透矢vsエリザ 偉大なる吸血鬼の力！⑧　作：はにわ改

　
「ーーではバトルフェイズですわ！

先ずは『ヴラド』の効果を受けた『鮮血の人狼』で、トーヤにダイレクトアタック致します！」

エリザの攻撃宣言。
『ヴラド』の永続効果により、攻撃力が２０００の『鮮血の人狼』は透矢に直接攻撃が可能だ。
そして透矢のライフもまた残り２０００ちょうど。
これが通ればデュエルは終わる。

果たしてーー。

「リバース・カード、発動！

ーー『影殺しの陣』！」

「あら・・・罠カードですのね！」

「自分フィールド上に存在する『影縫いの微刃』１体をリリースして発動！
攻撃力２３００以下の攻撃モンスターを破壊し、更に攻撃モンスターの攻撃力が２３００より低い場合、その差だけ相手にダメージを与えるぜ！」

発動された罠カード、『影殺しの陣』。
『アリアス』によって特殊召喚された『影縫いの微刃』が自らの影に溶け込むようにその姿を消すと、
次の瞬間に迫ってきた『鮮血の人狼』の影から、一本の細長い『錐』が伸び、その身体を突き抜ける。
その一撃で急所を貫かれた『鮮血の人狼』は、そのまま身を崩壊させた。

「攻撃力の差分のダメージ・・・。
つまりわたくしが受けるダメージは３００、ですのね？」

「ああ。
そして最後に、デッキから『影縫いの微刃』を１枚手札に加えさせてもらうぜ！」

エリザのライフが２９００に減り、透矢はデッキから新たに『影縫いの微刃』を手札に加える。
残るエリザのモンスターたちは皆、攻撃力が２０００以上。
透矢の場には高い耐性を誇る『アリアス』が存在し、取り敢えず危機は脱したに見えたーーが。

「ーー『アンジェリカ』の永続効果ですわ！
わたくしの『アンデット』モンスターは貫通能力を持ち、更に相手に戦闘ダメージを与えた時に、同じ数値分のライフを回復出来ますのよ」

「貫通ーーっ！」

新しく召喚された純血のヴァンパイア、『アンジェリカ』。
その能力がエリザの口から語られ、透矢は改めてヴァンパイアたちの攻撃力を確認する。
もし彼らの攻撃が、守備力１１００の『アリアス』に集中すれば、その貫通ダメージにより、やはり透矢は耐えられない。

「うふふ・・・今度は如何かしら。

ーー『ヴラド』で『アリアス』を攻撃！」

『ヴラド』の紅き眼が光り、手に持つ紅い刀身がそれに共鳴するように輝く。
そして彼が凄まじい勢いで地を蹴ると、紅い光が宙に直線を描きながら標的の『アリアス』へと差し迫る。

『ヴラド』の攻撃力は２８００。
これが通れば透矢は１７００もの貫通ダメージに受け、反対にエリザはその数値分回復することになる。

「ーーこの瞬間！
手札の『影縫いの微刃』を墓地に送って効果発動！」

「ーー？！
手札誘発、ですのっ！？」

「墓地に『影縫いの微刃』がある時に、手札のこのカードを墓地に送って発動出来る！
攻撃モンスターの攻撃力を２３００ポイントダウンさせる！」

透矢が『アリアス』の間近に迫った刃を前にして動く。
手札から加えたばかりの『影縫いの微刃』が墓地へと送られ、その効果が発動。
『ヴラド』が作る影から、黒い帯のようなものが無数に伸びて、『ヴラド』の身体へと巻き付きその動きを抑え込んだ。
結果、『ヴラド』の攻撃力は５００にまで落ち込む。

「攻撃力ダウン・・・逆にわたくしがダメージをーー？」

攻撃力が下げられたが、その攻撃自体は止まらない。
『ヴラド』の下げられた攻撃力５００と、『アリアス』の守備力１１００でダメージ計算が行われ、反対にエリザが６００のダメージを負い、ライフが２３００まで減る。

「ですが・・・永続魔法『吸血鬼の庭園』の効果で、わたくしは攻撃対象にした『アリアス』の攻撃力の半分、７００ポイント分、ライフを回復します」

永続魔法『吸血鬼の庭園』の効果の１つ。
『ヴァンパイア』が相手モンスターを攻撃した時に発動するその効果により、エリザのライフは３０００に回復。
差し引き１００ポイント分のライフを得た事になった。

「まだまだいきますわ。
今度は『アンジェリカ』で『アリアス』に攻撃致します！」

「・・・通しだ！」

続いて『アンジェリカ』の攻撃。
攻撃力は２３００。
すると彼女の周りに何処からかコウモリの群れが現れると、『アンジェリカ』の合図と共に、一斉に開いたコウモリの口から紅い針のようなものが『アリアス』に向かって飛来する。
ーー無数の紅い針による攻撃、『アリアス』は盾を前に掲げてそれに耐える。

「『アリアス』は１ターンに３回まで、戦闘・効果による破壊に耐える！」

「ふふ・・・でも、ダメージは受けて頂きますわ」

『アリアス』は破壊されないが、貫通ダメージは別。
１２００のダメージを受けた透矢のライフはいよいよ８００。
後がなくなってきたーー。

「更に！
トーヤが受けたダメージは、私の回復ポイントとなり、
加えて『吸血鬼の庭園』の効果により、また７００ポイントライフを回復しますわ」

合計１９００ポイントのライフ回復を果たしたエリザのライフは４９００。
透矢に大差を付けて、かつ確実に勝利へと近づいている。

現に次の『ジル・ド・レ』の攻撃が通ればやはりその瞬間、透矢の敗北でデュエルは決着する。

「さて・・・フィナーレかしら？

ーー『ジル・ド・レ』で『アリアス』を攻撃します！」

下された最後の攻撃。
『ジル・ド・レ』の姿が一瞬の内に消え去り、瞬きすら許さない動きで『アリアス』の背後へと回った。
そして『アリアス』両の二の腕を掴んでその身体を持ち上げると、『ジル・ド・レ』はその首筋目掛けて、口を開く。
前の悪夢を今、再び引き起こそうというのか、鋭く伸びた犬歯が『アリアス』の白い肌に食い込むーー。

「ーー待ったぁ！
墓地の『女帝の護封陣』を除外して、手札から『女帝』を公開することによって効果発動！」

「今度は墓地誘発、ですの！？」

「相手モンスターの攻撃を無効にする！」

手札の『女帝』を公開し、墓地から『女帝の護封陣』が取り除かれると、
正に『ジル・ド・レ』の牙が『アリアス』の首筋に食い込もうとしたところで、彼女の身体を白い光が包み込み、その行動を阻む。
そしてその身体全体が弾き飛ばされた『ジル・ド・レ』は、やむなくそのままエリザの場へと回帰した。

「ふぅ・・・さて、まだ何かあるか？！」

「・・・くす、ありませんわ。

ーー今の攻撃に耐えきるなんて、さすがですわね」

「へへ・・・言っただろ、俺は意外にしぶといってな！」

場の罠カード、手札誘発、墓地誘発を駆使して、エリザの攻撃を何とか凌いだ透矢。
ただでは終わらない、という透矢のしぶとさに、観客の反響もかなりのものだ。

同時に透矢は望みを繋げる。
次のターンに於ける強烈な反撃をエリザに決めるために。