交流(共通)

一言掲示板 管理人連絡掲示板 遊戯王雑談掲示板 雑談掲示板

メインメニュー

クリエイトメニュー

その他

遊戯王ランキング

注目カードランクング


カード種類 最強カードランキング


種族 最強モンスターランキング


属性 最強モンスターランキング


レベル別最強モンスターランキング


デッキランキング

HOME > 遊戯王SS一覧 > 第45話:答え

第45話:答え 作:

ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選準決勝。
シャンリンの妨害を巧みに交わした遊次は、
融合召喚を行い、融合モンスターで攻撃することで勝利できるルートを描いた。

しかし、勝利するということは、相手の願いを潰すことだ。
虹野譲やシャンリンの言葉から、遊次は痛いほどそれを思い知った。

だが、ドミノタウンの復興という幼い頃からの願いを、手放すことはできなかった。
コラプスの直後、崩壊した自分の店を呆然と見つめていた男は、
幼い遊次の姿を発見すると、涙ながらに抱きしめた。
「生きていてよかった」と。

しかし彼は自らの全てを注ぎ込んだ店を失ったことで、後に命を絶ってしまった。
その経験が、遊次を突き動かした。
この町が復興しない限り、同じように失われる命があるかもしれない。
そして、チームの子供達を真っ当な未来に導くという怜央の願いを背負った以上、
絶対に諦めるわけにはいかなかった。

相手の願いを摘む覚悟を決めた遊次だが、融合召喚を行う刹那、再び迷いが生じる。
「本当にこれでいいのか」と。

だがその迷いも空しく、シャンリンは手札から罠カードを発動し、
新たな王がフィールドに現れた。

その効果によって魔法カードが封じられ、融合の予告状の効果は無効となってしまう。


「少しはできたようね、相手の願いを摘む覚悟が。
でも君がしなければならないことはもう1つある」

「自分の願いが、摘まれる覚悟よ」

--------------------------------------------------
【珊玲】
LP4100 手札:1(王選の議場)

①王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン ATK3000
②王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド ATK3500
 勲章カウンター:2

フィールド魔法:王選の議場

【遊次】
LP3900 手札:4(プロメテ、一攫千金の予告状)

①王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ルイク DEF3000
②妖義賊-美巧のアカホシ ATK2300

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-舞蛇のキク
伏せカード:1(王選器 スパータ)
--------------------------------------------------


「俺の…願いが…」
遊次の視線は釘を打たれたように、目の前で荘厳なる覇気を放つ王「アルフレイン」だけを捉えていた。

遊次は残った3枚の手札を見つめる。
頭の中で様々なルートを思い描くが、結論はあっけなく算出された。

(次にシャンリンがモンスターを引いたら…俺は負ける)

負ける。
頭の中で思い浮かべるだけで心に痛みが走った。

その痛みは、"あの時"にも感じたものと同じだ。




4年前。ヴェルテクス・デュエリア 本選第1試合の当日。

遊次が初戦から敗北したその日の帰り道。
商店街で見知った顔とすれ違った。

「遊次!どうだったんだい、大会は!」

声をかけてきたのは恰幅のいい40代ほどの女性だ。

「…おばちゃん」
いつも遊次が"おばちゃん"と呼んでいる彼女は、開口一番に笑顔で試合の結果を聞いた。
本選はテレビで中継されているが、仕事だったため見れなかったのだろう。

遊次は大会で敗北したものの、心底デュエルを楽しんだことから、
悔しさと同時に、戦いの後の高揚感に満たされていた。

しかし、おばちゃんの顔を見た瞬間、思い出した。自らの願いを。
ゆえに遊次は言い淀んだ。

目の前で、おばちゃんはいつものような満面の笑みで、遊次の言葉を待っている。

「…ごめん」
遊次は一言だけ、小さな声で返した。

おばちゃんの表情が一瞬強張った。
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った。

「なにしょげてんだい!本選まで進んだだけでも、大健闘じゃないか!
夢だったあの真っ赤なスタジアムで戦ったんだろう?」

「…うん。でも、おばちゃんのデュエルショップは、また…。
他のみんなだって…」

"おばちゃん"は以前、デュエルショップを営んでいたものの、コラプスの影響で店は倒壊。
それ以降、店は開かれていない。
ドミノタウンの復興という願いが叶えば、店を再開できると考えた遊次は、
彼女の願いも背負って、ヴェルテクス・デュエリアに臨んだのだった。

「そんなの、遊次1人が背負うことじゃないよ。
この町のことは、みんなで頑張って、1歩ずつ、進んでいくしかないんだ。
アンタは、よくやったよ」

おばちゃんは、遊次の頭を優しく撫でる。

「私も建築士としてこの町の役に立ててる。それで十分さ」

彼女はかつてデュエルショップを営んでいたが、学生時代に建築の勉強をしていたこともあり、
真っ先に復興のために駆り出され、以降はそれに従事し続けている。

しかし遊次は、時折、公園でデュエルする子供達を遠くから笑顔で見つめるおばちゃんの姿を見ていた。

(おばちゃんが本当に好きなのは、デュエルを楽しむ子供達の笑顔だ。それは今も…)

遊次はおばちゃんのしわが刻まれた疲れ切った笑顔を見つめる。

胸がズキリと痛んだ。




「…負けらんねえんだ、どうしても。みんなの願いを背負ってるから」
遊次の目に執念の火が灯る。

「威勢がいいのは結構だが、この状況でまだできることはあるのかな」

シャンリンはメガネを指で押さえながら、警戒心を絶やさず様子をうかがう。

「デュエルは最後までわからねえもんだろ。俺は諦めたりしねえ。
カードを1枚伏せてターンエンドだ」

--------------------------------------------------
【珊玲】
LP4100 手札:1(王選の議場)

①王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン ATK3000
②王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド ATK3500
 勲章カウンター:2

フィールド魔法:王選の議場

【遊次】
LP3900 手札:3(プロメテ、一攫千金の予告状)

①王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ルイク DEF3000
②妖義賊-美巧のアカホシ ATK2300

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-舞蛇のキク
伏せカード:2(王選器 スパータ)
--------------------------------------------------

「神楽選手、やはり突如現れた新たな王には対抗できず、ターンを終えたぁ!
このままでは次のターンに決着がつくかもしれませんッ!」


「拙僧に解を示しておきながら、己はその体たらくか…。見るに堪えん」
そして、これまで静かに試合を見ていた空蝉が、突如席を立つ。
まるでその表情はどこか寂し気であった。

空蝉は出口へ向かい、観客席の階段を上がってゆく。
その近くの席で、灯は不安な表情を見せる。
勝利と敗北。進むも退くも、遊次は何かを犠牲にすることになるからだ。


「君も覚悟を決めたんだろう。ならば、勝負をつけよう」
シャンリンがデッキトップに指をかける。

(ここでモンスターを引かれたら、俺は負けちまう。
頼む…!あとちょっとで答えが見えそうなんだ…!)

遊次の視線はシャンリンの指先に注がれる。

「私のターン……ドロー!」

シャンリンが1枚のカードを引く。
遊次は早まる鼓動でそのカードを見つめる。

「…!」
シャンリンは引いたその1枚のカードを見ると、意味ありげに少し眉を上げた。
その瞬間を遊次は見逃さなかったが、彼女の表情の意味は計り知れなかった。

「スタンバイフェイズ、『王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン』の効果発動!
このターン、無効にするのはモンスターカード!
よって、君のフィールドのモンスター効果は全て無効となり、
発動されるあらゆるモンスター効果も無効となる!」

アルフレインが杖を地面に突き立てると、フィールド全体に波動が広がる。
遊次のフィールドのルイクとアカホシは波動の輪で拘束される。


「墓地の『王選の戴冠(レガルバロット・コロナティオ)』を除外して効果発動!
フィールドに王がいる時、相手モンスター1体を次の相手ターン終了時まで除外できる。
『妖義賊-美巧のアカホシ』を除外!」

王となったアルフレインが杖を振りかざすと、空間が歪み、アカホシがその狭間へと消える。

「君のフィールドのルイクは効果が無効となっているため、破壊耐性を持たない。
『王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド』の効果発動!
君のフィールドのルイクを破壊する!」

(…アルフレインは場の勲章カウンターを3つ取り除いて、
モンスターを特殊召喚する効果を無効にする効果も持ってる。
この破壊の後、ビエザイドの勲章カウンターは3つになっちまう。…ならここしかねえ)

「罠カード発動!『妖義賊の見参』!デッキから妖義賊モンスターを特殊召喚する!
『妖義賊-剛腕のナンゴウ』を守備表示で特殊召喚!」

■妖義賊の見参
 通常罠
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分・相手ターンに発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。
 その後、自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、
 デッキから「ミスティックラン」カード1枚を手札に加えることができる。
 ②:墓地のこのカードを除外し、墓地の「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。

遊次のフィールドに、渦模様が描かれた着物を纏った虎の頭を持つモンスターが姿を現す。

妖義賊-剛腕のナンゴウ DEF1900

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/l0XP4F1
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「さらに『妖義賊の見参』は、俺のフィールドに相手から奪ったカードがある時、
デッキから妖義賊カードを手札に加えることができる」

遊次は逡巡する。何を手札に加えるか迷っているのだ。
数秒の思考の後、遊次は結論を出した。

「俺は魔法カード『妖義賊の復活』を手札に加える」

「しかし、チェーン1のビエザイドの効果によってルイクは破壊され、
ビエザイドに勲章カウンターが1つ置かれる」

ビエザイドの剣が禍々しい斬撃を放つ。
ルイクは蒼い盾で防ごうとするも、あえなく破壊される。

ビエザイド 勲章カウンター 2 → 3


(どっちだ…!モンスターを引いたのか…!?)

しかし、ここまでは遊次の想定通りだった。問題はここからだ。
モンスターが1体でも召喚された場合、
ナンゴウが戦闘破壊され、残り2体のモンスターで直接攻撃を受けることとなり、
遊次の残りライフ3900が削り切られてしまうからだ。

シャンリンは手札に残された1枚のカードを見つめた後、真っ直ぐと前を見る。

「運命はまだ君を生かすか」
シャンリンは一言だけ呟くと、右手を前に突き出し、攻撃指令の構えを取る。

「…バトルフェイズ!
『王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン』でナンゴウに攻撃!」

(モンスターは…引いてない!)
どうやら遊次の中での敗北条件は避けられたようだ。

アルフレインが杖を振り上げると、宙に描かれた魔紋が眩く点滅する。
直後、蒼光が奔流となって放たれ、前方を薙ぐようにナンゴウを呑み込んだ。
光の爆風が空間を震わせ、ナンゴウはその中で消滅した。

遊次のフィールドがガラ空きとなったことで、2人の視線は交差する。

「…前のターン、もし私が手札から罠カードを発動していなければ、
君のフィールドには融合モンスターが召喚されていた。
そして、君のPゾーンの『雲龍のリヘイ』は、
自身をデッキに戻して他のPカードをPゾーンに置くことができる」

「そこで『剛腕のナンゴウ』をセットしていれば、そのP効果によって、
融合召喚されたモンスターは連続攻撃が可能となり、
私のルイクとアルフレインが攻撃され…私は負けていた。
融合の予告状で融合召喚されたモンスターの戦闘時、相手モンスターの攻撃力は0となるから。
そうよね?」

4年前の対戦と今年の大会のデータから、シャンリンは遊次のデッキを細かに把握していた。

「…あぁ」

遊次が前のターン思い描いていた勝利へのルートはまさしく、シャンリンが口にしたものだ。
驚きもあったが、それよりも彼女が何を意図してそのことを話しているのか、
その意味を理解できたからこそ、遊次の声は重々しかった。

「君は、私の心臓めがけて刃を突きつけたのよ。君の、その手で」

シャンリンもまた遊次に言葉の切っ先を向ける。
しかし、これこそ遊次が向き合わなければならない命題だ。

「私がこうして生きているのは、たまたま鎧が分厚かったからに過ぎない。
しかし、君があの時、私の願いを奪う覚悟をしたことは事実」

「…それでいい。君も、誰かの願いを背負って戦っているんだろう。
そのために相対する者の命を摘むことは、決して悪ではない」

この4年間、自問自答の答えを示すかのように、シャンリンは言葉を紡いだ。
遊次はそれをすべて受け止めようとしている。
このデュエルの勝者がどちらであろうと、戦いはそう長くはない。遊次はそう感じていた。
あの選択をした時に生じた"迷い"と"葛藤"の正体に、ケリをつけるのは今しかない。
そう確信した。

「…俺は、ドミノタウンを復興させて、町の皆を笑顔にしたい。
コラプスから14年間、ずっと苦しみ続けてる人を見てきたから。
俺がここで逃げたら、その人たちはまた苦しみの中に戻っていかなきゃいけないんだよ」

「俺が負けたからって、皆は俺を責めたりしないし、恨んだりしないと思う。
でも…悲しんじまうだろ。
そういう顔見てると…"このへん"がズキズキすんだよ」

遊次は胸の中央に拳を当てながら、その痛みを思い出すかのように顔をしかめる。
観客席では、虹野譲が真剣な表情で遊次を見つめている。
まるで、答えを出すその時を待っているかのように。

「希望がなくなれば、自分から何もかも諦めちまう人だっているんだ。
だから、俺がこの願いを捨てるわけにはいかねえ。
だから、アンタを倒すしかねえ。そう思ったんだ。…あの時は」

「今は、違うというの?」
シャンリンの目つきが鋭さを増す。

「…わからない。でもあの時思ったのは、本当にこれでいいのかってことだ。
誰かの願いを潰すことが正しいって、思いこみたいだけじゃねえのかって」

遊次の言葉を聞いたシャンリンは眉をひそめ、ため息を一つついた。
心底呆れかえっているような表情だった。

「これでいいのか…だと?答えは最初から一つだ!
『王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド』で、ダイレクトアタック!」

湧き上がるシャンリンの怒りを体現するかのように、
ビエザイドの剣に禍々しい黒い稲妻が走る。
振り抜かれた刃が斬撃となって、一直線に遊次へと迫る。
直後、遊次の体は吹き飛ばされ、地面を転がるようにして力なく倒れ伏した。

遊次 LP 3900 → 400

「遊次っ!」
観客席の灯は思わず声を上げる。

「重々しい一撃ッ!!神楽選手の残りライフはたったの400!
かろうじて耐えていますが、あまりにも苦しい!」


「君はただ、恐れているだけよ!自分の手が血で染まることを!
そんなのは優しさじゃない。ただ覚悟がないだけだ!」
倒れる遊次に、シャンリンは容赦なく言葉を浴びせる。

「君は、ここから先に進むべきじゃない。いや、進むことはできない。
本当に誰かの命を奪うことになったとしても…私は私の願いを掴む。
カードを1枚伏せて、ターンエンド」

--------------------------------------------------
【珊玲】
LP4100 手札:1(王選の議場)

①王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン ATK3000
②王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド ATK3500
 勲章カウンター:3

フィールド魔法:王選の議場
伏せカード:1

【遊次】
LP400 手札:4(プロメテ、一攫千金の予告状、妖義賊の復活)


Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-舞蛇のキク
伏せカード:1(王選器 スパータ)
--------------------------------------------------

「神楽選手、かろうじて命を繋いだものの、そのライフは風前の灯火!
おまけにモンスターは1体もいません!
対するシャンリン選手はモンスター・魔法・罠の内どれかを毎ターン無効にし、
さらには相手カードを破壊するビエザイドも健在!
神楽選手がこれ以上に追い詰められた姿を、我々は見たことがありません!」

実況の声と沸き立つ観客達の歓声が、雑音のように耳に響いている。
遊次はスタジアムの地面に残った熱を肌で感じながら、シャンリンの言葉を頭の中で反芻した。
彼女の言葉は、自分の中でずっと引っかかっていたものが何か、気付かせてくれた。


「俺は…死ぬほど願いを叶えてえ。
でも…アンタの願いだって、叶ってほしいと思ってんだよ…!」

遊次は立ち上がりながらシャンリンを力強い眼差しで見つめる。
シャンリンはその瞳から感じた。
これはただの迷いからくる甘えた言葉ではなく、明確な意志の宿った言葉であると。

だが、彼の言葉をそう簡単に受け入れることはできなかった。

「いつまで甘えたことを言っている!勝利を掴むのはただ1人!
どちらの願いも叶えるなんて不可能よ!」

「またそれかよ…!不可能とか、願いを潰すとか、もうウンザリなんだよ!
そんなことばっか考えてちゃ、デュエルを楽しめねえだろうが!」

突然エンジンがかかったような遊次の声に、
スタジアムから出ようとしていた空蝉が振り返り、足を止めた。


「楽しむだと…?この期に及んで、デュエルを楽しむなどと考えてるのか!?
呆れたな!やっぱり君は4年前から何も変わっていない、ただのデュエルバカだ!」

「あぁ!デュエルを楽しめねえぐらいなら、バカな方が100倍マシだ!
確かに、皆の願いが懸ったすんげー大事な戦いだぜ!真剣になるに決まってる!
それでも、デュエルってのはおもしれえんだよ!
俺は、デュエルを楽しみてえ!」

まるで頭がぐちゃぐちゃになった結果、思考を放棄したかのような発言だった。
しかし、灯たちは知っていた。こうなった遊次こそが、遊次なのだと。

「何が言いたい!
自分の願いも叶えたい、私の願いも叶ってほしい、デュエルも楽しみたい…
まるでわがままな子供よ!」

「あぁそうかもな!でもこれが今の俺の正直な気持ちだ!
全部やりたいんだよ!ぜんぶ……」

考えも無しに頭に浮かんだことを言葉にしていた遊次だったが、
途中でふと、自分の口から出た言葉に、何か聞き覚えがあるような気がした。

(とにかく遊次には、遊次がやりたいこと、全部叶えてほしいんだ。
私はそれを……隣で見れたら、満足だから)

それは今朝、Next事務所の屋上で灯に励まされた時のことだ。

(そうだ…!どっちかの願いしか叶えられないとか、相手の願いを潰すとか、
そんなの、"俺"じゃねえ…!)

答えまで、あと少し。手を伸ばせば、届きそうな気がする。

遊次は観客席の灯の方に視線を移す。
灯は遊次の心を全てわかっているかのように、目を合わせ、一度だけ頷いた。

遊次はふと、灯の上に気配を感じ、スタジアムの出口近くに視線を移した。
そこには、空蝉空心の姿があった。

「空蝉さん…」
遊次が急に黙り、空蝉を凝視していることで、観客達の視線もそこに集中した。

「な、なんだ…!なぜ拙僧が衆目の的に…!」
数千人の視線を一手に受けた空蝉はぎょっとし、蛇に睨まれた蛙のように固まる。

遊次は空蝉の姿を見て、彼とのデュエルを回顧する。


(どっちもやればいい!もっと欲張れよ!)

遊次は核心を得たかのように、はっとした表情に変わる。

(そうか…。俺は、自分が言ったことも忘れちまってたんだ。
"答え"はもう、とっくに俺の中にあったってのに…!)


遊次は前を向くと、目を閉じる。

頭の中に、数々の記憶が蘇る。

コラプスで記憶をなくしてから、他人のことなど考える余裕なんてないはずなのに、
それでも自分に優しくしてくれたドミノタウンの人たち。

自分の夢に人生を懸けてついてきてくれた、灯とイーサン。

子供たちの未来を創るという、怜央の願い。

遊次は目を開ける。
目の前にはシャンリンが遊次と相対するように立っている。

「決着を着けようぜ、シャンリン。俺はもう、迷わねえ」

遊次がデュエルディスクを構える。
彼の瞳に一切の揺らぎがなくなっていた。

灯やイーサン達も、その表情から、彼が答えに辿り着いたことをすぐに理解し、
晴れやかな笑顔となる。
虹野譲は、観客席から真剣な面持ちで遊次を見つめている。


「…いいでしょう。デュエルで示しなさい。
私は、私の願いのために、君を倒す」

シャンリンも呼応するようにデュエルディスクを構える。

「君のライフはたったの400。私の布陣を超えることなど不可能だ」

「不可能なんてねえ!
俺は、俺のモンスター達を信じてる。絶対に負けねえ!」

遊次は堂々と、シャンリンに聞かせるように、笑顔でその言葉を口にした。
シャンリンはその言葉に何か引っかかるものを覚えた。

「俺のターン、ドロー!」
遊次は引いたカードを見つめる。

「スタンバイフェイズ、『王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン』の効果発動!
ターン終了時まで、モンスター・魔法・罠の内どれか1つを無効にする!」

シャンリンは考えを巡らせる。

(デュエルはモンスターによって紡がれるもの。
定石通りにいくなら、モンスター効果を無効にするのが最も効果的。
それに、さっきの彼の言葉…)

シャンリンの頭の中には先ほどの遊次の言葉が引っかかっていた。

(俺は、俺のモンスター達を信じてる。絶対に負けねえ!)


(モンスターを信じる…。それは、モンスターこそが逆転に必要だと言っているようなもの。
それなら、モンスターを無効にすれば…)

シャンリンが効果の選択をしようと思ったその刹那、何か嫌な予感がよぎった。

(待て…。あの神楽遊次が、そんなわかりやすいボロを出すのか?この局面で?
…いや、そんなはずはない)

シャンリンは4年前の戦いの結末を思い出す。

シャンリンの場にセットされていた罠カード。
本来ならそれが逆転の一手になるはずだったが、遊次は巧みに盤面を誘導し、
その罠カードを発動前に破壊してしまった。それこそが4年前の敗北の原因だった。

シャンリンは今、自分の目の前にセットされている罠カードを見つめる。

(彼は4年前、口先三寸で私を誘導し、そのせいで私は負けた。
心底腹が立ったが、同時に心のどこかで感心もしていた。
たった一言で勝負の行く末を変えてしまうデュエリストなど、見たことがなかったから。
神楽遊次はそういう男だ。もし先ほどの言葉が罠だとすれば…)

シャンリンはビデオを再生するように、遊次の一手一手を頭の中で振り返る。
そして、脳内で停止ボタンが押されたのは、遊次が前のターン発動した罠カード「妖義賊の見参」。
それは、デッキから妖義賊を呼び出し、さらにデッキから妖義賊カードを手札に加える効果。

(あの時、デッキから手札に加えたのは魔法カード『妖義賊の復活』。
彼の視点から見ても、アルフレインの効果で無効にされるのはモンスターである可能性が高い。
にも関わらず、彼はモンスターを復活させる魔法カードを手札に加えた。
効果が無効になるのであれば、モンスターを墓地から特殊召喚しても意味がない…。
であれば、本当の狙いは"第2の効果"…!)

魔法カード「妖義賊の復活」は、墓地から除外することで、
墓地の「予告状」カードを除外する効果を持つ。シャンリンはそこに目をつけた。

そして頭に思い浮かんだのは、1枚のカード。それは「爆炎の予告状」。
墓地から除外された時、相手フィールドのカードを破壊する効果だ。
シャンリンは遊次の手札を見つめる。

(5枚の内、未知なのは2枚。そのどちらかが『爆炎の予告状』である可能性は十分にある。
『妖義賊の復活』で『爆炎の予告状』を除外されれば、私のフィールドはあえなく破壊される。
それだけは避けなければならない…!)

アルフレインもビエザイドも破壊に対する耐性はなく、伏せカードも破壊されてしまう。
そうなればシャンリンは無防備となる、最悪の事態が発生する。

(もしこれこそが彼の狙いだとすれば、『モンスターを信じる』などといって、
アルフレインの無効効果をモンスターに誘導したのも頷ける。
でも…彼のデッキには『妖義賊の即日決行』という、
デッキから予告状を墓地に送ってすぐに除外する効果もある。
そのカードを『妖義賊の見参』で手札に加えないのは何故?)

(…いや、やはり爆炎の予告状が手札にあるならばその必要はない。
それに『妖義賊の即日決行』を手札に加えれば、
すぐに爆炎の予告状こそが真の狙いだとわかってしまう。
そうなれば私は迷わずに魔法カードを無効にしていた。彼にとってもその選択はできない…)

シャンリンは冷静かつ多角的に自分の仮説を検証してゆく。
直接的にデッキから予告状を除外する「妖義賊の即日決行」を手札に加えれば、
すぐにその狙いがバレてしまう。しかし「妖義賊の復活」であれば、
その目的は墓地からモンスターを特殊召喚することだと相手は考える可能性が高く、
予告状を除外する第2の効果が狙いであるとは看破されにくい。
遊次はそれを狙ったのだとシャンリンは考える。


(やはり本当に無効にすべきは…魔法カード!
魔法を無効にすれば、最悪を避けられるだけでなく、
P効果も発動できず、展開やリソース回復も防げる。答えは出た!)

「アルフレインの効果で無効にするのは、"魔法"!
これにより、君のあらゆる魔法カードの効果は無効となる!」

アルフレインが星杖を地面に突き立てると、フィールドに波紋が広がる。

「…やっぱり気付くよな、アンタなら…」
遊次は誰にも聞こえないように呟き、口角を上げた。


「いくぜ!墓地の『妖義賊の見参』を除外して、効果発動!
墓地の妖義賊1体を手札に戻すことができる。
『妖義賊-深緑のロビン』を手札へ!そして召喚!」


■妖義賊-深緑のロビン
 効果モンスター
 レベル4/風/戦士/攻撃力1800 守備力500
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
 自分の墓地のレベル4以下の「ミスティックラン」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ②:手札から「予告状」カード1枚を捨て、
 墓地の「ミスティックラン」魔法・罠1枚を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。
 ③:このカードがリリースされた場合、
 相手フィールドの表側モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターの効果を無効にする。

弓を持ち、緑色の外套を纏った若き青年のモンスターが姿を現す。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/PHAQB1t
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「深緑のロビンの効果発動!墓地のレベル4以下の妖義賊を特殊召喚できる!
『妖義賊-駿足のジロキチ』を選択する!」

「そうはさせない!『王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン』の効果発動!
フィールドの勲章カウンターを3つ取り除き、モンスターを特殊召喚する効果を無効とする!」

ビエザイドが跪くと、置かれた勲章カウンター3つが頭上に浮かび、消える。
アルフレインが杖をかざすと、金色の魔法の鎖がロビンを縛る。

勲章を3つ失ったことでビエザイドが王になる権利はなくなったが、
それほどまでにロビンの効果を恐れたということだ。
ロビンの効果を止めなければジロキチが特殊召喚され、その効果でブラックバードが手札に加わる。
そうなれば、墓地の予告状を除外して1度の破壊を無効とする厄介な効果が適用され、
ビエザイドの破壊が通らなくなってしまうからだ。


「さらに効果を無効にされたカードは、このターン効果を発動できない。
よって、ロビンの墓地から魔法・罠を手札に加える効果も発動できないわ」

スタンバイフェイズにアルフレインの効果で全てのモンスター効果を無効にせずとも、
十分にモンスターは止めることができる。それもまた、魔法を無効にすることを選んだ理由であった。


「遊次の手札の内、最低でも2枚は、発動できねえ魔法カードだ。
P効果も使えねえし、まだビエザイドの破壊効果も残ってやがる。マジで大丈夫なんだろうな…」

観客席のドモンは遊次の勝利の可能性に疑問を呈する。
いくら本人が希望を見出していても、ここから逆転する方法など到底思いつかなかった。

「俺も遊次がどうするのか全く想像できないが…負ける姿はもっと想像できないな」
フィールドに立つ遊次の姿を見つめるイーサンの目には、揺るぎのない信頼が静かに滲んでいた。


「俺のPスケールは2~8!よって、レベル3~7のモンスターを同時に召喚可能!
天に弧を描く義の心、その輝きより現れ同胞の声に呼応せよ!
P召喚!来い、俺のモンスター達!」

遊次の頭上の大きな振り子が揺れ、その輝きから3つの光が現れる。

「手札から『妖義賊-戴火のプロメテ』、『妖義賊-早撃ちのキッド』!
EXデッキから、『妖義賊-剛腕のナンゴウ』!」

現れたのは、火の玉に顔のついた小さなモンスターと、
拳銃を携えた若き金髪のガンマン、そして着物を纏う虎のモンスターだ。

プロメテ:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI
キッド:ttps://imgur.com/a/Bqv8y25
ナンゴウ:ttps://imgur.com/a/l0XP4F1
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


シャンリンは現れた金髪のガンマン「早撃ちのキッド」の効果をデュエルディスクで確認する。

(手札の予告状を捨てて、相手モンスターを破壊する効果…。
これではビエザイドが破壊されてしまう。致し方ない…!)

「『王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド』の効果発動!
1ターンに1度、相手フィールドのカード1枚を破壊する!キッドを破壊!」

ビエザイドが剣を振り抜くと、禍々しい斬撃がキッドを破壊する。

「シャンリン選手の強力な騎士の効果が次々と神楽選手に襲い掛かるぅーー!
しかし、見えている妨害はこれで全て使い切ったことになります!
神楽選手にはまだモンスターが3体!更なる展開も可能です!
シャンリン選手に残された手は1枚の伏せカード!それこそが鍵となるでしょう!」

遊次のフィールドに残ったのは、レベル4モンスター2体と、剛腕のナンゴウだ。

「『妖義賊-戴火のプロメテ』の効果発動!フィールドの妖義賊1体をリリースして、
除外されている相手モンスター1体を特殊召喚する!
ロビンをリリースして、
アンタの『王選の従騎(レガルバロット・ペイジ) ゴドフロワ』を特殊召喚!」

「さらにチェーンして、リリースされたロビンの効果発動!相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にする!
ビエザイドの効果を無効化する!」

「チェーン1のプロメテの効果によって、除外されているゴドフロワが俺のフィールドに特殊召喚される」

赤茶の髪を持つ若き騎士が遊次のフィールドに現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/Zhsh0FH
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

(このままでは、間違いなく私のモンスターは全滅する。
2体のレベル4モンスターでルパンをエクシーズ召喚すれば、
その効果でビエザイドが奪われ、戦闘によってアルフレインが破壊される)

シャンリンは遊次のデッキを超解像度で分析し、次の手を瞬時に予測する。
しかし、思い描けるルートはシャンリンのモンスターを全滅させられるものの、
ライフを削り切ることはできない。

(それに…)
シャンリンは自分のフィールドに伏せられている罠カードに視線を送る。

(この罠カード『王権の復活(レガルバロット・レストラティオ)』は、
自分フィールドにモンスターがいない時、
墓地の王をEXデッキに戻した後、召喚条件を無視してその王を特殊召喚する効果を持つ。
それで王となったビエザイドを復活させれば、相手フィールドのカードを全て破壊できる…)

(4年前、このカードは、君に破壊されたことで真価を発揮できなかった。
だけど、そのカードが今度こそ、君にトドメを刺す。
君は私のモンスターを全て破壊することができるけど、その時こそが君の"最期"よ)

シャンリンは明確な勝利を思い浮かべる。
4年前、無自覚に願いを潰した遊次へ、"覚悟を持つ"ということを伝えられた。
そして、今こそ4年前の悲願の達成をする時。
仲間との再起のために。

「己の願いを掴みたいなら、私を倒して、願いを摘むしかない。それこそが唯一の答えよ。
もしできないというのなら…道を開けなさい。
私なら、たとえ誰かの命を奪うことになっても、迷わず剣を振り下ろせる」

シャンリンは持病を持つ虹野譲と相対することになっても、その命を奪う覚悟を持っていた。
その覚悟なき者は、更なる厳しい戦いの道を進むことはできない。
それこそがシャンリンの考えだ。

(君が願いを叶えるためには、僕を殺さなければならない。
君には…その覚悟があるのかな)

遊次の脳裏に思い浮かんだのは、虹野譲の言葉。
あの言葉が、遊次に葛藤を与えた。
しかし、今の彼は、その問いへの明確な答えを持っていた。


「俺は、アンタを倒して決勝に行く!
でも…誰の願いも潰さねえ!」

遊次の言葉を聞き、シャンリンは唖然とした。

「まだ…そんな世迷言を…!」
シャンリンは拳を強く握る。
彼には、自分の言葉が届いていないように思えたからだ。

「アンタは、自分についてきてくれる仲間の願いを背負って、戦ってんだろ。
俺も一緒だ。ドミノタウンの皆と、Nextの仲間の願いを背負ってる。だから、負けられねえんだ。
でも俺は、アンタの願いも、譲の願いも潰したいわけじゃねえ!
全部、叶えてほしいんだよ!」

「だから、それが綺麗事の理想論だと言っているんだ!そんなことはできない!」
シャンリンは強い抵抗の言葉をぶつける。

「なんで、できねえなんて決めつけんだよ!
この大会だけが願いを叶える方法なんて、誰が決めたんだよッ!!」

シャンリンは大きく目を見開いた。
彼の言葉はただの現実逃避の夢物語だ。
心からそう感じていた。しかし、彼は本気だ。
彼は本当に、心から、"できない"などとは思っていない。
それが、彼の叫びから伝わるからだ。
故に、シャンリンも思いをぶつけずにはいられなかった。

「だから、それが、ただの理想だと言っているのよ!」

「正しいから理想なんだろ!じゃあ、そいつを追いかければいい!
俺はその"理想"を、絶対に諦めねえ!」

できない。不可能だ。
そうだと決まっているからだ。
そんなこと、誰でもわかることだ。

できる…はずがない。

だが、間違いなく、彼は本気で、その理想を信じている。
それだけは確かだった。

「願いってのは、背負えるんだよ!それは仲間だけじゃなくて、相手の願いもな!
これが俺の出した答え!アンタが教えてくれた"覚悟"ってヤツだ!」

遊次が右手を真っ直ぐと高く掲げたその瞬間、
背後から差し込んだ太陽の光が、彼の輪郭に静かに重なる。

光は遊次のシルエットを黒く浮かび上がらせる。
観客達の目は、全て遊次に惹き付けられた。

「俺は、アンタから奪ったレベル4『王選の従騎(レガルバロット・ペイジ) ゴドフロワ』に、
レベル4『妖義賊-戴火のプロメテ』を、チューニング!」

「なっ…」

(シンクロ召喚…!?そんなの、彼のデュエルでは見たことがない…!)
シャンリンは驚愕する。
完全に、予想外の一手だった。

プロメテが光の輪となり、ゴドフロワがその中を通ってゆく。

驚いていたのは観客席の怜央も同じだ。
灯とイーサンだけは、ただ真剣に遊次の覚悟を見届けようとしていた。


「亡霊の囁きが幻影の賢者を呼び覚ます。光なき檻より甦り全てを欺け」

「シンクロ召喚!現れよ!
『妖義賊-幽玄のカリオストロ』!」


■妖義賊-幽玄のカリオストロ
 シンクロモンスター
 レベル8/闇/悪魔/攻撃力2700 守備力1000
 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターをS素材としている場合、このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
 ②:相手フィールドのモンスターが効果を発動した場合、
 自分フィールドの元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地へ送って発動できる。
 その効果は「このカードのコントロールを相手に移す」となる。


一本の光が迸り、魔力の渦が螺旋を描いたその中心に、異形の影が姿を結んだ。
それは全身を幾重にも巻かれた黒布に覆われ、
まるで意志を持つかのように、布が風もなく舞い踊る姿。
眼孔の奥で鈍く輝く紅き両目が、瞬時に空気を凍らせた。
左右の腕には鋭く湾曲した双刃を携えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/k8GA3wQ
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「なんだ、このモンスターは…」
これまでの遊次のモンスターとは異なる、"恐怖"がそこにはあった。
それはシャンリンだけでなく、観客達に対しても同じだった。
喉もとに刃を突きつけられたかのような緊張が、場を支配した。


--------------------------------------------------
【珊玲】
LP4100 手札:1(王選の議場)

①王選の覇者(レガルバロット・グロリア) アルフレイン ATK3000
②王選の騎士(レガルバロット・ナイト) ビエザイド ATK3500
 勲章カウンター:1

フィールド魔法:王選の議場
伏せカード:1

【遊次】
LP400 手札:3(一攫千金の予告状、妖義賊の復活)

①妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700
②妖義賊-剛腕のナンゴウ ATK2400

Pゾーン:妖義賊-雲龍のリヘイ、妖義賊-舞蛇のキク
伏せカード:1(王選器 スパータ)
--------------------------------------------------

「神楽選手…ここにきて初めて見せる召喚方法…"シンクロ"を使いました!
融合・儀式・エクシーズ・リンク・ペンデュラム…それらを使いこなした神楽選手なら、
シンクロも操れて当然!この異形のモンスターこそが、逆転の一手となるのでしょうかぁ!?」


シャンリンは現れたモンスターの効果を理解し、愕然とした。
エクシーズでもリンクでもなく、あえてシンクロという選択をした。
それはまるで、自分の逆転の一手を全てわかっていたかのようだった。

「その伏せカード…"あの時"と同じ罠カードなんだろ?シャンリン」
遊次は現れた最後の切り札の背後で、シャンリンを真っ直ぐと見つめ、問いかける。
シャンリンは目を伏せ、何も答えない。

「もし俺の予想が合ってるなら、そいつは4年前、俺が破壊した罠カード。
アンタのフィールドにモンスターがいない時、墓地の王を復活させる効果だ。
アンタが前のターンにカードを引いた時の表情…それで、もしかしたらと思ったんだ」

シャンリンが前のターンでカードをドローした時、意味ありげに眉を少し上げた。
遊次はそれを見逃さなかった。

「フ…信じられないわね。口八丁で相手を誘導したり、表情からカードを読むなんて」
遊次の言葉を聞いたシャンリンから、思わず呆れたような笑みが零れる。

「アンタの超つえーモンスターをどう倒すか考えて、真っ先に思いついたのは『爆炎の予告状』だ。
あれが通れば、アンタのフィールドを全部ぶっ壊せる。
でも、予告状か、それを墓地に送れるカードを引くことを祈るより、
ちゃんと"ココ"を使って、確実に勝つべきだと思った」

遊次は人差し指で自分の頭を二度軽く叩く。

「…その口ぶりだと『爆炎の予告状』は手札になかったのね。
私はそれを警戒して、アルフレインで魔法カードを無効にしたのに」

「でも、本当に『爆炎の予告状』が手札にあれば、アンタのフィールドは全壊。
だからこそ、絶対にその可能性に気付くはずだと信じたんだ。
もしもうちょっとアンタの勘が悪けりゃ…俺は負けてた」

遊次は口角を上げる。
だが、シャンリンは嫌な顔をしなかった。

「それで君は、わざと"モンスターを信じてる"なんて言って、それが罠だと私に思い込ませた。
君が手札に加えた『妖義賊の復活』と、君の言葉…
そのせいで私は、君の本当の狙いが『魔法カードによる逆転』だと考えた。
でもそれは私に魔法を無効にさせて、"モンスターで私に勝つ"ための作戦だったのね。
予告状を引くことを祈るより、そのSモンスターを呼び出す方が、確実な勝ち筋だから」

シャンリンは、この決闘の行く先がどうなるかを知っている。
それでも、自然と笑みを浮かべていた。

相対するデュエリスト同士にしかわからない、意思と意思の絡まり合い。
それは、何重にも重なる読み合いによって、お互いの心を知ること。
答え合わせの中で符合してゆくパズル。
最後のピースをはめる音は、たとえ読み合いの敗者にとっても、心地の良いものなのだ。

「『妖義賊-剛腕のナンゴウ』は、相手から奪ったカードがある時、
自分をリリースして、攻撃する妖義賊モンスターの攻撃力を2400アップさせる。
『妖義賊-幽玄のカリオストロ』は、相手から奪ったモンスターを素材とする時、相手に直接攻撃できる」

「このコンボで、アンタのフィールドのモンスターを破壊することなく、ライフを削り切る。
これが俺の、答えだ」


「な…なんという思考力!彼のデュエルは…凡人では到達できない領域に達しています!
このままでは、カリオストロの効果による直接攻撃と、
ナンゴウの攻撃力アップによって、シャンリン選手のライフは0!
もし神楽選手の読み通り、シャンリン選手の伏せカードが、
自分フィールドにモンスターがいない時にしか発動できないものであれば、ここで勝負は決まります!
運命の瞬間はぁッ!もう、間もなくです!!」

実況の多口が興奮を隠さない様子でマイクに唾を飛ばす。


(メガネ女の罠カードを読み切って、
さらに、モンスター効果を無効にさせないように、相手を誘導した…だと?)

観客席の怜央は、思わず手で顔を覆った。

(ここまで脳みその容量を全部デュエルに使ってる奴が、この戦いを諦めていいわけねえ。
お前は、"テッペン"まで上らなきゃ許されねえデュエリストだ)

(お前なら…ぶっ倒せるぜ。あの虹野譲を。
あとはお前が、"覚悟"を見せるだけだ)

怜央は託した。自らの願いを、遊次の背に。


「このまま私にトドメを刺すことがどういう意味か、わかってるわよね。
相手の願いを背負うなんて言ってるけど、そんなの無理よ。無理に決まってる。
君1人に叶えられる願いなら…最初から、こんな大会…っ!」

願いが敗れる悔しさが、シャンリンの心の奥底から湧き上がる。
4年間積み上げてきたものが、また音を立てて崩れ去ろうとしているから。

「1人じゃねえよ!俺には仲間がいる!
俺の願いも、背負ってくれる仲間が!!」

俯き、涙を浮かべていたシャンリンは、思わず前を向く。濡れて霞んだ目で。

そして、真に彼の声が心に突き刺さったのは、Nextの3人だった。

「…上等じゃねえか。
お前にばっか借り作んのは、性に合わねえしな」

怜央はニヤリと笑う。
その表情は、火が点いたような昂ぶりをはらんでいた。

「たとえこのさき何があろうと、俺にとっては、アイツの幸せが一番だ。
そのためなら…何だってするさ」

イーサンの瞳にも、さらなる決意が宿る。
彼の脳裏にフラッシュバックする、土砂降りの夜の記憶と、夕焼けの記憶。
彼との出会いと、彼との約束の記憶。
それこそが、イーサンの心に根付く、願いであった。


(…私たちも、遊次の願いを背負わなきゃいけないんだ。
願いは、1つ1つが重くて、大きなものだから)

灯は胸を押さえ、目を瞑る。

「遊次が叶えたい願いは、全部叶えてほしい。
それを叶えてあげられるのは、私たちなんだ」

幼い頃、彼を支えると誓ったその言葉の意味が、今明確になった。
4人の目指すべき道は1つに交わる。



「アンタ達の願いも、全部背負って、絶対に叶えてやる!
だから俺たちは、"なんでも屋"なんだ!」

遊次は右手の人差し指と中指を揃え、前に突き付ける。
それは、このデュエルの終焉を意味していた。


「『妖義賊-幽玄のカリオストロ』で、ダイレクトアタック!」

カリオストロは、ゆっくりと上体を沈めた。
巻き付く布の隙間から覗く双刃が、静かに外側へと弧を描くように構えられる。
そして次の瞬間、空間を滑るように前方へと加速した。


「妖義賊の攻撃宣言時、剛腕のナンゴウの効果発動!
自身をリリースして、攻撃するモンスターの攻撃力を、2400アップさせる!」

妖義賊-幽玄のカリオストロ ATK2700 → 5100

シャンリンの前に凛として構える王と騎士をすり抜け、
刃を振りかぶる動作さえ見せず、カリオストロはその背後に回り込んでいた。

1秒後、シャンリンは斬り裂かれる感覚を覚え、静かに膝をついた。

シャンリン LP4100 → 0


「凄まじき決闘が、今終焉を迎えた!!勝者、神楽遊次!
ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選 決勝戦へ駒を進めたのは、
神楽遊次ですッ!!」

瞬間、歓声が沸き上がる。
灯たちも大きく拍手を送る。

彼女らは確信していた。
虹野譲と対峙することになっても、遊次はもう迷わないと。
遊次なら、譲の願いも背負って、決して諦めずに進み続ける。

そして、その願いを後ろから支えて、共に叶えることこそが、自分たちの使命だ。




膝をつくシャンリンの前に、遊次が立つ。

「仲間との再起…その願いも、またこうして敗れた」
シャンリンは膝をつきながら、俯き、敗北に悔しさを滲ませた声で言う。

「相手の願いを背負うと言った君は、どうするつもりなのかな。
まさか、君たちがお金を出してくれるの?」

「アンタらがそれを望むんなら、俺はそうする。
そのためにいっぱい依頼を受けて、稼いで、なんとしてもアンタがまた立ち上がれるようにする」

シャンリンはぽかんと口を開け、呆気に取られていた。
立てていた片膝が、ぱたんと力をなくして落ちる。
そのまま腰が崩れ、両脚を内側に折り込むようにして、ぺたりと地面に座り込んだ。
今まで見せていた毅然とした姿勢とは打って変わり、ただ1人の女性の姿がそこにはあった。

「…冗談のつもりだったのだけど、本気?
じゃあ君は、これから戦う相手の願いが全て資金援助なら、それを全部肩代わりするの?」

「その覚悟はしてるぜ。背負うって言った以上、絶対にやり遂げる。
でも願いを背負うってのは、肩代わりしてやることだけじゃないと思う。
まだ俺もわかんねーけど…とにかく、そいつの願いと全力で向き合って、
一緒に理想に向かって歩いていくってことが、大事なんだ」

「…まあ、結局それも俺のワガママなのかもしれないけどな。
でも、そうせずにはいられねえんだよ」

遊次の意思は明確だった。
どれほど困難な道になろうとも、彼に諦めるつもりは毛頭なかった。
全ての言葉を強く言い切り、本気で相手の願いと向き合う覚悟を示した。

「…私たちも、これまで再起のために資金を貯めてきた。
君たちに全て頼るつもりはない。私も、そんなことは望まない。
それでも…力を貸してくれるか」

シャンリンが遊次を見つめる。

「あぁ!」

彼の明快な返事に、シャンリンはふっと笑みを浮かべる。
全く根拠はないが、その根拠のなさすぎる彼の自信が、
何故だかシャンリンを「大丈夫だ」という気持ちにさせた。

遊次が笑顔で手を差し伸べる。

「また、デュエルしようぜ」

シャンリンははっとした。
それは4年前、願いを潰す自覚も、覚悟もなかった少年の、無垢なる言葉。

しかし、手を差し伸べる彼の表情には、大いなる覚悟と、自覚が宿っていた。

「…あぁ。今度こそ負けないからな」
シャンリンは遊次の手を強く握り、立ち上がった。
彼女の表情は、柔らかく、そして晴れやかだった。



幼い頃から掲げる、遊次の願い。
それは、コラプスによって人生を狂わされたドミノタウンの人たちの、笑顔を取り戻すこと。
少しでも自分の力で、誰かを笑顔にできたら…そのために、遊次はNextを創った。

それでも、全ての人を救うことは、あまりにも遠い道のりだ。
時間をかければかけるほど、"また"諦めてしまう人が出てきてしまうかもしれない。

ヴェルテクス・デュエリアの優勝によって、ドミノタウンの復興を実現できれば、多くの人を救える。
まるで、魔法のように。

そして、遊次は8ヶ月前、怜央との戦いで、彼の願いをも背負うこととなった。
物を盗み、力で奪うことでしか生きられなかった、チームの少年・少女。
彼らを真っ当な未来に導くことこそが怜央の真の願いであり、
遊次はそれを背負い、怜央をNextに誘った。

子供たちが居場所を失うこととなったのは、コラプスによる治安の悪化も大きな原因だ。
ドミノタウンの人々の救済という願いには、その子供たちも含まれる。

この大会に勝ち上がることは、相手の願いを奪うことを意味する。
それでも、この願いを諦めるわけにはいかなかった。

しかし諦められないのは、自分が倒した者たちの願いも同じだった。

「答えはどちらか一つじゃない」
それは遊次が、灯の言葉や、空蝉とのデュエルで気付かされたことだ。

ならば、全て背負うしかない。
ドミノタウンの人たちの願いも、怜央や子供たちの願いも、そして、倒した相手の願いも。

願いとは、1人で背負えるほど、軽いものではない。
だからこそ、仲間の支えが必要なのだ。


マルコスの願いも、空蝉の願いも、シャンリンの願いも…そして、虹野譲の願いも。
これから戦うことになる者たちの願いも。

全て"背負う"ことこそ、相手の願いを奪う者の責任と、覚悟。

どんなに茨の道でも、決して諦めない。

それこそが遊次の辿り着いた"答え"だ。




誰もいないスタジアムの通路で1人、俯く車椅子の青年の姿があった。

「それが、君の出した答えなんだね。神楽遊次クン」

青年は1枚のカード…「ビックリボー」を見つめながら、小さく、そして強く呟く。


(他人の願いなんて所詮、他人事だ。
誰かの願いを"背負う"なんて、誰にもできないんだよ…!)

譲の桃色の瞳に強い怒りが宿る。
見つめる先には、大勢の熱気に包まれた観客たちがいるフィールドがある。

「君を倒して…僕は生きる。
生きなくちゃいけないんだ…!」


第45話「答え」 完




動き出す、裏カジノ打倒の依頼。
ミロヴェアンや雨宿の協力を得て、
ついに会員制高級サロン「マジシャンズ・スターダスト」へ潜入する。

架空の社長として、高級スーツに身を纏ったイーサンは、
雨宿と共に、裏カジノの元締めへと迫る。

元締めを打倒するためには、裏カジノの会場に潜入し、証拠を掴む必要がある。

人気のない夜道、イーサンに這いよる影は、裏カジノ案内人「稲垣拓海」。
彼こそが、依頼を完遂し、2億7000万サークを取り戻すための"鍵"だ。

イーサンはある条件を突き付け、稲垣にオースデュエルを仕掛ける。

「違う…コイツは擦り寄ってきたんじゃない!
そう思わせて、俺に"道"を選ばせたんだ…!」


次回 第46話「潜入作戦」
現在のイイネ数 23
作品イイネ
↑ 作品をイイネと思ったらクリックしよう(1話につき1日1回イイネできます)


名前
コメント

同シリーズ作品

イイネ タイトル 閲覧数 コメ数 投稿日 操作
67 第1話:なんでも屋「Next」 774 2 2023-03-25 -
84 第2話:妖義賊(ミスティックラン) 599 0 2023-03-25 -
65 第3話:相棒 592 0 2023-03-25 -
60 第4話:動き出す影 505 0 2023-03-26 -
71 【カードリスト】神楽 遊次 764 0 2023-03-26 -
63 第5話:大災害「コラプス」 636 0 2023-03-27 -
73 第6話:2000万のプライド 537 0 2023-03-27 -
71 第7話:悪しきを挫く至高の剣士 685 0 2023-03-29 -
55 第8話:解き放たれた猟犬 493 0 2023-03-29 -
58 第9話:陸・空・海を統べる者 452 0 2023-03-31 -
65 第10話:悪しき魂を塗り潰す彩 481 0 2023-04-01 -
90 【カードリスト】花咲 灯 652 0 2023-04-02 -
67 第11話:番犬の尾を踏んだ日 531 0 2023-04-02 -
67 第12話:雷の城塞 628 0 2023-04-04 -
67 第13話:平穏を脅かす者に裁きを 461 0 2023-04-06 -
58 【カードリスト】イーサン・レイノルズ 509 0 2023-04-07 -
88 第14話:決戦前夜 682 0 2023-04-09 -
79 【お知らせ】お久しぶりです。 1624 2 2024-02-09 -
42 第15話:爆焔鉄甲(スチームアーミー) 512 2 2025-01-06 -
47 第16話:魂の衝突 499 2 2025-01-13 -
43 第17話:EDEN TO HELL 429 0 2025-01-22 -
53 第18話:憤怒の白煙 508 1 2025-01-29 -
34 第19話:天に弧を描く義の心 365 2 2025-02-05 -
33 第20話:To The Next 403 1 2025-02-12 -
37 【カードリスト】鉄城 怜央 324 0 2025-02-12 -
35 第21話:踏み出す1歩目 344 0 2025-02-19 -
27 第22話:伸し掛かる天井 385 0 2025-02-26 -
33 第23話:壁に非ず 355 0 2025-03-05 -
23 第24話:滅亡へのカウントダウン 439 0 2025-03-12 -
22 セカンド・コラプス編 あらすじ 396 0 2025-03-12 -
36 第25話:アクセラレーション! 424 0 2025-03-19 -
26 第26話:虹色のサーキット 373 3 2025-03-26 -
20 第27話:ふたりの出会い 230 0 2025-04-02 -
31 第28話:親と子 236 0 2025-04-09 -
26 第29話:心の壁 298 0 2025-04-16 -
28 第30話:無償の愛 283 0 2025-04-23 -
32 第31話:開幕 ヴェルテクス・デュエリア 390 0 2025-04-30 -
35 第32話:究極の難題 472 0 2025-05-07 -
34 第33話:願いの炎 342 0 2025-05-14 -
41 第34話:ただそれだけ 381 0 2025-05-21 -
29 第35話:シークレット・ミッション 245 0 2025-05-28 -
32 【カードリスト】七乃瀬 美蘭 361 0 2025-05-28 -
33 第36話:欲なき世界 326 0 2025-06-04 -
36 第37話:禅問答 340 0 2025-06-11 -
27 第38話:紅と蒼の輪舞 190 0 2025-06-18 -
25 第39話:玉座 201 0 2025-06-25 -
29 第40話:"億"が動く裏世界 332 0 2025-07-02 -
24 第41話:生粋のギャンブラー 189 0 2025-07-09 -
29 第42話:運命のコイントス 248 0 2025-07-16 -
29 第43話:王選(レガルバロット) 210 0 2025-07-23 -
27 第44話:願いの芽を摘む覚悟 262 2 2025-07-30 -
23 第45話:答え 193 0 2025-08-06 -
21 第46話:潜入作戦 185 0 2025-08-13 -
26 第47話:心の象徴 191 0 2025-08-20 -
21 第48話:繋ぐ雷電 278 0 2025-08-27 -
23 第49話:帳が上がる時、帳は下りる 245 3 2025-09-03 -
17 第50話:影を焼き尽くす暁光 162 0 2025-09-10 -
3 第51話:夜明け 65 0 2025-09-17 -

更新情報 - NEW -


Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
Amazonバナー 駿河屋バナー 楽天バナー Yahoo!ショッピングバナー