アルフレッドvs流石 竜の支配者！③　作：はにわ改

　
ーー後攻、アルフレッドのターン。

アルフレッドが『竜操姫（ドラグーン・マイスター） フォルテ』を召喚し、魔法カード『竜の懐柔』を発動すると、凌斗のフィールドに異変が起きた。
凌斗が召喚した『次元竜 レギア』がアルフレッドのフィールドに移動、つまりコントロールを奪われたのだ。

「『竜の懐柔』は俺の場に『竜操姫』カードがあるときに発動できる。
相手のドラゴン族モンスター１体のコントロールをエンドフェイズまで奪うのだ」

「な、なに・・・ドラゴン族専用の『洗脳』カードか！」

「この効果の対象となったドラゴン族モンスターは、それに抗う事は出来ない。
例え・・・どんな効果を持つモンスターだとしても」

「抗えない・・・洗脳だと」

『竜操姫』と『竜の懐柔』の２枚により、『レギア』は手懐けられた。
このターンの間はアルフレッドのモンスターとして機能する事となる。

「だが、この効果で洗脳したモンスターはこのターン、攻撃は出来ず、リリースや融合の素材に使用する事は出来ない」

『竜の懐柔』の制約効果を聞いて、凌斗は内心胸を撫で下ろす。
もし攻撃が可能ならば、壁モンスターのいない自分はその攻撃を己の身で受けなくてはならない。
また生け贄（リリース）などの素材に出来ないとなれば、多少のダメージは受けても、エンドフェイズになれば『レギア』は再び帰ってくるはずである。

「だが・・・『カードコスト』は別だ」

「何だと・・・！」

「俺は『フォルテ』の２つ目の効果を発動。
手札、またはフィールドからこのカード以外のドラゴン族モンスターを墓地へ送り、デッキから『竜珠（ドラゴン・オーブ）』と名の付くモンスターを特殊召喚する」

「ま、まさかお前・・・俺のモンスターを！」

「そうだ。
俺は『レギア』を墓地へ送り、デッキから『竜珠 “暗礁”（あんしょう）』を守備表示で特殊召喚する」

『竜の懐柔』によってコントロールを奪ったのは、『フォルテ』の効果を使うためであった。
これによって実質、相手のモンスターを除去しながら、『フォルテ』の効果を使える事になる。

ーー帰ってきた『レギア』。
しかしフィールドではなく、墓地にである。

「くそ・・・カードコストでは、『次元竜』の自身を除外する力が使えない！」

『次元竜』には戦闘で破壊された時に、自身を除外する力がある。
それによって『次元昇竜』の発動トリガーを満たし、新たな『次元竜』を呼ぶ作戦であった。
そのために攻撃力が低めなのを承知で、『レギア』を攻撃表示で召喚しておいたのである。

「出でよ・・・『暗礁』の『竜珠』よ！」

凌斗のモンスターをコストに、アルフレッドのフィールドに現れた新たなモンスター。
それはサッカーボール程の大きさを持つ、光輝く水晶の玉のようなもの。
その表面には何らかの紋様のようなものが刻まれ、周りからは黒い煙のようなものが絶えず発せられている。

レベルは６、守備力は２５００だ。

そして『竜珠 “暗礁”』もドラゴン族モンスター。
『フォルテ』の自身の効果により、自らのレベルが７となり、攻撃力も７００となる。

「な、何だ、あの『球』は・・・？！」

守備力は２５００、と高い数値を誇るが、代わりに攻撃力は０。
『フォルテ』の攻撃力上昇の一躍を担っているが、果たしてそれだけだろうか。

「『竜珠 “暗礁”』の効果！
このモンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから同じカードを手札に加える」

「同じカードをサーチ、だと？」

その効果の１つが自動的に適用されて、アルフレッドは同じモンスターを手札に加えた。

「更に、『竜珠 “暗礁”』がドローまたはカード効果により手札に加わったとき、このカードを相手に公開して発動出来る」

「俺に、見せるってのか？」

「ああ。
だがこの効果で公開されている限り、互いのスタンバイフェイズごとに、このカードのレベルは１下がる」

「１、下がる・・・？
ということは今、６だからーー」

「そう。
君のターンで１、そして俺のターンで１下がり、このカードのレベルは４となる」

「（見た事ない効果だ・・・こいつ、一体ーー？）」

自ら手札の中で公開し続ける事で、レベルが１下がるという能力を持つカード。
つまり今はレベルが６で、通常召喚にはリリース・モンスターが１体必要だが、次のアルフレッドのターンでは４となり、その必要はなくなる。

その狙いは凌斗にもすぐ分かったが、問題はその先だ。
アルフレッドはそうする事で何を為そうというのか。
それは未だ見通す事は出来ない。

「そして・・・手札から永続魔法『双頭の連撃』を発動」

「な、なんだ！」

「元々のレベルが３以下のドラゴン族モンスターは、１ターンに２度の攻撃が可能となる」

「２回攻撃ーーそうか、『フォルテ』の『元々の』レベルは１・・・！」

「そう。
つまり『フォルテ』は『双頭の連撃』がある限り、毎ターン、２回の攻撃が出来るのだ」

凌斗はアルフレッドの狙い・戦略が見えた気がした。
『フォルテ』は場に新たなドラゴン族モンスターが召喚される度に、そのレベルに応じて攻撃力を上げる効果を持つ。
それによって『フォルテ』の能力を際限なく強化していき、『双頭の連撃』の効果で攻撃回数を増やす事でそのパワーを活かしてくる気だと。

「（思ったより厄介だな・・・俺のモンスターもほとんどがドラゴン族。
つまり、俺もモンスターを召喚すれば、『フォルテ』の攻撃力が上がっちまうって事か！）」

『竜』を呼ぶ能力、また『竜』の数に乗じてパワーアップする『竜操姫』。
このモンスターを長く残しておくのは危険だ。
だが逆に言えば、あの『フォルテ』が恐らくアルフレッドのキー・カード。
あのモンスターに狙いを付けて、早めに葬り去るのが上策である、と凌斗は判断した。

「バトルフェイズだ。
『フォルテ』でプレイヤーにダイレクトアタックする」

そしていよいよアルフレッドはバトルに乗り出す。
攻撃指令を受けた『フォルテ』が、地を蹴り駆け出すと、巨大な槍を振り上げる。

「ーー唸れ、『ダーク・ブリンガー』！」

大地を強く踏み抜いて身体を支えると、見た目からは感じられない凄まじい腕力で、巨大な槍を横凪ぎに振り払う『フォルテ』。
防ぐ手段のない凌斗はその一撃をまともに受けてしまう。

「ぐぐ・・・っ！
大したことねぇぜ！」

『フォルテ』の攻撃力は７００。
凌斗のライフは３３００へと減るが、確かにこれだけならばまだ余裕がある。

「永続魔法カード、『双頭の連撃』により『フォルテ』、２回目の攻撃！」

そう、今の『フォルテ』は２回の攻撃が許されている。
振り払った槍をそのまま頭上で回転させながら、猛る『フォルテ』。
そうしてから真上から切り落とすように振り下ろされた刃が、凌斗に２度目の攻撃を加える。
これで凌斗のライフは更に減り、２６００となった。

「ちっ・・・痒い攻撃だぜ！」

凌斗が思わず口走る。
確かに２回の攻撃でダメージが１４００であれば、安く済んだ方である。
だが凌斗の声には、２度のダイレクトアタックをまんまと許してしまった悔しさも込められていた。

「カードを２枚、セットして、ターンエンドだ」

アルフレッドは２枚のリバース・カードをだしてターン終了を宣言。
凌斗へとターンが返り、反撃を胸に誓う。

しかし、アルフレッドの戦略は凌斗が考えるような単純なものではなかった。
このターンは真の戦略、その力を行使するための準備期間でしかなかったのであるーー。