アルフレッドvs流石 竜の支配者！④　作：はにわ改

　
「ーー『竜操姫（ドラグーン・マイスター）』と『竜珠（ドラゴン・オーブ）』か・・・。
アルフレッドはあの二種類のモンスターを使って戦うのか？」

「さすが察しがいいわね、透矢くん。
あの二種類のモンスターがフィールドに揃うと、かなり厄介な布陣よ」

ーー観客席。
透矢の呟きに、刹那が頷く。
ようやくゆっくりデュエルを観戦出来るようになった透矢は、アルフレッドの一挙一動に注目していた。
透矢の周りではまた微妙に席替えが起きており、右に刹那、左に真希が座り、その周りを久遠たちが囲んでいる。

「でもあの『フォルテ』ってのが、エース・モンスター、ってわけでもなさそーだな。
むしろ気になるのはあの『竜珠』だな」

「あら、どうしてそう思うの？」

「だってほら、同じカードをサーチしてただろ？
多分、アルフレッドは場に並べようとしてるんだろーけど、それって『フォルテ』の攻撃力を上げるためだけじゃない、って思うんだよな」

「ーーご名答、透矢くん。
初めて彼のデュエルを見るはずなのに、いい観察力ね」

実際に戦う凌斗と、観戦するだけの透矢とではアルフレッドの戦術に体する考察が違っていた。
そして刹那はそんな透矢の考察を正しい、と断じたのである。

「『同調（シンパシー）』というやつかもしれないわね」

背後から透矢と刹那の顔の間に割り込んでくる久遠。

「シンパシー？
どういうことだよ、久遠？」

「彼と透矢くんのデッキは、とても似ているの」

「似てる？
だって俺のデッキにドラゴンなんて入ってないぜ？」

「そういう事じゃなくて・・・戦い方、って言った方がいいのかな？」

「戦い方？」

「ま、見てれば分かるわよ、透矢くん」

「何だよ、久遠～。
そこまで言っといて教えてくれないのかよー？」

「うふふ、ネタバレしたら面白くないでしょー？」

仲良さそうに声を交わす透矢と久遠。
すると再びそこへ刹那が噛みついた。

「・・・ねぇ、透矢くん」

「ん？なに、刹那？」

「透矢くん、久遠の事をもう慣れたように呼び捨てにしてるけどーー」

「え、悪かったか？」

「私の事を呼び捨てで呼んでくれるまで、１ヶ月以上かかったのに・・・」

頬を膨らませて睨んでくる刹那。
透矢は困ったよう頬をかく。

「おいおい、またその話かよ。
刹那って、以外に根に持つタイプか？」

「うふふ、お姉さまって高貴さが漂ってくるから、声掛けづらいのよねー」

「い、いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」

「じゃ何？
私と久遠ってどこが違うの、透矢くん？」

「え、えーと・・・それは、だなぁ」

「最近、生徒会室にもあまり遊びに来てくれないし・・・」

拗ねたように刹那。

「いやだってさ、用もないのに行くわけにもさ・・・」

「たまには会いに来てくれたっていいじゃない！
それは立派な用事だわ」

「うーん・・・わかった、よ・・・近い内に行くからさ」

「絶対よ、透矢くん。
約束破ったら・・・泣いちゃうから」

「うぅ・・・とにかく、今はデュエル見ようぜ？な！」

「誤魔化さないの～！」

「いでででっ！」

透矢の頬をつねる刹那。
透矢本人はやりにくそうにしているようだが、客観的に他人が今の様を見てどう思うか。

実際、横目で神楽坂姉妹と仲良くする透矢の姿を見て、真希は心中穏やかではない。
たまに透矢が真希と目を合わせても、不機嫌さを表すように目を反らすだけだ。
そんな真希の心中を察してか、千鶴は心配そうにしている。




ーーそしてデュエル場では、凌斗の２ターン目が始まろうとしていた。

「俺のターン、ドロー！」

カードをドローし、手札を３枚とする。
そしてスタンバイフェイズ。
本来ならば何気なく通りすぎてしまいがちだがーー。

「スタンバイフェイズ。
手札で公開している『竜珠（ドラゴン・オーブ） 暗礁』のレベルが１下がる」

「ああ、分かった、分かった」

アルフレッドが宣言し、凌斗が面倒くさそうに手を振る。
このターンにするべき事を思案していた凌斗にとって思考を遮られたようで、煩わしさすら感じていたようだ。

「メインフェイズ。
俺は手札から『闇の誘惑』を発動！」

ーー『闇の誘惑』。
デッキからカードを２枚ドローし、その後手札の闇属性モンスターを１枚除外するカード。
凌斗のデッキにおいては手札増強と合わせ、『次元竜』の効果を能動的に発動させる事が出来る重要なカードだ。

「俺はデッキからカードを２枚引き・・・その後手札から闇属性モンスター、『次元竜イグナフ』をゲームから除外！」

カードを２枚引いて、瞬間的に手札は４枚となるが、その後すぐに１枚は除外するため結局手札は３枚、と増えてはいない。

ーーしかし。

「『次元竜イグナフ』が除外された事で、『イグナフ』と、更に永続罠カード、『次元昇竜』が効果を発動！
『イグナフ』が除外された時、俺はデッキからカードを１枚ドローし、更に『次元昇竜』によってデッキからレベル４以下の『次元竜』を特殊召喚する！」

『イグナフ』の効果で、今の損失分の手札１枚を補填して手札は４枚に。
更に『次元昇竜』により凌斗は新たな『次元竜』をデッキから呼べる。

『闇の誘惑』１枚で、手札を１枚増やし、更にモンスターを場に召喚出来た事となり、２枚のアドバンテージを得た計算だ。

「俺は『次元竜 サルヴァ』を特殊召喚！
その効果により、お互いに除外しているモンスター１枚につき攻撃力が１００ポイントアップ！」

新たに召喚された『次元竜』、『サルヴァ』。
蛇のような身体がとぐろを巻くようにした、やはり黒いシルエットのモンスター。

レベルは３で、攻撃力は１０００。
だが凌斗の言うように、『次元竜』の共通効果によって攻撃力が上がり、１１００となる。

しかし攻撃力が上がるのは『サルヴァ』だけではない。

「ーーフィールドに新たなドラゴン族モンスターが増えた事で、『フォルテ』のレベルと攻撃力も、そのレベルに応じてアップする」

『フォルテ』の能力も敏感に発動。
『イグナフ』のレベルは３だから、フォルテのレベルは１０となり、攻撃力は１０００。
いくら上昇値が低いとはいえ、１０００を超えるようになってくると、軽視し難い能力となる。

「くっくっく・・・そんなに攻撃力を上げたいなら、もっと増やしてやるぜ！
俺は手札から『次元竜 クルス』を召喚！」

挑発するような笑い方で、更に『次元竜』を召喚した凌斗。
小型の翼を広げたようなシルエットのモンスター。
レベルは３で、攻撃力は９００ーーが、やはり『次元竜』の能力で攻撃力が上がり、攻撃力は１０００に。
また『フォルテ』の能力も上がり、レベルは１３、攻撃力は１３００となる。

「そして手札から永続魔法、『魂吸収』を発動！」

ーー『魂吸収』。
カードが除外される度に、１枚につきライフを５００ポイント回復するカード。
場合によってはこれだけで、膨大なライフ・アドバンテージを得られる。
『次元竜』デッキには、言うまでもなく相性は良い。

「そして、俺は場の２枚の『次元竜』を除外し、『次元竜神 エンパイア』を特殊召喚する！」

凌斗が早くもこのデッキのエース・モンスターを降臨させる。
除外されたカードの枚数によって強大な攻撃力を得て、相手が守備表示でモンスターを出そうとも、貫通能力で逃げ場を与えない。

凌斗は勝利を掴めるだろう事を確信し、自信を以て降臨させた最強の『次元竜』。
その力でアルフレッドを撃ち破れるのだろうか。

当のアルフレッドに、未だ表情の変化はないーー。