透矢vsシェリル 剣vs銃の対決！⑤　作：はにわ改

　
（ーーふん・・・透矢。
随分と苦労しているようだな）

（ラグナシア・・・ああ。
今のところ、突破口はまだ開けてないぜ・・・！）

このターン、透矢の最初のドローで加わったのは『女帝の聖杖』。
前のターンに『白銀の盾』の効果でデッキトップに予めサーチしておいたことによる必然である。
すると手札に加えてすぐ、『女帝』が透矢に『話しかけてくる』。

（なるほどーーこの間、戦った刹那という者に勝るとも劣らない女傑だな）

（感心してる場合じゃないぜ？
今日もいっちょ、頼むよ）

（良かろう。
我の力、存分に行使するがいい）

（そうさせてもらうぜって！）

他の者には聞こえない、『心』と『心』のやり取り。
『お姉さん』から預かったこのデッキのエースである『女帝』には魂があり、こうして透矢と意思を通じ合わせる事が出来る。
これもやはり超常的な力であり、透矢も最初は戸惑ったものだが、今ではすっかり慣れている。

「手札から魔法カード、『女帝の施し』を発動！
フィールドまたは手札に『女帝』があるとき、手札の『三騎士』モンスター１枚をコストに、デッキからカードを２枚引く！」

まず透矢は手札で発動の機会を待っていたその魔法カードを使用。
条件である『女帝』のカードは手札にあるため、シェリルに対して見せなくてはならない。

『（“女帝”ーー。
あのカードを彼が持つということは・・・やはり、“選ばれた者”なのかーー？）』

『女帝』のカードを見せられ、表情こそ動かさないものの、そんなことを考えながら、ふと観戦するクリスの方を見る。
するとその視線に気づいたクリスは、何の合図なのか１つ頷くと、シェリルも頷き返した。

「俺は『三騎士 轟炎の剣』を墓地に送り、２枚をドロー！」

コストに『轟炎の剣』を墓地へ送り、２枚のカードをドローした透矢。
手札は変わらず５枚のままだが、新しく引き入れた２枚を見て、透矢が強く頷く。

「魔法カード、『滾（たぎ）る轟火』を発動！
手札の『轟火の魂』を墓地に送る事で、デッキから『三騎士 轟炎の剣』を特殊召喚する！」

気合いを込めたその１枚。
１ターン目に『轟炎の剣』のサポート・カードとして使われ、手札に在った『轟火の魂』をコストに、『滾る轟火』が発動。
デッキから３枚目となる『轟炎の剣』を特殊召喚。
赤き炎の如く熱い魂。
その真なる力はこのデュエルでは開放されていないが、類いなき威力を誇る轟剣である。

レベルは４、攻撃力は１７００。

「『滾る轟火』の効果で、特殊召喚した『轟炎の剣』の攻撃力は、墓地の同名モンスター１枚につき、８００ポイントアップ！」

『ーーほう、８００とは中々の上昇値だ』

『滾る轟火』の追加効果で、『轟炎の剣』の攻撃力がアップ。
墓地には別の『轟炎の剣』が２枚。
故に１６００ポイントアップし、３３００となった。

「そして『ガンナーズ・ヘヴン』の効果が適用されてバトルフェイズ！
俺はこのバトルで、『轟炎の剣』と『ステップ・リオーネ』をバトルさせるぜ！」

『ガンナーズ・ヘヴン』の効果により、相手の場にモンスターがいる時にモンスターを召喚・特殊召喚した場合、即バトルフェイズとなる。
だが透矢はこの時ばかりは、この強制バトルに必勝の念を兆していた。

「今の『轟炎の剣』の攻撃力なら、『ステップ・リオーネ』を倒せる！
さっきの借りを返してやれ！」

『ステップ・リオーネ』の厄介な能力である、バレット・カウンター２つを代償に攻撃力を倍にする力。
現状バレット・カウンターは３つだから、問題なくその効果は発動出来る。
だがそうしたとしても、最終的な攻撃力は、倍の２４００に『フォーミュラー・セイヴス』の攻撃力アップの効果を加えても、２５００止まり。
攻撃力３３００の『轟炎の剣』ならば、問題なく倒せる。
更に、このバトルで『ステップ・リオーネ』を破壊すれば、『ガンナーズ・ヘヴン』の効果により８００ポイントのダメージも与えられる。

透矢、反撃の狼煙かーー。
『轟炎の剣』が大剣を振り上げながら上空へと飛び上がり、一刀両断に斬り裂こうとする。

『ーー悪いな。
場の“フォーミュラー・セイヴス”の効果を発動』

「ーー効果？！」

『ガンナー・モンスターへの攻撃対象を、このカードに変更する』

『ステップ・リオーネ』の前に、身代わりとなるように出た『フォーミュラー・セイヴス』。
両手を『轟炎の剣』に向けて突き出すと、透明な障壁が彼女の剣を阻む。
しかし『フォーミュラー・セイヴス』の守備力は２４００。
『轟炎の剣』の攻撃は防ぎ切れないようで、障壁に亀裂が走る。

『ーー速攻魔法、“ガトリング”！』

「あっ！！」

『“ステップ・リオーネ”のカウンター３つを取り除き、１つにつき５００ポイント、攻撃力を下げる！』

だが、『それ』があった。
『ステップ・リオーネ』は『フォーミュラー・セイヴス』が作ってくれたチャンスを活かし、その二挺拳銃が『轟炎の剣』を撃ち抜く。
まさか反撃に、『轟炎の剣』は弾き飛ばされるように地を転がった。

「ーー『ヴァルバレア』！」

『轟炎の剣』の真なる名前を呼ぶ透矢。
撃たれ、地を転がりながらも、何とか再び立ち上がった熱き剣士。
しかしその攻撃力は１８００にダウンしており、逆に反射ダメージを受ける結果となった。
すなわち、『フォーミュラー・セイヴス』の守備力との差、６００が透矢のライフから光れ、残すは１７００。

「くそ・・・っ！
ダメか！」

シェリルのモンスターを倒せなかったどころか、逆に反射ダメージまで負った透矢。
悔しそうにテーブルを叩く。

『（ふん・・・他愛ない）』

逆にシェリルは余裕の心持ち。
だが表情にそれが変化として表れる事はない。

ーー結局、透矢の渾身の一撃は空を切らされた。
『ガンナーズ・ヘヴン』の効果により、バトルフェイズは終了させられる。
ガンナー・モンスターの能力を活かした鉄壁の攻撃・防御。

その牙城は単純な手では切り崩せない。

「メイン２・・・俺は『白銀の盾』を守備表示に変更」

だが気力を落としたりはしない。
攻撃力を下げられて４００しかない『白銀の盾』を守備表示に変更。
今は耐えて、何とか次のチャンスを見出だすしかない。

「カードを１枚、セットしてターン終了」

ーー未だにシェリルは無傷。
アルフレッドの無傷勝利が再び透矢の脳裏を過る。

だがこうして徐々に差を広げられながらも、透矢の闘志は衰えない。
むしろ逆境をバネにして、何とか跳ね返してやる、という気持ちが強く息づき高まる。

だがシェリルもいよいよ、このデュエルを仕上げにかかろうとしているーー。
ワシントン校代表選手と、その指揮官・クリスが観戦する中、このまま不甲斐ない結果に終わるのか。

通訳を務める双子、
刹那は厳しい表情のままであり、
久遠は不敵な笑みを見せ続けていた。