地影vsメリッサ プライドを賭けた決闘⑤　作：はにわ改

　
「ーー私のメインフェイズ！
リバース・カード、『岩投げアタック』を発動！」

ーー地影の２回目のターン。
地影は直前の自分のターンに伏せたカードの２枚目を発動させる。

「『岩投げアタック』は、デッキから岩石族モンスターを墓地へ送り、相手に５００ポイントのダメージを与えます！
私は『翡翠の鉱石』をデッキから墓地へ送ります！」

発動した『岩投げアタック』のカードから、巨大な岩石が上空に放たれ、弧を描くようにしながらその岩石はメリッサに向かって落下する。

「ーーアウチっ！」

また頭を手で抑えながら、ややしゃがみ気味にその岩を受けるメリッサ。
またライフが５００減り、残り２１００となる。

「オゥ・・・さっきから痛いですぅ、チカゲ！」

効果ダメージを駆使して、半分近くまで削った地影。
そんな彼女に頬を膨らませて訴えるメリッサ。
だが地影はこのデュエルが日米の親睦のためと知りながら、本気で戦う決意をしている。
そこには彼女のデュエリストとしての気持ちが込められている。

「更に、『翡翠の鉱石』の効果！
このカードが墓地へ送られた時、このカードよりレベルの低い岩石族モンスターを特殊召喚！
私は『活火鉱石』を特殊召喚！」

「にゃっ！？
ま、またそのカードでぇすかぁ？」

『翡翠の鉱石』の効果により、三度姿を見せる『活火鉱石』。
赤い熱を帯びた岩石が、炸裂の時を待ち、鎮座する。

「ーーそして！
墓地の『奇跡の鉱脈』の効果！
私の場の岩石族モンスターを破壊し、墓地のこのカードを手札に戻します。
当然、破壊するのはーー『活火鉱石』！」

地影は当然のように『活火鉱石』を起爆する術を備えている。
墓地から前のターンに使用した『奇跡の鉱脈』を手札に戻し、代わりに『活火鉱石』を破壊。
この瞬間、活火鉱石の内部にある熱エネルギーが解き放たれた。

「『活火鉱石』の効果、発動！
このカードが破壊された時、フィールド上の魔法・罠カードを破壊する！
標的はーー『遺失武装の聖域』！」

地影の目指すところ、それはあの厄介な永続魔法を破壊すること。
『活火鉱石』が砕ける事で炸裂した熱エネルギーが、メリッサのフィールド、『遺失武装の聖域』のカードに降りかかるーー。

「チッチッチッ～、あたしだって何度も同じ手は喰わないよー！
リバース・カード、『ハイパー・ジャミング』！」

「ーーカウンター罠カード・・・ですか」

「『遺失武装』または『エミリア』を対象とするカード効果を無効にして破壊するよ！」

『聖域』のカードを、『エミリア』と同じバリアが包み込み、降りかかる熱エネルギーを弾き飛ばす。

地影が厄介と感じる『聖域』はメリッサにとってすれば、重要なカード。
そう簡単には破壊させてはくれない。

「そして、あたしはデッキから『遺失武装』ユニオンモンスターを１枚墓地へ送るからね！」

「墓地へーー？」

「あたしは『遺失武装（ロスト・ウェポン） 八連装波動砲塔（タランチュラ）』を墓地へ送りまっす！」

カウンター罠カード『ハイパー・ジャミング』の追加効果として、『遺失武装』が１枚墓地へ送られる。
何気なく見過ごしてしまいそうな一コマだが、地影は少し気にしていた。

「・・・私のターン、続けます」

気にはしたものの、狙いが分からない上にアプローチもし辛い。
地影は構わず自分のターンを進めていく事にする。

「私は墓地の岩石族、『翡翠の鉱石』２体を除外してーー」

「除外ですか？！」

「『地球巨人 ガイア・プレート』を特殊召喚！」

墓地に落ちた『翡翠の鉱石』２体を除外して特殊召喚されるモンスター。
地が砕け、そこから黄土色の岩石が積み重なり、高さ四、五メートルにもなろうという巨人の姿が作り上げられる。
内部はマグマのような熱を持った物質が流動していて、岩々の隙間からそれが赤く煌めいている。

レベルは８、攻撃力は２８００である。

「わぉっ！
イッツァ、スーパー・ビッグサイズ・モンスター！ですね！」

「（やはりーーおかしい。
前の大会では、チカゲのデッキは守備を固めてじわじわと場を取りに来るデッキを使用していたはず。
こんな攻撃的なモンスターは一度もーー）」

最上級モンスターの迫力に歓喜するメリッサとは違い、シェリルはやはり冷めた表情で状況を捉えている。
そして地影のデッキの変化に気付きつつあった。

「（間違いない・・・チカゲはデッキを変えた。
しかもかなり使い込んでると見た）」

地影のデッキ。
地属性・岩石族というコンセプトに則っている事に違いはないが、かなり攻撃的なデッキに変わっている。
そして使い慣れた様子から見て、昨日今日変えたデッキではない、と読む。

「（守備型から攻撃型とは、大胆な変更をしたものだ。
新たなスタンスを開発するためか、あるいは大会を意識しての事かーー？）」

更にシェリルはそこにある地影の思いをも読み取ろうとするが、その予想は何れも的を外していた。

「（これが・・・私の気持ちに素直に従った、私の本当のデッキ。
つまり・・・戦って勝つデッキです！）」

地影はふと観客席のある方角を見る。
そこには刹那、透矢の姿があった。

「（ですが完全ではないーー推鼓はまだまだ必要。
だから私はこのデュエルをーーそして来る大会でのデュエルを通してーー更に成長してみせる！）」

地影が胸に秘めた熱い思いをたぎらせ、握った拳に力を込める。

「（そして私は必ず、刹那さんに追い付いて見せる！）」

地影の目指す地平、追いかける背中は常に刹那。
刹那に追い付く事が地影の今の生きる目標であり、そしてプライドでもある。

「ーーバトルフェイズです！」

地影の力の篭った宣言が成される。
彼女の気持ちに正直なデュエル、それに突き進むための一歩を強く踏み抜いたのだ。