地影vsメリッサ プライドを賭けた決闘⑥　作：はにわ改

　
「ーー行きます、『地球巨人 ガイア・プレート』で『エミリア』を攻撃！」

地影の渾身の攻撃宣言。
『エミリア』は『空間歪曲場』のバリアによって護られているが、それが適用されるのはレベル７までのモンスターの攻撃のみ。
『ガイア・プレート』のレベルは８だから、問題なく『エミリア』を戦闘破壊出来る。

「『ガイア・プレート』の効果です！
このモンスターが戦闘するとき、ダメージステップの間、戦闘する相手モンスターの攻撃力・守備力を半分にします！
ーー『スーパー・プリューム』！」

『ガイア・プレート』の巨大な右腕が、エミリアの頭上で掌を掲げるようにすると、瞬間的に白い蒸気のようなものが『エミリア』の身体を包み込む。
これにより『エミリア』の攻守は半減し、その数値は２５０となる。

ただ元から両雄の能力の差は圧倒的であり、ダメージも与えられない事を考えても、この半減効果にあまり意味はない。

大事なのは『空間歪曲場』のバリアを突き破れるという事だ。

「ーー『プレート・テンペスト』！」

『ガイア・プレート』の振り上げた拳が『空間歪曲場』が作る緑色の障壁を叩きつけ、
それはガラスが割れたかのように砕け散る。

ーーだが中の『エミリア』にまでは攻撃の威力は届かなかった。

「Ｙｅａｒ！
『エミリア』が戦闘で破壊される場合、『空間歪曲場』が代わりに破壊されまーす！」

そう、正に二重による防御。
『空間歪曲場』は砕け散ったが、『エミリア』は護られた。
『ガイア・プレート』とのバトルは終了し、『エミリア』の攻守は再び元の５００に戻る。

「そして、『聖域』の効果により、除外しておいた『幻影光子剣（ミラージュ・セイバー）』が自動的に装備されるの！」

『遺失武装の聖域』は、『エミリア』の装備ユニオンが破壊された時に、その効果で除外しておいた『遺失武装』が新たに特殊召喚され、
そして『エミリア』の効果で自動的に装備される。
『エミリア』が新しく両手に装備したのは、剣の柄の部分のみであり、刀身は存在しないように見える。

「『幻影光子剣』を装備効果で、『エミリア』の攻撃力が３００ポイント、あーっぷ！」

『エミリア』の攻撃力が５００から８００に。
だが『エミリア』は守備表示。
よって現状は攻撃力を上げても仕方がないように思えた。

「攻撃力アップ・・・だけではないでしょう？」

「ふふん、さすがチカゲ！
『幻影光子剣』を装備した『エミリア』と戦闘を行った相手モンスターは、ダメージ計算後に除外！されちゃうよ？」

「（そして『エミリア』はユニオンモンスターを身代わりに生き残る・・・というわけですか）」

地影の場にはまだ『溶帝 ウルカニウス』がいるが、守備表示の『エミリア』を攻撃してもダメージを与えられないばかりか、『幻影光子剣』の効果で除外されてしまう。

「あ、そうそう！
『エミリア』に新しい『遺失武装』が装備されたから、『聖域』の効果でデッキから『遺失武装』を除外するね？
あたしは『遺失武装 Ｌ・Ｔ（ルナ・タブレット）・アーマー』を除外！」

「（ここで『ウルカニウス』で『エミリア』を攻撃すれば、『ウルカニウス』は除外されますが、『幻影光子剣』も破壊出来る。
そして『聖域』の特殊召喚効果はもう使えないーー）」

メリッサが新たな『遺失武装』を除外する中、地影は脳内で攻撃するか否かを天秤にかけていた。

「（いや・・・後続で追撃出来るならばともかく、今、『ウルカニウス』を失ってまで攻撃するのはリスクが高すぎるーー）」

地影はバトルにかける熱い思いを１度落ち着かせる。
いくらバトルに対する己の気持ちが強くても、それに流されたのでは暴走に過ぎない。
地影は一度、深呼吸をした。

「ーーメイン２。
カードを１枚セットします」

地影は先ほどまでとは違い、静かな調子でカードを伏せる。

「（自重した・・・か。
モンスターを失ってまで攻撃するのは、荒い、と見たか）」

シェリルは新しいデュエルをしつつ、横目で地影のデュエルを伺う。

「更に私は『ウルカニウス』をリリースして、『ウルカニウス』をアドバンス召喚します」

「Wｏｏ？
リリースしたモンスターと同じモンスターを召喚、でぇすか？」

『ウルカニウス』をリリースして、同じ『ウルカニウス』をアドバンス召喚した地影。
一見、意味のない行動に映るも、これは『ウルカニウス』の効果を使うためのもの。

「『ウルカニウス』がアドバンス召喚に成功した時、デッキの岩石族モンスターを墓地へ送り、その守備力の半分のダメージを与えます」

「Ｏｈ・・・そういうことでーすか」

「私は『美神の石板』を墓地へ送り、その守備力１７００の半分、８５０のダメージを与えます！」

『ウルカニウス』の効果により、発せられた高熱のエネルギーが、またもメリッサに襲いかかる。

「にゃ～・・・」

ライフが減らされ、残りは１２５０。
地影は確実にメリッサを追い詰めている。

「更に『美神の石板』の効果により、私はカードを１枚ドロー！
・・・ターン・エンドです」

『美神の石板』は墓地に送られると、カードを１枚ドローすることが出来る。
地影はそのカードを確認した後、ターンを終了させた。

「（ふん・・・効果ダメージと二段構えか。
しかも墓地コストに墓地で効果が発動するモンスターを用意するなど、いかにも無駄がないチカゲらしい作りだな）」

鼻を鳴らしながらも、心中で地影のデッキに感心するシェリル。

「（だが反面、守備（バック）はかなり甘くなっているな・・・。
メリッサは既に布石を完成させている。
もしメリッサが『あのカード』を使えばーー）」

当然だが、シェリルはメリッサのデッキを知っている。
そしてそのデッキが目指す最終地点も。

「（だが無理に勝つ必要はないんだ。
メリッサ・・・『見せすぎるなよ』ーー）」

メリッサを横目で訴えかけるように見据える。
だが地影とのデュエルに集中しているメリッサが、それに気付いた様子はない。

「ーーじゃ、私のターン、いきまーす！
ドローっ！」

そしてメリッサのターン。
まだ二巡目。
だがシェリルが心中で察していたように、急激な終幕が落とされようとしていた。