透矢vsシェリル 剣vs銃の対決！④　作：はにわ改

　
『ーー私のターン、ドロー』

シェリルのターン、２巡目。
ドローして手札は４枚となる。

『（・・・ターン１のみとはいえ、戦闘破壊耐性モンスターを壁にするとは・・・なるほど、さすがに呑み込みが早いな）』

シェリルが透矢の方をじっと見ながら、そんな事を思う。

『（“ガンナーズ・ヘヴン”がある限り、基本バトルフェイズでの攻撃は１度のみ。
故に戦闘破壊耐性モンスターを置けば、攻めにくくなるーー）』

透矢の反応を見れば、『ガンナーズ・ヘヴン』適用下の中で戦うのは初めてだというのは見てとれる。
にも関わらず、『ステップ・リオーネ』の能力を逆手に取る動きを、彼はしてみせたのだ。

『（ふん・・・ツイてるかもな。
来日早々、練習とはいえ、デュエルを楽しめそうだ）』

小さく笑うシェリル。
母国のアカデミアでトップ・デュエリストに数えられた彼女にもまた、デュエリストとしての性はあった。

すなわち、強い相手を前にした時の高揚感である。

『ーー私は魔法カード、『渡り鳥の斡旋（ガンナーズ・ギルド）』を発動。
その効果によりデッキからレベル４以下のガンナー・モンスターを手札に加える』

「なるほど・・・要は『増援』みたいなものか」

『私はデッキからレベル３の“スナイパー・ギャレット”を手札に加え、そのまま攻撃表示で召喚』

「新しいガンナー・モンスターだな！？」

『渡り鳥の斡旋』によって加えたカードをそのまま召喚したシェリル。

擦りきれたカウボーイハットを深く被り顔が見えにくいが、口の回りに髭を生やし、頬がこけた三、四十代くらいの渋みがかかった男。
肩から下を黄土色の羽織りもので隠し、しゃがんだ姿勢で銃身が長いライフルを両手で構えている。

レベルは３、攻撃力は１０００。

『“スナイパー・ギャレット”が召喚に成功した時、バレット・カウンターを３つ置く』

そして手に持つライフルに素早く弾を込めると、銃口を透矢の方へ向けた。
スコープなどは取り付けられてはおらず、己の目と腕だけが相手に弾丸を撃ち込む手掛かりとなる。

『そして、フィールド魔法“ガンナーズ・ヘヴン”の効果により、バトルフェイズへ移行！』

「（相手の場のモンスターは、全員俺の『白銀の盾』より攻撃力が低い・・・）」

『ガンナーズ・ヘヴン』の効果により、有無を言わさぬ強制バトル。
だが、『ステップ・リオーネ』も『スナイパー・ギャレット』も攻撃力は『白銀の盾』より下。
また『ステップ・リオーネ』には現在カウンターが２個。
自身の攻撃時に１個消費するから、攻撃力を倍にする効果は使えない。

「（ってことは、あの新しく出したモンスターが曲者、ってか）」

『私は“ステップ・リオーネ”を選択し、“白銀の盾”とバトル！』

『ガンナーズ・ヘヴン』により、シェリルは自分と相手の場のモンスターを１体ずつ指定し、バトルを行う。

だが『ステップ・リオーネ』が攻撃するはずなのに、反応したのは『スナイパー・ギャレット』。
不意にライフルから放たれた弾丸が、『白銀の盾』の肩を撃ち抜く。
『白銀の盾』は不意の一撃に避けられず、痛みに苦悶の表情を見せる。

「な、何だ？！」

『“スナイパー・ギャレット”の効果。
自分のガンナー・モンスターがバトルを行う時、このカードの“バレット・カウンター”を１つ取り除くことで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を１０００ポイントダウンさせる』

「く・・・ってことはーー」

シェリルが言う通り、肩を撃ち抜かれた『白銀の盾』の攻撃力は４００にダウンしていた。
これで『スナイパー・ギャレット』の『バレット・カウンター』は残り２つ。

「大丈夫か、『アリアス』！」

大丈夫には見えないが、透矢が思わずそんな声を掛けてしまう。
『アリアス』とは『白銀の盾』の真なる名前。
『白銀の盾』は健気にも、透矢の声に頷き、苦痛に耐えながら迫るバトルに構えを見せる。

『そして“ステップ・リオーネ”の攻撃。
戦闘時に“バレット・カウンター”を１つ取り除く！』

ガンナー・モンスターの効果により、戦闘時にバレット・カウンターを１個取り除く。
だが『ステップ・リオーネ』にはまだカウンターが１個。
０にならない限り、弱さを露呈させる事はない。

『ーー“Ｄｏｕｂｌｅ Ｓｈｏｔ”！』

『ステップ・リオーネ』が軽快な動きで『白銀の盾』の目を泳がせ、隙を突いてその両手の二挺拳銃が火を噴く。
『白銀の盾』は負傷しながらも何とか盾で攻撃を凌ぐ。

「白銀の盾は１ターンに１度、戦闘で破壊されない！」

『だが、ダメージは受けてもらう』

「くそ・・・っ！」

戦闘ダメージは８００。
透矢のライフは２３００まで減らされた。

『“ガンナーズ・ヘヴン”により、バトルフェイズは終了。
メインフェイズ２に移行する』

これ以上の追撃がないのが、透矢にとってはある意味幸運か。
だが流れを掴んでいるのはやはりシェリルのようだーー。

『私は手札からモンスターを特殊召喚。
“フォーミュラー・セイヴス”を守備表示！』

「ーー？」

特殊召喚されたのは、修道女が着るような青いローブを羽織った少女。
首からは十字架の首飾りを下げている。

レベルは５、守備力は２４００。

『“フォーミュラー・セイヴス”は場にガンナー・モンスターが２体以上存在する時に特殊召喚出来る。
そしてこのカードが場にある限り、ガンナー・モンスターの攻撃力は、それぞれ自身のカウンター１個につき、攻撃力が１００ポイントアップする』

「何っ？！」

『フォーミュラー・セイヴス』が祈りを捧げるようにしていると、ガンナー・モンスターがその攻撃力を高める。
『ステップ・リオーネ』は１３００に、『スナイパー・ギャレット』は１２００に攻撃力が上昇した。

『それだけではない。
“フォーミュラー・セイヴス”が場にいる限り、ガンナー・モンスターはカウンターを取り除く事なく、戦闘を行う事が出来る』

「そ、それじゃ・・・ガンナー・モンスターのデメリットはほぼ皆無ーーっ！」

ガンナー・モンスターのある種のデメリット、カウンターを取り除かなければ攻撃出来ない能力。
それが無くなったら、ガンナー・モンスターの弱点は無くなってしまう。

『更に私は墓地の“ガトリング”の効果を発動。
場のガンナー・モンスター、“スナイパー・ギャレット”をリリースし、このカードを手札に戻す』

「が、『ガトリング』・・・あの厄介なカードがーー」

『スナイパー・ギャレット』が場から消えて、代わりに墓地の『ガトリング』を手札に戻したシェリル。
当然なのかもしれないが、慣れた淀みない動きである。

『場にカードを１枚セットし、ターンを終了。
“オート・リロード”の効果で“ステップ・リオーネ”に弾丸を補充』

シェリルのエンドフェイズ。
『ステップ・リオーネ』に２個の『バレット・カウンター』が補充されて、３個に。
そして『フォーミュラー・セイヴス』の効果で攻撃力が１５００にアップする。

「（すげぇな・・・これがトップ・デュエリストか。
隙がまるで見えてこねぇ・・・）」

これから自分のターン、というところで、透矢はシェリルが放つプレッシャーに圧される。

「（流石をノーダメで倒したアルフレッドも・・・シェリルもーー。
本当にすげぇデュエリストなんだな・・・）」

海を隔てた、世界の広さを感じさせられる透矢。
しかもきっとシェリルはまだ力の全てを見せたわけではあるまい。
それなのに透矢は１００ポイントのダメージを与えることすら、遠い苦難の道のように感じられた。

「へへ・・・マジで、気合いいれなくっちゃな・・・」

透矢は笑う。

このまま完封されるわけにはいかない。
何とか日本の代表として、あのシェリルを少しでも驚かせてやりたい、と。
練習とはいえ力を発揮できないまま負けるわけにはいかないのだ。

「俺の・・・ターン、ドロー！」

そしてカードをドローする透矢。
引いたカードは、『女帝の聖杖』。
彼のエースにして、フェイバリット・カードが遂にその手札に加わったのだ。