アルフレッドvs流石 竜の支配者！⑦　作：はにわ改

　
「ーー俺のターン、ドロー」

アルフレッドの２回目のターン、ドローして手札は４枚。
凌斗の場には攻撃力４０００の『エンパイア』が存在する。
これを如何に捌きつつデュエルの流れを作っていくのか。

「このスタンバイフェイズ、手札で公開している『竜珠（ドラゴン・オーブ） “暗礁”』の効果が発動。
更にレベルが１下がり、レベルが４になる」

「（こ、これであのモンスターはリリース・モンスター無しで召喚出来るって事か！）」

凌斗に対して、１枚だけ表側で公開されているアルフレッドの手札の『竜珠 “暗礁”』。
凌斗とこのターンのスタンバイフェイズを越し、遂にそのレベルは４となった。
何も酔狂でそんな事をしたわけではあるまい、きっとこのターンにそのカードを使うはずなのである。

「メインフェイズ！
俺は手札からレベルが４になっている『竜珠“暗礁”』を召喚」

アルフレッドは早速そのカードを召喚させた。
既に前のターンに『フォルテ』の効果で特殊召喚されているものと同じモンスターであり、アルフレッドの場に２つの宝玉が横に並ぶ。

「場にドラゴン族モンスターが増え、『フォルテ』のレベルと攻撃力が更に上がる」

『竜珠』の元々のレベルはそれぞれ
６、『エンパイア』は８。
合計２０に『フォルテ』のレベル１を加えてレベルは２１。
それに１００を掛けた２１００が攻撃力となる。

「攻撃力、２１００か・・・」

遂に２０００を突破した『フォルテ』の攻撃力。
まだまだ『エンパイア』には及ばないとはいえ、みるみる攻撃力を上げていくのはやはり脅威にちがいない。

「『竜珠“暗礁”』の召喚時に、同名カードを加える効果があるがーー今回は使わない。
・・・いや、使う必要がない、といった方がいいか」

「何っ？
使う必要がないだと？」

「俺はリバース・トラップを発動。
ーー『トリニティ』！」

「な・・・？
そ、そのカードは！？」

一拍、間を置いて発動されたその罠カード。
凌斗は覚えあるそのカードに、驚愕させられる。

「場に同名モンスターが２体存在する時、その同名モンスターをデッキ・手札・墓地から特殊召喚する」

「（せ、先輩が使っていたカード・・・！）」

『トリニティ』。
透矢はそのデッキの性質上、同名モンスターをフィールドに３枚並べる必要がある。
そのサポートカードの１枚として使っていたのがこのカードだ。
逆にそういった用途以外では使われる事の少ないカードだから、凌斗にも印象深く刻まれているのだろう。

「このカードにより、俺はデッキから、３枚目の『竜珠 “暗礁”』を特殊召喚」

場に並ぶ３つの宝玉。
これにより、『フォルテ』のレベル・攻撃力は更に上昇。
レベルは２７、攻撃力は２７００となる。

「（こ、この流れは・・・まさか！）」

だが、そう。
アルフレッドの狙いは、『フォルテ』の攻撃力を上げるためではない。
恐らくは透矢と目的は同じーー。
凌斗はここに来て、それに気が付いた。

「これで場に『暗礁』の宝玉が３つ揃った。
この瞬間、その魂を３つに分断されていた『黒竜』の封印が解かれる」

「ふ、封印・・・」

黒い煙のような何かを放ち続ける『竜珠』。
それが３つ揃った瞬間、鼓動が高く脈打つような音が鳴り響き始める。
凌斗は凶悪なモンスター誕生の瞬間が近い事を悟った。

「３体の『暗礁』の宝玉を墓地へ送り、『Ｔ・Ｆ召喚』！」

「や、やはり、Ｔ・Ｆ召喚・・・！
せ、先輩と、同じーー？！」

『Ｔ・Ｆ（トライ・フォース）召喚』。
特定の同名モンスター３体を場に揃え、それを墓地に送ることで出来る召喚方法。
新たな力に加え、強力な除去耐性を兼ね備えた『Ｔ・Ｆモンスター』。

かつて凌斗は透矢のその力の前に二度敗れ去っている。
凌斗に『挫折』と新たな『目標』をもたらす原因となった出来事が、今また対戦相手を変えて引き起こされようと言うのか。

３つの『竜珠』が砕け散り、その中から黒い煙を放つ要因だった漆黒の塊が姿を見せる。
その３つの塊が意思を持ったように宙を蠢き、やがてそれらが一つに融合する。
そしてそれが巨大な力を解き放つように大きく弾けると、天へ突き抜ける巨大な漆黒の柱を作り出す。

「ーーＴ・Ｆ召喚！
『黒竜絶禍（こくりゅうぜっか）』、『ティアマトー』！」

漆黒の柱が扉のように、中央から裂けて、姿を現す封じられていた『黒竜』。
その名を『ティアマトー』。

３対２翼からなる巨大な翼を持つ有翼獣の『骨組み』の周りを、漆黒の肌が肉付きとして息づいている類を見ないその姿。
鰐のような顔に目はなく、代わりにその場所から長く曲がりくねった２本の角が、左右に伸びるように生えている。

そして身体中から発せられる漆黒の煙は、見ているだけで吸い込まれそうになるほど深い色を持ち、
『エンパイア』から発する黄光の輝きでさえ、その漆黒が阻んでしまう。

不気味な竜『ティアマトー』、そのレベルは８、攻守は反転し、攻撃力が２５００となっている。

「ティ、ティアマトー・・・っ」

凌斗が声を絞るようにして、その名を漏らす。
彼もその姿を見て、内に秘められた凄まじい力を感じたに違いない。
果たしてその能力とはーー。

「・・・俺のコンボはまだ終わっていない」

「な、何だと！？」

「手札から『融合』を発動。
場の『フォルテ』と『ティアマトー』を融合させる」

「ゆ、『融合』？！
Ｔ・Ｆモンスターを・・・融合素材に、だと！？」

アルフレッドの戦術は未だ途中であった。
手札から何気なく発動された魔法カードは、『融合』。
２体以上のモンスターを用いて、強力な融合モンスターを生み出すカードだが、なんとその素材に今、正に召喚されたばかりの『ティアマトー』を使用するという。

『フォルテ』と『ティアマトー』が墓地へ送られ、エクストラ・デッキから新たなカードが置かれると、
場にいる『フォルテ』が『ティアマトー』の背中へと飛び乗った。

「ーー融合召喚！
『黒竜姫将（ティアマトー） フォルテ』！」

アルフレッドのコンボの果てに、生み出された『竜姫』と『黒竜』の融合体。
その力が今、このデュエルに終幕を告げる。