アルフレッドvs流石 竜の支配者！⑤　作：はにわ改

　
ーー凌斗のフィールドに召喚された、今までの『次元竜』の姿とはまるで違う黄光の輝きを放つ『竜』。
細長く、それでいて巨大な厚さを持つ蛇の体躯に、翼を生やしたモンスター。
やはりシルエットとしてでしかその姿を見る事は出来ないが、圧倒的な存在感は正に『竜神』の名にふさわしい。

ーー『次元竜神 エンパイア』。
凌斗の『次元竜』デッキのエース・モンスター。

レベルは８、攻撃力は２０００。

「わっはっはっは！
どうだ、俺の『竜』は！
他のチンケなドラゴンとは比べものにならんぞ！」

凌斗が己の最強モンスターを自慢するように高笑いを上げる。
だがアルフレッドは変わらず無表情のまま。
透矢は素直な反応を示してくれていたが、彼はまるで動じていない。

それは余裕から来るものなのか、性格の違いからなのかーー。
いずれにしても凌斗は少しも恐れてくれないアルフレッドに業を煮やす。

「ーー今の『エンパイア』の特殊召喚時に、除外された『サルヴァ』、『クルス』の効果を発動！
『サルヴァ』の効果でデッキから、『次元竜』モンスターを加え、更に『クルス』の効果で『次元竜』モンスターを除外する！」

苛立ったような早口で、効果を処理していく凌斗。
凌斗は『サルヴァ』の効果で『次元竜 イグナフ』を加え、『クルス』の効果で『次元竜 レギア』を自ら除外した。

「そして除外した『レギア』の効果を発動！
さあ、デッキからモンスターを１枚除外してもらおうか！」

『次元竜 レギア』は除外された際に、相手にモンスターカードを１枚、デッキから除外させる能力を持つ。
アルフレッドは無言のまま、デッキから適当なモンスターカードを１枚選び、ゲームから除外させる。

「そして永続魔法、『魂吸収』の効果！
今のやり取りで除外されたカードは、あんたの分も合わせて４枚！
よってライフを２０００回復するぜ！」

予め発動しておいた『魂吸収』はカードが除外される度に、１枚につきライフを５００回復する。
凌斗の言うように一気に２０００のライフを回復し、ライフは４６００となる。

「そして！
『次元竜神 エンパイア』の攻撃力は除外されているお互いのモンスター１枚につき２００ポイントアップする！
俺とあんたが除外しているモンスターの数は合計５枚！」

そして『エンパイア』の能力。
それにより、攻撃力は３０００へと上昇する。
だがこれはまだ低い段階であり、透矢とのデュエルでは、４０００を超えていた。

「ーー『フォルテ』の効果だ。
フィールド上のドラゴン族モンスターのレベルの合計だけ、レベルを上げ、更に攻撃力をアップする」

アルフレッドの『フォルテ』の効果も適用。
『フォルテ』を除く場にいるドラゴン族モンスターは、『竜珠 “暗礁”』と『エンパイア』。
そのレベルの合計１４が『フォルテ』のレベルに加算され、レベルは１５。
更に攻撃力はその数値に１００を掛けて、１５００となる。

「はははっ！
アップしたとは言ってもたったその程度か！
俺の『エンパイア』の前では雑魚も同然！」

凌斗の悪い癖と言うべきか、相手を挑発するような言動は常に尽きない。
だが雑魚と呼ばれても、アルフレッドは無反応。
もはや最初から相手にしていない、とでも言うような振る舞いだ。

「（ぐ・・・っ！
そのポーカーフェイスをひんむいて、俺の実力を分からせてやるぜ！）」

凌斗は意地にでもなるように、攻めっ毛を前に出す。
何としてもアルフレッドを木っ端微塵に粉砕してやろうという意気込みだ。

「更にリバース・カード、オープン！
永続罠カード、『次元の共振』！」

凌斗は前のターン、『次元昇竜』と合わせて伏せておいたカードを発動させる。

「『次元の共振』は、場の『次元竜』モンスターの攻撃力を、除外しているモンスターの数１枚につき、更に２００ポイントアップさせる！」

『次元の共振』。
それはやや非力な『次元竜』の攻撃力をサポートするカード。
除外するモンスターが増えれば増える程、その威力を増し、しかもそれが永続的に適用。

これにより、『エンパイア』の攻撃力は更に１０００ポイントアップし、４０００となる。

「ほう・・・」

それを見て、アルフレッドがそう口ずさむ。
少し感心したような口振り。

「行くぞ、バトルフェイズだ！」

そうして凌斗のバトルフェイズ。
攻撃力４０００の『エンパイア』の力を存分に奮い、アルフレッドのモンスターを軽く蹴散らそうとしている。

「ーー『フォルテ』の効果だ。
場に『竜珠（ドラゴン・オーブ）』モンスターが存在する限り、『フォルテ』は攻撃と効果の対象に出来ない」

アルフレッドが凌斗の攻撃の前に注意を促す。
どうやら『フォルテ』に『竜珠』モンスターが揃った瞬間から、『フォルテ』には防衛能力が加わっていたようだ。

「それがどうした！
ならば先ずはその球を攻撃してやる！」

『エンパイア』が攻撃態勢に入る。
『竜珠 “暗礁”』の守備力は２５００。
今の『エンパイア』ならば容易く撃ち壊せるはずだ。

「『エンパイア』でその球を攻撃！
ーー『次元崩震 ＤＤクェイク』！」

『エンパイア』が一際高い猛り声を上げ、翼を羽ばたかせる。
すると空間に亀裂が走り、それが『竜珠』の方へと突き進んでいく。

「（『エンパイア』は相手の守備モンスターの守備力を貫通してダメージを与える！
しかもこいつが場にいる限り、俺の場の『次元』カードは効果で破壊されないのだ！）」

『エンパイア』の攻撃力は、例え守備表示でモンスターを出そうとも逃げ場を与えない。
更に自分を含む『次元』カードに耐性を与えるため、迎撃罠カードにもある程度強い。

「（成す術・・・あるまい！）」

更に自信を深める凌斗。
もはやこのデュエルは自分のものだ、と言わんばかりだ。

対してアルフレッドは差し迫る強力な攻撃を前にしても、無表情。
その心中や如何にーー。