最強タッグ？！深淵より出ずる者！⑦　作：はにわ改

　
ーー６年前。
謎の死を遂げた水花の両親。
同時に封じ込められたその時の記憶と感情。
水花の身に一体に何が起きたのか。

それが『ラピス』の口から少しずつ語られ始めた。

その中の最大にして、事件の根幹である事実。

『ラピス』は言う。
水花の両親を殺したのは自分である、とーー。

「お前が水花の両親を……？」

正に降って湧いたような事を聞かされた、という透矢の表情。
対して刹那はどこか悔恨の意を示すように、歯を食い縛らせている。

『ーーおっと、済まない。
デュエルの途中であったな。

ーー“グラボイド”の攻撃を見事防いだようだが、我のバトルフェイズはまだ終わっていない』

「何っ！？」

『手札から速攻魔法、『悲愴の現実』を発動。
バトルフェイズ中、我がフィールドに攻撃宣言を終えたモンスターが１体のみの時に発動出来る。

相手フィールド上に存在するモンスター１体を破壊し、もう１度攻撃することが許される』

「な、何だとっ！」

ーー『悲愴の現実』。
それは今、語っていたことを象徴するかのようなカードであり、
同時に透矢たちにもたらされるだろう事でもある。

『お前にも“我が半身”の両親とやらの後を追わせてやろう。
お前のモンスターを破壊し、その後“グラボイド”の一撃で消え去るがいい』

「く……っ！」

標的となったのは透矢。
この効果で『守護の鎧』が破壊されれば透矢のフィールドは空となり、その後で『グラボイド』で攻撃されれば対抗策などない。
しかも『グラボイド』の攻撃力は圧倒的足る５１００ポイントーー。

魔法カード『悲愴の現実』から青白い光が放たれ、それが光線のように『守護の鎧』へと向かう。

「ーーさせない！
リバース・カウンター、『天使の仲裁』を発動！」

しかしそこで、直前に透矢がそうしたように、今度は刹那が透矢のピンチに動く。

「自分フィールド上に存在するレベル６以上の天使族モンスターを選択して発動！
私は『サンダルフォン』を選択し、相手の魔法カードの発動を無効にして、破壊する！」

カウンター罠カード、『天使の仲裁』の効果により、『悲愴の現実』はその効力を失って砕け散った。
無論、透矢にも実害はない。

「そして、私は選択したモンスターの攻撃力分だけ、ライフを回復！」

更に回復という複合効果も得て、刹那は『サンダルフォン』の攻撃力２６００分だけライフを回復し、５７００となる。
『ラピス』のライフを上回り、かなりの余裕を生み出させた。

「ーー刹那！助かったぜ」

「気にしないで、透矢くん。
これでお相子、だよ」

厳しい戦いの最中で、共にカードを駆使して援護をし合い、束の間の笑顔を見せ合う。
だがすぐに表情を引き締めると、再び『ラピス』を一点に捉えた。

『くすくす……いいぞ。
その調子でもっと我を楽しませてみろ』

「へっ、何処までも小馬鹿にしやがって！」

『そんなことはない。
少なくとも、お前たちは“我が半身”の両親とやらと同じ“ゲーム”をした時よりは粘っている。
その時は酷くつまらなく、敢えない最期だったからな』

「何……！」

思い出し、それを可笑しそうに笑う『ラピス』。

「やはり……水花のお父様とお母様は、水花を護ろうとして、あなたとデュエルをーー」

刹那が唇を噛むようにしてそう口にするが、『ラピス』は特に否定も肯定もしない。

『我のバトルフェイズは終了。
ーーメインフェイズ２。
我はこのタイミングで、再び墓地の“Ａ・Ｄ”モンスターたちを呼び覚ます』

「呼び覚ます、だと！？」

『出でよ、我が忠実なる眷属。
“アクティニオン”！
“サードリウス”！
“メガロディニクス”！
“アフロディトイス”！』

『ラピス』の呼び出しに従って、地面の黒い靄（もや）のような部分から、４体のモンスターが一瞬その姿を見せる。
そしてそれらは再び裏側守備表示のカードとして『ラピス』の場に置かれたのだった。

「あ、あいつらは墓地に送られた筈なのに、なんで復活しやがるんだ！？」

『くすくす……教えてやろう、我が“Ａ・Ｄ”モンスターの共通能力をな』

「共通、能力？」

『“Ａ・Ｄ”モンスターは墓地に存在する時、その“カードの上”に特定の枚数の別のカードが堆積していれば、特殊召喚が可能となるのだ』

「特定の枚数、カードが堆積……？」

『例を挙げるなら、“メガロディニクス”は自身のカードの上に５枚の別のカードが乗せられると、墓地から特殊召喚出来るのだよ』

今までにない効果を持つ『Ａ・Ｄ』モンスター、その特殊召喚能力。
刹那は直ぐにその内容を把握し、何度か頷いた。

「そうか……だから、奴の１ターン目も、あんなに一気に５体もモンスターが並んだのか。
全員、同じ効果を使ってーー？」

『ラピス』の１ターン目。
魔法カード『アビス』を発動後、一気に『グラボイド』を始めとする５体のモンスターを特殊召喚出来た理由。
その答えは『Ａ・Ｄ』モンスターの特殊能力にこそあった。

「で、でも、奴らは前のターンに墓地に送られたばかりだろ？
少なくとも『メガロディニクス』の上にはまだ５枚もカードが置かれているはずがない！」

「いえ、違うわ、透矢くん！
このターンの最初を思い出して！
『ラピス』が何をしていたか」

「何って……。
ドロー出来なくて、スタンバイフェイズ時に墓地からランダムにカードをーー」

刹那に言われて、数分前の出来事を思い出す透矢。
そしてそこで思い当たる。

「そうか！
『シャッフル』か！
奴は墓地のカードを『シャッフル』してから、カードを手札にーー」

「そう。
それによって、たとえ墓地に送られたばかりの『Ａ・Ｄ』モンスターたちでも、３０枚以上ある他の墓地のカードとかき混ぜられ、結果として特殊召喚の条件を満たしてしまうの！」

「何てこった……！
ってことはあいつらは毎ターン、復活してくる可能性があるって事か！」

「……」

透矢と刹那は察する。
『Ａ・Ｄ』モンスターの真価、その厄介際回りない能力を。

『理解してくれたようだな。
お前たちに我が布陣を切り崩せるかな？

くすくすくすくすーー』

『ラピス』の場に並ぶ姿を隠した醜悪な魔物たち。
それらは何度でも蘇生する能力を持っていたのだ。
これまでにない戦術を見せ、それに翻弄される透矢たち。

それを突破するには、如何なる戦術を駆使しなければならないのか。

『ラピス』が始めに口にしたように今まさに、二人の真価が問われようとしていた。