最強タッグ？！深淵より出ずる者！⑥　作：はにわ改

　
ーー攻撃力５１００の『グラボイド』による刹那の『サンダルフォン』への攻撃。
彼我の攻撃力の差は２５００ポイントであり、その数値が刹那のライフを直撃したなら、残りは僅か６００ポイント。
風前の灯という程度のライフしか残らないばかりか、『ラピス』が発動させた『闇のゲーム』による身体的苦痛も襲い来る事になる。

この攻撃ーー刹那を撃ち貫くのかーー。

「リバース・カード、オープン！」

ーー動いた。
だがそれは刹那ではなく透矢。

「罠カード『プロテクト・リタリエイション』！」

『グラボイド』の効果で１０００ポイントのダメージを受け、膝を付いていた透矢が、刹那の危機に己を奮い立たせる。

「自分フィールド上に『守護の鎧』が存在する時に、デッキから別の『守護の鎧』を墓地へ送って発動！
相手モンスターの攻撃対象を『守護の鎧』に変更する！」

「と、透矢、くん……！」

刹那もまた『グラボイド』により受けた効果ダメージの痛みに耐えつつ、透矢の行動に目を開く。
透矢は震える指でデッキから『守護の鎧』を墓地へ送ると、『グラボイド』の攻撃が『サンダルフォン』から方向転換し、『守護の鎧』へと向かう。

「更に『守護の鎧』の効果！
自分フィールド上に存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、デッキから別の『守護の鎧』を墓地へ送り、その攻撃を無効にする！」

罠カード『プロテクト・リタリエイション』に連動させて、『守護の鎧』の効果を適用。
それにより透矢は更にデッキから『守護の鎧』を墓地へと送る。

すると『グラボイド』がまるで海面を跳び跳ねるかのように、地面の下から大地を粉砕しながらかち上げようとするが、
『守護の鎧』はその名から来る通りに、絶対的に信念の元に攻撃を防ぎきる。

結果として刹那を護り、更に自分のモンスターにも被害を出さなかった。

「『プロテクト・リタリエイション』の追加効果！
相手ライフに６００ポイントのダメージを与える！」

ただ護るだけにあらず。
受け止めた攻撃を力に変えて、相手へと弾き返す。
これにより『ラピス』にダメージを与え、ライフを４８００まで減らした。

『くすくす……雑魚かと思えば、中々楽しませてくれるな』

攻撃を防がれ、ダメージを受けながらも余裕を失わない『ラピス』。

「透矢くん……ありがとう、助けてくれて」

「気にするな。
それよりも大丈夫か？」

「ええ、私は大丈夫。
透矢くんは？」

「大丈夫だ。

ーー水花の命が懸かってんだ。
こんなところでへこたれてたまるか！」

『ラピス』の背後で、死んだように眠る水花を見据えながら、透矢は血流を勢いよく滾らせて体温と共に己を高ぶらせる。
刹那に映るそんな透矢の姿は頼もしくも、同時にどこか不安を感じさせて、表情に陰りを見せる。

『くすくす……必死だな。
そんなに我が“半身”であるこの身体を取り戻したいか』

「当たり前だっ！」

『くすくす、お前を見ていると６年前のあの時を思い出す。
我とこの“半身”が初めて邂逅したあの日をーー』

「６年、前……？」

水花を『半身』と呼ぶ『ラピス』。
そしてその『ラピス』が口にした『６年前』というキーワードに、透矢は記憶の引き出しにある内容と照らし合わせる。

『我は６年前、既に“再会”を果たしていたのだ。
もっともその時はまだ我も“力”が回復しておらず、虚ろな存在ではあったがな』

「……？」

『ラピス』の語る内容。
今まで常識にまみれた世界に生きてきた透矢には、理解しがたい内容。
一方、刹那は無言で聞き入っている様子だ。

『我はある人間を“依代（よりしろ）”にして、１度はこの“半身”と邂逅を果たしたのだ。

ーーが、その時、今のお前のようにこの“半身”の父と母を名乗る人間が妨害した』

「父と母って、水花の……両親か……？」

『それ故にーー我はその無知なる愚物の命を絶った。
くすくす……いや、何とも脆く儚い存在であった』

『命を絶った』ーーすなわち、亡き者にした。
それを聞いて透矢の記憶の中で、以前刹那から聞かされた事と合致する。

「せ、刹那……。
まさか、前にお前が話してくれた水花の過去ってーー」

「……」

刹那が話した水花の『過去』。

刹那と水花の両親が、互いに親睦を高めるために旅行した際に起きたという悲劇。
一度行方不明になった水花とその家族は、変わり果てた姿で発見された。

謎が多く、関係各機関が調査に乗り出すも、遂には解明されなかったその出来事。

水花があまり感情を表に出すことが無くなってしまった原因ーー。

その元凶こそがーー。

「お前が……お前が、水花の両親を殺したっていうのか？」

透矢が確かめるように問いかける。
その握り拳は小刻みに震えていた。

「ーー答えろっ！！
お前が……水花から両親を奪ったってのかっ？！」

『くすくす……だから、そう言っているではないか』

ーー明らかになる真実。
そしてその先にある『ラピス』の目的。

透矢と刹那、『ラピス』とのデュエルを通して、それが明らかになろうとしていた。