アルフレッドvs流石 竜の支配者！⑧　作：はにわ改

　
「ーーＴ・Ｆモンスターの融合・・・『黒竜、姫将』、だと・・・」

凌斗が、立ち膝を曲げて見上げながらたじろぐ。
女性の姿ながら、自らの得物を片手に黒竜（ティアマトー）の背中に跨がった雄々しき姿。
力強くも美しい『竜姫』フォルテが、下界に住まう凌斗を鋭く見下ろす。

レベルは１、攻撃力は『？』表示。
果たして攻撃力はいかにして決まるのか。

「ーー『黒竜姫将（ティアマトー） フォルテ』のレベルは、フィールド上のこのカード以外のドラゴン族モンスターの、元々のレベルの合計数値だけ上がり、
そして攻撃力はレベルに１００を掛けた数値となる」

「『フォルテ』の効果を引き継いでるわけか・・・！」

「今、君の場にはレベル８の『エンパイア』がいる。
よって、『フォルテ』のレベルは９に上がり、攻撃力は９００となる」

「へ、へへ・・・たった９００か！
手間を掛けた割に、むしろ攻撃力はダウンしてるぞ！」

フィールドのドラゴン族モンスターによって、常にレベル・攻撃力が変動する『竜操姫』の能力。
しかしながら、現状は融合する前の『フォルテ』より、攻撃力は大きく下がってしまっている。
僅か９００では『エンパイア』の足元にも及ばないだろう。

「それはどうかな？
『まだまだ』俺のコンボは終わっていない」

「まだ・・・あるってのか？！」

「永続罠カード、『竜章鳳姿』のもう１つの効果を発動。
場に『姫将』モンスターが存在する時、このカードを破壊し、『フェニックス・ワイバーン・トークン』を特殊召喚できる」

前の凌斗のターンに、『竜珠』を戦闘破壊から護った『竜章鳳姿』。
それが今、破壊されると、そこから横に大きく翼を伸ばす炎を纏う鳥が飛び立った。
耳をつんざくような鳴き声を上げながら、宙へと舞い上がり、やがてそこからゆっくりと降下して地表に降り立つ。

カードとしては扱わないモンスター・トークンだが、
レベルは９、攻撃力・守備力は共に０の守備表示という扱いで置かれる。

「『フェニックス・ワイバーン・トークン』は攻撃は出来ないが、
戦闘と効果で破壊されない」

「破壊されないトークン・・・？」

「だが大事なのは、このトークンはドラゴン族である、ということだ」

「ぐ・・・、あの永続罠カードは『フォルテ』の攻撃力を上げるための布石だったのか！」

場に新たなドラゴン族モンスターが増え、『フォルテ』は更に力を高める。
レベルは１８、攻撃力は１８００となった。

「そして、『フォルテ』のモンスター効果。
１ターンに１度、自分のデッキまたはエクストラ・デッキからドラゴン族モンスターを墓地へ送ることが出来る」

「デッキから、墓地に・・・？」

「墓地に送ったドラゴン族モンスターのレベルだけ、『フォルテ』のレベルを上げる」

「ま・・・まさか！」

「俺はエクストラ・デッキから、レベル１２の『Ｆ・Ｇ・Ｄ（ファイブ・ゴッド・ドラゴン）』を墓地へ送り、そのレベルを『フォルテ』に加える」

「ファ・・・『Ｆ・Ｇ・Ｄ』を墓地へ送るだとっ？！」

アルフレッドのエクストラ・デッキに眠っていた、攻撃力５０００という素の能力だけで言えば、最強の攻撃力を持つ『Ｆ・Ｇ・Ｄ』。
それを惜しげもなく墓地へと送ると、そのレベル１２が『フォルテ』に加えられる。
結果、『フォルテ』のレベルは３０になり、攻撃力は３０００に達した。
攻撃力を大きく高めた『フォルテ』が自らの得物で、『ティアマトー』の肌を叩くと、猛る竜の雄叫びが場内を駆け巡った。

「準備は終わった。
ではバトルフェイズだ」

「ば、馬鹿な！
あんたのモンスターはまだ、俺の『エンパイア』よりも攻撃力は下・・・！」

「分かっている。
だが『黒竜』と融合した『フォルテ』は相手に直接攻撃が出来る」

「ちょ・・・直接、攻撃能力！？」

『フォルテ』は新たに直接攻撃能力を備えていた。
故に相手フィールド上に、いくら攻撃力や守備力の高い壁モンスターがいても問題にしない。
だが『フォルテ』の力はこれまでが全てではない。

「『フォルテ』でプレイヤーにダイレクトアタックする！」

そしていよいよ攻撃宣言が下された。
『黒竜』が『フォルテ』を乗せて天高く飛び上がると、素早くしなやかな飛翔能力で、『エンパイア』の頭上を越えて、凌斗の頭上へと移動する。
見上げる凌斗に狙いを付けた『フォルテ』は、得物である槍の刃先を突き出しながら、急降下を始める。

攻撃力は３０００。
幸い凌斗の生死を左右するようなダメージではないが、それでもまともに受ければ痛烈には違いない。

「あ、甘いぜ！
リバース・罠カード！
『ミラー・フォース』！」

凌斗に対策あり。
発動したカードは『聖なるバリア ミラー・フォース』。
相手モンスターの攻撃に発動し、攻撃表示モンスターを全滅させるカード。

凌斗の周りを紫色の透明なバリアが囲み、直後に『フォルテ』の槍の切っ先がバリアに食い込む。

「わははっ！
これで返り討ちだ・・・あ？」

してやったりと、歓喜に奮えた凌斗。
だがそれも一瞬だった。
『ミラー・フォース』によって破壊されるはずの『フォルテ』は、変わらぬ表情で刃先を押し込んでくる。
『フォルテ』が破壊されるどころか、逆に『ミラー・フォース』のバリアにひび割れが入り始めた。

「な、何故だ！
『ミラー・フォース』がーー！」

「悪いが、『フォルテ』は相手のカード効果を一切受け付けない。
墓地に『ティアマトー』がある限りな」

「こ、効果に対して無敵だと！？」

「『黒竜』の飛翔能力による回避行動は、相手の効果を受け付けず、さらに攻撃対象にもされない」

「な、何てモンスターだ・・・！」

攻撃対象にされず、効果も通じない。
ほぼ完全な耐性を持つ『フォルテ』。
果たしてこのモンスターを打倒する手段があるだろうか。

ーー今、考えてもそれは最早遅い。

遂に『ミラー・フォース』のバリアは砕け散り、『フォルテ』の槍の切っ先は凌斗の身体に食い込んだ。

「ぐがぁっ？！
くそ・・・だがまだライフはーー」

３０００のダメージを受けたが、凌斗のライフはまだ１６００残っている。
とりあえず、生き残ったーーはずだった。

「ーー忘れるな。
俺の場には永続魔法『双頭の連撃』がある」

「ーーはっ！」

「『フォルテ』のレベルがいくつになろうと、元々のレベルは１だ。
よって、このカードにより２回の攻撃が可能！」

永続魔法『双頭の連撃』は、元々のレベルが３以下のドラゴン族モンスターの攻撃回数を２回にするカード。
その効果を受けて、『フォルテ』が１度槍を構え直し、横で軽々と回転させて見せると、不意に横凪ぎに振られた槍が凌斗に２度目の攻撃をもたらした。

再び３０００のダメージーー。
凌斗のライフは尽きた。
凌斗は膝を付くーー。

「ーー終わりだな」

『フォルテ』がアルフレッドのフィールドに舞い戻ると、ものも言わずにカードへと還っていく。

デュエルは終わった。
アルフレッド、無傷の完勝。
彼の実力をまざまざとこのアカデミアの生徒全てに見せつけたのだ。