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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第48話:繋ぐ雷電

第48話:繋ぐ雷電 作:

裏カジノを打倒し、合計2億7000万サークを取り戻すため、案内人「稲垣拓海」を罠にかけたNext。
裏カジノへ潜り込むためには、この男をこちらの手中に収める必要があり、イーサンは作戦に協力することを条件にオースデュエルを仕掛ける。
ただし、敗北すればNext4人の身柄は拘束されてしまう。

イーサンは開幕で上々の展開を見せるも、稲垣のトークンを利用するコンボと切り札のリンクモンスターによって、イーサンのモンスターは全滅。
ライフは半分まで削られてしまう。

そのリンクモンスターが色を変えると、呼応するように稲垣の感情も変化する。
そのハートのオブジェクトのようなモンスターは、まるで稲垣の"心"を表すかのようだった。

--------------------------------------------------
【イーサン】
LP4300 手札:3

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット(雷カウンター:1)
永続罠:ヴォルタンク・パワーフィード

【稲垣】
LP8000 手札:1

①感錠の心核 ハーティアス ATK3000 闇属性
②感錠トークン ATK1000
③感錠トークン ATK1000
④感錠トークン ATK1000
⑤感錠トークン ATK1000
⑥感錠トークン ATK1000

永続魔法:感錠の連鎖(雷カウンター:4)
伏せカード:1(感錠の鍵-情怒-)
--------------------------------------------------

リンク4「感錠の心核 ハーティアス」。
禍々しい紫色をしたそのモンスターは、イーサンの目の前で脈動している。
その背後には5体の悪魔の姿をした紫色のトークンが、稲垣の暗澹たる感情を表すかのように、イーサンを睨む。


「闇属性の『感錠の心核 ハーティアス』は、トークンをリリースすることで、その数だけ、相手フィールドのカードを破壊できる…。
つまり最大5枚までテメェのカードを葬れるってわけだ。
さらに永続魔法『感錠の連鎖』によって、トークンがいる間、俺のリンクモンスターは効果・攻撃対象にならない」

「ヒヒヒ…心の準備をしておくんだな。
"俺ら"に捕まった後に備えてな…」

稲垣は殺意を秘めた瞳を開き、ニヒルに笑う。
遊次と灯は思わず、生唾を飲み込む。
ここまでNextもうまく立ち回ってきたとはいえ、相手は正真正銘、裏社会の人間。
捕まれば自分達がどうなるか、想像するに難くなかった。

そんな環境に耐性があるのか、怜央はいつも通り平然とした様子で、ポケットに手を入れ静観している。
イーサンも脅しに屈することなく、手札を見つめている。
そんな2人がいるからこそ、遊次と灯もなんとか平静を保っていられた。

「俺らはまだ道半ば。ただのチェックポイントを通るのに、心の準備など必要ない」

「…誰がチェックポイントだ?
ここがテメェらのゴールだぜ。人生のな」

お互い一歩も引かず、視線を交わす。

「永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。
雷カウンターを2つ取り除くことで、俺はこのターン、通常召喚に加えてもう1度召喚できる」

雷カウンター 5→3

「さらに『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。
フィールドのリンクマーカーの数だけ、フィールドのカード1枚に雷カウンターを置く。
お前のフィールドのハーティアスのリンクマーカーの数分、お前の永続魔法にカウンターを置く」

雷カウンター 3→7

(イーサンのフィールドのカードはいつ破壊されてもおかしくねえ。
使える効果は先に使っとこうって腹か。冷静なのはありがたいけど、この盤面を突破できんのか…?)

遊次は緊張した面持ちでフィールドを見つめる。

「手札からヴォルタンク・コイルを召喚」

■ヴォルタンク・コイル
 効果モンスター
 レベル1/光/雷/攻撃力500 守備力500
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:自分・相手メインフェイズに発動できる。
 このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として、「ヴォルタンク」Lモンスター1体をL召喚する。
 ③:墓地のこのカードを除外して発動できる。
 デッキから「ヴォルタンク」カード1枚を除外する。


現れたのは、銅線を密に巻いた円柱形のコイルを胴体に持つモンスター。
上下を青いフレームが挟み込むように固定しており、四隅には太い支持脚が直角に張り出している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ELLKy2k
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


稲垣はデュエルディスクから浮かび上がったソリッドヴィジョンで、現れたモンスターの効果を読む。

「そいつはメインフェイズ中、いつでも自分のモンスターを素材にL召喚する効果を発動できる…。
つまり、俺の破壊効果にチェーンしてそのモンスターの効果を使えば、破壊を回避してL召喚できるってわけだ」

「そうはいかねえ…。ハーティアスの効果発動!
トークンをリリースして、その数だけ相手フィールドのカードを破壊する!出し惜しみは無しだ!
3体の感錠トークンをリリースして、お前のフィールドのカードを全て破壊する!」

イーサンのフィールドには今召喚したヴォルタンク・コイルに、永続魔法と永続罠が1枚ずつ存在する。
ハーティアスの脈動と共に、3体のトークンが消え、暗い霧がフィールドを包み込む。
その霧に呑まれ、イーサンのフィールドのカードは全て砕け散る。

稲垣は勝ち誇ったようにニヒルな笑みを浮かべる。

疑問が稲垣の頭を巡る中、イーサンは手札のカードを1枚取り出す。

「この瞬間、手札の『ヴォルタンク・リレー』の効果発動。
ヴォルタンクが破壊された時、このカードを手札から特殊召喚できる」

■ヴォルタンク・リレー
 効果モンスター
 レベル3/光/雷/攻撃力1200 守備力900
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードが召喚した場合、
 墓地のレベル4以下の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ③:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚し、フィールドのモンスターの数だけ、
 フィールドの表側カードに雷カウンターを置く。


直方体の形状をしていた装置のような青色のモンスターが現れる。
前面中央には、固定された小型のボタンスイッチが配置され、両側にはそれぞれ金属製の端子が設置されている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/J4rW1NM
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「さらに特殊召喚した時、フィールドのモンスターの数だけ、表側のカード1枚に雷カウンターを置くことができる。
この効果は対象に取る効果ではなく、お前の永続魔法の制約は受けない。
『感錠の心核 ハーティアス』に、雷カウンターを1つ、
2体の感錠トークンにそれぞれ1つずつ置く」

禍々しいハートとトークン2体の周囲に、青白い閃光を帯びた雷球が3つ浮かび上がる。
雷カウンター 7→10

「だから何だ?そんなモンスター1体で何ができる。
速攻魔法『感錠の鍵-情怒-』発動!
感錠トークンを1体生成し、ハーティアスを炎属性に変える!」

ハーティアスの中央に刻まれた鍵穴へ、真紅の鍵が深く突き刺さる。
鍵が倒されると、内部で炎が奔流となって駆け抜け、その姿は灼熱の光を帯びる。
その背後、一滴の雫が地に落ちると、炎のように燃える赤い人型のトークンが立ち上がった。

「永続魔法『感錠の連鎖』の効果発動!
1ターンに1度、トークンが特殊召喚された時、さらに1体、感錠トークンを生み出す!」

連鎖するように、真っ赤な人型のトークンが1体現れる。
すると、ハーティアスが大きく脈打ち、翼のような巨大な炎が出現する。

「な、なんだ!?」
遊次は姿を変えたハーティアスを見上げ、驚きの声を漏らす。

「ハーティアスが炎属性の時、攻撃力は全ての感錠トークンの合計分アップする!」

感錠の心核 ハーティアス ATK7000

「さらに炎属性のハーティアスがいる限り、お前はハーティアス以外に攻撃することはできない!
これがどういう意味かわかるよなァ!?」

自らの心を司るハーティアスが情熱の炎を宿し、
稲垣もそれに呼応するように熱を帯びた話し方となる。

「ハーティアスの効果によって俺はトークンを攻撃できないが、永続魔法『感錠の連鎖』の効果により、感錠Lモンスターがいる限り、俺はトークンを攻撃できない。
つまり…このままでは俺は攻撃宣言できない」

「そんな…」
灯は思わず両手で口を覆う。

「さらに、お前が頑張ってハーティアスを破壊できたとしても、ハーティアスが破壊された時、墓地のハーティアを特殊召喚できる!
トークンがいる限り、永続魔法によってLモンスターは効果の対象にもならない。手札1枚じゃ、どうしようもねェよなァ!」

稲垣の声と共に、燃え上がる炎が戦場を照らす。
圧倒的な壁となったハーティアスと連鎖するトークンの群れを前に、遊次たちは息を呑むしかなかった。

しかしイーサンだけは依然、落ち着き払っている。

「最初は小さな電流でも、繋げ続ければ雷になる。
墓地の『ヴォルタンク・コイル』を除外して効果発動。デッキからヴォルタンクカード1枚を除外できる。『ヴォルタンク・モーター』を除外。
この瞬間、デッキがシャッフルされたことで、ヴォルタンク・リレーに雷カウンターが置かれる」

雷カウンター 10→11

イーサンの言葉を体現するように、フィールドには少しずつカウンターが帯電してゆく。

「墓地のヴォルタンク・アームを除外して効果発動。
除外されているヴォルタンクカードを1枚デッキに戻し、その種類と同じヴォルタンクカードを1枚、手札に加える。
除外されている『ヴォルタンク・モーター』をデッキに戻し、そのままこのカードを手札に加える。
この瞬間シャッフルが発生したため、ヴォルタンク・リレーにカウンターが置かれる」

雷カウンター 11→12

「魔法カード『ヴォルタンク・リブート』発動!墓地のヴォルタンクを復活させる!
再び現れろ、ヴォルタンク・スパークキャッスル!」

■ヴォルタンク・スパークキャッスル
 リンクモンスター
 リンク3/光/雷/攻2300
 【リンクマーカー:右/左/下】
 雷族モンスター2体以上
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、
 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。
 ②:相手モンスターが効果を発動した時、
 フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動する。その発動を無効にして破壊する。
 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターをこのカードのリンク先に特殊召喚する。

蒼き巨大な城が再び姿を現す。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/FtT734v
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


(スパークキャッスルはモンスター効果を無効にできる。
これでハーティアスが破壊された時にハーティアを蘇生する効果は無効にされちまうってわけか。
だが関係ねえ!どのみちこの状況を突破できるわけねえんだ)

構わず展開を続けるイーサンに一抹の疑問は抱いたものの、稲垣はまだ自身の防壁の強固さを信じている。

「ヴォルタンク・キャッスルの効果発動。
雷カウンターを2つ取り除き、墓地のヴォルタンクをリンク先へ特殊召喚する。
来い、ヴォルタンク・ライトニングロッド!」

雷カウンター 12→10

■ヴォルタンク・ライトニングロッド
 リンクモンスター
 リンク2/光/雷/攻1800
 【リンクマーカー:下/左】
 雷族モンスター2体
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、
 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードがリンク素材として墓地に送られた場合、
 墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードをデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。
 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、
 フィールドのカード1枚を対象として発動する。
 そのカードを破壊する。

天へと高く聳え立つ一本の柱のようなモンスターが、電気によって再構築される。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/bK4xj8i
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

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【イーサン】
LP4300 手札:1

①ヴォルタンク・リレー ATK1200
②ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK2300
③ヴォルタンク・ライトニングロッド ATK1800


□□③②①
 ① □
②③④⑤□

【稲垣】
LP8000 手札:1

①感錠の心核 ハーティアス ATK7000 炎属性(雷カウンター:1)
②感錠トークン ATK1000(雷カウンター:1)
③感錠トークン ATK1000(雷カウンター:1)
④感錠トークン ATK1000
⑤感錠トークン ATK1000

永続魔法:感錠の連鎖(雷カウンター:7)
--------------------------------------------------

「どんなに足掻こうが、攻撃・効果の対象にならないハーティアスには太刀打ちできねえ。
いつもはカジノに案内するのが俺の仕事だが、今日ばかりはテメェを地獄へ案内することになりそうだ」

稲垣は余裕綽々な態度で胸ポケットからタバコの箱を1箱取り出すと、その中から1本のタバコを摘み、咥える。
噂通り、火は点けないようだ。

「心配無用だ。お前の案内などなくとも、俺は勝利への道を進んでる」

「…んだと…?」
いつまでも冷静なイーサンに、稲垣は怒りを募らせる。
稲垣が咥えたタバコは、強く歯に力が入ったことで折れ曲がる。

「俺はリンク2ヴォルタンク・ライトニングロッドと
ヴォルタンク・リレーをリンクマーカーにセット。
サーキットコンバイン!」

リンク2のライトニングロッドは半透明の分身を作り、
3体のモンスターは浮かび上がったサーキットのアローヘッドへと入ってゆく。

(ライトニングロッドはカウンターを取り除いて俺のカードを1枚破壊できる。
なのになぜ永続魔法を破壊しない…?)

新たなリンクモンスターが登場する間際、稲垣の脳内にイーサンのプレイの不可解さが雑音として広がる。
稲垣の永続魔法を破壊すれば、トークンが存在する限りLモンスターに攻撃できないという制約を取り除くことができ、攻撃不能のロックを崩すことができる。
しかしイーサンはそれをしなかった。


「回路に蓄積されし電荷は迫る魔を阻む防壁となる。
リンク召喚!現れよリンク3
『ヴォルタンク・チャージリダウト』」


■ヴォルタンク・チャージリダウト
 リンクモンスター
 リンク3/光/雷/攻2200
 【リンクマーカー:左/左下/下】
 雷族モンスター2体以上
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、
 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードがL召喚した場合、墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを手札に加える。
 ③:相手が魔法・罠カードの効果を発動した場合、フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動する。
 その発動を無効にしてデッキに戻す。


イーサンの前に巨大な要塞が現れる。
壁に囲まれ、四方からはさながら最新鋭の兵器のような電磁砲がいくつも覗いている。
まるでそれは超巨大な戦車にも見える。
その外壁と砦は蒼いボディをしており、各所に巨大なボルトが付いている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/9jFDvVT
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「この瞬間、L素材となったライトニングロッドの効果を発動!
墓地のヴォルタンク・リレーをデッキに戻し、1枚ドローする」

「デッキがシャッフルされたことで、フィールドの2体のモンスターに雷カウンターが置かれる。
スパークキャッスルとチャージリダウトは相互リンク。そしてどちらもリンク先のモンスターにも雷カウンターを置ける。
よって、雷カウンターは4つ増える」

雷カウンター 10→14

不気味に聳え立つ2体の巨大な城塞に2度の雷が落ちる。
蒼い巨影が天を裂くように聳え、稲垣の視界を圧した。
勝勢を確信していたはずの心に微かなひびが入る。
──いや、怯む理由はない。
だがあの蒼の静けさが勝利の確信をかすかに曇らせる。

1体の下級モンスターから2体のLモンスターへ繋がった。
自分達に影を落とすその双璧の姿は、灯の心に希望をもたらした。
灯が遊次の顔を横目に見ると、その口が微かに綻ぶのが見えた。

まるで、勝利を確信したかのように。

「手札のヴォルタンク・モーターは、フィールドにヴォルタンクがいる時、手札から特殊召喚できる」
中央に回転軸を持った青きモーター型のモンスターが再び姿を現す。

「ヴォルタンク・モーターの効果発動。雷カウンターを3つ取り除き、
デッキからヴォルタンクを特殊召喚する。現れよ、ヴォルタンク・エンジン」

永続魔法「感錠の連鎖」の周囲に灯る雷の光が3つ消え、青きエンジン型の部品がフィールドに現れる。
雷カウンター 14→11

「シャッフルが発生したことで、モーターとエンジン、
そして相互リンクのスパークキャッスルとチャージリダウトに雷カウンターが置かれる」

雷カウンター 11→17

「さらにヴォルタンク・エンジンが特殊召喚された時、デッキからヴォルタンクモンスターを1体手札に加えられる。
ヴォルタンク・トランジスタを手札に加え、シャッフルが発生したことで雷カウンターが増加する」

雷カウンター 17→23

フィールドは雷カウンターによって眩い光を放ち、稲垣は思わず目を細める。

「ヴォルタンク・トランジスタは、ヴォルタンクLモンスターのL先に特殊召喚できる。
ヴォルタンク・スパークキャッスルのL先に特殊召喚」

現れたのは、長方形の本体の上部に三本の足が真っ直ぐ伸びたモンスター。
下部に電流を感じさせる微細な回路模様が彫り込まれている。

イーサンのフィールドには2体のLモンスターと3体の部品型の下級モンスターが並ぶ。

(モンスターをいくら並べたところで、この盤面は覆らねえ…!
焦るな…焦るな…!)

稲垣は心の中で自分に言い聞かせるも、その鼓動の音が大きくなってゆくのを両の耳が捉えていた。

イーサンは真っ直ぐ前を見据え、わずかな呼吸すら乱さない。その沈黙が場の緊張を研ぎ澄まし、時の流れを鈍らせる。
稲垣は無意識に息を呑んだ。

「繋いでこそ"リンク"だ。
俺の雷電は、決して途絶えない」

やがてイーサンが右手を静かに前へ伸ばすと、空気がさらに張りつめた。

稲垣は直感した。
"何かが来る"。


「ヴォルタンク・トランジスタと、
リンク3『ヴォルタンク・チャージリダウト』を
リンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!」

「リンク4…!」

雷カウンター 23→17

地面に浮かび上がる巨大なサーキット。
それは、それほどに巨大なモンスターが現れることを意味していた。
リンク3のチャージリダウトは3体の半透明な分身を作ると、アローヘッドを赤く灯す。

「疾る稲光が、ここに蒼き巨塔を打ち建てる。
微かな揺らぎは、やがて消滅の波動となる」


「現れろ!リンク4!
『ヴォルタンク・プラズマウェイブタワー』!」


■ヴォルタンク・プラズマウェイブタワー
 リンクモンスター
 リンク4/光/雷/攻2800
 【リンクマーカー:上/左上/右上/下】
 雷族モンスター2体以上
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、
 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードがL召喚した場合に発動できる。
 相手フィールドの雷カウンターが置かれたカードを全てデッキに戻す。
 ③:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。
 デッキから「ヴォルタンク」永続魔法または「ヴォルタンク」フィールド魔法を発動する。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


蒼い巨塔が、地を突き割るように姿を現す。
鋼鉄の装甲は面ごとに冷たい光を返し、内部の鉄骨が重く噛み合い、揺るぎない輪郭を形づくっていた。
張り出したアンテナの群れが鋭い影を落とし、深く打ち込まれたボルトが巨体を締め上げる。
その存在は、ただ立つだけで見る者の胸を圧した。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/TJF6V8w
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「これが…モンスター……?」

稲垣は言葉を失った。
目の前に聳え立つのは、これまで対峙したどの存在とも異なる異形の塔。
その無機質な光沢と、圧し掛かるような質量感が、理屈を越えて心を縛り付ける。
喉が乾き、声にならない息だけが漏れた。


「ヴォルタンク・プラズマウェイブタワーの効果発動。
L召喚した時、相手フィールドの雷カウンターが乗ったカードを、全てデッキに戻す」

「な…」
稲垣のフィールドの雷カウンターが置かれたカードは4枚。
永続魔法と2体のトークン、そして切り札のハーティアスだ。

塔のアンテナが唸り、目に見えぬ電磁波が広がった。
その波が触れた瞬間、稲垣のカードは光の粒を散らすように輪郭を失い、フィールドから消滅する。
稲垣のフィールドに残されたのは、色を失った人型のトークン2体のみ。
稲垣は点のような目で、ただ呆然とその光景を見届けるしかなかった。

雷カウンター 17→10

「お…俺の…ハーティアス!!
ハーティアスが…!!」

稲垣が咥えていたタバコが、ぽとりと地面に落ちる。
稲垣の全身が細かく震え始めた。
力を失った両手が自分の意思とは無関係に震え、指先から冷たい汗が滲む。

ライトニングロッドを特殊召喚した後、その効果で稲垣の永続魔法を破壊しなかったのは、"その必要がなかったから"だ。稲垣は瞬時に答えを得た。
カウンターを取り除いて破壊せずとも、デッキに戻して永続魔法を除去しつつ、さらにカウンターを溜めることができる。故に、破壊効果を使用しなかったのだ。

「さらにお前の永続魔法がデッキに戻ったことで、俺のモンスター及びリンク先のお前のモンスターに雷カウンターが置かれる」

イーサンのフィールドのモンスターと、稲垣のフィールドに残された2体のトークンに雷が落ちる。
プラズマウェイブタワーはリンク先が3つ相手フィールドに向いている。

雷カウンター 10→18

--------------------------------------------------
【イーサン】
LP4300 手札:2

①ヴォルタンク・プラズマパワーウェイブタワー ATK2800(雷カウンター:1)
②ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK2300(雷カウンター:7)
③ヴォルタンク・モーター ATK1100(雷カウンター:3)
④ヴォルタンク・エンジン ATK1800(雷カウンター:5)

□□③④②
 □ ①
□□①②□


【稲垣】
LP8000 手札:1

①感錠トークン ATK1000(雷カウンター:1)
②感錠トークン ATK1000(雷カウンター:1)

--------------------------------------------------

「だ、だが!お前のモンスターで総攻撃しても、俺のライフは削り切れねえ!まだ終わりじゃ…」

「終わりだ」
「え…」
イーサンは稲垣の言葉を短く切り捨てる。

「ヴォルタンク・プラズマウェイブタワーの効果発動。
雷カウンターを3つ取り除き、『ヴォルタンク』永続魔法またはフィールド魔法をデッキから発動できる。
フィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』を発動」

雷カウンター 18→15


■ヴォルタンク・カレントコレクター
 フィールド魔法
 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターの攻撃力は、
 フィールドの雷カウンターの数×300アップする。
 ③:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
 代わりにこのカードの雷カウンターを1つ取り除く事ができる。

プラズマウェイブタワーの頂点が眩く発光した瞬間、辺りに無数の無機質なアンテナ群が現れ、フィールドを囲い込む。

「デッキから魔法カードが発動されたことでシャッフルが発生した。モンスターとフィールド魔法に雷カウンターが置かれる」

雷カウンター 15→25

フィールドに無数の雷が落ちる。
稲垣にとって、耳を塞ぎたくなるほどの最悪の轟音だった。

「フィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』の効果。
フィールドのヴォルタンクの攻撃力は、フィールドの雷カウンターの数×300アップする。
雷カウンターの合計は25個。
よって…全てのヴォルタンクの攻撃力は7500ポイントアップする」


ヴォルタンク・プラズマパワーウェイブタワー ATK10300
ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK9800
ヴォルタンク・モーター ATK8600
ヴォルタンク・エンジン ATK9300


「総攻撃力38000…あの坊主頭の命4個分の攻撃力だ。
相変わらず、ふざけたパワーしてやがるぜ」

怜央はお手上げだと言わんばかりに片手を上げ、首を振る。

稲垣は力なく膝を地につけ、絶望した。
震える手のひらを呆然と見つめ、歯がガチガチと音を鳴らし始める。

「リハビリ成功だな。
心の象徴はもうないのに、恐怖の感情が溢れて止まらないらしい」

イーサンは稲垣を冷徹な目で見下す。

「あが…ががが…」
稲垣は何か言葉を発しようとするが、歯が勝手に噛み合うせいで、うまく喋れないようだ。


「せいぜい"心"を入れ替えて生きるんだな。
…残り短い人生を」

「あ…」

それは稲垣にとって、死刑宣告も同然だった。
オースデュエルに敗れたことで、自分は裏カジノ潜入のために利用される。
そして裏カジノの会場には、血眼で自分を追うリッジサイドの連中が現れる。

稲垣の脳裏にフラッシュバックする。
男の顔を踏みつけるローチの姿。
そして自分と目が合った時の、悪魔のような笑み。


「ヴォルタンク・プラズマパワーウェイブタワーで、感錠トークンに攻撃」

イーサンは冷たい声で、最後の攻撃宣言を行う。

巨塔の頂上に無数の光が奔り、雷が収束するかのように一点へと集まり始めた。青白い閃光が塔全体を包み、張り出したパラボラアンテナが一斉に唸りを上げる。

次の瞬間、轟音と共に電磁波が弾丸の雨のように迸り、
空間そのものを焼き切るかのような光が戦場を白く染めた。
鉄をも溶かすほどの凶暴な振動が空気を裂き、
フィールドは蒼い閃光に呑み込まれた。


稲垣 LP8000 → 0



「勝者、イーサン・レイノルズ。
オースデュエルにより、稲垣拓海には違法カジノ潜入作戦に協力する義務が発生し、イーサン・レイノルズ及びその関係者との関与を口外することを禁じます」

DDASの無機質な機械音声が、デュエルの終焉を告げる。

命を一瞬で焼き切るほどの雷撃を受けた稲垣は、白目を向いて無気力に倒れていた。

「あら、気を失っちゃってるみたい」
稲垣の方に駆け寄った灯は、動かない稲垣の頬を何度か軽く叩くが、一切反応はない。

「イーサンが"残り短い人生"とか言うから、ショックで気絶しちまったんじゃねえのか?
冗談にしても、あれはちょっと言い過ぎだぜ」

遊次が腰に手を当て、イーサンを注意する。

「…そうだな、悪かったよ」
イーサンは少し儚げにぽつりと謝る。

「ともかく、このままじゃラチが明かねえ。
灯の車で事務所までコイツを運ぶぞ」

怜央がのびている稲垣の体をつま先で小突く。
怜央は動こうとせず、その視線は遊次とイーサンに向けられていた。

「自分はやんねえのかよ…」

「体格的にお前らしかねえだろ。ほら、早くしろ」
怜央はポケットに手を突っ込んだまま、おもむろに灯の車へと向かう。

「…へいへい」
遊次とイーサンはしぶしぶ、気絶した稲垣を灯の車まで運びこんだ。




稲垣が重たい瞼をわずかに持ち上げると、まず視界に飛び込んできたのは白く曇った蛍光灯の光だった。
天井はどこにでもあるような安っぽい木目調で、鼻をかすめるのは古びた紙と埃の匂い。
ゆっくりと視線を動かすと、壁にかかった時計の針が淡々と時を刻んでいる。
どこかの事務所らしい、平凡な部屋だった。

意識がはっきりするにつれ、自分の両腕が後ろ手に縛られていることに気づく。
粗い麻縄が手首に食い込み、わずかに動かしただけでぎしりと木の軋む音が鳴った。

「…っ、なんだ、これは…!」
稲垣が次第に力任せに暴れた結果、重心を崩した椅子ごと横に倒れ込み、床板を叩く鈍い衝撃が響いた。

「お、ようやく目を覚ましたか」
椅子ごと派手に倒れた稲垣を遊次が見下ろしている。

「悪いけど、一応縛らせてもらってるぜ。よっこら…せっと」

そう言うと、遊次は椅子の背を掴み、ぐいと持ち上げる。
木が軋む音と共に稲垣の体が起こされ、椅子は元の位置に戻された。
灯、イーサン、怜央も遊次のもとへ歩み寄り、稲垣の前に立ち並んだ。
視線が一斉に降り注ぎ、稲垣は思わず息を詰める。

「自分が置かれた状況はわかっているな?」
イーサンが冷たさを帯びた声で問う。

「…あぁ。私はオースデュエルで敗れた。
私の人生もここまでというわけだ」
デュエルの最中とは打って変わり、稲垣は表情を固く閉ざし、視線を落としたまま言葉を吐いた。

「ここまでじゃねえよ。お前が今後まともに生きれば、まだいくらでもやり直せる!」

遊次は静かにしゃがみ込み、稲垣の視線と同じ高さに身を合わせる。
真正面からその目を見据え、言葉に迷いのない声で告げた。

「何を馬鹿げたことを。オースデュエルの誓約により、
私はお前達の裏カジノ潜入に協力しなければならない。
その会場にはリッジサイドの連中も来るのだろう。
それは即ち、私の人生の終焉を意味している」

稲垣の声は悟ったような妙に落ち着いたものだった。

「俺らはリッジサイドの手先でも何でもねえ。
お前を餌に奴らをおびき寄せて、カジノをめちゃくちゃにできりゃあいい」

怜央は壁にもたれ、視線だけを稲垣へ向けた。

「あなたがやってきたことは褒められたことじゃないけど、あなたが死ぬようなことは私達も望んでません。
目的を果たせれば、後はあなたの自由です」

灯の声は不思議と耳にやわらかく届いた。
その響きに、稲垣の胸を締めつけていた重苦しさがわずかにほどける。

「オースデュエルは最上位の法。あらゆる手段をもっても契約を破ることはできない。
いまさら裏カジノ側に戻ろうなどとは考えるな」

灯が飴であるならイーサンは鞭。あくまでも現状は稲垣の身柄はNextの支配下にあるものと同義だ。
人の心とリンクしているDDASは、あらゆる手段を講じて契約を果たさせる権利を有している。
逃亡を図ろうとすれば電子機器にアクセスしたDDASが、それを阻むこともできる。
故に、オースデュエルで決した契約を破ることはできない。

稲垣はしばらく黙したまま視線を落としていたが、やがて肩で息を吐き、顔を上げた。

「…私は、どうすればいい」





時は深夜3時。
暗い路地裏に白いバンが停まり、後部ドアが軋む音とともに開いた。
稲垣が先頭に立ち、後ろから続く参加者たちを一人ずつ外へと降ろしていく。
全員が黒い布で目隠しをされ、足元を探るように慎重な足取りをしている。
街灯も届かない薄暗い空間に、かすかな靴音と布の擦れる音だけが響いていた。

足元を探るような不安定な動きの列の中には、イーサンと雨宿の姿もあった。
彼らもまた視界を奪われ、他の参加者と同じように稲垣の声に従って歩を進めていく。
イーサンと雨宿は裏カジノの参加者として計画に参加している。
あくまでも稲垣がNextの手に落ちたと図られぬように、イーサンはネイサン・ライノルドとしてカジノに参加する必要があったからだ。


「目隠しを取れ」

稲垣の声を合図に、イーサン達を含めた7人の参加者が一斉に目隠しを外す。
長く視界を奪われていたせいで、参加者たちは一斉に目を細めた。
視界が戻ると、無機質なコンクリートの壁と薄暗い照明が迎え、湿った空気が肌にまとわりついた。
ここは裏カジノ「CASINO DtoN」の入り口。
ついに"本丸"へ足を踏み入れることとなる。


ビルの屋上で、怜央は膝をつき、望遠レンズを静かに構えている。
その姿は月夜に照らされ、夜風に赤いマフラーが揺れる。
視線の先には目隠しを外した参加者たちの姿が並ぶ。
レンズ越しに映るのは、イーサンと雨宿、そして見知らぬ5人の参加者。

怜央は息を潜め、まるで獲物を狙う狙撃手のような冷静な目で、その一挙手一投足を追っていた。
照準を稲垣の顔だけに絞り、シャッターを押す。
写真を自身のスマートフォンへ転送し、撮った写真を"誰か"に送っている。

そしてその20秒後、怜央の携帯電話が鳴る。

「見たよ、写真。"ガキ"で間違いない。
まさかほんとに見つけられるなんてねぇ…」

電話はローチからだった。
裏カジノに稲垣が本当にいるという証拠を見せなければ、リッジサイドの手綱を握るのは難しいため、望遠レンズで写真を撮影し、稲垣の存在を証明したのだ。

「ねぇ、早く場所を教えてよ…。
ウズウズして仕方ないんだ…」

「合図を待ってろ。こっちにも都合がある。
それと、お互い警察沙汰にはしたくねえはずだ。武器は使うんじゃねえぞ」

ただの参加者やイーサン・雨宿にまでリッジサイドの被害が及んでは困る。
あくまでリッジサイドは会場を攪乱するための飛び道具だ。
被害を最小限に抑えるために、怜央は釘を刺す。

「武器なんか使わないって…バットぐらいしか持っていかないよ」

「アホか、素手でやれ。
ガキの居場所を教えてやるんだ、こっちのやり方には従ってもらうぜ」

「しょうがないね…。でもあんまり待たせたら、このへんの建物、片っ端から襲っちゃうから」

不意に、通話音が途切れた。
ローチの声はぷつりと消え、スマートフォンの画面には無機質な通話終了の文字だけが残る。
怜央はしばし無言で画面を見つめ、やがて小さく溜息をついた。




裏カジノの中は広く、天井には淡い照明が規則正しく並び、床には落ち着いた色のカーペットが敷かれている。
ここはプレイルーム。ゲームが行われる部屋だ。
カード台が整然と並び、金属の装飾が控えめに光を反射していた。

フロアの各所には黒服のスタッフが立ち、無言で客たちを見張っている。
その中に、サングラスをかけたオレンジ色の髪の男――神楽遊次の姿があった。

--------------------------------------------------

時は数日前、Next事務所で囚われている稲垣と、
潜入作戦について話している頃に遡る。

「カジノは入念な身体検査が行われるから、カメラを仕込んで参加者として潜り込むことはできない。だが、カジノ側の人間としてなら潜入できると考えている。
まずこの認識についてはどうだ?」

イーサンは椅子で腕を縛られている稲垣を見下ろし、問いかける。

「…不可能ではないだろう。黒服には身体検査はない。
ディーラーやウェイターは外部から集めているため、
顔見知りばかりというわけではないしな」

稲垣も吹っ切れたように積極的に意見を出す。

「よっしゃ!"ボス"とデュエルでカタつけんのは俺だ。潜入も俺がやる」
遊次が自分を鼓舞するように胸を叩く。

「稲垣さんは、黒服の服装とか立ち居振る舞いを教えてください。ここまで来たら本気で協力してもらいますからね」

「わかっている。オースデュエルで決した契約には寸分の解釈の余地もない。
裏カジノ側が有利になるような行動は、法で許されないのだからな」

灯の言葉に稲垣は迷いなく応えた。
オースデュエルによる契約であるため物理的に破ることは不可能であるが、彼の意思としても、もはやNextに協力するしかないという決意は見て取れた。

「怪しまれないように、そろそろ稲垣は向こうに戻れ。
あくまでもネイサン・ライノルドを裏カジノに招待できたというテイで報告してもらう。
当然、俺らのことはオースデュエルによって口外できないからな」

「…あぁ」

稲垣は一度"ボス"の元へと戻り、Next側に寝返ったことは悟られずに、作戦を継続する必要がある。
アキトの協力も得て、稲垣には数人の監視をつけた状態で、元締め側へと一度戻らせ、再度、相手側に悟られぬようにNextと潜入作戦を練り上げることとなったのだった。
--------------------------------------------------

遊次はまだ客のいない広いフロアをぶらつきながら、壁際やテーブルの配置を一瞥していく。
胸元のスーツの隙間には、ボタンに偽装された小型カメラが仕込まれている。
遊次は歩き回りながら、今も証拠映像を集めている最中というわけだ。
この映像を理由に、元締めのトップにオースデュエルを仕掛けることになる。

「何ウロチョロしてんだ」
遊次が自分に向けられた低い声に振り向くと、大柄なサングラスの男がこちらを怪訝に見つめていた。

「あ、いや…想像よりも豪華で、なんかビックリしちゃって」

遊次はひきつった笑顔で頭をかく。
少し間が空いた後、大柄な男は真顔のまま口を開いた。

「わかるぜ、俺も最初はそうだった。まあ、すぐに慣れるさ」
男が遊次の肩をポンと叩くと、他の黒服へと話しかけにいく。

(バレたかと思ったぜ…。
先輩ヅラしてくるし、あれが稲垣の言ってた黒服のリーダー的な奴か)

遊次はすでに黒服の内情についても稲垣から聞かされていたようだ。

すると、重い扉が軋む音を立てて開き、7人の参加者たちが一歩ずつ中へ足を踏み入れた。
その中で、イーサンと遊次の視線がわずかに交差する。


ここからが本番だ。


第48話「繋ぐ雷電」 完



本丸である裏カジノへの潜入に成功した遊次達。
証拠を集め、ついに元締めの"ボス"へと迫る。

男は遊次達の思惑を深く探り当て、それを軽々と払いのける余裕を見せる。
このままではオースデュエルが成立しない。
しかし遊次にはある"秘策"があった。

そして真夜中のゴーストタウンで始まるオースデュエル。

「もう何年もこの名前は出したことねェんだがな。
まぁいい。それを知っちまったお前の口は、すぐに塞げるしな」


次回 第49話「帳下りし時、帳は上がる」
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