィング
③妖義賊-雲龍のリヘイ ATK2300

永続魔法:アームドホラー・カースエンブレイス
--------------------------------------------------

「バトル。『妖義賊-雲龍のリヘイ』で『妖義賊-怪盗ルパン』を攻撃」

オスカーの場のリヘイはオイレンシュピーゲルによって遊次の場から移ったものだ。
槍を構え、仲間であるルパンへと突撃してゆく。

「墓地の『妖義賊-悪戯好きのオイレンシュピーゲル』を除外して効果発動!
妖義賊または相手から奪ったモンスターへの攻撃宣言時、他の妖義賊にその攻撃を移し替える!
カリオストロに攻撃対象を変更!」

リヘイの前に光を纏ったオイレンシュピーゲルが現れ、掌を前に出す。
そして右手の人差し指をくるくると回してカリオストロの方を指差すと、リヘイはその方向へと迫る。
しかし、攻撃力はカリオストロの方が上だ。
カリオストロは両手に持つ双刀で一瞬にしてリヘイを斬り裂く。

「…」
オスカー LP8000 → 7600

オスカーは動じることなく、風のようにダメージを受ける。
しかしここで灯の頭にある疑問が浮かぶ。

「…ん?でもオスカーさんも遊次の墓地にオイレンシュピーゲルがあることは知ってたよね?
だったら、こうなることもわかってたはず…。
ディオメデウスは装備魔法で2回攻撃できるんだよね。
だったら先に攻撃力の高いカリオストロとペルフェゴルを攻撃しておくべきじゃ…」

もし灯の言う攻撃順が通れば、オイレンシュピーゲルで攻撃力の高いモンスターに攻撃を移されることはない。

「もしその道を選んでいても、どちらかへの攻撃時に、遊次はルパンへ攻撃を移すだろう。
ディオメデウス以外に攻撃力2500を超えるモンスターはいないから、オスカーはペルフェゴルを打ち損じることになるな」

「そっか…」
イーサンはすぐに頭の中でルートを導き出し、灯へ言葉を返す。

「ってこたぁ、案外これが最適解かもしれねェ。
あのロン毛野郎がそうしたってことはな」

怜央はオスカーのデュエルタクティクスをすでに認めている。
彼ならそんな初歩的なミスを犯すはずがないと。


「ディオメデウスで『妖義賊-幽玄のカリオストロ』へ攻撃」

この瞬間、ルパンで爆炎の予告状を除外し、ディオメデウスの効果を使わせることも可能だ。
そうなればディオメデウスは装備魔法を1枚墓地へ送り、ルパンの効果を無効にする。
さらにカリオストロでその効果を書き換えようとすれば、ディオメデウスはさらに装備魔法を1枚墓地へ送って、効果を無効にできる。
これで強力な2枚の装備魔法を剥がすことができる。
しかしそうなれば、ルパンとカリオストロは除外されてしまい、遊次へのダイレクトアタックは免れない。
ここは戦闘でどうにか耐え忍ぶしか選択肢はなかった。


ディオメデウスに装備された漆黒の爪が魔力の奔流を纏い、空気を裂きながら一直線に振り下ろされる。
その一撃は抵抗の間もなくカリオストロを貫き、黒い霧となって霧散させた。

「ぐっ…!」
遊次 LP8000 → 7100

「この瞬間、装備魔法『ホラーアームズ・インファーナルクロー』の効果発動。
1ターンに1度、装備モンスターが相手モンスターを破壊した場合、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」

ディオメデウスは左腕を振りかぶる。
漆黒の爪の隙間から奔るように黒い魔力が噴き出し、瞬く間に衝撃波へと変じた。
空間を裂くその一閃は、音をも置き去りにして遊次を襲う。

「ぐあああああっ!!!」
遊次 LP7100 → 4400

凄まじい圧が全身を叩きつけられ、膝が崩れかける。
だが歯を食いしばり、踏みとどまった。
そしてなおも前を見据え、その瞳に闘志を灯し続ける。

「『アームドホラー・エタナフォラス』で『妖義賊-怪盗ルパン』へ攻撃」

エタナフォラスは大鷲のアンデットに乗り、空を滑空しながら、右手を掲げた。
掌に浮かぶ魔法陣が淡い蒼光を放ち、周囲の空気を震わせる。
瞬く間に凝縮された魔力が弾丸となり、鋭い音を残して解き放たれた。
奔る魔導弾は一直線にルパンへと突き進み、衝突の瞬間、眩い光とともに爆ぜた。

「ッ…!」
遊次 LP4400 → 4300

「ディアボリックキャノンを装備したディオメデウスは2回の攻撃が可能。
貴様の『アームドホラー・ペルフェゴル』に攻撃」

ディオメデウスの両肩に据えられた砲口が唸りを上げ、濃密な闇が収束する。
次の瞬間、空間が歪むほどの魔力圧が溢れ、二条の闇が同時に放たれた。
奔る砲撃は一直線にペルフェゴルを貫き、爆ぜる黒光の中でその躯を跡形もなく破壊した。

「ぐああっ…!」
遊次 LP4300 → 3200

「この瞬間、装備魔法『ホラーアームズ・ディアボリックキャノン』の効果発動。
装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、デッキ・墓地からアームドホラーを呼び出す。
墓地より現れよ、『アームドホラー・ケルヴァラク』」


■アームドホラー・ケルヴァラク
 効果モンスター
 レベル7/闇/アンデット/攻撃力2400 守備力2000
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:手札の「アームドホラー」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
 相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終了時まで半分になる。
 ②:相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを除外する。
 このカードが装備カードを装備している場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
 ③:お互いのエンドフェイズに発動できる。
 自分のデッキから「アームドホラー」魔法カード1枚を手札に加える。


現れたのは大きな槍を携えた上級アンデット族モンスターだ。
全身は黒鉄の鎧に覆われ、髑髏の顔の眼窩から青い光が漏れ、冷ややかな輝きが周囲を照らす。
青白い炎を宿した燭台が片手からぶら下がり、揺れるたびに鎧の影が不気味に伸びる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/OXS7xax
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ケルヴァラクは初手で遊次がオスカーのデッキから奪い、ルパンのX素材としたカードだが、ルパンが破壊されたことよって墓地から特殊召喚された。

「『アームドホラー・ケルヴァラク』で貴様のフィールドの『アームドホラー・メラブエル』へ攻撃」

ケルヴァラクの眼窩が蒼く閃いた。
次の瞬間、重装の身体が地を踏み鳴らし、振りかぶられた長槍が唸りを上げ、漆黒の軌跡を描いて突き出された。
鋭い穂先は空気を裂き、メラブエルの胸を貫く。

「ぐああっ!!」
遊次 LP3200 → 2300

「この瞬間、メラブエルに装備されていた『ホラーアームズ・マレフィックアイ』の効果発動。
フィールドから墓地へ送られた場合、1ターンに1度このカードを手札に加えることができる」

怒涛の連撃が止み、辺りには数々の攻撃の後の闇の瘴気だけが漂っている。

「俺はバトルフェイズを終了する」

遊次の場にはモンスターはいないものの、ライフは取り留めた。
灯達は安堵のため息を吐く。

(アイツは迷うことなく最初にリヘイでルパンを攻撃してきた。
もしその攻撃を通したら、俺の場の妖義賊はカリオストロだけ。墓地のオイレンシュピーゲルは妖義賊にしか攻撃を移せないから、次にディオメデウスでカリオストロを破壊されちまったら、オイレンシュピーゲルを使いそびれて、後はやられたい放題になっちまう。だから俺はリヘイの攻撃をカリオストロに移すしかなかった。それをオスカーもわかってやがったんだ)

遊次は安堵することなく、オスカーに畏怖のはらんだ視線を送る。

(もし最初にディオメデウスでカリオストロに攻撃してきてたら、俺は墓地のオイレンシュピーゲルで、その攻撃対象をルパンに変更してた。次の攻撃でカリオストロはやられるけど、攻撃力2500の『アームドホラー・ペルフェゴル』は俺の場に残ってたことになる。そうなりゃ、もうオスカーにペルフェゴルを倒せるモンスターはいなくて、俺のフィールドにモンスターが残ってた)

遊次は一瞬で数多のルートを頭に思い描く。

(アイツのデッキに攻撃力2500以上のモンスターがいれば、装備魔法の効果で特殊召喚してペルフェゴルを破壊できたけど…多分それはねえ。もし攻撃力2500以上がいるなら、リヘイを犠牲にせず普通にカリオストロから攻撃してれば、俺にダイレクトアタックできて、今よりライフを削れてるからな)

「…お前、強ぇな」

一瞬にして最適解を叩きだす判断力と、遊次の狙いを瞬時に理解し、その更に上を行くタクティクス。
これだけは、どうしても伝えなければならない。
遊次はそう感じた。

「あぁ。俺は、強い」

オスカーは月夜のような眼光で、堂々と言い放つ。
それは、数多の実戦と勝利に裏付けされた、圧倒的なる自信の現れだった。
遊次は思わず、ふっと笑みを零した。

(でも…ようやくアイツのデッキの弱点も見えてきた。
装備魔法と永続魔法で、すでに魔法&罠ゾーンはギチギチだ。
つまり、使える装備魔法にも限度はある…!)

しかし遊次の考えを嘲笑うかのように、オスカーは新たな手を打つ。

「メインフェイズ2。手札の『アームドホラー・アルベレト』の効果発動。
手札からこのカードを捨てることで、俺のフィールドの装備魔法を3枚まで、相手フィールドに置く」

「な…」

■アームドホラー・アルベレト
 効果モンスター
 レベル1/闇/アンデット/攻撃力500 守備力500
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードを手札から捨てて、自分の魔法&罠ゾーンの装備カードを3枚まで対象として発動できる。
 それらのカードを相手の魔法&罠ゾーンに置く。
 ②:このカードを墓地から除外し、自分フィールドの「アームドホラー」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターに手札の「アームドホラー」装備魔法カード1枚を装備する。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


オスカーの前に、アンデットの道化師がおどけた様子で浮かび上がる。
顔はむき出しの頭蓋で、金色の縁取りが仮面のように走り、空洞の眼窩には冷たい蒼光が灯っている。
胸元の破れからは乾いた肋骨と金色の装飾がのぞき、腰の縄帯には札飾りや小さな金具がいくつも垂れている。


モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ZF7sZCF
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

アルベレトが手を叩くと、現在アームドホラーに装備されている装備魔法3枚が遊次の場に移動する。
当然、装備魔法自体はモンスターに装備されているため、ただ遊次の魔法&罠ゾーンを圧迫しただけだ。

「…ちゃんと弱点も対策済みってか。
しかもご丁寧にPゾーンを潰してきやがった」

オスカーは遊次の右端の魔法&罠ゾーン…つまりPゾーンに装備魔法を配置した。
これにより遊次の武器の一つであるペンデュラムが封じられてしまった。

「装備魔法『ホラーアームズ・マレフィックアイ』を『アームドホラー・ケルヴァラク』に装備」

ケルヴァラクの片目に単眼の装飾具が深く食い込む。

「マレフィックアイの効果発動。1ターンに1度、相手の表側カード1枚の効果を無効にする。
貴様のPゾーンの『妖義賊-戴火のプロメテ』を無効にする」

ケルヴァラクに装備された義眼が赤い光を放つと、遊次の頭上のプロメテは一瞬にして石化する。

「さらにマレフィックアイがフィールドに存在する限り、貴様のプロメテを対象とする効果も全て無効となる」

「……」
遊次の表情から笑みが消える。
プロメテは条件によってはデッキからカードを手札に加えるカードがある。
遊次にとって次のターンの希望の一つだったが、今それが潰えてしまった。

「『アームドホラー・ケルヴァラク』の効果発動。
相手の墓地のカードを除外できる。
貴様の墓地の罠カード『妖義賊の秘技』を除外する」

遊次は悔しそうにカードを除外する。
このカードはエンドフェイズに、自分フィールドにモンスターがいなければ、墓地からセットし直せる。
しかしオスカーはその一点の希望さえも打ち砕いた。

「カードを1枚伏せ、ターンエンド。
エンドフェイズ、『アームドホラー・ケルヴァラク』の効果発動。
お互いのエンドフェイズに『アームドホラー』魔法カード1枚を手札に加えることができる。
『アームドホラー・フュージョン』を手札に加える」

--------------------------------------------------
【遊次】
LP2300 手札:0

Pゾーン:妖義賊-戴火のプロメテ(無効・対象不可)
装備魔法:ディアボリックキャノン、インファーナルクロー、スティジアンウィング

【オスカー】
LP7600 手札:4(バンシーヴェイル、アームドホラー・フュージョン)

①アームドホラー・ディオメデウス ATK3600
 装備:ディアボリックキャノン、インファーナルクロー
②アームドホラー・エタナフォラス ATK2200
 装備:スティジアンウィング
③アームドホラー・ケルヴァラク ATK2400
 装備:マレフィックアイ

永続魔法:アームドホラー・カースエンブレイス
装備魔法:マレフィックアイ
伏せカード:1
--------------------------------------------------

ターンエンドの宣言と共に、オスカーの後ろでルーカスがおもむろに拍手を始める。

「さすがだね兄さん。ディオメデウスは装備魔法の数だけ、相手モンスター効果を無効にして除外できる。
さらにエタナフォラスは相手の魔法効果を1度無効にできる。おまけに伏せカードまである始末だ」

「次のターン、それをお前はたった手札1枚で、乗り越えなきゃならない。
見せてみろよ、お前の"覚悟"とやらを」

ルーカスは煽るような笑みを送る。
あまりにも絶望的だった。

ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選を見事勝ち抜いた遊次に、突如として圧倒的な実力者が立ち塞がった。
世界の命運を懸けたデュエルで、遊次はわずか1ターンにして、崖際まで追い込まれたのだ。
灯の耳には自らの心臓が跳ねる音がはっきりと聞こえていた。

しかし、遊次は依然として真剣な眼差しで前を見据える。

「…やってやるよ。
こんな盤面ぐらいひっくり返せなきゃ、世界なんざ救えるわけねぇ!」


その姿は、仲間達にいつも勇気を与えた。
遊次なら、必ず勝ってくれる。
今はただ、そう信じることしかできなかった。


第58話「畏怖を纏う死兵」 完



たった1枚の手札からの逆転。
その奇跡を起こせなければ、ニーズヘッグの計画を止めることができない。
ドミノタウン、そして世界の人々を守るために、遊次は1枚のドローに思いを託す。

そして遊次は、ある1つの光明を見出す。
この小さな可能性に、全てを懸けるしかない。

「まだ……まだデュエルは終わりじゃねえだろ、遊次!
諦めんじゃねえぞテメェ!最後の最後まで可能性を探りやがれ!それがテメェのデュエルだろうが!」


次回 第59話「世界の敵」
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