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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第52話:決闘眼(デュエル・インサイト)

第52話:決闘眼(デュエル・インサイト) 作:

ドミノ・スタジアム。
ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選の舞台。
その決勝戦を控え、選手控室にて、神楽遊次は試合前の最後のひと時を過ごしている。


「シャンリンとも、鷺沼とも…俺はギリギリのデュエルをしちまった。ヘタしてたら負けてた…」

遊次はベンチに座り、ボクサーさながらに頭を下げて独り言をぶつぶつと呟いている。
遊次は自分のデッキのカードを掌で広げ、それらを見つめる。
そこには今回のために入れた新たなカードも見える。

「相手の出方がわからない時、初動をなんとなくでやっちまうのが俺の悪い癖だ。
もっとフィールド全体に目を凝らして、見えない情報まで読まねえと…」

過去2回のデュエル、遊次は瀕死に追い込まれ、運が悪ければ敗北というところまで追い詰められた。
ヴェルテクス・デュエリア優勝を目指す身として、それではいけないと自省し、考えを巡らせている。

すると、控室のドアが2度ノックされる。

「神楽選手、準備お願いします」

「は、はい!」
スタッフが遊次を呼ぶ声だ。
遊次は意を決して立ち上がり、フィールドへと向かった。

観客席には、これまで遊次と戦ってきたマルコス、空蝉、シャンリンがいた。
そしてもう1人、落ち着かない様子の女性の姿があった。

茶髪を無造作に束ねており、一般的な女性より肩幅は広く筋肉質だ。
それは、昔から遊次が「おばちゃん」と呼んでいる女性だった。
彼女は経営するデュエルショップをコラプスによって失ったが、建築の知識があることで町中から建築士として駆り出されたため、店の再開ができずにいる。
遊次の願いによってドミノタウンが復興すれば、彼女もまた自分の好きな店を開くことができる。



この会場に来る前、一度自宅に戻ろうとドミノタウンへ帰った遊次に、おばちゃんは声をかけた。


「え、おばちゃん観に来てくれんのかよ!」
遊次は目を丸くする。

「4年前は見れなかったからね。デュエルバカのアンタの晴れ舞台なんだ。今度こそ、イヤって言われても観に行くからね!」

おばちゃんは腕まくりをして建築作業で鍛えられた屈強な腕を見せる。

「…あぁ!俺の方だって、今度こそおばちゃんに悲しい思いはさせねぇ!絶対に優勝する!」

遊次の屈託のない無垢な笑顔を、おばちゃんは見つめる。

(記憶をなくして、皆アンタのこと変わっちまったって言うけど…変わってないものもある。
私にとっちゃ、ずっとデュエルが大好きな遊次だよ)



「さあ、いよいよ幕を開けます!ヴェルテクス・デュエリア ドミノタウン予選決勝戦!!
それでは早速、熱い火花を散らせる2人のデュエリストにご登場いただきましょう!!」

実況の多口伝助はすでに髪を逆立たせ臨戦態勢だ。
スタジアムの両コーナーには遊次と虹野譲がそれぞれスタンバイしている。

「まずはこの男ォ!前回大会の予選で見事勝利を果たし本戦に進んだ男!しかし4年前は初戦敗退!その雪辱を晴らすため、再び本戦の舞台に上がることができるのかぁ!」

「予測不可能の奇術師!神楽ぁーー遊次ィイイ!!!」

その名が会場に轟くと、大歓声と拍手の中、遊次が真剣な表情でフィールドの中央へと歩く。

「遊次ーー!がんばってー!!」

観客席で灯が他の観客に負けないほど声を張り上げ、エールを送る。
その隣でイーサンは柔らかな笑みを浮かべ、怜央は足を組んで試合開始を静かに待っている。

「怜央の兄貴をぶっ飛ばしたんだから、負けるなんて許さねぇぞ!!」

リアムが灯に触発され、負けじと声を張り上げる。
怜央が横で睨んでいるが、気付いていないようだ。
総動員で試合を観に来たチームの子供達も続くように声援を送る。

「それにしても、裏カジノの親玉を倒した数時間後に決勝なんて…さすがの遊次にもハードじゃないかな…」

周囲が盛り上がりを見せる中、探偵「伊達アキト」は1人心配の声を上げる。

「あの野郎がそんなことでヒーヒー言うとは思えねぇな。むしろ強敵と連戦できてラッキーぐらいの感じだろうぜ」

ドモンはアキトの懸念を一蹴するように鼻で笑う。

「よくわかってるなドモン。遊次のコンディションに問題はない。
ウォーミングアップが終わって仕上がってるくらいだ」

イーサンはドモンのいる方を振り返り口角を上げる。

「そりゃあけっこうなんだけどねぇ。問題は…」
ダニエラは遊次とは逆方向のコーナーに視線を送る。


「続いてはぁ!ノーマークから現れたまさかの刺客!相手の心理を巧みに誘導し毒牙にかけるプレイスタイルで、数々の強敵を"あっけなく"下してきた新星!」

ある言葉に反応して怜央の頬がピクリと動くのを、ミオは見逃さなかった。

「相克の支配者!!虹野ぉおお!!譲ゥウウウ!!」

歓声の中、茶髪に桃色の虚ろな瞳を持つ青年―虹野譲がゆっくりと車椅子を押して現れる。

向かい合う、遊次と譲。
2人の表情は真剣そのものだ。

譲は目を閉じ、試合前の控室での"誓い"を思い出す。


ある1枚のカードを見つめ、静かなる闘志を込めて譲は呟いた。

「ここで終わりになんかさせないよ、ビックリボー。
君にもっと…面白い世界を見せてあげるから」


目を開け、目の前に凛と立つ遊次を見つめる。

「決着をつけよう、神楽遊次クン。
どちらが、願いを叶えるか」

「答えは"どちらも"だぜ、譲」

遊次の答えは明快だった。
この大会で優勝し、ドミノタウンの人々を救う。
そして、倒した相手の願いをも背負い、共に歩む。
それこそが、願いを叶える権利を奪う責任であり、遊次自身の願いだ。

しかし、譲の顔が綻ぶことはなかった。
余命宣告をされた彼にとって自らの敗北は"死"そのものだ。
そして自らの願いを他人に預けることなど眼中にない。

答えは、デュエルの中にある。
2人は同時にデュエルディスクを構える。
見守る観客達も固唾をのむ。

遊次はドミノタウンの多くの人達の願いを背負い、戦いに挑もうとしている。
譲は、自らの命を懸けて。

しかし、2人はただ願いを掴むために戦うわけではない。
心は沸き立つほどの高揚感に苛まれていた。

それは、決闘者としての本能。

彼らに共通しているのは、どれほど大切なものがかかった戦いであっても、純粋にデュエルを楽しむ童心だった。


「デュエル…開始ィイイイ!!!」
試合開始のゴングが鳴る。
譲のデュエルディスクのランプが灯る。


「僕のターン!」
譲は自分の手札を見つめ、思考の海へと潜る。
数秒後、譲の指が動き出す。

「『冽灼の環紗 ネアス』を召喚」


■冽灼の環紗 ネアス
 ペンデュラムモンスター
 レベル4/水/水/攻撃力1500 守備力1600 スケール9
 【P効果】
 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドの「冽灼」カードが破壊された場合、
 相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを持ち主の手札に戻す。
【モンスター効果】
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分メインフェイズに発動できる。
 手札から炎属性Pモンスター1体を特殊召喚する。
 ②:このカードを手札に戻し、自分のEXデッキに表側で存在する炎属性Pモンスター1体を
 対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
 ③:このカードがEXデッキに表側で存在し、
 自分フィールドに炎属性モンスターが存在する場合に発動できる。
 このカードをEXデッキの表側から特殊召喚する。


現れたモンスターは藍色の水流が絡まり合って人型を成す、仮面をつけたようなモンスターだ。
手足は鋭い水流の刃と化しており、水流を掌で輪のように回転させている。背には半透明の帯が揺れている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/bd8F0fA
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「ネアスの効果発動。1ターンに1度、手札から炎属性Pモンスターを1体、特殊召喚できる。
おいで、『冽灼の舞姫 ファリナ』」


■冽灼の舞姫 ファリナ
 ペンデュラムモンスター
 レベル3/火/炎/攻撃力1800 守備力1400 スケール1
 【P効果】
 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから水属性Pモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分のPゾーンの水属性Pモンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードを特殊召喚する。
 ②:このカードがL・Sモンスターの素材としてEXデッキの表側に加わった場合に発動できる。
 自分はデッキから1枚ドローする。


そのモンスターは華麗な姿をした炎のモンスター。
上半身が淡く透けた炎のヴェールのような布に覆われ、腰から下には、炎が布のように分かれた状態で垂れ下がっている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/SJNv1es
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譲はデュエルディスクを掲げると、その両端下部から2つのゾーンが飛び出す。

「僕は『冽灼の澪装 エルダム』をPスケールにセッティング」


■冽灼の澪装 エルダム
 ペンデュラムモンスター
 レベル3/水/水/攻撃力1400 守備力1800 スケール9
 【P効果】
 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから炎属性Pモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分のPゾーンの炎属性Pモンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードを特殊召喚する。
 ②:自分のPゾーンの炎属性Pモンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードをEXデッキに表側で置き、そのカードとは名前の異なる炎属性Pモンスターを、
 EXデッキの表側からPゾーンに置く。


譲の頭上に浮かび上がったのは青白く発光する流水の薄衣を纏った、水のモンスター。
胴体の中央には透明な水球があり、その周囲を布のように揺れる水膜が覆っている。
背後からは常に細流が噴き上がり、外套のように背に垂れている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/BAkBEhY
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「エルダムのP効果発動。1ターンに1度、炎属性Pモンスター1体を手札に加える。
『冽灼の宴陽 ソリグナ』を手札に」

「さらに『冽灼の舞姫 ファリナ』の効果発動!
自分のPゾーンの水属性モンスターを特殊召喚できる。
現れろ『冽灼の澪装 エルダム』」

譲が自分の上方に向かって手招きすると、Pゾーンからエルダムがふわりと舞い降りる。
フィールドには3体のモンスターが並んだ。

「フィールドのネアス、ファリナ、エルダムをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」
3体のモンスターはそれぞれ、炎と水の渦となるように、アローヘッドへと入ってゆく。

「赤は息吹き、青は囁く。
交わりの狭間に生まれし力が、いま輪郭を持ち始める」

「リンク召喚!リンク3『冽灼の織灘 ルナイラ』!」


■冽灼の織灘 ルナイラ
 リンクモンスター
 リンク3/火/炎/攻撃力2400
 【リンクマーカー:左下/下/右下】
 炎属性・水属性を含むモンスター2体以上
 このカード名の②③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は「水」としても扱う。
 ②:このカードがL召喚に成功した場合に発動できる。
 このカードのL素材となったモンスターを全て手札に戻す。
 ③:LPを2000払って発動できる。
 デッキから炎属性・水属性Pモンスターをそれぞれ1体ずつ選び、自分のPゾーンに置く。
 ④:このカードのリンク先に、炎属性・P属性モンスターが同時にP召喚された場合、
 相手フィールドのモンスター、魔法・罠カード1枚ずつを対象として発動できる。
 そのカードを破壊する。
 

現れたのは、炎の半身と水の半身を持つ、筋肉質なモンスター。
背には羽衣のような炎と水を纏っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/Ay63Wat
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「ルナイラがL召喚した時、効果発動!
さらにチェーンして素材となったファリナの効果発動!
ファリナの効果でカードを1枚ドローする。
さらにルナイラの効果によりL素材となったモンスターは全て手札に戻る」

譲は素材となった3枚のモンスターをEXデッキの表側から手札へと加える。

「リンク召喚までしといて、手札が7枚か。
恐ろしいリソースしてんぜ」

遊次は心待ちにしていた戦いの始まりに、浮かれた声をあげる。

「まだまだこれからさ」
譲も少しだけ口角を上げ、手札の2枚のカードを手にする。

「僕は『冽灼の舞姫 ファリナ』と『冽灼の泡紋 メルダ』をPスケールにセッティング!」
譲の頭上に炎と水のモンスターが浮かび上がる。


■冽灼の泡紋 メルダ
 ペンデュラムモンスター/チューナー
 レベル2/水/水/攻撃力800 守備力200 スケール9
 【P効果】
 ①:自分のもう片方のPゾーンに炎属性Pモンスターカードが存在する限り、このカード以外の自分の魔法・罠カードは相手の効果で破壊されない。
【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードをリリースして発動できる。
 デッキからチューナー以外の炎属性Pモンスター1体を特殊召喚する。
 ②:このカードがフィールドからL・S素材としてEXデッキの表側に加わった場合に発動できる。
 デッキからチューナーの炎属性Pモンスター1体をデッキから手札に加える。


「冽灼の泡紋 メルダ」は水滴の滴がモンスターに変じたような姿だ。
全身は透明な青い水でできており、雫を逆さにしたような体の中央には、渦を巻く光がゆらめいている。
左右には短いヒレが張り出し、半透明の翼のように淡く輝きながら水面の光を反射している。
先細りの尾はしなやかに伸び、滴る雫の粒を散らして波紋を描いていた。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/bF9A5b6
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「スケールは1~9。
よってレベル2~8のモンスターを同時に召喚可能!」

譲が車椅子の上で両手を大きく広げる。

「紅蓮の猛りは命を灼き、蒼き激流は心を凍らす。
相克の力よ、終焉をもたらすうねりとなれ!
ペンデュラム召喚!現れよ、僕のモンスター達!」

譲の頭上で振り子が大きく揺れ、その中央の輝きから4つの光がフィールドへと落ちる。

「冽灼の宴陽 ソリグナ」は、3つの眼を持った火炎の流動体だ。
翼のような炎を背負っており、頭には王冠のような炎が浮かんでいる。


■冽灼の宴陽 ソリグナ
 ペンデュラムモンスター
 レベル8/火/炎/攻撃力2700 守備力2300 スケール1
 【P効果】
 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分のもう片方のPゾーンに水属性Pモンスターカードが存在する場合、
 相手の表側モンスター1体を対象として発動できる。その効果を無効にする。
【モンスター効果】
 このカード名の②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに水属性モンスターが存在する限り、
 このカードは戦闘で破壊されない。
 ②:相手のモンスターの効果が発動した時、
 自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。
 その効果を無効にして破壊する。
 ③:自分の「冽灼」Pカード1枚をデッキに戻して発動できる。
 そのカードと名称の異なる、そのカードと同じ属性を持つ
 「冽灼」Pカード1枚を、自分のPゾーンに置く。


モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/c3MKE3z
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「冽灼の深淵 ナムリオ」は、ソリグナと対を成す水のモンスターだ。
その身体全体が波のように渦巻いており、頭には天使の輪のように水輪が浮かんでいる。


■冽灼の深淵 ナムリオ
 ペンデュラムモンスター
 レベル8/水/水/攻撃力2500 守備力2800 スケール9
 【P効果】
 ①:自分のもう片方のPゾーンに炎属性Pモンスターカードが存在する場合、
 相手の表側の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。その効果を無効にする。
【モンスター効果】
 このカード名の②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに炎属性モンスターが存在する限り、
 このカードは相手の効果で破壊されない。
 ②:相手の魔法・罠カードの効果が発動した時、
 自分フィールドの表側の魔法カード1枚を対象と発動できる。
 対象のカードを破壊し、その相手の魔法・罠の効果を無効にして破壊する。
 ③:自分のEXデッキの表側となっている「冽灼」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。


モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ruQKGWJ
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「冽灼の響輪 ヴォルヴ」は脚部が車輪のように渦巻いている炎のモンスターだ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/g1eS4QO
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「冽灼の深環 イヴォール」は、全身が濃紺の水塊で象られた水の巨人だ。
筋肉の隆起は波打つようにうねり、肌の表面には水面のきらめきを思わせる模様が走っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/NAtSjkp
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譲のフィールドに一気に5体のモンスターが立ち並ぶ。
炎と水、相対する2つの属性が織り成すフィールドは美しく、
怜央のチームの一員であるリンリンは、無邪気に小さな手を叩いて笑顔を浮かべている。

「虹野選手、早速4体ものモンスターをP召喚したぁ!
1体のLモンスターと4体の上級モンスター!圧巻の光景ですッ!」


「『冽灼の宴陽 ソリグナ』の効果発動。Pゾーンの「冽灼」カードをデッキに戻し、同じ属性を持つモンスターをPゾーンに置く。
『冽灼の舞姫 ファリナ』をデッキに戻し『冽灼の踊焔 カグシア』をPゾーンにセット」

踊り子のような炎のモンスターが頭上から消え、新たに火焔が帯状に交差して形作られた炎の流動体のモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/OxGwGTh
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「僕はこれでターンエンドだ」

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【譲】
LP8000 手札:3(ネアス、エルダム)

①冽灼の織灘 ルナイラ ATK2400
②冽灼の宴陽 ソリグナ ATK2700
③冽灼の深淵 ナムリオ DEF2800
④冽灼の爆腕 バリウ ATK2200
⑤冽灼の深環 イヴォール DEF2100

Pゾーン:冽灼の踊焔 カグシア、冽灼の泡紋 メルダ


【遊次】
LP8000 手札:5
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「知ってると思うが、ソリグナは相手モンスターの効果を、ナムリオは相手の魔法・罠の効果を無効にして破壊できる。それに、ソリグナは水属性が場にいると戦闘で破壊されず、ナムリオは炎属性が場にいれば効果で破壊されない」

「さらにイヴォールは相手ターン中に罠カードをセットできる。その罠カードはセットされたターンに発動できる上に、効果で破壊されない。
見た目も中身も素晴らしい盤面だろう?」

譲は眼前の赤と青を瞳に映しながら得意げに話す。
遊次はデュエルディスクを通してカードの効果をすぐに頭に叩き込む。
真剣な表情で唇に指を置き、譲の言葉には返す余裕はないようだ。

「ふ…まあせいぜい頑張りなよ。さあ、君のターンだ」

遊次はソリッドヴィジョンとして浮かび上がるカード効果から目を離し、真っ直ぐと前を見る。

「俺のターン、ドロー!」
遊次はカードを引いた後、手札に視線を落とし、集中する。

(いつもなら、自分のやりたい展開を通すためにはどう動くべきかを考えるけど…それじゃダメだ。
もっとその先…譲が何を考えてこのフィールドを作ったのか、何をしたいのか。そこまで読まなきゃ、ここから先の戦いには勝てない)

遊次は目の前のソリグナとナムリオ…対となる炎と水の上級モンスターを見つめる。

(モンスター効果無効と魔法罠無効…強いけど、それだけで俺を止められるとは思ってねえはずだ。となると…)
遊次の視線は隣の水の巨人「イヴォール」に移る。

(あのモンスターはいつでも罠をデッキから持ってこれる。俺の裏をかけるそのカードが本命だ。
じゃあその罠カードはどんな効果だ?もっと…奥に潜らなきゃいけねえ。譲の心の奥に…!)

遊次は、赤いレーザー光線が張り巡らされた廊下と、その奥で余裕の笑みを浮かべる譲をイメージした。



遊次は思考を巡らせ、しばらく黙ったまま前を見ている。
観客席のアキトは心配そうに呟く。

「遊次、ずっと考えこんでるけど大丈夫かな。
まさか打つ手がないんじゃ…」

「んなわけねーだろ。この程度で動けなくなるほどアイツのデッキはヤワじゃねえ。探偵ならもっと頭使え」
怜央の鋭すぎる言葉にアキトは目と口を大きく開き、ショックを露にした。

「ちょっと怜央!口悪すぎ!でも遊次は大丈夫ですよ。
きっと、それぐらいいっぱい考えないと、譲くんには勝てないと思ってるだけだから」

灯は後ろの席のアキトに柔らかな笑みで言葉を返す。

「そうか…それならいいんだ…」
アキトは萎んだ声で背筋を丸めた。



(…やっぱおかしい。いくら魔法・罠を1度無効にできるっつっても、俺がそれをかわすぐらいワケないのはわかるはずだ。
じゃあなんで譲は"あのカード"を警戒しないんだ?ヘタすりゃ3枚のカードだけで譲のフィールドをほとんどぶっ壊せちまう…)

遊次は張り巡らされたレーザーを搔い潜り、譲の心の奥へと足を踏み入れてゆく。
怜央に対して狡猾な罠を仕掛けた譲なら、絶対に何か思惑があるはずだ。そう遊次は確信している。

(いや、むしろ"あのカード"を使わせることこそ、譲の狙いだとしたら…!?
そうだ!それなら合点がいく!守りが厚いようで絶妙に隙のあるアイツのフィールドも…!)

(…賭ける価値はある。この"勘"に)
遊次は前を向く。その表情に迷いはなかった。

「随分悩んでいたね。勝負に真剣になるものいいけど、お客さんを飽きさせないのも一流のデュエリストの条件だよ」

「悪ぃな。でもこっからは一本道だぜ」
遊次は手札のカードを1枚手に取る。

「俺のフィールドにモンスターがいない時、
『妖義賊-脱出のシェパード』は手札から特殊召喚できる!」


■妖義賊-脱出のシェパード
 効果モンスター
 レベル3/地/獣/攻撃力900 守備力1100
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
 以下の効果から1つを選択して発動できる。
 ●相手の墓地のモンスター2体を選び、自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
 ●相手はデッキからモンスター2体を選ぶ。自分は選んだモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。


そのモンスターは、シェパード犬の顔を持ちながら、整った二足歩行の姿勢で立っている。
首元にはシルクのスカーフが巻かれ、風になびいて優雅に舞う。
カーキ色のジャケットを羽織り、下からは白いシャツの襟が見える。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mbD8bgW
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「まずは1つ、手を打たせてもらうぜ。
手札から罠カード『妖義賊の秘技』発動!相手のモンスターを1体奪うことができる!コイツは俺の場に妖義賊がいる時、手札からも発動できるぜ!」


■妖義賊の秘技
 通常罠
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターのコントロールを得る。
 自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合、
 この効果は手札からも発動できる。
 ②:自分・相手ターンのエンドフェイズ時、このカードが墓地に存在し、
 自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
 このカードを自分フィールドにセットする。
 この効果でセットしたこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。


「奪うのは『冽灼の深淵 ナムリオ』だ!」
遊次は魔法・罠を無効にする効果を持つ水の上級モンスターを指定する。

「仕方ないね。『冽灼の深淵 ナムリオ』の効果発動。
自分の魔法カードを1枚破壊して、相手の魔法・罠カードの効果を無効にする。
Pゾーンの『冽灼の踊焔 カグシア』を破壊し、その罠カードの効果を無効にさせてもらうよ」

譲の頭上のカグシアは、ろうそくの火を吹き消したように消えてゆき、
ナムリオが腕を振るうと、遊次の罠カードは泡へと変わり、消失する。


「Pゾーンで破壊された『冽灼の踊焔 カグシア』の効果発動。
このカードがEXデッキに表側で加わった場合、デッキからPゾーンに「冽灼」Pカードを置く。
『冽灼の燐珠 ピオナ』をPゾーンへ」


■冽灼の燐珠 ピオナ
 ペンデュラムモンスター/チューナー
 レベル2/火/炎/攻撃力900 守備力100 スケール1
 【P効果】
 ①:自分のもう片方のPゾーンに水属性Pモンスターカードが存在する限り、
 自分の「冽灼」モンスターは相手の効果の対象にならない。
【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードをリリースして発動できる。
 デッキから水属性のチューナーPモンスター1体を特殊召喚する。
 ②:このカードがフィールドからL・S素材としてEXデッキの表側に加わった場合に発動できる。
 デッキからチューナー以外の水属性Pモンスター1体をデッキから手札に加える。


炎のモンスターは、ひとつの大きな火の環を軸にした異形の姿をしていた。
輪郭を成す炎は絶えず揺らぎながらも円を保ち、その内部には赤い火点が浮かび、瞳のように光を放っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/LMFwyZA
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「ピオナはもう片方のPゾーンに水属性モンスターがいる時、僕のモンスターは相手の効果の対象にならない。
そしてもう片方のメルダは、相方が炎属性の時、このカード以外の僕の魔法・罠カードを破壊から守ってくれる。
2体とも、とてもいい子だよ」

譲は車椅子から頭上の小さな炎と水のモンスターに手を振って見せる。
最上級モンスターであるソリグナとナムリオ自身も破壊耐性を持っていることを考えると、譲のフィールドは圧倒的な耐性を持つことになる。

「いい子なのは俺のモンスターも同じだぜ。
ちっとばかし、手癖は悪ィけどな」

「シェパードの効果発動!フィールドの妖義賊を1体リリースして、相手の墓地かデッキから2体のモンスターを、効果を無効・攻守を0にして特殊召喚できる。
シェパードをリリースして、お前のデッキからモンスターを2体特殊召喚するぜ」

シェパードが光の粒となって消えると、譲はデッキから2枚のカードを取り出し、遊次へ投げ渡す。

(シェパードの効果を止めない…か。
俺を妨害で圧死させるのが目的なら、ここは十分止め所だし、イヴォールの効果を考えりゃ、ここでソリグナの効果を使うのが最適解にしか見えない。でも譲はそうしなかった…)

遊次は譲から2枚のカードを受け取ったその一瞬、脳内で思考を更新し続ける。
しかしそれを悟られないように、平然とデュエルを続ける。

「サンキュー。俺はお前のデッキから『冽灼の流糸 ネリュス』と『冽灼の響輪 ヴォルヴ』を攻守0・効果無効で特殊召喚するぜ」

遊次のフィールドに2体のモンスターが現れる。
ネリュスはその身体が全て水の糸で紡がれたような姿をしている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/QJ56SSG
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ヴォルヴは脚部が車輪のように渦巻いている炎のモンスターだ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ruQKGWJ
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「フィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』発動!」

■妖義賊の秘密回廊
 フィールド魔法
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードの発動時の処理として、「予告状」魔法カード1枚をデッキから手札に加えることができる。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター、または元々の持ち主が相手となるモンスターを対象とする
 相手フィールドのモンスター効果が発動した場合に発動できる。
 発動した効果を無効にする。
 ③:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスターがリリースされた場合に発動できる。
 自分はデッキから1枚ドローする。

古い石畳の床が1枚ずつ広がってゆき、フィールド全体に張り巡らされる。
壁には重厚な木材が使われている。茶色く染まった柱が霧の中にぼんやりと浮かび、暗い空間の中に優美な雰囲気を感じさせる。


「このフィールド魔法の発動時、デッキから『予告状』魔法カードを1枚、手札に加えることができる!
俺は『爆炎の予告状』を手札に加える!」

そのカードを見つめ、譲は心の中でニヤリと笑う。

(そうだ、君はそのカードに頼るしかない。
僕のモンスターを効果破壊から守るものは、魔法罠無効のナムリオだけ。
それを突破して爆炎の予告状で全てを吹き飛ばすルートが、無意識に君の頭に浮かぶはずだ)

譲のPゾーンのメルダにより魔法・罠カードは守られ、ナムリオは効果破壊耐性を持つものの、それ以外のカードは全て破壊することができる。
遊次にとってこれがもっとも手早く譲のフィールドを崩す策だ。
しかし、それこそが譲の仕掛けた罠だった。

(でも君がそのカードを墓地から除外して破壊効果を起動した瞬間、イヴォールの効果でデッキから罠カードをセットすれば、その罠カードは破壊されない。
その状態で他のカードが破壊された時…罠カードは作動する)

譲は脳内にその罠カードを思い浮かべる。

■冽灼の噴濫
 通常罠
 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の「冽灼」モンスターまたは「冽灼」Pカードが相手の効果で破壊された場合に発動できる。
 破壊されたカードを全て墓地へ送り、破壊されたモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、破壊されたPカードを全て自分のPゾーンに置く。
 その後、この効果で自分フィールドに特殊召喚したモンスターと、置いたPカードの数まで、相手フィールドのカードを選んで墓地へ送る。
 破壊された自分のカードが4枚以上ある場合、このターン相手はモンスターを特殊召喚できない。
 このカードの発動に対して、相手はカードの効果を発動できない。


破壊された自分のモンスター・Pカードを全て復活させ、その枚数分相手フィールドのカードを墓地へ送る罠カード。
破壊された自分のカードが4枚以上あれば、そのターン遊次は特殊召喚を行うことができない。
さらにチェーン不可であるため、この罠カードを止めることはできない。

このカードの発動こそが、譲の狙いだった。
爆炎の予告状の全体破壊で4枚以上自分のカードが破壊されることで、遊次を絶望へと追いやる一手を打つことができる。
故に、譲はあえて爆炎の予告状を使うルートを相手に思い描かせる盤面を創り上げたのだ。

(このデュエルがすぐに終わってしまうのは名残惜しいけど、これは真剣勝負だ。僕も本気で君を潰す)
譲は仕掛けた罠に獲物がかかるのを、したたかに待ち続ける。

「さらに今手札に加えた『爆炎の予告状』を発動!
このカードは発動時は何も起きないが、発動から2ターン後に墓地から除外されて、除外された時に効果を発動するカードだ」

■爆炎の予告状
 通常魔法
 ①:このカードは発動後、墓地に送られる。
 このカードの発動後2回目の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。
 ②:このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
 相手フィールドのカードを全て破壊する。


「さらに俺はPゾーンに『妖義賊-戴火のプロメテ』をセッティング!」


■妖義賊-戴火のプロメテ
 ペンデュラムモンスター/チューナー
 レベル4/火/炎/攻撃力1000 守備力200 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに「ミスティックラン」モンスターが存在する場合に発動できる。
 このカードを効果を無効化して自分フィールドに特殊召喚する。
 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合に発動できる。
 自分のデッキの上からカードを5枚めくり、
 その中から「ミスティックラン」カード1枚を選んで手札に加える。
 残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。
 【モンスター効果】
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在しない場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、
 相手の除外状態のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 ③:このカードがフィールドからEXデッキに表側表示で加わった場合に発動できる。
 このカードをPゾーンに置く。


遊次の頭上に火の玉に顔の描かれたポップなモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sNrvuKI
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「プロメテのP効果発動!相手から奪ったカードが俺の場にある時、デッキの上から5枚めくって、その中の妖義賊カードを1枚手札に加えられる」

遊次はデッキトップから5枚を手に取り、扇状に広げる。

「俺はこの中から『妖義賊-誘惑のカルメン』を手札に加える。そしてそのままPゾーンにセット!」


■妖義賊-誘惑のカルメン
 ペンデュラムモンスター
 レベル5/闇/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
 ①:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースして発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」モンスター1体を特殊召喚する。
 ②:相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを自分の手札に加える。
 【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の墓地のモンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 対象の自分の墓地の「ミスティックラン」モンスターを相手フィールドに特殊召喚し、
 対象の相手フィールドのモンスターのコントロールを得る。
 ②:このカードが「ミスティックラン」モンスターの融合・S・X・L召喚の素材となった場合、
 または「ミスティックラン」モンスターの儀式召喚のリリースとして使用された場合に発動できる。
 EXデッキの表側表示のこのカードを手札に加える。


頭上に姿を現したモンスターは、紫のローブを羽織り顔をベールで覆っている妖艶な大人の女性のモンスターだ。
黒の口紅を施した唇でニヒルな笑みを浮かべている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/dwkEFaw
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「さらにプロメテのP効果を発動!妖義賊が場にいる時、このカードをPゾーンから特殊召喚できる!」
プロメテが遊次の頭上からゆらゆらとフィールドに降り立つ。

「『妖義賊-誘惑のカルメン』のP効果発動!
妖義賊モンスターを1体リリースして、デッキから妖義賊を特殊召喚できる。プロメテをリリース!
そしてこの瞬間、フィールド魔法『妖義賊の秘密回廊』の効果発動!
妖義賊がリリースされた時、カードを1枚ドローする!」

「チェーン1のカルメンのP効果でデッキから『妖義賊-士君子のブラックバード』を特殊召喚!」


■妖義賊-士君子のブラックバード
 効果モンスター
 レベル4/地/鳥獣/攻撃力1500 守備力1400
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを破壊する。その後、破壊したその魔法・罠カードを自分フィールドにセットする。
 ②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
 代わりに墓地の「予告状」カードを除外することができる。


フィールドに紳士服を纏ったカラスのモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/HvbmmGT
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「…出たね、地味に厄介なモンスター」

「そうだな。なんせコイツは墓地の予告状を除外して妖義賊の破壊を1度無効にできる。
お前のソリグナは俺のモンスター効果を無効にして"破壊"する効果。
それを使ったら俺の墓地の『爆炎の予告状』が起動しちまうってことだ」

遊次は得意げに語る。

(本当はソリグナの効果をわざと使って、爆炎の予告状を除外してもらいたいところだけど…そんなことをすれば罠だと気付かれてしまう。そうなれば遊次クンは除外した予告状の効果を発動しない)

譲は車椅子に背中を預け、真剣な表情のまま押し黙っている。
これもあくまで、「爆炎の予告状を使われたら困る」と遊次に思い込ませるための所作だ。

「ブラックバードの効果発動!
1ターンに1度、相手の魔法・罠カードを破壊して、その後そのカードをセットできる。
お前のPゾーンの『冽灼の泡紋 メルダ』を破壊させてもらうぜ」

ブラックバードが黒い羽を飛ばし、譲の頭上のメルダを破壊する。

「ただしメルダはPカード。破壊されてEXデッキに表側で置かれた時点で、
この子はモンスターカードだ。ブラックバードは魔法・罠カードを奪うだけ…残念ながらメルダは奪えないよ」

「でもお前のPゾーンのピオナは、もう片方のPゾーンに水属性がいなきゃ効果を使えねえ。
つまり自分のモンスターを効果から守る効果は消えた。
俺は手札から『妖義賊-舞蛇のキク』をPスケールにセッティング!」


■妖義賊-舞蛇のキク
 ペンデュラムモンスター チューナー
 レベル3/水/爬虫類/攻撃力1000 守備力1500 スケール8
 【P効果】
 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから儀式モンスターまたは儀式魔法カード1枚を手札に加える。
 その後、自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。
【モンスター効果】
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:P召喚したこのカードが存在する限り、戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
 ②:このカードが相手モンスターとの戦闘で破壊された場合に発動できる。
 その相手モンスターのコントロールを得る。


遊次の頭上に桃色の着物を纏った白い蛇の頭を持つモンスターが浮かび上がる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/tsPN11Y
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「キクのP効果発動!儀式魔法か儀式モンスターをデッキから手札に加える。
俺は儀式魔法『儀式の予告状』を手札に!
相手から奪ったカードが場にある時、さらに1枚ドローできる!」

遊次は腕をぶんぶんと回し、やる気に満ち溢れている。

「ここからは更にギアを上げるぜ。俺のスケールは2~8!よってレベル3~7のモンスターを同時に召喚可能!」

「天に弧を描く義の心、その輝きより現れ同胞の声に呼応せよ!
ペンデュラム召喚!来い、俺のモンスター達!」

左右に大きく揺れる振り子。その中心から2つの光がフィールドに降り注ぐ。

「手札からレベル4『妖義賊-駿足のジロキチ』、
EXデッキからレベル4『妖義賊-戴火のプロメテ』!」

フィールドにほっかむりを被ったネズミのモンスターと、火の玉のモンスターが現れる。

「ジロキチが特殊召喚された時、効果発動!デッキから妖義賊を手札に加えることができる!
『妖義賊-美巧のアカホシ』を手札に加えるぜ」

ブラックバードによる予告状除外+破壊無効がある以上、譲はこの効果をソリグナで無効にできない。
しかし譲には切り札となる罠カードがある。
警戒した表情を浮かべながらも、内心では獲物が罠にかかるその瞬間を今か今かと待ち望んでいる。

「いくぜ。俺はレベル4のジロキチとプロメテでオーバーレイネットワークを構築!」
地面に現れた黒い銀河のような渦に、2体のモンスターが飲み込まれてゆく。

「夜に這い寄る不敵な魔の手、その技巧で勝利を奪い取れ」
口上を唱えると、黒い銀河が逆流し、新たなモンスターが姿を現す。

「エクシーズ召喚!ランク4!『妖義賊-怪盗ルパン』!」

■妖義賊-怪盗ルパン
 エクシーズモンスター
 ランク4/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1500
 レベル4モンスター×2
 元々の持ち主が相手となるモンスターをこのカードのX召喚の素材とする場合、そのレベルを4として扱う。
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターの効果を無効にし、コントロールを得る。
 ②:このカードが元々の持ち主が相手となるモンスターを素材としている場合、以下の効果を得る。
 自分の墓地の「予告状」カード1枚を対象として発動する。そのカードを除外する。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


現れたのは、黒いハットを被りマントを纏った怪盗の姿。
手には白い手袋、目元には白い仮面を着けている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/mcoDQUC
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【譲】
LP8000 手札:3(ネアス、エルダム)

①冽灼の織灘 ルナイラ ATK2400
②冽灼の宴陽 ソリグナ ATK2700
③冽灼の深淵 ナムリオ DEF2800
④冽灼の爆腕 バリウ ATK2200
⑤冽灼の深環 イヴォール DEF2100

Pゾーン:冽灼の燐珠 ピオナ


【遊次】
LP8000 手札:4(儀式の予告状、アカホシ)

①冽灼の流糸 ネリュス DEF0
②冽灼の響輪 ヴォルヴ DEF0
③妖義賊-士君子のブラックバード ATK1500
④妖義賊-怪盗ルパン ATK2100

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊
Pゾーン:妖義賊-誘惑のカルメン、妖義賊-舞蛇のキク
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「怪盗ルパンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体の効果を無効にして、そのコントロールを奪う!」

譲は一瞬の逡巡を見せたのち、右手の人差し指を少し上げる。

「…奪われるぐらいなら潔く死を選ぼう。
『冽灼の宴陽 ソリグナ』の効果発動。
『冽灼の爆腕 バリウ』をリリースし、その効果を無効にして破壊する!」

リリースされたバリウが炎にて蒸発し、消えてゆく。
ソリグナが3つの目を光らせると、ルパンの効果は無効となる。

「この時を待ってたぜ!ブラックバードは墓地の予告状を除外することで、妖義賊の破壊を無効にできる!
『爆炎の予告状』を除外して、破壊を回避する!」

ブラックバードが翼を振るうと黒い羽根が宙に舞い、ソリグナの熱波を防ぐ。

遊次と譲が視線を交わす。
両者にとって、これが運命の時だ。

「除外された爆炎の予告状の効果発動!
このカードが墓地から除外された時、相手フィールドのカードを全て破壊する!」


「出ましたぁ!!神楽選手のキラーカードッ!
これを喰らえば虹野選手のフィールドは、破壊耐性を持つナムリオ以外、全て破壊されてしまいます!」

実況も観客も誰一人として遊次の優勢を疑わなかった。
譲の防壁は複数の耐性と無効効果を備え、万全だった。
それを遊次が破り、風穴を開けた。
それがこのデュエルから読み取れる見たままの情報だった。

「『冽灼の深環 イヴォール』の効果発動!
EXデッキの表側の炎属性Pモンスターをデッキに戻し、相手メインフェイズに罠カードをデッキからセットする!
『冽灼の踊焔 カグシア』をデッキに戻し、罠カードをセット!」

譲はまだ険しい表情のままだ。
遊次はもう引き返すことはできない。
しかし獲物が完全に罠にかかるその時まで、気を抜くことはなかった。

「イヴォールの効果でセットした罠カードは相手の効果で破壊されません!
つまり虹野選手は最後の一手を残すことができる!
しかしそれでも虹野選手が大ダメージを受けることには変わりありません!」

実況者がマイクの根本を強く握り、目を皿のようにしてフィールドを見つめている。
まだ譲が不利な状況であることに疑いの余地はなかった。


しかしこの会場にただ一人、
最初から全て"視えていた"男がいた。


「お前がこれからセットする罠カード…多分、自分のカードの破壊に反応して発動できるカードだろ」

「…なんだって?」
譲の表情が変わる。

「お前のフィールド、色んな耐性が付与されてて頑丈に見えるけど、爆炎の予告状を止められるのは、ナムリオの魔法・罠無効だけだったろ。
だからナムリオを止めて、爆炎の予告状をキメるルートが最初に思い浮かんだ」

「普通に考えりゃ、そいつこそ"突破口"だ。
でもお前のことだ…喰らえば致命傷になるカードを対策してないわけがない。
だから俺は思ったんだ、これは俺に爆炎の予告状を使わせるための"罠"だってな」

(まさか、そこまで高精度な読みを!?いや、でも…)
譲の眉間に皺が寄る。状況を理解できなかった。

「何を言っているのかわからないな。
仮に僕が爆炎の予告状を発動するように誘導していて、君がそれに気付いたとしよう。
でも今、君はまんまと、そのカードを発動してしまっているじゃないか」

譲の言葉を受けた遊次は、ただ目を瞑り静かな笑みを浮かべた。

「義賊にも都合ってもんがあんだ。
予告したら実行しなきゃいけないなんて、誰が決めた?」

そして目を開け、1枚のカードを手札から選んだ。

「速攻魔法発動!『妖義賊の予定変更』!」


■妖義賊の予定変更
 速攻魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 ①:自分の墓地の「予告状」カードが除外され、効果が発動した同一チェーン上で、その除外状態の「予告状」カードを対象として発動できる。
 その効果を無効にする。その後、そのカードとカード名が異なる「予告状」カード1枚をデッキから除外し、その効果を適用する。
 ②:自分の「ミスティックラン」モンスターが、相手のカードを対象とする効果を発動した同一チェーン上で、フィールドの正しい対象となる別のカード1枚を対象として発動できる。
 その効果の対象を正しい対象となるそのカードに移し替える。
 ③:墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 ターン終了時まで、そのモンスターが攻撃する場合、ダメージステップの間だけその相手モンスターの効果は無効化される。


「予定…変更…?」
譲の背筋に嫌な予感が過る。

「このカードは、墓地から除外されて予告状カードの効果が発動された時、その同一チェーン上で発動できるカードだ。
発動してる予告状は無効になり、代わりに別の予告状をデッキから除外して…その効果を適用する」

譲は大きく目を見開いた。
完全なる予想の範疇外からの一手だった。

「ありえない…!一度発動したカードを取り下げるなんて…!!」
譲は車椅子のアームレストを強く叩いた。

「『爆炎の予告状』の効果は無効!代わりにデッキから『融合の予告状』を除外し、その効果を使用する!」


■融合の予告状
 通常魔法
 ①:このカードは発動後、墓地に送られる。
 このカードの発動後2回目の自分メインフェイズに、このカードを墓地から除外できる。
 ②:このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
 自分の手札・フィールドから、「ミスティックラン」融合モンスターカードによって決められた
 融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
 この効果で融合召喚したモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、
 そのモンスターの攻撃力は、ダメージステップの間0となる。


「俺は『妖義賊-士君子のブラックバード』と、お前から奪った『冽灼の響輪 ヴォルヴ』を融合!」
2体のモンスターは紫色の渦へと飲み込まれる。

「悪しきを挫く至高の剣士が、闇夜を斬り裂く一閃を放つ。
融合召喚!現れろ!『妖義賊-快傑ゾロ』!」


■妖義賊-快傑ゾロ
 融合モンスター
 レベル7/光/獣/攻撃力2800 守備力1800
 「ミスティックラン」モンスター + 元々の持ち主が相手となるモンスター
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動できる。
 そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
 ②:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在し、
 相手が魔法・罠カードの効果を発動した場合に発動できる。
 その発動を無効にして破壊する。


現れたのは、青い二角帽子を被り、目に黒いマスクを着けた狐の戦士だ。
サーベルを携え、貴族のような青いジャケットに白いスカーフを巻き、高貴な姿をしている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/R2ef2Uj
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【譲】
LP8000 手札:3(ネアス、エルダム)

①冽灼の織灘 ルナイラ ATK2400
②冽灼の宴陽 ソリグナ ATK2700
③冽灼の深淵 ナムリオ DEF2800
④冽灼の深環 イヴォール DEF2100

Pゾーン:冽灼の燐珠 ピオナ

【遊次】
LP8000 手札:3(儀式の予告状、アカホシ)

①妖義賊-快傑ゾロ ATK2800
②冽灼の流糸 ネリュス DEF0
③妖義賊-怪盗ルパン ATK2100

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊
Pゾーン:妖義賊-誘惑のカルメン、妖義賊-舞蛇のキク
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「お、おっとぉーー!?どういうことでしょうかぁ!?
せっかく相手に致命傷を与える爆炎の予告状を発動したにも関わらず、自らその効果を無効化し、融合召喚を行いました!」

実況者が困惑した声をあげる。
観客席のざわめきも次第に大きくなってゆく。
遊次の意図を理解できないようだ。


(そのずる賢いとこ…やっぱりアンタは変わってないよ、遊次。
コラプスの後、やけに明るくなったけど、根っこはなんにも変わってないんだから)

この大舞台で派手な大立ち回りをする遊次の姿に、"おばちゃん"は誇らしい笑顔を浮かべた。


「どういうことでしょうか?
爆風の予告状を発動させることが虹野さんの狙い…
遊次さんはそう言っていましたが、僕にはそう確信する理由がわかりません」

怜央のチームの1人、メガネをかけた少年「治」は、試合中書き留めていたノートを見返しながら首をひねる。

「爆炎の予告状は致命傷になり得るカードだが、譲の盤面はそれをケアしきれるものじゃなかった…だから遊次は罠だと感じた。
確かに譲ならやりかねないが、爆炎の予告状をキャンセルする程の根拠にはならないな」

イーサンでさえもまだ遊次が思い切った行動を取った決定的な理由を図ることができていなかった。

「虹野譲の考えは知らねえが、あのツラを見てみろ。
俺には、読みが当たってたようにしか見えねえがな」

怜央の視線の先には、奥歯を噛み締め、明らかに迷いを露にしている譲の姿があった。


「さあ、お前がデッキから罠をセットする番だぜ。
快傑ゾロは魔法・罠を無効にする効果があるから、セットしても使えないかもしれねえけどな」

遊次は煽るように口角を上げる。

(ゾロがこのタイミングで来るのは全くの想定外だけど…"あの罠"はチェーン不可だ。ゾロの無効効果なんて問題じゃない!
そんなことより…彼の読みの精度がここまで上がっているなんて…!)

譲は悔しさを滲ませながら、デッキから1枚のカードをセットする。

「…僕は罠カード『冽灼の噴濫』をセットする」

そのカードは譲が「爆炎の予告状」へのカウンターとして想定していたものだ。
そのカードを遊次に見せることは、譲のデュエリストとしてのプライドを大きく傷つけた。
それは相手の術中に落ちていたことを自ら証明する行為に他ならないからだ。
しかし遊次の場には魔法・罠を無効にするゾロがいるため、他の罠カードを伏せても無効にされてしまう。
チェーン不可のこの罠カードをセットする以外に、譲に選択肢はなかった。

「ハハハッ!やっぱりそうだ!そのカードは、自分のカードが破壊された時、破壊されたカードを復活させて、その枚数だけ相手のカードを墓地に送れる罠!
イヴォールの効果でセットしたカードは破壊できないし、その罠にはチェーンできない効果もあるから、俺はそのカードを止められない!」

譲が伏せたカードを見た遊次は、まるでアドレナリンが噴き出すかのように、顔を上気させた。

「しかも破壊されたカードが4枚以上だったら、俺はその後、一切の特殊召喚ができない効果までついてやがる。
もし爆炎の予告状があのままキマってたら…俺はフィールドがガラ空きのままお前にターンを渡すことになってた」

自分の読みがピンポイントで的中していた興奮と、自分がその罠カードを喰らっていた世界を想像したことで、遊次は手の震えが収まらなかった。


「うそ…ほんとに爆炎の予告状を発動させるのが、譲くんの狙いだったの…?」
灯は信じられないといった様子で驚きを露にする。

譲は口元を左手で押さえ、その手を震わせていた。

「なぜだ…。これまでのデュエルでは、君は土壇場に追い込まれて初めて、危ない橋を渡りながら窮地を乗り切ってきた。ここまで先読みをするようなタイプじゃ…」

「やっぱそう思われてたんだな…だから俺も反省したんだよ。最近ちょっと追い詰められすぎだってな。
最初にお前の思惑に気付いたのは、俺の爆炎の予告状への防御が薄かったことだ。
でも最初の"勘"だけで突っ走ったわけじゃないぜ。お前がヒントをくれたからな」

「ヒント…?」

「俺が最初にシェパードでお前のモンスターを2体奪った時、ソリグナの効果で止めなかったよな?
もっと致命的な効果を止めるために温存してた可能性もあるけど、他にも罠カードをいつでもセットできるイヴォールがいたんだぜ」

「もしお前に何の裏もなく、俺を妨害することが目的なら、シェパードにソリグナの無効効果を使うはずだぜ。
俺に2体もモンスターを奪われたら、エンジンがかかるのはわかりきってるしな」

先行で妨害を並べるのは、相手の行動をことごく止めて、相手に好きな展開をさせないことが目的だ。
ナムリオの魔法・罠の無効は遊次の罠カードを無効にするために使わされたが、それでも手札を1枚削ったことには他ならない。
ソリグナの効果を使ってもまだイヴォールによる罠カードのセットが残っている以上、初動であるシェパードにソリグナを使わない理由は見当たらない。

観客達は遊次の言葉に耳を澄ませている。
それは実況者でさえ同じだった。
それも当然、遊次本人にしかこの状況を解説することはできないからだ。

「しかも俺には、墓地から予告状を除外して破壊を無効にするブラックバードがいるんだ。
お前も"厄介なモンスター"って言ってたし、それはわかってたよな。
ならなおさら、ブラックバードが来る前にソリグナの効果を使わねえとおかしい」

「でもお前の目的が最初から『冽灼の噴濫』で俺の息の根を止めることなら、シェパードを止めなかったことも説明がつく。
俺にある程度展開させて、予告状を使わせなきゃいけないからな。
シェパードを止めても俺にまだリソースがあれば、そこから立て直せる可能性もある。
だからそれより、罠カードで確実に勝ち切る方を選んだんだろ」

爆炎の予告状が通りやすい盤面であることから導き出された勘。
それは譲がソリグナの効果を序盤に使わなかった違和感から、更にその正しさを証明することとなったのだ。

「それに妨害しまくって俺を止めるのが目的なら、汎用的な罠カードをセットして、もっと早く俺の行動を止められたはずだ。
なのにいつまでたってもイヴォールの効果を使わなかった。
確信したぜ、俺の"読み"は当たってるってな」

イヴォールというどんな罠カードもセットできるカードがいる以上、数種類の罠カードにアクセスできるデッキ構成になっているはずだ。
「冽灼の噴濫」のようなピンポイントな破壊メタだけでなく、汎用的な妨害効果を持つ罠カードを入れるのがデッキ構築としては正しく、それらの罠カードをもっと早くにセットすることもできたはず。
故に遊次は、爆炎の予告状の発動までイヴォールの効果を温存していることを確信したのだ。

「…なるほど。僕は自分が思っていた以上にヒントを与えていたんだね」

遊次の言葉を聞いても、まだ半分納得できなかった。
ヒントと言っても、常人ならばそれだけで譲が全体破壊を誘導していることなどわかるはずもないからだ。
しかしミリ単位の違和感から遊次は答えに辿り着いた。
譲は遊次の思わぬ成長にある種の恐怖心を抱いた。


「おい、遊次が何言ってっかさっぱりわかんねーぞ!」
観客席のリアムは頭を抱えながら嘆いていた。

「…遊次には、人が見えないものまで"視えてる"んだ。
デュエルに関しては常人離れした洞察力を持ってる」

アキトの言葉に、怜央は何か気付いたようにはっとした表情をする。

「名付けるなら…《決闘眼(デュエル・インサイト)》…ってところか」

怜央は腕を組みながら真面目な顔で呟いた。

「えっ……なにそれ…」
隣の灯は露骨に困惑した表情を浮かべている。

「お、カッコいいじゃないか。
さすが自分のチームにUnchained Hound Dogsなんて名前をつけるだけある」

イーサンはわざとらしい満面の笑みで拍手してみせる。

「テメェ、イジってんだろ!!カッコいいだろうが、実際!」

「そこは譲らないんだ…」




「まだ俺のメインフェイズは終わってないぜ。
除外されてる『爆炎の予告状』と『融合の予告状』をデッキに戻して、手札の『妖義賊-美巧のアカホシ』を特殊召喚する!」


■妖義賊-美巧のアカホシ
 ペンデュラムモンスター
 レベル7/風/鳥獣/攻撃力2300 守備力2000 スケール8
 【P効果】
 このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:元々の持ち主が相手となるモンスター1体を対象とし、1~7までの任意のレベルを宣言して発動できる。
 そのモンスターのレベルはターン終了時まで宣言したレベルになる。
【モンスター効果】
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分の除外されている「予告状」カードを任意の枚数デッキに戻して発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したこのカードは、
 攻撃力がこの効果でデッキに戻した「予告状」カードの枚数×500アップし、
 このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスターの効果を受けない。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」Pカード1枚を手札に加える。
 自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、
 この効果で手札に加えるカードは2枚になる。
 ③:このカードがEXデッキに表側で存在し、自分のPゾーンにPカードが存在する場合に発動できる。
 このカードを手札に加える。


現れたのは赤い着物を纏った鳳凰の頭を持つモンスターだ。
腰には長刀を携えている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/Beta2kb
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「この方法で特殊召喚したアカホシは、デッキに戻した予告状1枚につき、500ポイント攻撃力がアップする。さらに攻撃力3300未満の攻撃力を持つモンスターの効果を受けない」

妖義賊-美巧のアカホシ ATK3300

「アカホシの効果発動!相手から奪ったカードが俺のフィールドにある時、2枚の妖義賊Pモンスターをデッキから手札に加えられる。
『妖義賊-剛腕のナンゴウ』と『妖義賊-雲龍のリヘイ』を手札に!」

「さらに俺のフィールドに相手から奪ったカードがある時、『妖義賊-雲龍のリヘイ』は手札から特殊召喚できる!」

■妖義賊-雲龍のリヘイ
 ペンデュラムモンスター
 レベル6/闇/幻竜/攻撃力2300 守備力1700 スケール2
 【P効果】
 このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:手札を1枚捨て、自分の墓地の「予告状」魔法カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを除外する。
 この効果を使用するターン、自分は除外した「予告状」魔法カード以外の「予告状」魔法カードの効果を発動できない。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 Pゾーンのこのカードをデッキに戻し、デッキから「ミスティックラン」Pカード1枚をPゾーンに置く。
【モンスター効果】
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに元々の持ち主が相手となるカードが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:元々の持ち主が相手となるカード1枚を墓地に送って発動できる。
 デッキから「ミスティックラン」罠カード1枚を手札に加える。


フィールドには花柄の描かれた黒い着物を纏う龍の頭を持つモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/kl0jjqA
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「『妖義賊-雲龍のリヘイ』の効果発動!
相手から奪ったフィールドのカードを1枚墓地へ送って、デッキから『ミスティックラン』罠カードを1枚、手札に加えられる。
お前から奪った『冽灼の流糸 ネリュス』を墓地に送って『妖義賊の影縛り』を手札に加える」

--------------------------------------------------
【譲】
LP8000 手札:3(ネアス、エルダム)

①冽灼の織灘 ルナイラ ATK2400
②冽灼の宴陽 ソリグナ ATK2700
③冽灼の深淵 ナムリオ DEF2800
④冽灼の深環 イヴォール DEF2100

Pゾーン:冽灼の燐珠 ピオナ
伏せカード:冽灼の噴濫

【遊次】
LP8000 手札:4(儀式の予告状、ナンゴウ、影縛り)

①妖義賊-快傑ゾロ ATK2800
②妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
③妖義賊-美巧のアカホシ ATK3300
④妖義賊-雲龍のリヘイ ATK2300

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊
Pゾーン:妖義賊-誘惑のカルメン、妖義賊-舞蛇のキク
--------------------------------------------------

「さあバトルフェイズだ!『妖義賊-美巧のアカホシ』で『冽灼の深淵 ナムリオ』に攻撃!」

アカホシは長刀を静かに抜き放つ。
翼のように広がる炎気を纏い、一歩踏み込んだ瞬間、その刃は疾風のごとく横薙ぎに振るわれ、ナムリオは破壊される。

譲の場にセットされた罠カード「冽灼の噴濫」は、あくまで効果破壊に反応するカードだ。
戦闘破壊には使えない。

「『妖義賊-快傑ゾロ』で『冽灼の織灘 ルナイラ』に攻撃!」

ゾロは、ゆっくりとサーベルを掲げた。

「融合の予告状で召喚されたモンスターが攻撃する時、その相手モンスターの攻撃力は0となる!」

次の瞬間、青き外套をはためかせて踏み込み、鋭い突きを放つ。
刃が炎と水の身体を貫き、ルナイラは破壊される。

「うああああっ!」
譲 LP8000 → 5200

「この瞬間、ゾロの効果発動!戦闘で相手モンスターを破壊した時、その相手モンスターを墓地から奪うことができる!来い!『冽灼の織灘 ルナイラ』!」

炎と水の半身を持つモンスターが遊次のフィールドに現れる。

「『妖義賊-雲龍のリヘイ』で『冽灼の深環 イヴォール』に攻撃!」

リヘイは槍を突き出す。
刹那、鋼の穂先がイヴォールを貫き、水の巨体は光に包まれて破壊された。

「イヴォールが破壊された時、効果発動!
EXデッキの表側の冽灼モンスターを1体手札に加える!
『冽灼の響輪 ヴォルヴ』を手札に加える」

「俺はこれでバトル終了だ。カードを1枚伏せてターンエンド。
アカホシは自分の攻撃力以下の相手モンスターの効果を受けず、フィールド魔法によって、妖義賊を対象とするモンスター効果を1ターンに1度無効にできる」

--------------------------------------------------
【譲】
LP5200 手札:4(ネアス、エルダム、ヴォルヴ)

①冽灼の宴陽 ソリグナ ATK2700

Pゾーン:冽灼の燐珠 ピオナ
伏せカード:冽灼の噴濫

【遊次】
LP8000 手札:3(儀式の予告状、ナンゴウ)

①妖義賊-快傑ゾロ ATK2800
②妖義賊-怪盗ルパン ATK2100
③妖義賊-美巧のアカホシ ATK3300
④妖義賊-雲龍のリヘイ ATK2300
⑤冽灼の織灘 ルナイラ ATK2400

フィールド魔法:妖義賊の秘密回廊
Pゾーン:妖義賊-誘惑のカルメン、妖義賊-舞蛇のキク
伏せカード:1
--------------------------------------------------

「神楽選手、虹野選手にダメージを与えられたものの、全てのモンスターを破壊することはできませんでした!
虹野選手の仕掛けた罠に気付き完璧に対応したものの、それ故に様々な制約からか、ソリグナの高い攻撃力の壁を超えることはできなかったようです!」

「それでも、快傑ゾロの効果で1ターンに1度、相手の魔法・罠カードの効果をできるし、十分耐性もある」
実況の声に対してイーサンは観客席で緩やかに反論する。

「それにあの伏せカードは影縛り…相手が発動したカードと同じ種類を自分の場から墓地に送って、その効果を無効にして奪うカードだろ。
遊次の場にはモンスター・魔法・罠、全部揃ってるから、どんなカードにも対応できる」

怜央もあくまで遊次の優勢であることを補強する。
ゾロの魔法・罠無効効果は、譲のソリグナで無効にすることができるが、更にそれを遊次の影縛りで無効にすることができる。
コントロールを奪ったソリグナの効果は遊次も使用できるため、十分に盤石な体制と言える。


「僕が…ここまで追い詰められるなんて…。僕が…」

譲は苦しさをはらんだ表情で、車椅子に乗せられた自分の足に肩肘をつき、口元を押さえている。
虚ろな目は自分の足元だけを見つめている。

その瞬間、譲の脳裏にある記憶がフラッシュバックした。
病床にて、真っ白な痩せ細った腕で自分の腕を掴む、やつれた女性の姿。

(ごめんね…ごめん、ゆずる…)


「ウッ…ゴホッ…!!」
その瞬間、譲は激しく咳き込んだ。
何度も咳き込み、ようやく収まったところで、譲は自分の掌を見つめている。

そして遊次もその異変に気が付いた。

「ゆ、譲ッ…!!」

譲の掌には血がべったりとこびりついていた。
荒く呼吸をするその口元には、血が滴っている。
観客達もその姿に騒めきたつ。

「に、虹野選手!大丈夫でしょうか!?試合前のメディカルチェックでは問題がないとの判断でしたが…!
もし苦しければ1度中断に…」

「ハァ…ハァ…僕の戦いに…水を差すな。問題ない…続行だ」
譲は血走った目で遊次を睨みつけ、その戦意を露にする。

「僕は…負けない。負けるわけがない。僕が…死ぬわけない…!」

これまでどこか達観した態度でデュエルに臨んできた譲が、初めてその瞳に怯えの感情を映し出した。
口から滴り落ちる血液の痛々しさと、まるで自分を鼓舞するかのような彼の言葉に、遊次の心は大きく揺れた。

(やっぱり譲は…ずっと恐怖と戦い続けてるんだ。
でも俺はアイツを倒して…もっと深い恐怖に叩き落とさなきゃならねえ…!)

遊次が険しい表情で左胸を強く押さえる。
シャンリンとのデュエルで、遊次は譲を倒し、その願いを背負う覚悟を示した。
しかし、実際に死の恐怖に怯える者と対峙した重圧は、想像をはるかに超えていた。

「…それでも、俺はお前を倒さなきゃならないんだ。
もう誰も、苦しませたくないから」

遊次は一瞬、観客席を見上げた。
そこには"おばちゃん"の姿があった。

(遊次…なんでアンタがそこまで背負うんだい…。
目の前で苦しんでる子を、よりによってアンタの手で…)

おばちゃんの目から、涙が溢れた。
ただ無邪気にデュエルを楽しんでいた少年が、自分達のために、苦しい決断をしなければならなかった。
彼の気持ちを思うと、胸が張り裂けそうだった。
同時に、己の無力さを心の底から実感した。


「"誰も"苦しませたくないんだ。譲、お前のことも。
だから、俺はお前の願いも…」

「そんなのは気休めだろ!相手の願いを背負うと言っておけば、それだけで罪悪感が晴れるもんな!!」
遊次の言葉に、譲は激しく拒否反応を示す。

「違う!俺は本気だッ!俺だけじゃない!
俺の仲間達も、本気でお前の願いを背負うつもりだ!信じてくれ!」

「できるわけないだろッ!僕みたいな一般人が認可されてない医療を受けるなんて、よほど強い"権力"がなきゃ無理なんだよ!!
政府を契約で縛る、この大会のように!僕が何千回、何万回考えたと思ってるんだ!?」

「人の命を"背負う"なんて、簡単に言うなよッ…!!」

譲の心からの叫びに、遊次は言葉を返すことはできなかった。
死の恐怖に苦しむ心は、その本人にしかわからない。

それでも、遊次は譲に真っ直ぐ視線を向け続けた。
向き合わなければならない。彼の"全て"と。

「俺は、諦めない。
どんなに難しくても"できない"なんて思わねえ」

「今のお前が、俺に願いを託すわけねえ。わかってる。お前は、お前が勝つことしか考えてないからだ。
デュエリストが自分の負けを想定するわけねえ。
でも…それは俺も一緒なんだよ」

譲の敵意の籠った眼差し。
相対する遊次は、どんなに自分が憎まれようとも、救いたいものを取りこぼさないために、戦おうとしている。
もう決して迷うことはない。

「来いよ、譲。お前のターンだ。
デュエルで心をぶつけ合う。それがデュエリストだろ。
お前の心を…全部俺にぶつけろよ」

ぶれることのない遊次の信念は、譲にも伝わっていた。
言葉で拒否し続けても、彼は決して諦めない。

譲は、目を閉じ、深く深呼吸をする。
頭の中に思い浮かべるのは、自分の心に深く根付く、思いの欠片。

(母さん…。ビックリボー…)

そして最後に思い浮かんだのは、
病室の窓から差し込む光に照らされた、ある少女の姿。

病室のベッドでただ静かに窓の外を見つめる、
深紅の髪をした少女。

彼女が譲の心に、戦う意志を宿した。


第52話「決闘眼(デュエル・インサイト)」 完



病に侵された譲を襲った絶望。
たった1人の息子のために、身を削る母親。
その結末が、譲に更なる絶望を刻んだ。

真っ白な病室。希望のない人生に打ちひしがれ、
譲はただ過ぎ去る日々を見送り続けていた。

しかしある日、隣のベッドで病室の外を見つめ続けていた少女が、声をかけてきた。

ひどく口の悪い彼女の言葉に、譲は何故か自分の本音をぶつけることができた。
そして彼女との出会いが、譲の運命を大きく変えることとなる。


「残された命をどう使うかすら考えたことないヤツが、生きたいなんて喚くな。
そんな命なら、私によこせッ…!」


次回 第53話「命の使い方」
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