透矢vsシェリル 剣vs銃の対決！③　作：はにわ改

　
「ーー俺のターン、カードドロー！」

透矢の２ターン目、カードをドローして手札は５枚。
このターン、まず彼がやらなくてはならないのは、シェリルのフィールド魔法・『ガンナーズ・ヘヴン』がもたらすルールの把握だ。

「（えーと・・・モンスターは攻撃表示で召喚しなきゃいけなくて、召喚した時に相手の場にモンスターがいると、問答無用にバトルフェイズ・・・ってか）」

改めて効果を確認し始める透矢。

「（しかも攻撃可能なら、必ず相手モンスターとバトルをして・・・負けたら８００ダメージーー）」

シェリルの場には『ステップ・リオーネ』がいる。
つまり透矢がモンスターを１体でも召喚しようものなら、バトルフェイズからバトルを行う、までは強制的な流れとして進んでしまう。

「（しかもあのモンスター・・・攻撃力を倍に出来るって事は、実質攻撃力２４００じゃねぇか）」

『ステップ・リオーネ』の元々の攻撃力は１２００だが、バレット・カウンターを２つ取り除けば、攻撃力が倍になる。
『ステップ・リオーネ』にはまだ３個のバレット・カウンター。
少なくともあと１回はその効果を使えるという事だ。

「（召喚したら即、バトルフェイズじゃあ、装備魔法とかでも強化出来ないって事じゃねぇか・・・。
どうしたらいいんだ？）」

悩む透矢。
強力なモンスターに対する策として、装備魔法で能力を上げる、というものがある。
だが、現状モンスターが場にいない以上、まずモンスターを召喚しなければならないが、それをした瞬間にバトルフェイズになってしまう。
基本的に装備魔法はメインフェイズでしか発動出来ないため、これでは強化のしようがない。

「（ーーいや、待てよ・・・）」

装備魔法で強化が駄目ならどうするか。
それを考えていた時、ふと『ステップ・リオーネ』のある一文が目に留まる。
それは『攻撃力を倍にした時、戦闘ダメージを与えられない』という部分だ。

「（これなら・・・イケるか？）」

透矢は一点の光明を見出だした。
確証はないが、それに賭けてみる事にする。

「俺は手札から『三騎士 白銀の盾』を召喚！」

雪のような銀に輝く髪を持つ、女剣士。
携えた髪と同じ色の盾で、主人を護りつつ、またその動きをサポートしてくれる頼もしい戦士。

レベルは４、攻撃力は１４００。

「『白銀の盾』の効果で、俺はデッキから『三騎士 女帝の聖杖』をデッキの一番上に置く！」

『白銀の盾』は召喚時にデッキの『三騎士』モンスターをデッキトップに置ける。
透矢は自らのエース・『女帝』をデッキの一番上に置き、次のドローによりそれが確実に手札に加わる。

『フィールド魔法、“ガンナーズ・ヘヴン”の効果よ。
あなたはそのモンスターでバトルを行わなくてはならない！』

「ーー分かってるぜ！
俺は『白銀の盾』で『ステップ・リオーネ』を攻撃！」

刹那の通訳を通して、シェリルの言葉が伝わると、透矢は何故か自信満々にバトルを宣言した。
『白銀の盾』が鞘に納まった細身の剣を抜いて、地を蹴る。

『白銀の盾』の攻撃力は１４００。
確かに現時点では『ステップ・リオーネ』より上だが、倍にする効果を使えば、逆転されてしまうのではないか。

「『白銀の盾』は１ターンに１度、戦闘で破壊されない！
だから『ステップ・リオーネ』が攻撃力を倍にしても戦闘で破壊されないし、そいつ自身の効果でダメージは０だ！」

『ふん・・・なるほどな』

透矢の言う通りだった。
『ステップ・リオーネ』が効果を使えば、結果的にこのバトルでどちらのモンスターも破壊されないが、『白銀の盾』を場に残すことが出来る。
咄嗟の行いにしてはなかなか、とシェリルも素直に頷く。

ーーが。

『リバース・カード、オープン！
速攻魔法、“ガトリング”！』

「ーー速攻魔法？！」

『“Ｂｕｒｓｔ Ｆｉｒｅ”！』

シェリルが発動した『ガトリング』に合わせるように、迫ってきた『白銀の盾』に対し、『ステップ・リオーネ』は二挺拳銃を構える。
そして連続で二挺の拳銃が火を噴くが、『白銀の盾』は自前の盾で回避しつつ更に前に出る。

ーーしかし。
『ステップ・リオーネ』は地を蹴り飛び上がると、宙返りをしながら『白銀の盾』を上空から捉え、その状態から二挺拳銃を撃ち放った。
まさかの攻撃に『白銀の盾』は対応できず、銃弾を連続して浴びて倒されてしまう。
そして『ステップ・リオーネ』は体を崩すことなく着地し、得意気に銃を回転させながらホルスターに納めた。

同時に透矢のライフが１００ポイント削られ、３１００となった。

「な、何だ？！
な、何が起きたってんだ？」

訳が分からない、と透矢。
何故戦闘に耐性がある『白銀の盾』が破壊された上、ダメージまで受けているのか。

『“ガトリング”の効果。
自分フィールド上のガンナー・モンスター１体の“バレット・カウンター”を全て取り除いて発動。
取り除いたカウンター１つにつき５００、相手モンスターの攻撃力をダウンさせる』

「攻撃力ダウン・・・？」

『そして攻撃力が０になった場合、そのモンスターは破壊され、更に下回った数値分だけ、相手に効果ダメージを与える』

「そ、そういうことかーー」

『ステップ・リオーネ』にはカウンターが３つあった。
それを全て取り除き、１個につき５００ダウンとなると合計で１５００ポイント。
『白銀の盾』の攻撃力は１４００だから、攻撃力は０となって、その効果で破壊。
更に下回った１００ポイントのダメージを透矢は受けたのだ。

「くそーっ、『白銀の盾』が場に残らなかったかーーって、あれ？」

何とか場にモンスターを残したい一心で『白銀の盾』を出したのに、それは叶わず。
悔しそうにする中で、透矢はふと気が付いた。
ホルスターに二挺拳銃を納めた『ステップ・リオーネ』。
攻撃力が何故か半分の６００になっている。

「どうしたんだ？
攻撃力が下がってるぜ？」

『・・・ガンナー・モンスターは“バレット・カウンター”が無くなると、攻撃が出来なくなり、攻撃力は半分になるのよ』

「そ、そうなのか？！
ってことは、今のバトルでもし『ステップ・リオーネ』の効果を使ってもーー？」

「・・・そうだな。
倍になったあと半分になり、１２００のままだ」

透矢はまた１つガンナー・モンスターの特徴を理解した。

「（つまり『バレット・カウンター』ってのは、ガンナー・モンスターにとっては『弾丸』なんだ・・・。
弾切れになれば、ガンナー・モンスターは力を発揮できなくなるーー）」

なるほど、なるほど、と一人で納得する透矢。
まだ見ぬガンナー・モンスター全てにそのデメリットがあるのだとすると、そこが付け入る隙なのだ、と。

『“ガンナーズ・ヘヴン”の効果でバトルは終了される』

「おお、分かってるって！
んじゃメインフェイズ２だな」

バトルフェイズは強制終了、だが元より透矢の場にモンスターは存在しない。
ちなみに今の『白銀の盾』の破壊は戦闘による破壊ではないため、８００ダメージは適用されない。

「うー・・・このままじゃ壁モンスターがいないな。
仕方ない、かーー」

当てが外れ、予定変更を余儀なくされた透矢。
前のターンに伏せたリバース・カードを見る。

「罠カード、『リビングデッドの呼び声』！
その効果で墓地から『白銀の盾』を復活させる！」

永続罠カード『リビングデッドの呼び声』。
墓地からモンスター１体を攻撃表示で特殊召喚するカードだ。
攻撃力が高い『轟炎の剣』ではなく、『白銀の盾』にしたのは、戦闘破壊耐性を加味してのこと。

「メインフェイズ２だったら、モンスターを召喚しても『ガンナーズ・ヘヴン』の効果は発動しない・・・ま、当たり前か」

そう、当たり前の事。
だがこの当たり前の事を把握したのは、このデュエルを攻略する上で大事な事であった。

『私も場の永続罠カードを発動』

「えっ？」

『“オート・リロード”！』

発動されたシェリルの罠カード。
このタイミングで発動したそのカードの効果とは、何なのか。

『互いのエンドフェイズ毎に、自分フィールド上に存在するガンナー・モンスター全てに、“バレット・カウンター”を２個補充する』

「げっ、てことは弾切れになっても、エンドフェイズには補充されちまうって事か！」

抜かりないーー思わずそう思った透矢。
せっかくガンナー・モンスターの弱点が見えたのに、それをサポートするカードを既にシェリルは用意していたのだ。

「俺は・・・これでターンエンドだ」

特に伏せるカードもなく、ターンを終了させる透矢。
同時に『オート・リロード』が早速発動し、『ステップ・リオーネ』に『バレット・カウンター』が２個補充された。
これにより半分になっていた『ステップ・リオーネ』の攻撃力は元の１２００に戻る。

徐々にデュエルの流れを把握しながらも、その流れを自分のものにすることが出来ていない透矢。
逆に流れを掴もうとしているシェリル、その次のターンの攻勢を透矢は凌げるのかーー。

透矢の後ろでは変わらず刹那が厳しい表情で見守っていた。