透矢vsシェリル 剣vs銃の対決！⑥　作：はにわ改

　
ーーシェリルが有利に進めるこのデュエル。
ワシントン校の実技最高責任者のクリスは、このデュエルが始まるや厳しい視線でその流れを見据えていた。

「（ふむ・・・今のところ、光るものは見えないな。
厳しく見れば、ただシェリルに翻弄されているだけのようにも映る）」

透矢はシェリルに対して立ち向かってはいるが、悉く迎撃されている。
そして徐々に削られ続け、透矢のライフは半分を切った。
もしこのまま負けてしまうなら、いくら自慢の生徒が相手とはいえ、彼の能力を疑わざるを得ない。

「ーーフレッド」

「はい」

「君はどう思う？」

隣に立つアルフレッドに対して、短い言葉の問いかけ。
端から聞けば、何について聞かれてるのかわからないが、
アルフレッドはこのデュエルに対しての事だとすぐに把握した。

「ーーシェリルに見切られてますね。
今のところは」

「そうだな」

「ただ自分もシェリルとの対戦では勝率が悪いですからね
あまり人の事は言えませんが」

「ふふ、シェリルは私の自慢の愛弟子だからな。

ま、それはいいとしてーー正直なところ、彼の実力をどう思う？」

クリスがまた問いかける。
それは最初の質問が差すところと、同じ意味合いのものだった。
するとアルフレッドは少し考えた後で語り始めた。

「このまま・・・負けることはありませんよ」

「ほう、どうしてそう思う？」

「こんなこと言ったら叱られるかもしれませんが・・・自分の勘です」

「デュエリストの勘・・・というわけか」

「はい」

「ふむ・・・他の者が言うならともかく、お前が言うのだからな」

アルフレッドは透矢に対する評価を下げてはいないようだ。
それを知ったクリスは、もうひとつアルフレッドに問うことにする。

「お前、さっき彼と大きな舞台で戦いたい、と言ったな。
その気持ちは今でも変わらないか？」

「はい。
彼とは是非、世界大会で戦いたいと思います」

「・・・そうか。
確かに私とした事が、デュエルの途中で評価を下すのは、彼にも失礼というものだな」

アルフレッドがどうして彼に対してそこまでの気持ちを抱くのか、クリスには正直、図れないところがあった。
だがデュエルはまだ終わっていない。
アルフレッドの言葉の意味は、このデュエルが終わった時に分かるだろう、とクリスは思い直したのだった。





ーークリスが見つめるデュエル。
透矢がターンを終え、これからシェリルのターンが始まろうとしている。

『あなたのエンドフェイズに、“オート・リロード”の効果により、“ステップ・リオーネ”に弾丸を２つ補充する』

その前に永続罠カード、『オート・リロード』の効果を適用。
『ガトリング』を使い、弾を撃ち尽くしていた『ステップ・リオーネ』に弾丸を二発補充し、
更に『フォーミュラー・セイヴス』の効果で攻撃力が１４００にアップする。

『ーー私のターン、ドロー』

そうしてからシェリルのターン。
ドロー・カードを後ろから見た、久遠の表情が動くが、本人は真顔である。

『墓地の“ガトリング”、効果を発動！
場の“ステップ・リオーネ”をリリースし、墓地のこのカードを手札に加える！』

「く・・・あのカードはかなり厄介だな・・・っ！」

メインフェイズ、シェリルはすぐに動く。
墓地にある『ガトリング』を、これまで大いに活躍した『ステップ・リオーネ』を生け贄に、またもや手札に回帰させる。

透矢のターンにおいて二度に渡って使用され、その度に渾身の攻撃を迎撃されるという憂き目に遭わせてきた。

だが『ガトリング』を手札に戻したのは、もうひとつ意味が隠されていた。

『そして、墓地のガンナー・モンスター、“ステップ・リオーネ”と“スナイパー・ギャレット”をゲームから除外しーー』

そう、銃士モンスターを墓地へ送りたかったのだ。
彼女がこのターンにドローした、強力な銃士モンスターを特殊召喚するためにーー。

『“荒迅銃騎（バースト・トルーパー） バッファロー・ビル”を特殊召喚！』

そうして特殊召喚された、巨大な荒れ狂うバッファローに股がった大柄な男。
『スナイパー・ギャレット』のようにカウボーイ・ハットを深く被っていて、
もみ上げを顎まで伸ばし、無精髭が目立つ顔が葉巻をくわえながら、不敵な面構えを見せている。

荒野の砂に被れた衣服を纏い、両手には『ステップ・リオーネ』と同じタイプの拳銃が二挺。
ただしその銃身は銀色に輝いている。

レベルは８、攻撃力は２８００だ。

「攻撃力２８００・・・！
こいつがエース・モンスターか！」

『“バッファロー・ビル”の召喚に成功した時、“バレット・カウンター”を６個置く。
そして“フォーミュラー・セイヴス”の効果で攻撃力がアップする』

まず『バッファロー・ビル』にバレット・カウンターが６個乗せられ、『フォーミュラー・セイヴス』の効果でカウンター１つにつき１００ポイントアップ。
よって６００ポイント上がり、最終的な攻撃力は３４００となる。

『“ガンナーズ・ヘヴン”の効果により、バトルフェイズへ移行。
私はこのバトルフェイズで、“バッファロー・ビル”と“轟炎の剣”を指定し、バトルさせる』

「（ーー『轟炎の剣』の攻撃力は『ガトリング』で下げられて１８００・・・。
対して『バッファロー・ビル』の攻撃力は３４００かーー）」

透矢は無意識にこのまま攻撃が通った場合の、自分が受けるダメージを計算する。

「（戦闘ダメージは１６００ーーいや、待てよ。
『ガンナーズ・ヘヴン』の効果でモンスターを戦闘破壊されたプレイヤーは更に８００ダメージかーー」

その合計は２４００。
透矢のライフは１７００だから足りていない。
だがそれはあくまで最小のダメージである。
『バッファロー・ビル』の効果を視野に入れていない。

『ーー“バッファロー・ビル”の効果を発動！
このモンスターがバトルを行う時に、“バレット・カウンター”を２つ取り除く事で、このターンの戦闘でこのモンスターが相手に与える戦闘ダメージは倍となる』

「ば、倍だと！
ってことは・・・」

『カウンターを２つ取り除いたことで、“バッファロー・ビル”の攻撃力は３２００にダウン。
だがこの攻撃が通れば、ダメージは１４００の倍、２８００だ』

「加えて・・・『ガンナーズ・ヘヴン』の効果も含めるとーー３６００・・・っ？！」

『バッファロー・ビル』の効果により、何と透矢は自分のライフの倍以上ものダメージを受けてしまうという。
このままでは透矢が負けてしまうのは明白だ。

『“バッファロー・ビル”の攻撃！
ーー“Ｔwｉｎ Ａｓｓａｕｌt Ｂｅａｓt”！』

荒れ狂うバッファローを巧みに操り、『轟炎の剣』へと迫る『バッファロー・ビル』。
バッファローと二挺拳銃による二重、いや三重攻撃。

透矢はこのまま屈し、シェリルに無傷勝利を許してしまうのかーー。

ーーその時、透矢の指が動いたっ。