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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第56話:交わる運命

第56話:交わる運命 作:

ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選。
遊次は決勝戦で虹野譲を倒し、晴れて本戦への出場権を手に入れる。
そしてその舞台裏、選手控室にて、虹野譲とNextの4人は顔を突き合わせていた。

「…そっか。その子がきっかけをくれたんだな」

「あぁ」
遊次達は、全てを譲から聞いた。
病気のこと、母親の死のこと、病室で出会った女の子がきっかけで戦うことを決意したこと。

「それで…譲の病気は、スヴァイスの国立医療研究所ってとこでしか治せないんだな?」

遊次達はヴェルテクス・デュエリアに願いを捧げる以外の方法で譲を救わなければならない。
ヴェルテクス・デュエリアであれば、その研究所で治療を受けるという願いは、容易く叶えられただろう。
しかし、デュエリア政府による権力と財源の後ろ盾なしにこの願いを実現するのは、容易ではない。

「散々そこに問い合わせた。2億サークでなんとか受けられるかもしれない、というレベルらしい」

「2億…」

譲が突き付けた事実に、灯は絶句した。
しかし、遊次の瞳は揺れていない。

「2億でなんとかなるなら…なんとかなるかもしれねえ。
ちょうど今日、そのレベルのお金が絡んだ依頼を解決したばっかりだしな」

遊次は本気でそう信じているようだが、イーサンは少し視線を逸らす。

(金はどこかから湧いてくるものじゃない。
裏カジノの依頼は、大金を持った連中を相手取ったから、大金が動いただけだ。
しかし…今は譲の希望を奪うわけにはいかない)

イーサンにとっては、譲の願いが果たされるかどうかは、重視する問題じゃなかった。
自分ができるのは最善を尽くすことだけだ。
その結果の果てにたとえ深い悲しみが待っていたとしても、大切なのは遊次がそれを乗り越えられるかどうか。
イーサンはあくまで達観した視点で、遊次の成長を見守ろうとしている。

「よければ診断書とか、できる限りの情報をもらいたいな」

「あぁ、わかった」
灯の言葉に譲は頷く。

「言っとくが、こっちも有り金全部積むわけにもいかねえ。俺らにも俺らの守るべきもんがある」

怜央は壁にもたれかかりながら、無遠慮に言い放つ。
譲は視線だけを向ける。

「だが…お前をむざむざ死なせる気はねぇ。
どんな人間を巻き込んででも、治療は受けさせてやる」

続く怜央の言葉に、譲は柔らかく口角を上げる。

「意外だね。君がそんなに情熱的だったなんて」

自分の願いが一度潰えたにも関わらず、譲は落ち着いた様子だ。
それは、死んでも悔いはないと思えることができたからだろうか。

「フン。お前が死んだら、うちの所長がトラウマでデュエルができなくなっちまうかもしれねえからな。
それに、俺がリベンジする前に死なれちゃ困る」

「フフ、今度はどんな罠に嵌めてあげようか。楽しみにしてるよ」

譲の軽やかな言葉に、怜央は少し苛立ちを燃やすも、彼のポジティブな言葉にひとまず安堵を覚えたのも確かだった。

「どんな人間を巻き込んででも、か。確かに怜央の言うとおりだ。
なんせ敵は元・不治の病なんだ。俺らだけで解決しようとは思わない方がいいな」

灯とイーサンが頷く。
遊次は握った拳を見つめる。

「とにかく、俺らはお前を救うために全力を尽くす。絶対に諦めねえからな」

遊次は握った拳を譲に突き出す。

「…あぁ。最後の1秒まで、諦めるつもりはないよ」

譲が右手を握り、遊次の拳に軽く当てる。

コンコン。
後ろからドアをノックする音が聞こえる。

「遊次、連れてきたよ」
アキトの声だ。

遊次が控室のドアを開けると、そこにはこの大会で遊次と戦ったマルコスと空蝉がいた。
その姿を見た遊次の顔はぱっと明るくなる。

「マルコス!空蝉さん!会いたかったぜぇ!」

「まるで奇跡の再会のような面持ちだな。
そなたと相まみえたのは2週間前だというのに」

空蝉は呆れにも近い声色で言葉を返す。

「遊次君が呼んでるっていうから来たけど…なに?話したいことって」

知り合いがほとんどいない中、緊張した様子でマルコスが顔を覗かせる。

「ま、とにかく入れよ!ちょっと狭苦しいけどな!」

「自分の部屋みたいに言ってるけど、僕の控室だからね…」


マルコスと空蝉は狭い部屋をかき分け、部屋に入る。

「伝えたいのは1つだ。
マルコス、空蝉さん…俺は、2人の願いも背負いたいんだ。
それが願いを奪った奴の責任だし、何より俺がそうしたいから!」

遊次の主張は明快だった。
シャンリンの願いを背負うことはすでに本人とも合意済だ。
遊次の意思をまだ伝えていないのはこの2人だった。

「シャンリンさんとのデュエルでも言ってたよね。
ホントに、すごいと思う。僕なら、そんなこと言えないから」

マルコスは俯き気味に言う。

「ありがとよ。でも、褒めるのはお前の願いが叶ってからにしてくれよな」

遊次は笑顔で返す。マルコスもその顔を見上げ、自然と笑顔になる。

「願いを背負う…か。世界から技術を消し去る願いでもか?」

空蝉はいつものように仏頂面だったが、少し意地悪な表情にも見えた。

「そりゃ無理だな。そんなの叶えたくねーし」
遊次は口をとがらせ、ぶっきらぼうに返す。

「願いを背負うってのは、ただ言いなりになるって意味じゃないぜ。
その人の願いと本気で向き合って、一緒に歩いてくってことだ。
例えば、技術が暴走しないようにしながら、森を保護するためにはどうするか…とかな」

ただ願いを肩代わりするだけではなく、その者の心と真剣に向き合い、成すべきは何かを考える。
それこそが遊次にとって「願いを背負う」という意味であった。

「…気持ちは受け取ろう。しかし拙僧は自らの手で願いを成す。手出しは無用だ。
しかし、もし何かあれば頼らせてもらうとしよう。なんでも屋とやらをな」

「…あぁ!」
空蝉は他の者達とは違い、願いが破れたわけではなく、新たな解を得た者だ。
自分の手で再び道を歩もうとするのも頷ける。

「マルコス君の学校は?その…廃校になっちゃうって言ってたけど」
灯は少し伺いながら尋ねる。

「…うん。まだ取り壊しが進んでるわけじゃないけど、決まっちゃったことだって、先生は言ってた」

マルコスは自分達の大切な思い出である学校を廃校から守るためにこの大会に参加した者だ。
空蝉とは違い、遊次に敗れたことで明確に願いから遠のいている。

「まだ進んでないなら、止められるかもしれないな。
もし廃校が無理やり押し通されたようなら、こちらの抗議にも正当性はある。
ただし行政の決定を覆すのは簡単じゃないぞ」

イーサンはマルコスに希望を与えつつも、その言葉は地に足がついたものだった。

「…はい。それでも、このままじゃ納得できないんです」

「背負うと言った以上、俺はどんな手を使ってでもやり遂げるぜ。
みんなも協力してくれ」

遊次は振り返り、灯、イーサン、怜央と目を合わせる。

「当然だ。所長のやりたいことを実現するのが、部下の役目だからな」

こうして、遊次はシャンリン、マルコス、譲の願いを背負い、仲間と共にその実現へと歩みだそうとしていた。
マルコスと空蝉の連絡先を聞いた後、2人は控室を後にした。


控室を出た後、譲は遊次に声をかけた。
灯とイーサン、怜央も振り返る。

「君にもう1つ、お願いしたいことがあるんだ」

「なんだ?なんでも言ってくれ!」

無邪気に返す遊次に対して、譲は真剣な表情だ。
譲はデッキから1枚のカードを取り出し、それを見つめる。

意を決して、譲はそのカードを遊次に差し出す。

「このカード…ビックリボーを、受け取ってくれないか」

遊次は目と口を大きく開けて驚く。

「なっ…何言ってんだ!ビックリボーはお前の大事な相棒だろ!」

「そうさ。だからこそ、君に託すんだ」

この場の誰もが譲の言葉の意味を理解できなかった。

「僕はビックリボーに、もっと面白い世界を見せてあげると誓った。
でもそれは、世界の頂点へ上らなければ見えないものだ」

「僕は当分その約束を果たせそうにない。だから…君がビックリボーに、頂点の景色を見せてあげてくれないか」

譲の熱意は十分伝わっている。しかし遊次は納得できなかった。

「確かにビックリボーはデュエルを楽しむ気持ちがあって、もっと高みを見たいと思ってる。
でも、それは"お前と"だろ。俺じゃ意味ないんだよ」

譲は少し考えた後、口を開いた。

「本戦は4ヶ月後。症状はさらに悪化して、僕は入院することになるだろう。
でも、本戦はテレビ中継されるだろう。もしそこでビックリボーが頂上を目指して戦う姿を観られたら…これほど心強いことはないよ」

「譲…」

譲の言葉に遊次の心は動いた。
もし自分が同じ立場だったとしたら、譲と同じように考えるかもしれないと思った。

「でも病気の時だからこそ、ビックリボーが側にいてくれた方がいいんじゃねえのか?」

「バカ言うなよ。僕とビックリボーはいつも心で繋がってる。
カードを持ってるかどうかなんて関係ないさ」

「…そうだな」

「それに、ビックリボーは必ず君の役に立ってくれる。
僕のデッキも、この子が来てくれたから完成したんだ。
相手が勝ちを確信した瞬間、それを全部ひっくり返すのは…本当に最高だよ」

譲は怜央に視線を送る。
「全部ひっくり返された」張本人である怜央は、思わず顔を引きつらせる。

「僕は、君だからこのカードを託すんだよ、神楽遊次クン」

譲は真剣な眼差しで遊次を見つめる。

遊次は大きく息を吐く。
そして、譲が差し出したカードを受け取った。

「わかった。お前に、ビックリボーとデュエルドームに立つ姿を見せてやる!」

遊次の高らかとした決意の声に、譲は安心したような笑みを浮かべる。

(このチャンスを逃せば、次は4年後だ。
その時には僕が生きているかは…わからない)

譲は胸の内で密かに、ビックリボーとの別れを覚悟していた。
しかし、まるで心を読んだかのように遊次が口を開く。

「絶対、返しに行くからな」
彼の瞳の真っ直ぐさに、譲は突き動かされた。

「…あぁ」


こうして、ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選は幕を閉じた。
本戦は4か月後だ。
それまでNextは、遊次が背負った願いを実現するために奔走することとなる。


しかし、彼らには想像を絶する大きな試練が待ち受けていた。




ニーズヘッグ・エンタープライズ本社、その79Fに位置するシークレットルーム。
床は艶を抑えた黒石で敷き詰められ、低く沈む照明が天井から淡く差す。
窓はなく、密閉された静けさが鼓動のように重苦しく響いていた。
部屋の中央には巨大なモニターが設置されている。

このシークレットルームには、ニーズヘッグ・エンタープライズ社長オスカー・ヴラッドウッドと、
彼に招集されたルーカス・ヴラッドウッド、七乃瀬美蘭、鄭 紫霞 (ジェン・ズーシャ)の4人が集っていた。

重々しい空気の中、オスカーが口を開く。

「隕石衝突まで残り8ヶ月。一刻の猶予もない。
だが『セカンド・コラプス』には最後の"鍵"が足りない」

オスカーは頑強そうなガラスケースに飾られた、それぞれ意匠の異なる5つの鍵を見つめる。
この鍵は「パラドックス・ブリッジ」という、ドミノタウンに6基に分かれて存在する"空間に裂け目を入れる"装置を起動させるためのものだ。

ニーズヘッグはこの装置で、この世界と"モンスターワールド"と呼ばれる異世界を繋げることを目論む。
その異世界のエネルギーがこの世界に流れ込むことで、モンスターを"召喚"できるようになるとオスカーは言う。
そして全世界の人々が召喚したモンスターで、地球に迫る超巨大隕石に立ち向かう…それが「セカンド・コラプス」と呼ばれる計画の中身だ。

政府が管理するこの装置を奪うために、ニーズヘッグはすでに世界に点在する鍵を5つ手に入れている。
しかし、最後の1つがなければパラドックス・ブリッジは起動しない。

「パラドックス・ブリッジ開発に携わったあらゆる政府関係者を当たりましたが…誰も鍵のことを知りませんでした。
関係者内部でもトップシークレットだったようです」

ジェンは淡々と事実を述べる。

「そろそろ最後の手段に出ることを考えた方がいいよ、兄さん」

ルーカスが腕を組み壁にもたれかかりながら、真剣な目でオスカーを見る。

「最後の手段って?」

何もわかっていない様子の美蘭に、ルーカスは一つため息を交えながら言葉を返す。

「パラドックス・ブリッジを造らせた張本人に、最後の鍵の在り処を聞けばいい。
大統領『マキシム・ハイド』にね」

「えー!?そんなん、教えてくれるわけないじゃん!」

美蘭が素っ頓狂な声をあげる。
ルーカスはまたため息をつくと、ジェンに視線を送る。
その意図を汲み取り、ジェンは優しい声色で語る。

「それがそうでもないのですよ、美蘭さん。
我々が鍵を持っている以上、政府の『モンスターワールド侵攻計画』は破綻しています。
我々と手段は違えど、彼らの目的もこの地球を隕石から守ること。
であれば、政府もこちらの計画に従わざるを得ないはずです」

美蘭は眉間に皺を寄せて腕を組みながら、目を瞑って頭を回転させる。

「う〜ん…でも、そんな簡単に言うこと聞いてくれると思えないけどなー。
だって、あの大統領だよ?」

「なら僕達が折れるまでチキンレースでもするのか?
向こうもお前みたいにバカじゃないんだ、そんな愚かな真似はしないだろ」

「あぁ〜〜!バカって言った!バカって言ったほうがバカなんですぅー!バーカバーカ!」

厳かな部屋に似つかわしくない低レベルな罵倒が響く中、オスカーがそれを切り裂くように口を開く。

「政府と直接交渉はしない。"まだ"、な。
政府関係者が外れなら、別の金脈を掘り進めるまでだ」

ジェンはオスカーの言葉の意図を瞬時に掴みながら、静かに反論する。

「しかし…DTDLの研究員は政府関係者以上に何も知りません。
パラドックス・ブリッジは政府とDTDLが合同で造ったものですが、DTDLはコラプスの全責任を押し付けられ、政府と対立したまま解散しています。
政府が管理するパラドックス・ブリッジの鍵の在り処を知っているとは…」

「知ってたとしても所長の神楽天聖か、副所長のクロム・ナイトシェイドぐらいだろうね。どっちも死んでるけど。
で、兄さん…"別の金脈"とやらはどこだ?」

ルーカスが問うと、オスカーはモニターにある写真を映し出す。

そこに映し出されていたのは、遊次・灯・イーサン、怜央…Nextの面々であった。

「ウソっ!こ、これ…」

美蘭はその映像に映し出された「ある人物」を凝視し、驚嘆していた。
  
「…まさかこんなところにいたなんて…」
美蘭が独り言を呟く。

ジェンは、美蘭が見つめる者とは違う人物に視線を送りながら、少し疑問をはらんだ声色で言う。

「神楽遊次…ですか。確かに神楽天聖の息子ではありますが…調べるところによると彼は記憶喪失のようで、何か情報を持っているとは…」

「ターゲットはそいつじゃない」

オスカーは短くジェンの言葉を否定すると、一人の人物をアップにする。

「えっと……誰だっけ…?」

美蘭は困惑した表情を浮かべる。
ルーカスは露骨に呆れた様子で答える。

「お前、本当に何も知らないんだな。
こいつはイーサン・レイノルズ。
神楽天聖が失踪した後、息子である神楽遊次の親代わりをしている男だ。
でも、こいつは神楽天聖と深い繋がりは見つからなかったはずだけど?」

ルーカスの言葉に、オスカーは淡々と言葉を返す。

「では神楽天聖は、大した親交のない人物に息子を託したというのか」

「それは…」
ルーカスは言葉を詰まらせる。

「もし神楽天聖とイーサン・レイノルズの間に、俺達には見えない繋がりがあるとすれば…それは神楽天聖の秘密に近づくための金脈となり得る」

オスカーは黒いマントを翻し、3人の前に立つ。

「美蘭、この男から情報を引き出せ。
ただし、こちらが尻尾を掴まれるな。
仕掛けるのは、奴がパラドックス・ブリッジに関する情報を持ってると確定させた後だ」

「はいっ!」

「ジェンは美蘭に協力しろ。ガジェットが役立つだろう」

「承知しました」

「ルーカスは引き続き別路線から鍵の在り処を探せ」

「わかったよ、兄さん」

オスカーの指示を皮切りに、3人は身を翻し、シークレットルームを後にした。




ヴェルテクス・デュエリアから2週間後。

遊次が背負った願いは正式な依頼としてNextが請け負うこととなった。
遊次達は調査で走り回りながら、通常どおり町の様々な依頼の対応にも追われ、忙しい日々を過ごしている。

裏カジノ打倒の依頼についても、依頼者のハイデンリヒ社長及び落合に事の顛末を報告した。
ハイデンリヒからは約束通り成功報酬3000万サークを受け取った。
そして落合とザリフォス、ミロヴェアンには、彼らが失った額からNextの取り分を引いた額を支払い、遊次達はこれにて、依頼を完全に解決したこととなる。

この依頼でNextに入った額は、前金も含めると7300万サーク。
ここから、経費やアキトへの報酬も差し引き、それが怜央が目的としている「チームの子供達の未来」のための資金となる。
それは子供達5人とドモン、ダニエラ、怜央達が暮らせるほどの広い家への引っ越しや、子供達が環境を変えて新たに歩みだすためのスタートダッシュとして、十分であった。
しかし、これだけではまだ全ての子供達の未来を支え続けられる額ではない。
怜央はこれからもNextの一員として、子供達の未来のために活動してゆくこととなる。

そして今、遊次達4人は事務所で、各々の調査結果を報告しているところだ。

「廃校の件、市議会議員さんに確認してみたけど、やっぱり学校側の意見は聞く耳持ってもらえなかったって」

「マジかよ!いくらショッピングモール作りたいからって、そりゃねーだろ!」
灯の報告に遊次が声を大にして怒る。

「そうなると、民事訴訟の線で行くのがやはり現実的だな」

「うん。元々それも考えてたらしいんだけど、議員を敵に回すとどうなるか…みたいに脅されてたって。
廃校を推し進めた人は、この町じゃ学校関係にも顔が利く人だったみたいだし。
お金も時間もかかるし、なかなか踏み込めなかったんだろうね」

「だがこうなりゃ、全面戦争しかねえな」
怜央はなぜか少し楽しそうに笑みを浮かべている。

灯が多くの関係者から具体的な聞き込みを行ったことで、マルコスの願いについては、すでに進むべき道は見えたようだ。

「遊次の方はどうだ?」

「俺は譲の病気のことで、特定難病支援協会の会長と話してきた。
全力を尽くすって言ってくれたぜ。
でもスヴァイスの研究所でしか治せないのも事実だし、そこにどう繋げるかはまだ見えてこねえ…」

遊次は悔しさを滲ませる。
譲がどれだけ手を尽くしても、ヴェルテクス・デュエリアしかないと結論づけたほどだ。
数週間で解決策が見えるはずはなかった。

「俺もクラウドファンディングで集められないか考えてみたが、医療支援は最高でも数千万サークまでしか集まった事例はない。
2億となるとさすがに全てをクラウドファンディングで賄うのは無理だ。
だが別の策との複合でなら有用だろう」

「2億ってのもそのなんとかって研究所の言い値だろ。
ちょっと"お願い"すりゃ値下げもあんだろ」

怜央の言葉に遊次は眉をしかめる。

「お願いって…力づくってことだろ?」

「どんな手を使ってでも譲を救うって啖呵切ったのはお前だろ。
まさか覚悟できてねえのか?」

「んなわけねえだろ!」
遊次は思わず立ち上がり、声を張り上げる。

「…でも、今は正攻法でいく。頼りになるのはその研究所だけなんだ。
下手なことして怒らせたら、それこそ道はなくなっちまう」

ぴりついた空気が事務所に漂う。
この静寂が、命を背負う重みを証明しているようだった。

時計の針は13:50を指している。
すると、ドアを開ける音が、静まった事務所に響く。

「あの…なんでも屋さん、ですか?」

4人が扉の方を見ると、おどおどしたメガネの女性が立っていた。
年齢は20代前半ほどだろうか。黒髪のストレートで、重めの前髪が特徴的だ。
青い瞳に白い肌をしている。カーキ色のセーターを着ており、その上から白衣を纏っている。


その女性は事務所の中に通された後、ちょこんと控えめにソファに腰かけている。

「あ…ありがとうございます」
依頼人と思われる女性は、灯の入れた紅茶にお礼を言う。

「それで…本日はどのような御用でしょうか?」
イーサンが丁寧な口調で問う。
遊次達も、先ほどまでの少し不穏な空気感は拭い、依頼人と向き合う。

「はい…私、シオーネ・マリンスキーと申します。
一応、研究者の端くれでして、色んな装置を作ったりしてます。
あ、でもそんな大したものじゃなくて…」

彼女は毛先をくるくると指で巻きながら勝手に謙遜を始める。

「へー、お若いのにすごいです!どんな研究なんですか?」
灯はぱっと明るい笑顔で彼女に接する。

「…幽霊を見る研究です」

「…幽霊!?」
遊次が意表を突かれたような声を上げる。

「はい。私は子供の頃からずっと、幽霊がいると信じてきました。
時折、誰もいない部屋で物音がしたり、物が移動していたり、そういうことがよくあったんです。
それを友達に話したら、そんなことありえないって否定されて…。
挙句、目立つために嘘をついてるなんて言われて、いじめられるようになりました」

「…ひでえ話だな」
遊次は顔をしかめる。
イーサンも複雑な面持ちで彼女の話に耳を傾ける。

「でも、嘘なんかじゃないんです!
だからそれを証明するために、私は勉強して科学者になったんです!」

彼女の言葉には熱量と気迫があった。
遊次はシオーネの目をまっすぐ見る。

「俺達は疑ったりしません!
俺もそういう不思議なことがあったりするし、あんまり信じてもらえなかったから、気持ちはよくわかります」

「…ありがとうございます」
シオーネは瞳を揺らす。

「それで、今回はどのようなご依頼でしょうか?」

「はい。先ほども言ったように、私は幽霊を見る研究をしてます。
それで…ついに幽霊を見る機械が完成したんです!」

「ま、マジですか!?」

遊次は目を輝かせて驚く。
対して怜央は、まだ彼女の話に懐疑的だったが、口を挟まずにいた。

「はい。この装置があれば」

シオーネはシルバーのスーツケースを開くと、そこには腕時計型の装置が5つ入っていた。

「おぉ…なんかすげーハイテクそう…」

「皆さんにはこの装置のテストをお願いしたいんです」

「アンタの周りの人間じゃなくて、なんで俺らなんだ?」

怜央はずけずけと無遠慮に質問する。

「…私は1人で研究してますし、変わり者だと思われてて、友達なんていませんから。
こんな依頼を受けてくれるところなんて他にないですし」

少し気まずい雰囲気が流れた。遊次が肘で怜央を小突く。
イーサンはすぐにフォローして別の話題に移す。

「私達を頼ってくれてありがとうございます。
一応聞いておきたいのですが、どのような原理で幽霊が見えるようになるのでしょうか?」

「人間の目が感知できるのはおよそ380~750ナノメートルの可視光だけです。
ですがこの時計には紫外線や赤外線、さらにはテラヘルツ波まで捉える広帯域センサーが搭載されていて、幽霊が発しているごく微弱な電磁波や熱的ゆらぎを検出します。
その信号は内部で演算処理され、可視光領域のパターンへ変換されます。そして網膜投影式のディスプレイを通じて視界に重ね合わせることで、私たちには幽霊の姿が実体のように映し出されるのです」

シオーネは髪の毛を指先でくるくるとしながら、一気に言葉を紡ぐ。
灯はその指先を見つめ、何か考えている様子だ。

「よ、よくわかんないけど、なんか凄そうだ!」
あまりにも滞りなく説明するシオーネに、遊次は目を回す。

(本当に幽霊とやらが見えるとは思えない。
だが、思い込みや虚言だとしても、俺達にできるのは彼女に付き合うことだけだ)

イーサンもシオーネの説明に疑問を抱いたものの、彼女の言うことが真実かどうかはNextにとっては問題ではないと考える。

「では、テストを始めましょうか。
この腕時計?を付ければいいんですか?」

灯がスーツケースの中の装置を1つ取り出す。

「はい!皆さんもどうぞ!」

シオーネは嬉しそうに腕時計を他の4人の前に置く。

「なんかちょっとドキドキしてくるな…」
そう言いながら、遊次は真っ先に装置を腕に巻く。
灯、イーサン、怜央も続いて装置を身に着けた。

「テストはここでやるのか?もし成功してもこの事務所に幽霊がいるってことになっちまうが」

「そ、それは困る…!いやでも、どうせならいないことを証明してくれた方が…。
あぁでももし本当にいたらどうしよう!!」

意地悪な視線を送る怜央の言葉に、遊次はうろたえる。
シオーネは彼らに微笑ましげな笑顔を浮かべる。

「まずはこの事務所で試してしてみましょう。
あ、でもその前に、1つ聞いておきたいことがあります」

「なんでしょう?」

遊次が軽い声色で聞くと、シオーネは少し間を置いた後、ゆっくりと口を開く。

「パラドックス・ブリッジって、知ってますか?」


事務所が一瞬、静まった。

「俺は聞いたことないけど…灯は?」

「ううん。私も知らない」

「俺も知らねえな」
そして遊次、灯、怜央の視線はイーサンへと移る。


イーサンの顔は、まるで凍りついたように青ざめていた。
目を見開き、まるで畏怖するようにシオーネのことを見つめている。

「イーサン、なんか知ってんのか…?」

遊次は様子のおかしいイーサンに恐る恐る質問するが、答えるよりも先にシオーネが恍惚とした表情で笑い声を上げた。

「あはははっ!ビンゴっ!」

シオーネは先ほどまでとは別人のように邪悪な笑みを浮かべていた。

「な、なに…どういうこと…」

灯はイーサンとシオーネを交互に見つめ、困惑している。
ただ、今起きていることが異常事態であることだけはわかった。

「じゃあ次の質問いくね。
パラドックス・ブリッジの1つ、『デーヴァ』の鍵の…」

シオーネが言葉を紡いでいる途中、イーサンの視線は自分の腕で赤く光る腕時計型の装置に移る。

そしてすぐにその装置を外し、床に叩きつけた。
耳障りな音と共に、装置は粉々に砕け散った。

「きゃあっ!」
灯の叫びが事務所に響く。
イーサンはシオーネを睨みつけている。

「お、おいイーサン!何してんだ…!」

遊次の問いにイーサンは答えない。
ただシオーネを睨みつけている。
対するシオーネは余裕の笑みを浮かべ、言葉を吐く。

「ふふっ…よく気付いたね。その装置は幽霊を見るためのものじゃない。脈拍と心拍数を計測するためのもの。
本当はもっと反応を見たかったけど…バレちゃったらしょーがないね」

「お前…何者だ」
イーサンは低い声で威圧するように言う。

「アンタこそ何者?特級キミツジコーを知ってるなんて、ただの一般人じゃないよね」

イーサンは何も答えない。
空気が歪んでいる。
イーサンとシオーネ、2人だけが深い別の世界にいるかのようだ。

「まーイイよ。こっからは…無理やり聞き出すだけだからっ!」

シオーネは、まるで爬虫類の皮膚のような質感の緑色のデュエルディスクを腕に装着し、高らかに掲げる。
すると、赤い円のような光が辺りに広がる。

「強制オースデュエル発動」
デュエルディスクから無機質な機械音声が鳴り響く。

「強制…オースデュエル!?」

遊次は状況を飲み込めない様子で辺りを見回す。
しかし、部屋に広がる赤い光の輪は、少しずつ縮小し、やがては消える。

「強制オースデュエルは無効となりました」

「は……?なんで!?」
デュエルディスクの乾いた機械音声に、シオーネは明らかな動揺を見せる。

事務所の空気が一瞬で張り詰めた。
数秒後、シオーネは1歩後ろへ下がりながら呟く。

「…ここまでだね」

その瞬間、怜央が一気に床を蹴り、獣のような勢いでシオーネへと飛びかかる。

しかしシオーネは怜央の手首をがっちりと掴むと、わずかな体捌きで重心を崩す。
次の瞬間、怜央の身体は床に叩きつけられ、鈍い衝撃音が事務所に響いた。

「怜央っ!!」
遊次が怜央のもとへ駆け寄る。

シオーネは余裕のある足取りで扉の方へ向かう。

「待ちなさい!」
灯は怒りの滲んだ表情でシオーネを睨む。

「…また会おうね、灯」

「えっ……」

シオーネは灯にしか聞こえない声で、そう言った。
そして髪の毛をくるくると指先で巻きながら、手を振って扉から出た。

事務所に重い沈黙が訪れる。イーサンは俯いたままだ。
怜央は頭を押さえながら苦悶の表情で立ち上がると、一言、刺すような言葉を向ける。

「説明してもらおうか…イーサン」

イーサンが顔を上げると、怜央が殺意にも等しい怒りが宿った瞳を、自分へと向けていた。

「…俺にもわからないんだ」

「んなわけねえだろ!テメェ、まだしらばっくれんのか!!」
怜央はイーサンの胸ぐらを掴み、言葉をぶつける。

「本当だ!あの女が何者で、何が目的かも…まったくわからない!」

イーサンは負けじと怜央を掴み、2人は一触即発の状態だ。
遊次は2人の間に割って入り、なんとか食い止めている。

混乱と怒りが渦巻く中、灯の頭の中には先ほどのシオーネの言葉が反響していた。

(あれはどういう意味だったの?それに…)

灯が思い出したのは、シオーネが度々していた、髪の毛を指先でくるくると巻く動作だ。

(あのクセ、どこかで見たことがある…。どこか、懐かしいような…)
もう少しで記憶の扉が開きそうだ。
しかし、あと1歩が足りない。

「シオーネ…マリンスキー…?」

そんな名前は全く聞き覚えがない。
しかし、彼女は自分のことを知っていた。
絶対にどこかで出会っているはずだ。
灯は頭の中でその名前を何度も反復する。

シオーネ・マリンスキー。
シオーネ・マリンスキー。
SHIONE MARINSCHI………。


「あっ……」
灯の中に、1人の女の子の顔が思い浮かんだ。


「私…あの人が誰かを知ってる」
怜央、遊次、そしてイーサンは一斉に灯の方へ顔を向けた。

「なっ…あのシオーネって人が?」

「うん。でも、ちょっと違う。
シオーネ・マリンスキーなんて人は、多分いない。
あの人の本当の名前は…七乃瀬美蘭」

灯が口にした名前に、3人は同時に驚く。

「七乃瀬って…ニーズヘッグのか!?」

彼女は世界的なデザイナーであり、世界一の大企業の広告塔だ。
情報に疎い怜央でもその名前は知っていた。

「ニーズヘッグ…。ニーズヘッグが、何故…。
パラドックス・ブリッジを狙ってる…?ならその目的は…」
イーサンは誰にも聞こえないような声で、うわごとのように呟く。

「確かに、何年か前に聞いたことがある…灯と七乃瀬美蘭が昔友達だったって」
遊次がはっとした表情で言う。

「だからって、なんでここに来る?
そもそも顔も全く違ェだろ。なんであの女が七乃瀬美蘭なんだよ」

怜央が苛立ち交じりに問う。

「顔は変装とメイクでなんとかなるよ。
あの人、立ち去る前に言ったんだ。"また会おうね、灯"って。だから知り合いなのは間違いない。
それに指で髪をくるくるするのも、美蘭の昔からのクセだった。
でも確信した理由は、シオーネ・マリンスキーって名前」

灯はテーブルに置いてあったメモ帳に
「SHIONE MARINSCHI」と、彼女の名前を書き記す。

「これを並び替えると…」
灯は下に矢印を引き、その先に文字を書き足す。

メモ帳には「SHICHINOSE MIRAN」の文字が浮かび上がった。

「マジかよ…!これが偶然なわけねえ!シオーネって人はニーズヘッグの七乃瀬美蘭だ!
でも、なんでわざわざそんな自分の正体がバレちまうような名前使ったんだ…?」

「…多分、私に気付いてほしかったから」
灯は、最後に彼女と会った最後の瞬間を思い出す。

(アタシ、最終選考に絶対残るから!だから、見に来てよ灯!)

灯は俯き、顔に影を落とす。

「デュエルディスクを開発したニーズヘッグなら、強制オースデュエルを使えてもおかしくない。
本来は警察か軍隊ぐらいしか持てないはずだが、その権利を乱用しているんだろう」

ようやく少し落ち着きを取り戻したイーサンは、冷静に考えを述べる。

「でも、じゃあニーズヘッグの目的はなんだよ?
なんでこんなとこに乗り込んできて…」

「パラドックス・ブリッジとやらが何かも聞いてねえぞ。
そろそろ観念したらどうだ、イーサン」

遊次は疑問を口にし、怜央は再びイーサンへと詰め寄る。
イーサンは歯を食いしばり、拳を強く握る。

「なんで…なんでここまで来て、こんなことに…!」

イーサンは、心の底から悔しさを滲ませた。
その姿に、遊次の胸中には複雑な感情が入り乱れていた。

(イーサンが何か隠してるってのか…?
10年以上ずっと一緒にいたイーサンが…)

遊次の心に最初に芽生えたのは、哀しさだった。
自分に言えないこと…それもとても大きな秘密。
イーサンはそれをずっと隠し続けていた。

なんでも言い合えると思ってた。
イーサンのことなら何でも知ってると思ってた。
イーサンと出会ったのは記憶を失ってからのことだから。
イーサンと自分との間に、記憶を失う前から変わったことなんて、何一つないから。

イーサンは俯き、髪を右手でかき乱す。
こんなに取り乱したイーサンを見たことがない。

その姿に、かつての父の姿が重なった。
亡き妻に会いたいと涙を流し、抱え込んでいた哀しみを露わにした瞬間。

あの時の俺には、父さんを救えなかった。
俺は父さんのこと、何も知らないままだった。

でも、今の俺なら…。

「話してくれよ、イーサン。
俺はそれがどんなことでも、受け止める。背負ってやる」

イーサンは、涙の溜まった目で、遊次を見つめた。
まるで、そこに救いがあるかのように。

しかし、すぐに首を振り、掌で顔を押さえる。
歯を食いしばった口元だけが、隙間から覗いていた。
イーサンは今、人生で最大級の決断をしようとしている。
遊次にもそれはわかっていた。

「イーサンは、俺達を巻き込むのが怖いんだろ」
遊次の言葉に、イーサンは少しだけ身体を震わせた。

「でもよ…もしイーサンが話したくないなら、俺は俺だけで真実を見つけるぜ。
ニーズヘッグに乗り込んででもな」

その言葉を聞いた途端、イーサンは口を固く結ぶ。
遊次は、ただイーサンの返事を待った。
そしてしばらくの沈黙の後、イーサンは口を開いた。

「…そうだよな。お前はそういう奴だよな、遊次」

イーサンは顔から掌を離す。

「わかった。話すよ。奴らが狙うパラドックス・ブリッジが何かを。
だがこの事実を知れば…Nextそのものが引き裂かれるかもしれない。
それでも…真実を知りたいか」

イーサンは、3人とそれぞれ目を合わせる。
"Nextが引き裂かれる"。
その言葉の意味はわからなかった。
それでも遊次は、それを知らずに日々をのうのうと過ごすことを、正しいとは思えなかった。

「覚悟は、できてる」
遊次は真っ直ぐと答える。
その言葉に続いて、灯と怜央も強く頷く。




事務所のドアの掛札をCLOSEに変えた灯が、事務所の中へ戻る。
事務所は静まり返る。全員は立ったまま、その中央にいるイーサンを見つめる。
そしてイーサンは前を向き、"真実"を話し始める。

「パラドックス・ブリッジ…それは、空間に裂け目を入れる巨大な装置のことだ。
ドミノタウンの地下に、この町を囲うように、6基に分かれて点在してる」

「空間に…裂け目?どういうことだ?」
あまりにも突拍子のない話に、遊次はすぐに疑問を口にする。

「そのままの意味だ。それ以上の説明はできない。
原理は俺も詳しく理解らない」

イーサンの言葉に、それ以上口を挟むことはできなかった。

「その装置の目的はたった一つ。この世界と、別の世界を繋げることだ」

「別の…世界…?」

「その世界はこう呼ばれている。"モンスターワールド"と」

3人は目を丸くした。その名前は、誰もが耳にしたことがある言葉だった。
しかし、それはあまりにも。

「おいおい、いくらなんでもぶっ飛びすぎだぜ!
モンスターワールドだぁ?んなもん、都市伝説の中だけの話だ。
宇宙人とかカッパと変わらねえ!」

怜央の言葉には失笑が含まれていた。それはあまりにも馬鹿げた話だったからだ。
しかし、イーサンはいたって真剣な表情をしている。

「モンスターワールドは、物理的に実在する。
ニーズヘッグの創始者『ヘックス・ヴラッドウッド』が発見した…モンスターが暮らす世界だ」

一同はただ絶句した。何をどう言葉にすればいいか、頭を整理できなかった。

「……信じられない。でも…信じるしかない」

これは、イーサンが意を決して話し始めた真実だ。
先ほどの彼の葛藤を考えれば、これを世迷言と掃き捨てることはできなかった。

「ヘックスはモンスターワールドの存在を、世界に秘匿することを決めた。
世間に知られれば、いずれ争いの火種になりかねないと判断したからだ。
今でもニーズヘッグは秘密裏に、この世界を監視し続けてる」

「だが、いくら固く口外が禁じられてるとはいえ、この話が一切外に漏れないなんて事は不可能だ。
だから都市伝説として、お前達も耳にしたことがあるんだよ。
得てして、真実ってのはそういうものだ。そういう意味じゃ、宇宙人やカッパも実在するかもな」

彼の言葉には説得力があった。
都市伝説として語られていることも、元を辿れば世界に秘匿された1つの真実が、どこからか漏れ出たことに端を発しているのかもしれない、そう感じた。

「俺は、そんな世界があってもおかしいとは思わねえ。
ってか、あるもんだと思ってたぜ」

「…そっか、遊次には聞こえるんだよね、モンスターの声が」

灯は遊次と出会った時から、彼の特殊能力をよく知っている。
クラスメイトにはそのことでバカにされていたが、友人に除け者にされてまでそんな嘘をつき通す意味がないという理由で、彼の言葉に嘘はないのだと感じた。
怜央も、遊次がモンスターの声が聞こえるということを、もはや当然のように受け入れていた。
であれば、モンスターワールドという存在を否定する理由はもはや存在しない。

「で、そのパラドックス・ブリッジとやらは、誰が何のために作ったんだよ?」
イーサンは少し言い淀むが、すぐに答えを示す。

「モンスターワールドの資源を、世界の発展のために使えると考えたんだ。
大統領『マキシム・ハイド』がな」

飛び出た名前はあまりにも大きすぎた。
しかし、もはや遊次達は驚く様子もなかった。

「確かに、ハイド大統領なら言いそうだね。
技術の進歩とか新しいエネルギーとか、そういうことに目がないから」

「でもよ、そんなんダメだろ!モンスターが暮らす世界を荒らすなんてよ!」
遊次は人差し指をイーサンに突き立てる。

「ニーズヘッグも遊次と同じように考えたから、その存在を秘匿したんだ。
でも残念ながらマキシム・ハイドは元ニーズヘッグ役員。
奴は昔からモンスターワールドの資源を狙ってた。
だから社内の主流派と意見が合わずに辞めたってわけだ。
大統領になった後も、ハイド大統領はその夢を追い続け…パラドックス・ブリッジの建造に至った」

「じゃあ話は本題に戻るな。
なんでニーズヘッグはそんな装置のことを調べてんだ」
怜央の問いに、イーサンはしばらくの沈黙の後、答えた。

「目的は…わからない。だが、奴らがあの装置の鍵を狙っているのは確かだ。
パラドックス・ブリッジは6つに分かれていて、鍵もそれぞれ6つ存在する。
それらを全て解放してはじめて、パラドックス・ブリッジは起動する」

「んじゃあ、ニーズヘッグはパラドックス・ブリッジを起動させようとしてるってことか?」

「おそらくな」

灯は生唾を飲み込んだ後、イーサンに問いかける。

「その装置を起動したら、どうなるの?」

イーサンは息を呑んだ。
明らかに躊躇っているのを、誰もが感じた。
そしてこの先にこそ、"Nextが分裂しかねない何か"があるのだと。

「…もしパラドックス・ブリッジが起動すれば、空間に裂け目が入り、向こうの世界のモンスターが、こちらの世界に現れる」

その言葉を聞いた瞬間、遊次と怜央は目を合わせた。
その2人に共通するものは。

「それって…《コラプス》じゃねえか…!!」

遊次の言葉に、怜央は幼い頃の記憶がフラッシュバックする。

突如、空間を引き裂くように現れた、50メートル級の黄金の鎧のモンスター。

そのモンスターが歩みを進める度に、地面は割れ、建物は破壊され、辺りは血に染まった。
ドミノタウンを埋め尽くす阿鼻叫喚の合唱は、今でも怜央の耳にこびりついている。
そして怜央の両親は、自宅が倒壊したことで、あっけなく人の姿を無くした。
それが彼にとって、地獄の始まりだった。

「どういうことだ!!まさかその装置が、コラプスの元凶だってんじゃねえだろうなァ!?」

怜央は怒鳴り声にも等しい声で、イーサンに迫った。
イーサンは目を閉じ、喉の奥からようやく声を漏らした。

「……そうだ」

遊次は頭を押さえる。
灯は、ただ呆然と立ち尽くす。
怜央は、イーサンを掴む指を震わせる。

遊次は、震えた声で胸中に渦巻く感情を吐き出す。

「コラプスの後…みんな、なんで自分がこんな目にって…運命を恨んだんだよ。
でもそれは、どうしようもないことだからって…災害ってのはそういうもんだって、納得するしかなかったんだよ…」

「でもよ…じゃあコラプスは…"誰かのせい"で起きたってのかよ……!!」

遊次が見開いた目には、怒りと悲しみの入り交じった涙が溜まっていた。
そんな遊次を見て、灯も胸を押さえる。

「"誰か"じゃねえ。マキシム・ハイドが、全部仕組んだことだろうが!!」

怜央の声が事務所に響き渡る。
イーサンは俯き気味に、小さな声で言う。

「ハイドの仕組んだことじゃない。あれは……"事故"だったんだ」

遊次ははっとした表情でイーサンを見つめる。

「…どういうこと?」

「14年前のあの日…初めてパラドックス・ブリッジの起動テストが行われた。
だが、モンスターなんて到底通れない小さな穴だけを空間に空ける予定だったんだ」

遊次は、必死に何かを堪えながらイーサンの声に耳を傾ける。
怜央は今にも破裂するほどの怒りを剥き出しにして、イーサンを睨みつけている。

「だが…テストは失敗だった。
起動した途端、パラドックス・ブリッジは暴走し…空間に大穴を開けた。
そして…"あの"黄金のモンスターは現れた」

遊次は、ただイーサンを見つめていた。
イーサンの話を聞いている間、ずっと正体不明の靄が心のなかで蠢いていた。

「じゃあ何だ…?そのテストをした奴が悪ィのか…?」

怜央の息はどんどんと荒くなる。
イーサンは、何も言わない。

「なあ…答えろよ…。
俺は…誰を恨めばいいんだよッ!!」

事務所に静寂が訪れる。
怜央の怒りは、苦しさは、虚しさは、遊次と灯にも痛いほど伝わっていた。
しかし、2人は気付いていた。
まだこれは、イーサンが隠したかった真実ではない。

そしてその"真実"は、すでに首をもたげているということに。

「なあ、イーサン…。1つ、いいか」

イーサンは、何も言わない。

「イーサンは……なんで全部、知ってんだ?」

怜央の瞳が大きく開かれる。
灯は、思わずしゃがみ込んだ。

この場の誰もが、すでに真実に辿り着いていた。

イーサンは重々しく口を開く。

「パラドックス・ブリッジは、政府の研究所ともう1つの研究所が合同で造ったものだ。
そして俺が…パラドックス・ブリッジを造った研究所の…研究員だったからだ」

灯は、耳を塞ぎたかった。
怜央は、さらに呼吸が荒くなる。
遊次は、息が詰まりそうだった。

それでも、まだ、ここから先に進まなければならなかった。

「その研究所の、名前は?」
遊次はゆっくりと、聞かせるように問いかける。

イーサンは顔を伏せ、答える。

「DTDL。お前の父親…神楽天聖の研究所だ」

怜央の視線は、イーサンから遊次に移された。
遊次は、ただ強く拳を握り、俯く。

大統領「マキシム・ハイド」の命によって建造されたパラドックス・ブリッジ。
その起動テストによって空間に巨大な裂け目が発生し、ドミノタウンを破壊した黄金の鎧のモンスターは現れた。

そして、その元凶となったパラドックス・ブリッジを造ったのは…

遊次の、2人の父親だった。

「なんでイーサンが…父さんが…」

遊次は膝をつき項垂れる。
その絶望の重みに、体が耐えられなかった。

思い出すのは、"父さん"の笑顔。
1年しか一緒にいられなかったが、デュエルを心の底から楽しむ彼の笑顔は忘れられない。
どこかの研究所の所長をやっているというのは知っていた。
しかし、まさかパラドックス・ブリッジなどという理解不能の巨大装置を造っていたなんて想像もしていなかった。

だが、少し合点がいく部分もあった。
それは、コラプスの後、記憶を全て失った遊次が目覚めた時のこと。
自分が眠っていたのは固い鉄の寝台で、目の前には大きな機械がずらりと並んでいた。
ただの研究所じゃないのは確かだった。
その記憶こそが、イーサンの話が真実であると直感させた。

「ね、ねえ…。でも、事故なんだよね…?
それに、パラドックス・ブリッジを造らせたのは大統領でしょ?
じゃあ、イーサンは悪く…」

灯の視線は、目の前の遊次と怜央に向かう。
2人は拳に力を込め、必死に何かを押し殺していた。
その先の言葉は、決して、今の遊次と怜央には言えなかった。


遊次の中に、ドミノタウンの人々の顔が次々と浮かぶ。
コラプスによって人生を壊され、疲れ果て、笑顔を失っていった。
浮かぶのはそんな顔ばかりだ。

皆、俺には笑ってみせた。
大丈夫だと言ってみせた。
でもその笑顔には、隠しきれない哀しみが滲んでいた。
だから…。


(必死に前向いてさ、明るく振舞ってるけど、でも、心はどこか暗いんだ。
だから、みんなが心から笑えるようにさ、ちょっとでもその手助けしてえんだ!)

(…あぁ、遊次ならできるさ、絶対。
例えどんなに壊れても…もし町自体がなくなってしまったとしても…人がいればそこが町だ。
皆が力を合わせれば、きっと町は蘇る)


だから、俺はみんなを助けるって誓ったんだ。
あの日、イーサンに。

なのに、お前が。
なんで、お前が…!

遊次がイーサンを強い眼差しで見つめる。
イーサンはまだ俯いたままだ。
そして怜央は遊次よりもさらに強い眼差しでイーサンを睨んでいた。
その眼差しに憎しみが込められていた。

「なんで…この町じゃなきゃいけなかったんだよ」

怜央の問いに、イーサンは俯きながら答える。

「…パラドックス・ブリッジほどの巨大装置を作る土壌が他の町になかったからだ」

答えはしごく単純だった。
だからこそ、受け入れ難かった。

「…それだけかよ。それだけのために…」

たったそれだけのために、この町の人達は最悪の人生を歩むこととなった。
たったそれだけのために、怜央は家族を失い、地獄へと誘われた。
言葉にできない怒りが、怜央の瞳に宿る。

遊次は大きく目を見開き、呆然としていた。

「この町は…父さんの故郷だろ。父さんだって、この町を愛してた。
なのに…なんでだよ…!」

イーサンは何も答えない。
思い出が色を失っていく感覚だった。
何も理解できなかった。
頭の中はぐちゃぐちゃで、整理がつかなかった。


「テメェは、今まで…」

怜央の頭の中にも、これまでのイーサンの言葉が流れ込む。

(お前達がやるべきことはたった1つ。
誠心誠意、心から謝罪することだ。それ以外にない)

(何事にも代償が伴う…それがあなたの理念なのでしょう。
それでも、子供には必要なんです。無償の愛が)


怜央が拳に力を込める。
そして。

「今までどのツラ下げて、俺達と一緒にいたんだよ、テメェは!!」

怜央はイーサンへと、拳を握って迫る。
イーサンは一切抵抗せず、黙って俯き続けている。

「怜央っ!!」
灯はイーサンの方へと手を伸ばす。

しかし遊次は膝をつき、ただ見ていることしかできなかった。
今の遊次は、怜央を止めることができなかった。
いや、止めようと思わなかった。
遊次と怜央の眼差しには、強い感情が浮かんでいた。

怜央は拳を振りかぶり、イーサンへ振り抜こうとする。

2人の頭の中には、これまでのイーサンとの日々が今も流れ続けている。
まるで、本のページがめくられるように。

そして、そのページが進んでいけばいくほど、
1つの《結論》が、浮かび上がる。


(お前が全力で向き合うべきは、"ここ"なんだよ。
Nextが、お前の願いを叶える第一歩だろ)


怜央の拳は、イーサンの顔の寸前で、停止した。
遊次は歯を思い切り食いしばり、全身を震わせている。

灯もイーサンの方へと手を伸ばしたまま、時間が止まったように静止した。
そして、遊次が静寂の中、言葉を紡ぎ始める。

「イーサンは…取り返しのつかねえことをしちまったんだと思う。
でもさ…。それでも…」

遊次は立ち上がり、顔を上げる。

「イーサンが、本気で俺達の夢を叶えようとしてくれたのは、本当のことだ」

頭の中で、分厚い本が閉じられる。
その中に詰まっていたイーサンの言葉も、表情も、行動も…全て、遊次や灯、怜央の夢を支えるためのものだった。

そこには私欲も、思惑もない。
イーサンはいつも、大切な人達が、大切にしているもののために、歩んできた。

イーサンも、顔を上げて、遊次の方を見る。
その表情には、言い表せないほどの複雑な感情がいくつも混ざり合っていた。

もしかしたらイーサンには、罪滅ぼしの意識もあったのかもしれない。
それでも、遊次達のために戦ってきたことに偽りはなかった。
遊次の表情は、ゆっくりと、柔らかな笑みに変わってゆく。
それに共鳴するように、灯の目にも光が戻り、怜央も握った拳を下ろした。

「…すまない。本当に…すまない…!」

イーサンは涙を流し、言葉を吐き出した。
そんなイーサンを見つめ、怜央は小さな声で言う。

「罪は消えない。そいつを背負って歩いていくしかねえんだ。お前も…俺もな」

怒りが少しずつ引いていく。
怜央は自分でも驚いていた。
今まで怒りに支配されるように力を振るってきた。
怒りこそが自分の原動力だったからだ。

それは、真に怒りを向けるべきはイーサンではないからだろうか。
それとも、相手がイーサンだからだろうか。
怜央にもわからなかった。

怜央は扉の外から微かに入り込む日の光を見ていた。
彼も、この町に対して罪を背負っているのは同じだった。
ただ怒りをぶつけても、何も解決しない。
そのことを怜央はわかっていた。

遊次も、安らかなトーンでイーサンへ声をかける。

「誰が悪いとか、そんなこと今更言うつもりはねえ。
…事故なんだろ。それ以上でも以下でもねえはずだ」

その言葉にイーサンは、一瞬、目を見開いた。
そしてイーサンは、またうわごとのように何度も、同じ言葉を呟く。

「…すまない。すまない。すまない…!」

イーサンには、ずっと抱えてきた罪の意識があるのだろう。
それにしても、イーサンの表情はあまりにも悲痛だった。
灯はイーサンの表情を見つめている。
灯の胸には、ある1つの疑問が渦巻いていた。

(遊次のお父さんは…なんで、パラドックス・ブリッジの建造を引き受けたんだろう。
大統領に脅されてた?それか大統領と同じように、モンスターワールドの資源を狙ってたから?)

しかし、そのどちらもしっくりこなかった。

(昔、聞いたことがある。遊次のお父さんはデュエルが大好きで、遊次と同じくらい、モンスターを愛してたって。
なんでそんな人が、パラドックス・ブリッジを…)

灯の見つめる先で、イーサンはまだなおも、同じ言葉を吐き続けている。

「すまない。すまない…!」

「お、おいおい…。別に俺は怒っても恨んでもねえよ。だから、もう…」
しかしその言葉はイーサンの耳には入っていなかった。

「すまない…すまない…すまない…」

イーサンの脳裏には、ある記憶がフラッシュバックしていた。

14年前の、"あの日"。
それは雑音が混じったような、ざらついた記憶だった。
しかし、イーサンは今でもはっきりと覚えていた。

研究所の屋上から、街を見下ろす白衣を着た男の背中。
そして、オレンジ色の髪。

(■■■。俺は今日、この町の人たちを……殺すことになる)


その言葉が、今でも消えない。
しかし、その記憶こそが、イーサンを正気へと引き戻した。


イーサンは、ゆっくりと顔を上げる。
瞳は真っ直ぐ前へ向いている。いつもの、冷静なイーサンだ。

「大丈夫か?イーサン」

「…あぁ。俺は、俺のやるべきことを思い出した。
俺は大切な人達のために…成さなきゃならないことがある」

イーサンの言葉で、遊次達3人は我に返った。
背中にじわりと汗が広がってゆく。
シオーネ・マリンスキー…否、七乃瀬美蘭のNextへの接触。
その果てにあるものは…。

「パラドックス・ブリッジとやらはこの町にあるんだろ。
奴らの目的は知らねえが、それがまた動けば何が起きるかはわかりきってる」

怜央の脳裏に浮かんだのは、チームの子供達の顔。
怜央は拳を強く握り、真っ直ぐと前を見据える。

「私は、今が一番幸せ。
それを守るためなら…私はどんな相手でも戦う」

灯の瞳にも、強い決意が宿っていた。
そしてその脳裏には、昔一緒に遊んだ金髪の小さな女の子の姿が浮かんでいた。

(美蘭…ここであなたと出会ったのも、何かの運命だと思う。
なんであなたがそんなことに関わってるのか…確かめなきゃいけない)

遊次は3人の先頭へと立ち、皆の方を振り返る。
そこには、はっきりとした闘志と戦意が浮かんでいる。
イーサンは3人の表情を見て、一言だけ問う。

「止めたって、無駄なんだよな」

遊次・灯・怜央は、ただ一度、強く頷く。
そしてイーサンは目を閉じ、また覚悟を決める。

「ほんとに危なっかしいよ、お前達は。
ほっといたら、何をしでかすかわかったもんじゃない」

「お褒めの言葉として受け取るぜ」
怜央は口角を上げる。

「…俺も、戦うよ。お前達を守るために。
大切なものを…壊させないために」

イーサンの瞳にはもう迷いはない。

「で、どうするつもりなんだ?遊次」

「決まってんだろ。ニーズヘッグに直接乗り込む!
あいつらも、俺らにここまで情報を掴まれるのは予想外なはず。なら、これはチャンスだ!
俺達で…ニーズヘッグを止める!」


「あんな悲劇は、もう二度と起こさせない!」


第56話「交わる運命」 完



遊次達はパラドックス・ブリッジ奪取を止めるために、ニーズヘッグ本社へと乗り込む。
門前払いを覚悟しての行動だったが、意外にもニーズヘッグのCEOオスカーは、彼らを社長室へと通した。
そしてオスカーは計画の全貌と、世界に降り掛かる"真実"を語る。

それは、約8か月後にこの地球に隕石が衝突し、人類は滅びるという衝撃的な事実。
想像だにしなかった事態に、遊次達は狼狽え、絶望に圧し潰されそうになる。

遊次は、悲劇を起こさせないためにここへ来た。
しかしニーズヘッグの計画は、更なる巨大な悲劇を起こさせないためのものだった。

果たして、遊次達の答えは。

「何千・何万の命を犠牲にしようとも、この計画を実行する。
"モンスター"と"デュエリスト"を守るために」


次回 第57話「降り掛かる真実」
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35 第28話:親と子 254 0 2025-04-09 -
34 第29話:心の壁 343 0 2025-04-16 -
30 第30話:無償の愛 299 0 2025-04-23 -
39 第31話:開幕 ヴェルテクス・デュエリア 436 0 2025-04-30 -
38 第32話:究極の難題 499 0 2025-05-07 -
39 第33話:願いの炎 378 0 2025-05-14 -
47 第34話:ただそれだけ 420 0 2025-05-21 -
32 第35話:シークレット・ミッション 280 0 2025-05-28 -
37 【カードリスト】七乃瀬 美蘭 405 0 2025-05-28 -
41 第36話:欲なき世界 357 0 2025-06-04 -
41 第37話:禅問答 361 0 2025-06-11 -
36 第38話:紅と蒼の輪舞 225 0 2025-06-18 -
34 第39話:玉座 272 0 2025-06-25 -
35 第40話:"億"が動く裏世界 387 0 2025-07-02 -
31 第41話:生粋のギャンブラー 235 0 2025-07-09 -
42 第42話:運命のコイントス 304 0 2025-07-16 -
40 第43話:王選(レガルバロット) 279 0 2025-07-23 -
31 第44話:願いの芽を摘む覚悟 289 2 2025-07-30 -
29 第45話:答え 244 0 2025-08-06 -
30 第46話:潜入作戦 246 0 2025-08-13 -
34 第47話:心の象徴 221 0 2025-08-20 -
30 第48話:繋ぐ雷電 316 0 2025-08-27 -
29 第49話:帳が上がる時、帳は下りる 282 3 2025-09-03 -
31 第50話:影を焼き尽くす暁光 202 0 2025-09-10 -
41 第51話:夜明け 273 0 2025-09-17 -
33 第52話:決闘眼(デュエル・インサイト) 186 0 2025-09-24 -
34 第53話:命の使い方 165 0 2025-10-01 -
25 第54話:不可能への挑戦 176 3 2025-10-08 -
13 第55話:たとえ、この命が終わっても 136 0 2025-10-15 -
23 【カードリスト】虹野 譲 165 0 2025-10-15 -
2 第56話:交わる運命 33 0 2025-10-22 -

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