透矢vsエリザ 偉大なる吸血鬼の力！⑦　作：はにわ改

　
ーー『メルセディア』に続き、『アリアス』もその真の姿を解放する。
姿形にそれぼど大差はないが、彼女が発する白銀の輝きが、血のように赤く染まった周囲を照らし出す。

能力は据え置きで、レベル４、守備力１１００。
ただし戦闘及び効果による破壊を３回まで帳消し出来るため、易々と退陣させることはかなわない。

ーー召喚された『アリアス』。
ふと透矢の方を向いた。

『ーーマスター』

「あ・・・アリアス？」

そして透矢に呼び掛けてくる『アリアス』。
透矢は声を出すが、あわてて手で口を押さえる。
声を出して『話す』と、周囲の人間には独り言を話しているように思われる事を気にしたためだ。

『ーーありがとう、マスター。
ずっと私の事を気遣ってくれてーー』

「（はは、気にすんなって。
ま、正直こうして無事に取り戻せてホッとしてるんだけどな）」

『女帝』と『話す』ときと同様に心で念じるようにして、会話を成立させる二人。
『アリアス』が優しく微笑む姿を見て、透矢はその言葉通りに安堵していた。

『迷惑かけた分は頑張って取り戻すからーーマスター。
私の力を役立てて』

「ーーああっ！」

思わず声を出して返事をしてしまった透矢。
ーーそう、『アリアス』が進化した能力は破壊耐性だけではない。

「ーー『アリアス』の効果、発動！
墓地の『白銀の盾』をデッキに戻すことで、デッキから『三騎士』モンスター１体を選択して、手札に加えるか、特殊召喚できる！

ーー俺はデッキから『三騎士 影縫いの微刃（かげぬいのみじん）』を特殊召喚！」

墓地に３枚ある内の１枚、その『白銀の盾』がデッキへと還り、『アリアス』の優れたサーチ能力が発動。
デッキから黒装束で全身を隠した、『影縫いの微刃』が守備表示で特殊召喚された。

レベル５、守備力は１７００だ。

「そしてカードを２枚セットしてターンエンド！」

透矢は未だに予断ならない状況である事を自覚しつつも、今、やるべき事・出来る事を為してターンを渡した。

「では・・・わたくしのターンですわ。
ドロー致しますわね」

エリザのターン、ドロー。
今までずっと余裕の表情を崩さなかったエリザだが、そのドロー・カードを見て一瞬、彼女の中の時が止まる。

「（あら・・・『このカード』を引くなんて・・・ふふふ。
わたくしとトーヤのこのデュエルの幕引きに相応しいカードかもしれませんわね）」

エリザが不気味に嗤う。
『そのカード』は彼女のエース・カードを呼ぶためのカード。
『不死者を統べる王』は、彼女のデッキの中で眠りながらも、確実に到来の予感を感じて確かに脈動を始めていた。

「ーースタンバイフェイズ！
永続罠カード『アイアン・メイデン』の効果により、トーヤ？
囚われた『メルセディア』の攻撃力分のダメージを受けて頂きますわ」

「ぐ・・・！」

女性型の棺桶というべき『アイアン・メイデン』に囚われている『メルセディア』。
扉の隙間から彼女が流した血が滴り落ちるーー。

彼女の痛みは透矢にも伝わり、その攻撃力６００分のダメージを受け、残りライフは２０００となる。

「更に先ほど破壊された『ジル・ド・レ』がこのスタンバイフェイズに復活しますわ！」

エリザの宣言に合わせて、赤い花畑の中から掘り出された黒色の棺桶が現れ、それが宙に浮く。
やがて横向きのそれが縦向きに体を入れ換えると、棺の蓋が開いて、中から『ジル・ド・レ』が姿を現した。

「復活したーー？」

「『純血のヴァンパイア』は人間でありながら、死を超越した存在ですの。
戦闘、効果で何度破壊されても、わたくしのスタンバイフェイズに蘇りますわ」

「（てことはあの『ヴラド』も同じ効果を持ってるのか・・・）」

『純血のヴァンパイア』は不死身。
何度破壊されても、必ず復活する。
敵として戦うには、悪夢のような存在と言える。

「そして永続魔法『吸血鬼の庭園（ヴァンパイア・ガーデン）』の効果により、
わたくしはデッキから『純血の貴婦人（ノーブル・ヴァンパイア）アンジェリカ 』を手札に加えますわ」

「また新しいヴァンパイアが・・・！」

『吸血鬼の庭園』はスタンバイフェイズ毎に、デッキから『ヴァンパイア』モンスターを手札に加えられるのだ。
そして加えられた『ヴァンパイア』は同じく『吸血鬼の庭園』の効果により、フィールドに現れることになる。

「ライフを５００ポイント払い、今加えた『アンジェリカ』を特殊召喚！」

エリザのライフが３７００から３２００へ減り、それを代償に特殊召喚された『アンジェリカ』。
赤く染まった髪を持ち、高貴さを感じさせる飾りを施した黒いドレスを着込む美女。
『ヴラド』、『ジル・ド・レ』と共に『ヴァンパイア』であると同時に、その格好から推測して恐らく相当な身分の持ち主であったのではないだろうか。

レベル８、攻撃力２３００。
果たしてどんな能力を持つのだろうか。

「まだですわ！
永続罠カード、『赤い月（ブラッド・ムーン）』の効果により、『鮮血の人狼（ブラッド・ワーウルフ）』をデッキより特殊召喚します」

空に浮かぶ赤い月。
それに導かれて、またも現れる『鮮血の人狼』。
戦闘を行ったモンスターを問答無用で破壊する厄介な効果を持ち、更に攻撃力が２０００であるため、『ヴラド』の効果で直接攻撃が可能なのだ。
透矢の残りライフも２０００だから、この『人狼』の攻撃が通ればその時点でゲームセットとなる。

「さて・・・バトルフェイズですわ。
トーヤ、耐えられるかしら・・・？」

「へ・・・へへ・・・っ！
俺は意外にしぶといんだぜ？」

「（ふふ・・・まぁ、この程度の攻撃で終わるようなら『このカード』の出番はありませんけどねーー）」

倒されても蘇る不死者の花園。
未だ本気に至っていないエリザの『期待』に透矢は応えられるのか。
大観衆の目が注目するなか、その攻防は続くーー。