第43話：植物の恐ろしさ　作：光芒

☆TURN05

　薫が自信を持って作り上げたティタニアルとギガプラント2体という布陣であったが、詩織はそれをあっさり切り崩した。この布陣を前に耐え凌ぐどころかそれを突破される、ということに関しては流石の薫にも想定外だったと言える。だがこれには彼はさほど動じなかった。

（私のあの布陣をあっさり覆した……油断してると私が喰われちゃうわね。ここは本域で行かないとあの子にも失礼ね）
「私のターン、ドローよ。あら、これはいいカードを引いたわ。私は手札から“思い出のブランコ”を発動するわね」


※思い出のブランコ
通常魔法
(1):自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。


　薫の発動した思い出のブランコによって、墓地に残った通常モンスターでもあるギガプラントが蘇生される。デュアルモンスターは墓地では通常モンスターとして扱われるため、このカードで蘇生が可能なのだ。そして通常召喚権を消費し、ギガプラントを三度デュアル化させる。

「デュアルモンスターと化したギガプラントの効果。墓地のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚するわ」

　ギガプラントのけたたましい咆哮によって地面から何度も生えてくるローンファイア・ブロッサム。その様はまるでアスファルトを突き破って芽を生やす路傍の草のごとくしぶとかった。　

「またまたローンファイア・ブロッサムですか。墓地にそのカードが残っている限りどれだけ倒しても油断できませんね……」
「それが植物の恐ろしさというものよ。そして自身をリリースして発動。デッキからレベル2の植物族チューナーモンスター“プチトマボー”を特殊召喚よ！」


※プチトマボー
チューナー（効果モンスター）
星2/闇属性/植物族/攻700/守400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから「トマボー」と名のついたモンスターを2体まで特殊召喚できる。
このターン、この効果で特殊召喚したモンスターはシンクロ素材にできない。


「ここでチューナーモンスター！？」
「私はレベル6のデュアルモンスター、ギガプラントにレベル2のチューナーモンスター、プチトマボーをチューニングよ。“2つの力1つとなる時、目覚めるは爆炎の黒龍。天地にその咆哮を轟かせよ！”シンクロ召喚！ 現れなさい“ブラック・ブルドラゴ”！！」


※ブラック・ブルドラゴ
シンクロ・効果モンスター
星8/炎属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
チューナー+チューナー以外のデュアルモンスター1体以上
1ターンに1度、手札からデュアルモンスター1体を墓地へ送って発動できる。相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
また、このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地のデュアルモンスター1体を選択して特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したデュアルモンスターは再度召喚された状態になる。


「ブラック・ブルドラゴ……攻撃力は開闢の使者と同じ3000ですか」
「多少強引だけどそのモンスターを倒すにはこうするしかないのよね。メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行するわ。ブラック・ブルドラゴでカオス・ソルジャー-開闢の使者-を攻撃よ！“デュアル・バーストフレア”！」
「迎え撃ってください、カオス・ソルジャー！！”開闢双刃斬”！」

ブラック・ブルドラゴ ATK3000 VS カオス・ソルジャー-開闢の使者- ATK3000

「ごめんなさい、カオス・ソルジャー……」

　同じ攻撃力のモンスター同士がバトルを行い、ブラック・ブルドラゴとカオス・ソルジャー-開闢の使者-は共に破壊され相討ちとなる。しかし、ブラック・ブルドラゴには破壊され、墓地へ送られた時に発動する効果があった。

「……さて、ブラック・ブルドラゴは破壊されて墓地に送られることで墓地からデュアルモンスター1体を特殊召喚する効果があるのよ。蘇りなさい、ギガプラント！ そしてこの効果で特殊召喚されたデュアルモンスターは再度召喚された状態になるわ！」
「ギガプラントは一度フィールドを離れているからデュアル化した時に得る効果はまた使えるんですよね……」
「その通り。バトルフェイズを終えてメインフェイス2に移るわ。ギガプラントの効果で墓地のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。そしてローンファイア・ブロッサムの効果で自身をリリースし、デッキから3体目のギガプラントを特殊召喚するわ」

　これで薫のデッキから3体のギガプラントが全て召喚された。そしてフィールドにはまたも2体のギガプラントが並ぶこととなったが、詩織のフィールドにはまだ厄介なミカエルが残っている。そのため、このまま終わる薫ではなかった。

「まだ行くわよ。私はレベル6のギガプラント2体でオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚！“機械の鎧を纏った甲虫の戦士よ、その力を1つにし、立ちはだかる敵を粉砕せよ！”起動しなさい、ランク6！“甲虫装機 エクサビートル”！」


※甲虫装機 エクサビートル
エクシーズ・効果モンスター
ランク6/闇属性/昆虫族/攻1000/守1000
レベル6モンスター×2
このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。
このカードの攻撃力・守備力は、この効果で装備したモンスターのそれぞれの半分の数値分アップする。
また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、自分及び相手フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚ずつ選択して墓地へ送る。


「エクサビートルがエクシーズ召喚に成功した時、自分または相手の墓地のモンスター1体をこのカードに装備することができるわ。装備するのは私の墓地のブラック・ブルドラゴよ」

　墓地のブラック・ブルドラゴを装備したことでエクサビートルの攻守の値はブラック・ブルドラゴのそれぞれの数値の半分だけアップする。

甲虫装機 エクサビートル ATK1000/DEF1000→ATK2500/DEF2300

「エクサビートルの攻撃力は上がってもミカエルに及びませんが、エクサビートルの効果を使うんですね。ブラック・ブルドラゴを墓地に送ればエクサビートルを残したまま私のフィールドのモンスターを一掃できる……」
「確かにエクサビートルの効果でミカエルを墓地に送るのは合っているわね。でも少し違うわ。エクサビートルの効果を発動よ！ オーバーレイユニットを1つ取り除き、互いのフィールドに存在するカードを1枚ずつ墓地に送る。墓地に送るのはミカエルとエクサビートル自身よ！」

　エクサビートルの放った光弾によってミカエルとエクサビートル自身は墓地に送られる。破壊されたわけではないため、ミカエルのデッキ戻しとライフ回復効果は発動しない。これで互いのフィールドにモンスターは全く存在しなくなった。そのはずであったが、薫のフィールドにはまたしてもギガプラントが存在していた。

「な、何故ギガプラントが……そうでした。装備されていたブラック・ブルドラゴの効果ですね」
「ええ、ブラック・ブルドラゴの効果は破壊される場所を限定していない。装備カードとなっていたブラック・ブルドラゴは装備対象だったエクサビートルが存在しなくなったことで破壊されている。だから墓地のギガプラントを蘇生できるのよ。さあ、まだまだ働いてもらうわよ？ ギガプラントの効果で墓地のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚し、そして自身の効果でリリース。デッキから“姫葵マリーナ”を表側攻撃表示で特殊召喚するわよ」


※姫葵マリーナ
効果モンスター
星8/炎属性/植物族/攻2800/守1600
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外の自分フィールド上の植物族モンスター1体が戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。


「攻撃力2800……」
「姫葵マリーナはこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外の植物族が破壊されることで相手フィールドのカード1枚を破壊するわ」
「……それでギガプラントを破壊させないように牽制するということですね」
「そう。ギガプラントを倒せばマリーナがあなたのフィールドを荒らす。そしてマリーナを倒してもギガプラントが残ってさえいればマリーナは延々と蘇る。 私はカードを1枚セットしてこれでターンエンド。さあ、この布陣に貴女はどう挑むのかしら？ それを見せて頂戴」
（……まあ、本当に出したかったのは同じ植物姫でもギガプラントを破壊から守れる“紅姫チルビメ”だったんだけどね）

　薫は詩織の残り1枚の手札を知っていた。それは先ほど光の召集で回収したうちの1枚である裁きの龍だ。そして詩織の墓地には現時点で分かっているだけでもライラ、ウォルフ、ルミナス、ライデン、ミカエルと5種類のライトロードがいるため、裁きの龍の召喚条件を満たしているのだ。

（チルビメがいたとしても裁きの龍の前ではその守りの力は活かせない。それはマリーナも同じではあるけど……）


薫 LP4300　手札1枚
デッキ：26　モンスター：2（姫葵マリーナ、ギガプラント（デュアル化済み））魔法・罠：1　墓地：9　除外：1
詩織 LP5300　手札1枚
デッキ：30　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：19　除外：2


☆TURN06


「私のターン、ドローです。私の墓地には5種類のライトロードが存在します。よって裁きの龍を特殊召喚します！」


※裁きの龍
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の「ライトロード」と名のついたモンスターが4種類以上の場合のみ特殊召喚できる。
自分のメインフェイズ時に、1000ライフポイントを払って発動できる。このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。
また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。自分のデッキの上からカードを4枚墓地へ送る。


「やはり来たわね、裁きの龍」
「裁きの龍は自分メインフェイズ時に1000のライフを払うことでこのカード以外のフィールドのカードを全て破壊します！ これなら……」
「確かに。マリーナの効果は全体破壊には対応できないわ」

　薫はため息をつきながらそう告げた。薫のその態度に詩織は疑問を感じた。今特殊召喚した裁きの龍が光の召集で回収したモンスターであることは薫は当然知っているはず。それなら何故ギガプラントの効果でマリーナを特殊召喚したのか。薫は裁きの龍の効果を熟知しているし、マリーナでは裁きの龍を止められないことも予測できたはずだ。

（あのセットカード、もしくは手札に……）
「私はライフを1000払い、裁きの龍の効果を発動します！」

詩織 LP5300→4300

「それにチェーンしてリバースカードオープンよ。罠カード、ブレイクスルー・スキル。その効果を無効にするわ」
「っ……！ やはり防御策が……」
「残念、ライフの払い損ね」
「メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行します！ 裁きの龍で姫葵マリーナを攻撃します！“ジャッジメント・バースト”！」

裁きの龍 ATK3000 VS 姫葵マリーナ ATK2800

薫 LP4300→4100

「そう、貴女はそうするしかない」
「私はこれでターンエンドです。エンドフェイズに裁きの龍の効果でデッキからカードを4枚墓地に送ります」

　
薫 LP4100　手札1枚
デッキ：26　モンスター：1（ギガプラント（デュアル化済み））魔法・罠：0　墓地：11　除外：1
詩織 LP4300　手札1枚
デッキ：25　モンスター：1（裁きの龍）魔法・罠：0　墓地：23　除外：2