第17話：鳴動、地の銀河眼　作：光芒

「じゃあ……手札から通常魔法“ハーピィの羽根箒”を発動するわ」


※ハーピィの羽根箒（制限カード）
通常魔法
(1):相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。


「えっ」
「この効果で千夏のフィールドの魔法・罠カードを全て破壊するわ。チェーンは？」
「……ないわ」

　羽根箒の効果で千夏のセットした奈落の落とし穴と強制脱出装置が破壊されてしまった。これで遊希の展開の阻害は不可能になってしまった。

「ああ……せっかくの罠カードがぁ～！」
「ふぅ、これで安心ね。相手フィールドにのみモンスターが存在し、私のフィールドにモンスターが存在しない時、このカードは手札から特殊召喚できるわ。現れなさい“サイバー・ドラゴン”！」


※サイバー・ドラゴン
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2100/守1600
(1):相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。


「サイバー・ドラゴン！？ ギャラクシーじゃないじゃない？」
「確かに。でもこのカードのいい相方なのよ。手札の“銀河戦士”の効果を発動」


※銀河戦士
効果モンスター
星5/光属性/機械族/攻2000/守0
手札の光属性モンスター1体を墓地へ送って発動できる。このカードを手札から表側守備表示で特殊召喚する。
このカードが特殊召喚に成功した時、デッキから「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。「銀河戦士」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。


「銀河戦士は手札の光属性モンスター1体を墓地に送ることで手札から表側守備表示で特殊召喚できるわ。私は手札の銀河眼の光子竜を墓地に送ってこのカードを特殊召喚！」

　遊希のフィールドにはサイバー・ドラゴンと銀河戦士、2体のレベル5モンスターが並び立つ。

―――また墓地送りか
（いきなり手札に来られても困るのよ。待ってなさい、すぐ呼び出してあげるから）
「レベル5のモンスターが2体。ランク5のエクシーズ召喚ってことね！」
「少し気が早いわ。銀河戦士が特殊召喚に成功した時、デッキから「ギャラクシー」モンスター1体を手札に加えるわ。私は銀河騎士を手札に加える。そして銀河騎士は自分フィールドに「ギャラクシー」と名のついたモンスターが存在する時、手札からリリースなしで召喚できるわ！」

　自身の効果で召喚された銀河騎士は、攻撃力を1000ポイント下げ、墓地の銀河眼の光子竜を表側守備表示で特殊召喚する。これにより、遊希のフィールドにはレベル5とレベル8のモンスターがそれぞれ2体ずつ存在することになった。

「ランク5とランク8のエクシーズ……で、でも仮にアブソルートzeroの攻撃力を上回るモンスターを出したところでダメよ！ アブソルートzeroの効果で全部破壊しちゃうんだから！」
「確かに、迂闊にアブソルートzeroに手を出すと痛い目を見るのはこっち。でもアブソルートzeroにも弱点はある。それを教えてあげるわ」

　フィールドを離れる、という緩い条件でモンスター全体破壊を発動するアブソルートzeroを処理できるカードは少ない。だがその少ない抜け穴を通り抜ける策を遊希は持っていた。

「行くわ。私はレベル5のサイバー・ドラゴンと銀河戦士でオーバーレイ！ 2体の機械族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚！ “機光の竜は時を経て新たな進化を遂げる。仲間の命をもってその力を解放せよ！” ランク5、 “サイバー・ドラゴン・ノヴァ”！！」


※サイバー・ドラゴン・ノヴァ
エクシーズ・効果モンスター
ランク5/光属性/機械族/攻2100/守1600
機械族レベル5モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。
また、1ターンに1度、自分の手札・フィールド上の「サイバー・ドラゴン」1体を除外して発動できる。このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、2100ポイントアップする。この効果は相手ターンでも発動できる。
このカードが相手の効果によって墓地へ送られた場合、機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。


「サイバー・ドラゴン・ノヴァ……確かに効果を使えばアブソルートzeroの攻撃力は上回る。けど効果を使おうにも遊希のフィールドにも墓地にもサイバー・ドラゴンはいないじゃない！」
「誰がこのモンスターでアブソルートzeroを倒すと言ったかしら。サイバー・ドラゴンはさらに進化を遂げるわ。私はランク5のサイバー・ドラゴン・ノヴァででオーバーレイ・ネットワークを再構築。エクシーズ・チェンジ！ “機光竜の進化は留まらない、無限の命と無限の力を得て飛翔せよ！” ランク6、“サイバー・ドラゴン・インフィニティ”！！」


※サイバー・ドラゴン・インフィニティ
エクシーズ・効果モンスター
ランク6/光属性/機械族/攻2100/守1600
機械族・光属性レベル6モンスター×3
「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は1ターンに1度、自分フィールドの「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」の上に重ねてX召喚する事もできる。
(1):このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×200アップする。
(2):1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。
(3):1ターンに1度、カードの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし破壊する。


「サイバー・ドラゴン・ノヴァがエクシーズチェンジ！？」
「まずサイバー・ドラゴン・インフィニティの攻撃力はこのカードのオーバーレイ・ユニットの数×200ポイントアップする。今このカードのオーバーレイ・ユニットはノヴァを含めて3つ。よって600ポイントアップするわ」

サイバー・ドラゴン・インフィニティ ATK2100→2700

「そして次にサイバー・ドラゴン・インフィニティの2つ目の効果を発動！ 1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動。対象としたモンスターをこのカードのオーバーレイ・ユニットにするわ！」
「なんですって！？」
「アブソルートzeroを吸収しなさい！ “インフィニティ・チャージ”！」

　サイバー・ドラゴン・インフィニティの力によってオーバーレイ・ユニットに変えられたアブソルートzeroはそのまま吸収されてしまった。

「で、でもアブソルートzeroの効果が発動して遊希のフィールドのモンスターは全滅……しない？ なんで！？」
「アブソルートzeroの効果は“フィールドを離れた時”に発動する。だけどオーバーレイ・ユニットになるということはフィールドを離れた扱いにならないからアブソルートzeroの効果は発動しないのよ」
「そんなぁ……ルールがいちいちややこしいのよ！」
「いい勉強になったわね。オーバーレイ・ユニットが増えたことでインフィニティの攻撃力はさらに上昇するわ」

サイバー・ドラゴン・インフィニティ ATK2700→2900

「そしてこのカードがこのデュエルに幕を下ろすわ。私はレベル8の銀河眼の光子竜と銀河騎士でオーバーレイ！ 2体の「ギャラクシー」モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築……エクシーズ召喚！」


　銀河眼の光子竜と銀河騎士のオーバーレイによって生み出されたのは光子竜とも綾香とのデュエルで召喚された銀河眼の火球竜とも違う姿をしたドラゴンであった。
　鈍色の鱗を持つその姿はドラゴンというよりも翼が無く、巨大な四肢を持つあたり古代の恐竜のような姿をしている。そうして召喚されたモンスターは轟音を立てて舞い降りた。


「“銀河に轟く咆哮、大いなる力をもって相対するもの全てを圧する。抗う者を押し潰せ！”ランク8、地の銀河眼！！ “銀河眼の重力竜（ギャラクシーアイズ・グラビティ・ドラゴン）”！！」
「銀河眼の重力竜……！？」
「重力竜の効果発動！」


※銀河眼の重力竜（ギャラクシーアイズ・グラビティ・ドラゴン/オリジナルカード）
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/地属性/ドラゴン族/攻2800/守2700
「ギャラクシー」と名のついたレベル8モンスター×2
(1):X素材を持ったこのカードが自分フィールドに表側表示で存在する限り、自分フィールドの「ギャラクシー」と名のついたモンスターが戦闘を行う相手モンスターの効果は無効化される。
(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分フィールドの「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。


「このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き発動。自分フィールドの「ギャラクシー」モンスター1体を選択。選択したモンスターはこのターン、1度のバトルフェイズに2回攻撃が可能になるわ！」
「2回攻撃ってことは……5600ダメージ！？」
「そう。そしてサイバー・ドラゴン・インフィニティの攻撃力は2900。5600+2900はいくつでしょう？」
「えーと……8500」
「正解。バトルフェイズ。まずはサイバー・ドラゴン・インフィニティでダイレクトアタック！ “エヴォリューション・インフィニティ・バースト”！！」

サイバー・ドラゴン・インフィニティ ATK2900

千夏 LP8000→5100

「きゃあああ！」
「続いて銀河眼の重力竜でダイレクトアタック！ “重圧のグラビティ・ストリーム”！ 第一打！！」

銀河眼の重力竜 ATK2800

千夏 LP5100→2300

「これで終わりよ。“重圧のグラビティ・ストリーム”！第二打！！」

銀河眼の重力竜 ATK2800

千夏 LP2300→0





＊





「……」
「お疲れ様、ありがとね千夏……って千夏？」
「あー、燃え尽きてるわね」

　まさか後攻ワンターンキルを食らうとは思っていなかった千夏はこの敗北がショックだったのか呆然としてその場を動けずにいた。

「陽川さん……」
「大丈夫よ、ほっとけば直るでしょ。ところで遊希……身体の方に問題は？」
「そうね、ちょっと気だるい感じはするけど前ほど辛くは無いかな。デュエルが早めに終わったからってのもあるけど。でももう1戦くらいは出来そうね」
「そっか、じゃあ今日はもうこれくらいにして……」
「ちょっと待った！！」

　その場を引き払おうとした3人をさっきまで真っ白に燃え尽きていた千夏が呼び止める。

「何よ千夏。リターンマッチは明日以降よ？」
「さすがの私もその辺は考えてるわ。でも待って、綾香が負けて私が負けた。となると……まだ約1名デュエルしていない子がいるわよねぇ……」
「ああ……そう言えば……」

　目をギラリと輝かせた綾香と千夏が遊希を連れて屋上を出ようとしていた詩織を取り囲む。囲まれた詩織はひえぇ、と弱弱しい声をあげて遊希の後ろに隠れる。

「遊希、あんたもう1戦は出来ると言ってたわよね？」
「詩織！ 私たちの敵を討ってちょうだい！」
「そんなぁ……私が勝てるわけないじゃないですかぁ……」

　抵抗空しく詩織はデュエルの態勢を取らされてしまった。本人は拒否しているが、デュエルとなったらしょうがない。と遊希は詩織にやや同情しつつ2戦目の準備に移るのであった。