炎魅子vs久遠 禍々しき魔神の恐怖！①　作：はにわ改

　
「ーーあたしの先攻、だね」

唐突な流れのまま、始まってしまった炎魅子と久遠のデュエル。
当然、心構えなどしていなかった久遠は、始まってなお集中出来ていない。
５枚の手札をぼんやりと眺めているだけだ。

「ーーよぉ、久遠？」

「え？
なぁに、炎魅子」

そこへ炎魅子が久遠に話しかける。

「刹那とは、最近どーなんだ？」

「はぁ？
どう・・・って、普通だけど？」

「いつも通り、仲良くやってんのか？」

「な、何よ。
何でそんな事を聞くの？」

「質問に、答えな！

ーー手札から魔法カード、『燃え盛る獄炎』を発動！」

急な、それも自分と姉の関係に対する質問に、久遠は少し心を乱す。
すると炎魅子は答えるよう急かしながらも、デュエルも進行させていく。

「ーー手札を１枚、墓地に送って発動！
デッキからレベル４以下の炎属性・ドラゴン族モンスターと、フィールド魔法『煉獄の地 クリムレイト』を手札に加えるぜ」

「（ど、どういうつもり・・・？）」

「あたしはデッキから『クリムレイト』と、『バーニング・エッグ』を手札に加える」

『燃え盛る獄炎』の効果により、炎魅子はコストの手札１枚を墓地へ送ると、
２枚のカードをデッキからサーチする。
だが久遠の意識は、炎魅子本人に集中しており、未だデュエルには向けられていない。

「んで、あたしは『バーニング・エッグ』を召喚！
このカードは召喚時に守備表示になるよ！」

そしてサーチしたモンスターを早速、召喚させた炎魅子。
彼女のフィールドに岩のような殻で出来た、上に向かって伸びる楕円形の巨大な『卵』が姿を現す。
所々がひび割れるように崩れており、そこから赤い炎が吹き出している。

レベルは４、守備力は２０００である。

「更にフィールド魔法、『煉獄の地 クリムレイト』を発動！」

そして対透矢戦でも使われたフィールド魔法が発動された。
大地が赤い熱を持った岩肌に変わり、両者の間を溶岩が川のように流動する。
辺りは暗くなり、飛び散る火の粉が延々と下から上に舞い上がり続けているのが目に見え、その視界も熱で揺らぐ。

「カードを２枚セットして、ターン・エンド。
さ、久遠！
遠慮は要らないよ、本気で掛かってきな！」

このフィールド魔法の使い手として慣れている炎魅子は、もちろん変わり果てた風景に動じたりはしない。
リバース・カードを２枚、場に出すとターンを終了。
気合いと共に久遠にターンを渡した。

「わ、私のターン、ドロー」

久遠の最初のターン、ドロー。
炎魅子の意図が分からないからか、ドローの動きに覇気がない。

「ーーで、どうなんだい？久遠。
刹那とは仲良くやれてんのか？」

「ーー！
デュ、デュエル中に何なのよ！
何でそんな事に答えなくちゃいけないの！」

「雑談さ、雑談！
仲間内でデュエルするときは、いつも話しながらやるじゃないか」

あっけらかんと言い放つ炎魅子。
仮にもデュエル指導を担当とするクリスや理事長・クロエの前であるが、その二人の教諭も炎魅子を咎めたりしない。

「な、何なのよ！
お姉さまとはいつもと変わらない！
炎魅子に聞かれるような事でもないでしょ！」

本来なら普通に答えればいい他愛ない内容だが、何故か気が昂る久遠。
炎魅子の表情が途端に険しくなる。

「ーーフィールド魔法、『クリムレイト』、効果発動！」

「ーー？！」

「互いのスタンバイフェイズにフィールド上の表側モンスター全てに、『バーニング・カウンター』を１つ置く」

ーー局面はスタンバイフェイズ。
炎魅子のフィールド魔法『クリムレイト』が早速発動し、場のモンスター、『バーニング・エッグ』に『バーニング・カウンター』が１つ乗せられた。
『バーニング・エッグ』の上に、人魂のような火の玉が１つ浮遊する。

「『バーニング・エッグ』のモンスター効果！
『バーニング・エッグ』に『バーニング・カウンター』が乗る度に、相手ライフに２００ポイントダメージを与える！」

『クリムレイト』の効果に連動して、『バーニング・エッグ』の効果も発動。
ひび割れから炎が噴き出し、真っ直ぐ久遠へと突き進む。
そして久遠にぶつかるの同時にそれは弾け、彼女にダメージを与える。

「く・・・っ！」

久遠のライフが減り、残り３８００。
たった２００のダメージだが、炎魅子は苛烈な『直接（バーン）ダメージ』による戦術を得意とする。
たかが２００と油断していると、気が付いた時には大火傷をしていたーーそんな話では済まされなくなる。

「おい、久遠。
あたしに嘘付いてんじゃねぇよ。
こちとらとっくにお見通しなんだよ」

「な、なんですって・・・？」

「次、嘘ついたらこんなもんじゃ済まさないぜ。

ーーオラ、目が覚めたんなら集中しな。
あたしをなめるんじゃないよ」

激しく挑発的な姿勢の炎魅子。
同時に久遠の中でも対抗心が湧き上がる。
まだ始まったばかりだが、既に互いの熱気は最高潮に達しつつあった。

始まる久遠のターン。
このアカデミア最強の名をほしいままにする神楽坂刹那と同様に、
ワシントン・アカデミアで最強の称号を持つ久遠。

彼女は炎魅子の『バーンダメージ』攻撃に、如何に対抗するのだろうかーー。
刹那の『混沌天使（カオス・エンゼル）』と相対を為す久遠のデッキが、その正体を見せる。