最強タッグ？！深淵より出ずる者！③　作：はにわ改

　
「う……うぅ……っ！
な、なんだ、この、『痛み』、はーー」

「透矢くんっ！」

『アフロディトイス』の効果による一撃でダメージを受けた透矢。
彼は膝を付いて胸を押さえたまま、未だ動けずにいた。

『くすくす……余程効いているようだな？
これが“闇のゲーム”というものだ』

「や、闇の、ゲーム……？」

ーー『闇のゲーム』。
その単語に透矢は既視感を感じる。

『お前のライフが減る度に、現実的な痛みとして襲い来るのだ。

当然、ダメージの数値が大きいほど、味わう痛みも大きくなる』

「な、何だと……？」

『くすくす……そしてライフが０になったら……どうなるのだろうな？』

『ラピス』の嘲笑う様が透矢に嫌でも突き刺さる。

ライフが０になると、言うまでもなく通常のデュエルでは敗北、ゲーム・オーバーとなる。
だがこの『闇のゲーム』ではゲーム・オーバーとは何を指すのか。
ダメージが『痛み』ならば、敗北はーー。

（まさか……『死ぬ』、ってことか？）

ふとした直感。

だが透矢がそう思い至った時、改めて思い知らされる。
これはただの『ゲーム』ではないのだということが。

（ってことはーー）

透矢が刹那を見る。

自分が今のような痛みを味わうなら、このデュエルに参加する刹那もまた同じ条件なのでないか。

つまり刹那のライフが尽きればーー。

「く、ぐ……て、手札から速攻魔法、『受け継ぐ騎士の魂』を発動！」

透矢は立つ。

もしこのデュエルに自分の命は勿論、刹那の命が懸かっているのだとしたら、自分が倒れるわけにはいかない。

痛みに堪えながら手札のカードをディスクにセットさせる透矢を見て、『ラピス』はほう、と声を漏らす。

「戦士族モンスターが破壊されたターンに発動出来る！
同じレベルで同名モンスター以外の戦士族モンスターをデッキから特殊召喚する！
俺は『守護の鎧』を守備表示で特殊召喚！」

『受け継ぐ騎士の魂』の効果でデッキから直接、召喚された『守護の鎧』。
金色の鎧で全身を固めた騎士。
守備力は１９００。

とにかく、場を空けさせまいとする透矢の意志だが、
デッキからカードを出した影響でシャッフルが強制され、折角『白銀の盾』でデッキトップに置いた『影縫いの微刃』は、再びデッキの中に埋もれる事となる。

やむにやまれる苦渋の策。

ーーが、この行動が更に『ラピス』のモンスターの効果を誘発させる。

『くすくす……“アクティニオン”、効果発動！』

「何っ？！」

『お前が魔法カードを発動した事により、このカードをリバース。
そして効果を発動！』

透矢の動きに連動して更にその正体を露にする『ラピス』の裏側表示のモンスター。
黒光りする細長い触手が、それに覆い隠された部分から無数に生える、おぞましいモンスター。

「あ、あれは……水花を拐ったモンスター！」

透矢はすぐに思い出す。
あの長い触手で幼い水花の身体を絡めとり、そして連れ去った『ヤツ』。
透矢の感情に火が点いた。

『“アクティニオン”の効果。
お前はデッキから魔法カードを２枚墓地に送らねばならない』

「２枚、だと……」

『アクティニオン』の効果により、透矢は再度デッキの中身を見て、その中から選択した魔法カード２枚を墓地へと送る。

『その後、お前の墓地に存在する魔法カード１枚につき、１００ポイント、ダメージを与える』

「う……っ！」

『ラピス』が言い終わるやいなや、『アクティニオン』の巨大な触手が横殴りに透矢の脇腹へ突き刺さる。

「がは……っ！」

「透矢くんっ！」

透矢の墓地の魔法カードは３枚。
すなわち３００ポイントのダメージ。
その数値分のダメージが『痛み』となって透矢を再度襲う。
透矢はたまらず横に倒れ込み、『アクティニオン』の一撃を受けた脇腹を押さえる。

刹那は思わず駆け寄ろうと足を踏み出した。

「だ、大丈夫、だ……！」

「だ、大丈夫じゃないよ、透矢くん！」

「し、心配すんな。
こんなの、屁でも、ねぇよ……」

透矢はすぐに立ち上がった。
刹那に余計な心配させないように。

このデュエルには互いの命がライフと言う蝋燭で測られている。
ならば助け合うのは当然としても、極力自分の事は自分で面倒を見なくてはならない。
自分が足を引っ張って、刹那を共倒れにするわけにはいかないのだーー。

「お、俺はカードを１枚セットして、ターンエンドだ」

ライフは更に削られて２３００。
既に原点の半分近くまで削られた事になるが、透矢はそれでも己の意志を折らない。
カードをセットして、何とかこのターンを終えた。

『ーーエンドフェイズ。
このターンに効果を使用した“Ａ・Ｄ”モンスターたちは墓地へと送られる』

透矢のエンド宣言に合わせて、『ラピス』がそう言うと、
このターンに効果を発動した『サードリウス』、『アフロディトイス』、『アクティニオン』の３体が墓地へと送られた。

『Ａ・Ｄ』モンスターたちのデメリット効果と思われるその効果。
次に自分のターンを控えた刹那が透かさずその特徴に、ある要素を掛け合わせた。

（ーーなるほど、すなわち『Ａ・Ｄ』モンスターとはーー）

冷静沈着な刹那。
ライフを削られた相棒・透矢に気を揉みつつも、思考回路に乱れは生じていなかったのだ。