第45話：シンクロVSエクシーズ！　作：光芒

「先攻か後攻か……それは貴女に決めさせてあげますわ」

　本来ならデュエルディスクによって決められるはずの先攻後攻の決定権であるが、美咲はそれを綾香に自ら委ねた。基本的にはコンピューターによって先攻後攻の決定権付与が為されることになっているが、デュエリスト同士の交渉によってそれを決めることは禁止されているわけではない。
　しかし、美咲からの突然の申し出に綾香は首を傾げる。先攻後攻の決定権は時にデュエルの勝敗にそのまま繋がることでもあるため、禍根が残らないためにもランダムで決定されることがこの学校での通例となっていたからである。

「なんで？ 本当ならコンピューターで決めるはずだけど」
「私は2年生で貴女は1年生。普通にやったら勝つのは私と決まっていますもの。だからそれくらいは貴女に決めさせてあげますわ。これも上級生の優しさというものです。感謝なさい」

　綾香は内心ラッキー、と思う反面美咲に軽く見られていることに不満なのか口を尖がらせる。自分が馬鹿にされるということは父や母も馬鹿にされている。綾香はその意識を胸に今までずっと戦ってきた。

「……ご厚意感謝します、藤堂先輩。せいぜい吠え面かかないようにしてくださいねっ！？」
「……弱い犬ほどよく吠える。それを実証させてあげますわ」


綾香 LP8000　手札5枚
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0
美咲 LP8000　手札5枚
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN01


「じゃあ私の先攻よ。私はモンスターをセット。そしてカードを2枚セットしてターンエンドよ」

　綾香のデッキの性質上、これが綾香の理想的な初手となる。そのため先攻をとれたことは綾香にとっては決して小さいことではなかった。


綾香 LP8000　手札2枚
デッキ：35　モンスター：1　魔法・罠：2　墓地：0　除外：0
美咲 LP8000　手札5枚
デッキ：35　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN02


「では私のターン。煌びやかな私のデッキで貴女のデッキなど粉砕して差し上げますわ」
「御託はいいから早くドローすれば？」
「口が悪いですわね、ドローですわ。貴女のような品のないデュエリストなど私のモンスターで星にしてあげますわ！ まずは手札から速攻魔法サイクロンを発動します。私から見て右側のカードを破壊しますわ」

　サイクロンによって綾香がセットしていた“激流葬”が破壊されてしまった。昨今の主流デッキの大半は大量展開をするため、それを防げるカードを破壊されたのは綾香にとっては痛かった。　

「むぅ……」
「あら、幸先良いですわね。私は手札から“星因子 ウヌク”を召喚致しますわ！」


※星因士 ウヌク
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1800/守1000
「星因士 ウヌク」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「星因士 ウヌク」以外の「テラナイト」カード1枚を墓地へ送る。


「【テラナイト】……！ エクシーズテーマの完成形の1つと言われてるカテゴリー……」
「よくご存じですわね。それならばテラナイトの恐ろしさも知っているでしょう？ ウヌクの効果で同名カード以外のテラナイト1体を墓地に送ることが出来るのですわ。“星因士 デネブ”を墓地に」
「でもそれだとこのターンでのエクシーズ召喚は出来ない」
「ええ。でもこのデュエルは私が勝つと決まっている以上、1ターンで決めてしまってはつまらないでしょう？ だから1ターン猶予をあげますわ。メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行。ウヌクでセットモンスターを攻撃しますわ！」

星因士 ウヌク ATK1800 VS 破面竜 DEF1100

「セットモンスターは“破面竜”よ」


※破面竜（ネイキッド・ドラゴン）
効果モンスター
星3/炎属性/幻竜族/攻1400/守1100
(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから守備力1500以下の幻竜族モンスター1体を特殊召喚する。


「破面竜の守備力は1100、よって破壊される。でも……」
「っ、リクルーターですのね。鬱陶しい」
「破壊されて墓地に送られた破面竜の効果を発動！ デッキから守備力1500以下の幻竜族モンスター“竜宮のツガイ”を特殊召喚するわ！」


※竜宮のツガイ
効果モンスター
星6/水属性/幻竜族/攻2000/守1200
「竜宮のツガイ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):手札のモンスター1体を捨てて発動できる。デッキからレベル4以下の幻竜族モンスター1体を特殊召喚する。


「展開能力を持った上級モンスターを出されてしまいましたか……」
「あなたが与えた1ターンでこっちも随分と楽になったわ。ありがとうございます、セ・ン・パ・イ？」
「……ま、まあ、このくらいしてあげるのが上級生というものですわ。私はこれでターンエンドですわ」


綾香 LP8000　手札2枚
デッキ：34　モンスター：1（竜宮のツガイ）魔法・罠：1　墓地：2　除外：0
美咲 LP8000　手札4枚
デッキ：33　モンスター：1（星因士 ウヌク）魔法・罠：0　墓地：2　除外：0


☆TURN03


「私のターン、ドローよ」

　綾香はデッキからカードをドローするが、望みのカードは来なかった。もしここでどんな形であっても他に墓地に送れるモンスターを引き入れていればこのデュエルをかなり有利に進めることが出来ていたのだが。

（テラナイトは全部光属性で構成されている。手札のこのモンスターを召喚して竜宮のツガイの効果で別のモンスターを捨ててデッキからリフンを出せればよかったんだけど……）
「私は竜宮のツガイの効果を発動。手札のモンスター、水竜星-ビシキを捨てることでデッキからレベル1・幻竜族の光竜星-リフンを特殊召喚するわ！」
「チューナーモンスター……シンクロ召喚ですわね」
「私はレベル6の竜宮のツガイにレベル1のチューナーモンスター・光竜星-リフンをチューニング！“天空に輝く星々の光、今その力を集わせ邪なる闇の竜を呼び覚ませ！”シンクロ召喚！ 降臨せよ“邪竜星-ガイザー”！！」


※邪竜星-ガイザー
シンクロ・効果モンスター
星７/闇属性/幻竜族/攻2600/守2100
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「邪竜星-ガイザー」の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードは相手の効果の対象にならない。
(2):自分フィールドの「竜星」モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
(3):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。


「このカードは相手の効果の対象にならない。そしてこのカードが破壊されて墓地に送られた時、デッキから幻竜族1体を守備表示で特殊召喚できるわ」
「つまり破壊された時のアフターケアも万全と言うことですわね」
「メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行。邪竜星-ガイザーで星因士 ウヌクを攻撃！“竜星抹殺波”！！」

邪竜星-ガイザー ATK2600 VS 星因士 ウヌク ATK1800

美咲 LP8000→7200

「星因士 ウヌクを撃破よ！ 私はこれでターンエンド。あなたが与えてくれた1ターン、重くなりそうね。センパイ？」


綾香 LP8000　手札2枚
デッキ：32　モンスター：1（邪竜星-ガイザー）魔法・罠：1　墓地：5　除外：0
美咲 LP7200　手札4枚
デッキ：33　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：3　除外：0


☆TURN04


「まだデュエルは始まったばかりでしてよ。ドロー！ さて、私のモンスターの力をお見せする時が来ましたわ。私は手札から“星因士 ベガ”を召喚致しますわ！」


※星因士 ベガ
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1200/守1600
「星因士 ベガ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。手札から「星因士 ベガ」以外の「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。


「召喚に成功したベガの効果を発動。手札からベガ以外のテラナイト1体を特殊召喚しますわ！ 現れなさい“星因士 アルタイル”！」


※星因士 アルタイル
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1700/守1300
「星因士 アルタイル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、「星因士 アルタイル」以外の自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで「テラナイト」モンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できない。


「そしてアルタイルが特殊召喚に成功した時にその効果を発動！ 墓地のアルタイル以外のテラナイト1体を蘇生します！ 蘇りなさい、星因士 デネブ！」


※星因士 デネブ
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1500/守1000
「星因士 デネブ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「星因士 デネブ」以外の「テラナイト」モンスター1体を手札に加える。


「さらにデネブも特殊召喚に成功した時に効果を発動できますわ！ デッキからデネブ以外のテラナイトモンスター1体をサーチします！ 手札に2体目のアルタイルを加えますわ！」
「……あっという間に3体のレベル4モンスターが……」
（ガイザーの攻撃力は2600。そして私のカードの対象にならない……だったらここはこちらにお任せするしかありませんわね）
「私はレベル4のベガ、アルタイル、デネブでオーバーレイ！ 3体のテラナイトモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！ エクシーズ召喚！“3つの星が天に大三角を結ぶ時、冬空より光を纏って舞い降りなさい！”輝くのです！“星輝士 トライヴェール”！！」


※星輝士 トライヴェール
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻2100/守2500
レベル4「テラナイト」モンスター×3
このカードをX召喚するターン、自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。
(1):このカードがX召喚に成功した場合に発動する。このカード以外のフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。
(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ送る。
(3):X素材を持ったこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。


「トライヴェールのエクシーズ召喚に成功した場合に効果発動！ このカード以外のフィールドの全てのカードを持ち主の手札に戻しますわ！」
「オールバウンス！？」
「ええ、しかもこの効果は対象を取らない。よってガイザーにも適用されますのよ！ おやりなさい、トライヴェール！」
「思い通りにはさせないわ！ その効果にチェーンしてリバースカードオープン！ 永続罠“竜魂の幻泉”を発動するわ！」


※竜魂の幻泉
永続罠
(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。特殊召喚したそのモンスターの種族は幻竜族になる。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。


「チェーン2で墓地の水竜星-ビシキを守備表示で特殊召喚！」
「っ、中々やりますわね……チェーン1でトライヴェールの効果！ 自身以外の全てのカードを持ち主の手札へ！」

　トライヴェールの放った光の波動によって、綾香のフィールドのガイザーと竜魂の幻泉が綾香の手札に戻される。最もガイザーはシンクロモンスターなので手札ではなくエクストラデッキに戻るのだが。
　そして竜魂の幻泉がフィールドを離れたことにより、その効果で特殊召喚されていたビシキもまた破壊される。しかし、その破壊すらも綾香は上手く利用した。

「ビシキがカードの効果で破壊されたことにより、デッキからレベル4の炎竜星-シュンゲイを攻撃表示で特殊召喚するわ！」
「ダイレクトアタックを決めたかったのですが、止むを得ませんわね。メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行しますわ。トライヴェールでシュンゲイを攻撃！“トライアングル・ミラージュ”！！」

星輝士 トライヴェール ATK2100 VS 炎竜星-シュンゲイ ATK1900

綾香 LP8000→7800

「破壊されたシュンゲイの効果を発動！ デッキから地竜星-ヘイカンを守備表示で特殊召喚するわ！」
「ふん、ちょこまかと……まあいいですわ。反撃の芽を摘めばいいだけの話。メインフェイズ2に移行し、トライヴェールの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、貴女の手札をランダムに1枚墓地に送りますわ！」

　トライヴェールの力によって綾香の手札が1枚墓地に送られる。そのカードはバウンスされて手札に戻っていた竜魂の幻泉だった。

「竜魂の幻泉が墓地に送られてしまいましたわね。これで今のように蘇生することは出来ない。私はカードを2枚セットしてターンエンドですわ」


綾香 LP7800　手札1枚
デッキ：30　モンスター：1（地竜星-ヘイカン）魔法・罠：0　墓地：6　除外：0
美咲 LP7200　手札2枚
デッキ：31　モンスター：1（星輝士 トライヴェール ORU：2）魔法・罠：2　墓地：3　除外：0