第8話：爆誕、炎の銀河眼　作：光芒

「メインフェイズ2。私はカードを2枚セットして、ターンエンドよ」


綾香　LP3200　手札2枚
デッキ:33　モンスター:0　魔法・罠:1　墓地:5　除外:0
遊希　LP7500　手札2枚
デッキ:31　モンスター:1（輝光子パラディオス）　魔法・罠:2　墓地:8　除外:1


☆TURN05


「くっ……ドロー！」

　パラディオスのダイレクトアタック同然のダメージに加え、ニトロユニットによるバーンダメージまで受けた綾香。先手を取ったのは良かったが、その分手痛いしっぺ返しを受けた形になってしまった。

（……これでは壁にしかならない。でも私の竜星はどんな形でも破壊されればそれでいい）

「私はモンスターをセット、さらにカードを1枚セットしてターンエンドよ」


綾香　LP3200　手札1枚
デッキ:32　モンスター:1　魔法・罠:2　墓地:5　除外:0
遊希　LP7500　手札2枚
デッキ:31　モンスター:1（輝光子パラディオス）　魔法・罠:2　墓地:8　除外:1


☆TURN06


「私のターン、ドロー」

　フィールドを見る限り遊希の方が有利であることには変わりない。しかしフィールドに存在するモンスターはパラディオス1体であり、その攻撃力はわずか2000。
　下手な下級モンスターよりも低いため、戦線維持には向いていない。更に綾香の使う竜星は相互リクルートの効くカテゴリーとあって、モンスター1体だけの攻撃では倒しても倒しても結果的に相手の場を有利にするだけになってしまう。

（あの壁をすり抜けてダメージを与えるには……あれを出すしかないかな）
―――遊希、まさかお前、あのモンスターを使うのか？
（……不満？）
―――不満という訳ではないが……あのモンスターは私を出す以上にお前の身体を蝕む。以前使った時は2日は寝込んだじゃないか。
（いつの話よ。でもあの時より私も成長しているわ）
―――……わかった。だが、ほどほどにな。

　ありがと、と遊希は声に出さずあさっての方向に微笑む。対峙している綾香にはそれが何故か不気味に思えた。

「何よニヤニヤしちゃって。まだあなたの勝ちって決まってないわよ！」
「……そうね。じゃあその勝ちを手繰り寄せるためにあなたに面白いものを見せてあげるわ。私はチューナーモンスター、“銀河の戦乙女（ギャラクシー・ワルキューレ）”を召喚！」

　遊希のフィールドに現れたのは天馬に乗った白い鎧を纏った女騎士を模したモンスターだった。


※銀河の戦乙女（ギャラクシー・ワルキューレ）※オリジナルモンスター
チューナー・効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1600/守1100
(1):このカードをシンクロ素材とする場合、「ギャラクシー」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。
(2):このカードの召喚に成功した時、自分の墓地に存在するレベル4以下の「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功したモンスターの効果は無効化され、このターンのエンドフェイズに墓地に送られる。


「チューナーモンスター！？」
「シンクロ召喚を使うのは、あなただけではないってことよ。召喚に成功した銀河の戦乙女の効果を発動。墓地のレベル4以下のギャラクシー、銀河悪魔を効果を無効にして表側守備表示で特殊召喚するわ」

　銀河の戦乙女の効果で遊希のフィールドにもチューナーと非チューナーモンスターが2体並ぶ。2体の合計レベルは8。この状態ではレベル8のシンクロモンスターかランク4のエクシーズ召喚が可能であるが、チューナーモンスターを召喚した以上、遊希の召喚するモンスターの種類は決まっている。

「行くわよ。私はレベル4の銀河悪魔にレベル4のチューナーモンスター、銀河の戦乙女をチューニング！」

　空に飛び上がった銀河悪魔の身体は4つの星となり、銀河の戦乙女の身体は4つの紅いリングへと姿を変える。天空に現われたのは真っ赤な火の玉のようなものだった。しかしその火の玉はやがて巨大な炎の竜へと姿を変えていく。

「“銀河に煌めく灼熱の星よ、その力をもってあらゆるものを滅せ。そして何物をも残すな！” シンクロ召喚！！―――目覚めよ、炎の銀河眼。レベル8！“銀河眼の火球竜（ギャラクシーアイズ・ボーライド・ドラゴン）”！！」


※銀河眼の火球竜（ギャラクシーアイズ・ボーライド・ドラゴン/オリジナルモンスター）
シンクロ・効果モンスター
星8/炎属性/ドラゴン族/攻2900/守2600
「ギャラクシー」と名のついたチューナー+チューナー以外の「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体以上
？？？


「……銀河眼！？ そんな、銀河眼は光子竜しか存在しないって……」
「そんなこと誰にも言ってないわ。まあ一般的に存在が知られているのは光子竜だけなんだけどね」

　遊希のその言葉が表すように、実際に対峙している綾香をはじめ、このデュエルを脇から見守っている竜司や審判を務めるミハエル、そして遊希以外のこの場にいる誰もが遊希が召喚した銀河眼の火球竜というモンスターを知らなかったのだから。

「馬鹿な……あんなモンスターが存在するなんて……！」

　とりわけ幼い頃から遊希の面倒を見て来た竜司は遊希が光子竜以外の銀河眼を持っていたことを知らず、必死に平静さを装うとするが、誰が見ても彼が動揺していることは簡単に見て取れた。

「それに効果も……効果も表示されない」
「そりゃまだデータのないカードだもの。デュエルディスクには反応するから違法なカードではないけれど。でもその効果をすぐにあなたは知ることになるわ！ シンクロ召喚に成功した銀河眼の火球竜の第1の効果を発動！ シンクロ召喚に成功した時、フィールドの全てのモンスターを破壊し、破壊されたモンスターの数×300ポイントのダメージを相手ライフに与えるわ！！」
「なんですって！？」
「さあ、行くわよ。己の命と共に全てを燃やし尽くしなさい！“ギャラクシー・エクスプロージョン”！！」
「っ、その効果にチェーンして罠発動！」

　火球竜の身体から灼熱の炎が吐き出される。その炎はフィールドのモンスターを瞬く間に包み込み、綾香のフィールドにセットされた“水竜星-ビシキ”、遊希のフィールドのパラディオス。そして火球竜自らの身体すらも焼き払ってしまった。そして破壊効果を使った火球竜の効果で綾香のライフはさらに削られる。

綾香 LP3200→2300

　しかし、綾香のフィールドには2体のモンスターが存在していた。火球竜の破壊効果にチェーンして発動された罠カード“竜星の具象化”の効果が発動したのだ。


※竜星の具象化
永続罠
(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動できる。デッキから「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードが魔法＆罠ゾーンに存在する限り、自分はSモンスター以外のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚できない。


「……2体の幻竜族。いつの間に呼び出したのかしら？」
「あなたのパラディオスの効果にチェーンして発動させてもらったわ。まずチェーン4の具象化の効果でデッキから呼び出したのはレベル4のシュンゲイ、そしてチェーン3のビシキの効果でレベル3のヘイカンを攻撃表示で特殊召喚したわ」


※水竜星-ビシキ
効果モンスター
星2/水属性/幻竜族/攻0/守2000
「水竜星-ビシキ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「水竜星-ビシキ」以外の「竜星」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。
(2):1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。自分フィールドの「竜星」モンスターのみをS素材としてS召喚する。
(3):このカードをS素材としたSモンスターは、罠カードの効果を受けない。


「なるほど、壁を取り払うつもりが余計に壁を増やしてしまった、と。でもまだチェーン2のパラディオスとチェーン1の火球竜の第2の効果が残っているわ」
「火球竜の第2の効果……？」
「まず破壊されたパラディオスの効果でカード1枚をドロー。そして火球竜はカードの効果で破壊され墓地に送られた時、墓地に存在するレベル4以下の「ギャラクシー」と名のついたモンスター2体を攻撃力を2000にして表側守備表示で特殊召喚するわ！」

　宙に赤く輝く星は燃え尽きて堕ちる。しかしその星は流星となって新たな軌跡を描く。火球竜の亡骸からは銀河悪魔と銀河の戦乙女の2体が蘇った。チューナーと非チューナーモンスターであるため、ここから更にシンクロなりエクシーズなり展開することは出来る。しかし、火球竜のこの効果にはデメリットも存在した。

「火球竜のこの効果でモンスターを特殊召喚したターン……私はバトルフェイズを行えず、エクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来なくなるの」

　火球竜の効果が全て発動したこともあってか、綾香のデュエルディスクが火球竜の効果を表示する。


※銀河眼の火球竜（ギャラクシーアイズ・ボーライド・ドラゴン/オリジナルモンスター）
シンクロ・効果モンスター
星8/炎属性/ドラゴン族/攻2900/守2600
「ギャラクシー」と名のついたチューナー+チューナー以外の「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体以上
(1):このカードのシンクロ召喚に成功した時、フィールド上に存在するモンスターを全て破壊できる。その後、この効果で破壊したモンスターの数×300ポイントのダメージを相手ライフに与える。
(2):このカードがカードの効果で破壊され墓地に送られた時、自分の墓地に存在するレベル4以下の「ギャラクシー」と名のついたモンスターを2体まで選択して表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は2000になり、その効果は無効化される。また、この効果でモンスターが特殊召喚されたターン、自分はバトルフェイズを行えず、エクストラデッキからモンスターを特殊召喚することができない。


　効果を見た瞬間、綾香は「何よ、この効果は」と正直な感想を漏らす。精霊を操ると共にその精霊に比肩しうるほどの効果を持ったモンスターを遊希は持っているのだから。高い攻撃力と破壊効果にバーン効果。そして効果破壊をトリガーに壁を作ることもできる。まだまだ謎のカードが多い【ギャラクシー】というカテゴリーを相手にすることの恐ろしさを身を持って体感した。

「でもモンスターの攻撃力を2000にする効果って……それには何の意味があるのかしら」
「確かに一見無駄な効果かもしれないわね。でも意味はあるのよ？ 私は墓地の銀河新星の効果で自身を除外し、墓地の銀河眼の光子竜を手札に戻す。そして、銀河眼の光子竜は攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースして、特殊召喚できる！現れなさい、光の化身！ 銀河眼の光子竜！！」

　遊希のフィールドには最初の銀河眼、光子竜が舞い降りる。火球竜の後半の「蘇生したモンスターの攻撃力の攻撃力を2000にする」という効果はこのために存在するのだ。

「くっ……次は光子竜……！！」
―――さて、そろそろ本域で行かせてもらおうか。
「光子竜は火球竜のような破壊効果は持たないけど、攻撃力は3000。並大抵のモンスターでは上回れないし、戦闘時に自身と相手モンスターを除外することができる。よって戦闘破壊は難しいわ」
「……」
「光子竜をどうやって攻略するのか見せてほしいわね、お嬢さん？ 私はこれでターンエンドよ」


綾香　LP2300　手札1枚
デッキ:30　モンスター:2（炎竜星-シュンゲイ、地竜星-ヘイカン）　魔法・罠:2（竜星の具象化）　墓地:6　除外:0
遊希　LP7500　手札3枚
デッキ:29　モンスター:1（銀河眼の光子竜）　魔法・罠:2　墓地:9　除外:2


（……と煽ってみたけど相手フィールドには2体のモンスター。チューナーとか引かれてシンクロ召喚されるとまずいんだけどね）
―――本物のデュエリストなら逆転のカードを引けるからな。それを試すのか？
（そんなところよ。父親の前で頑張ろうって意志が見て取れるしね。第一……あの子の眼の輝きはまだ失われていないもの）