アルフレッドvs流石 竜の支配者！⑥　作：はにわ改

　
ーー攻撃力４０００の『次元竜神 エンパイア』の攻撃。
守備力２５００の『竜珠 “暗礁”』では防ぎ切れないばかりか、『エンパイア』の効果で貫通ダメージまで受けてしまう。

ーーだが当のアルフレッドは真顔。
『エンパイア』の攻撃をまるで恐れてはいないようだ。

「リバース・カード、オープン。
永続罠カード、『竜章鳳姿（りゅうしょうほうし）』！」

「ーー何っ？！」

アルフレッドは用意していた。
凌斗の攻撃に対する策を。

「場に『竜操姫』と『竜珠』モンスターが存在し、『竜珠』モンスターが攻撃対象となった時に発動。
その守備力に『竜操姫』の攻撃力を加えてダメージ計算を行う」

「守備力に・・・加える、だと？」

「つまり『竜珠 “暗礁”』の守備力２５００に、『フォルテ』の攻撃力１５００を加えてダメージ計算が行われる」

特殊な永続罠カード、『竜章鳳姿』。
その効果による結果、『竜珠 “暗礁”』の守備力は４０００となり、『エンパイア』の攻撃力に並んだ事になる。

「く・・・っ、互角だと？！」

『エンパイア』の攻撃は止まらず、空間の歪みが『竜珠』を呑み込もうとするが、『竜珠』の背後に『フォルテ』が立ち、薄く黒光りする障壁を張り巡らせると、その侵食を防ぎきってしまう。

結果、『竜珠“暗礁”』は破壊もされず、アルフレッドに対するダメージも０。
渾身の凌斗の攻撃も無為に終わった。

「ぐ・・・くそっ！」

悔しそうに握り拳に力を込める凌斗。
まさか防がれるとは思っていなかった事に加えて、何よりエース・モンスターの攻撃が無駄に終わってしまった事に対する悔しさだ。

「ーー先輩、として一つ忠告したい」

「な、なに・・・？」

そこへ、初めて自分から口を開いたアルフレッド。
凌斗は苛立ったままの気持ちで耳を傾ける。

「確かに君は『次元竜』というカテゴリーを使いこなせている。
それは確かな技術であり、君の優れた力だろう。
だがーー」

「何だ？！」

「君の攻撃はやや単調だ。
だからこちらも対策を立てやすい」

「単調・・・だと？！」

「搦め手のない、ただ攻撃力の高さに甘えた攻撃では、
『俺たちのクラス』では通らない」

「ぐ・・・！」

遥か高みから見下ろしてくるような、アルフレッドの自信に満ちたその言葉。
それは凌斗が抱くそれとは違い、一つ先を行く者のみが得られる領域から得られる、確かな『厚み』である。
凌斗は本能でそれを感じたのか、アルフレッドに何も言い返せない。

「・・・さて、『竜章鳳姿』には追加効果がある。
この効果を受けた『竜珠』が戦闘で破壊されなかった時、２つの効果から１つを選択して発動出来る」

「追加効果・・・」

「その１つは、攻撃モンスターを破壊する、だが・・・『エンパイア』は効果で破壊されないのだったな。
ならばもう一つ、デッキから１枚ドローする、を発動しよう」

『竜章鳳姿』の追加効果により、デッキからカードをドローするアルフレッド。
攻撃を防がれただけでなく、更にアドバンテージまで与えてしまった凌斗。
『してやられた』感が彼の気持ちに深く残る。

「お、俺はカードを１枚セットして、ターンを終了！」

凌斗はやり場のないもどかしさを抱えたまま、ターンを終了させる。
だが同時に次のターンで、何とかあの高い鼻を明かしてやろうと強くその胸中に誓っていた。

ーーその次のターンがくれば、の話だが。





ーー観客席。

「ーーあ～、攻守互角ってか。
流石のやつ、惜しかったなー」

今の凌斗のターンの攻防を見ていた透矢が、思わず後ろに仰け反りながらそんな声を漏らした。

「ま、まだまだこれから、ってとこだろ。
取り敢えず凌斗にはあの『エンパイア』がいるんだ。
アルフレッドがこいつをどう攻略するか、見所、ってところだな」

周りに語りかけるようにそう口にした透矢。
するとそんな語りが終わるや否やというところで、久遠が吹き出すように笑いだした。

「くすくす・・・透矢くんったら、意外と悠長なんだ」

「な、何だよ、久遠」

「ま、フレッドの事をまだ知らないから無理もないかな。
・・・フレッドはそんな甘いデュエリストじゃなくてよ？」

透矢と並んで座る刹那、その後ろから間に割り込むように顔を出してそう語りつつ、ほくそ笑む久遠。

「甘いデュエリストじゃない・・・って？」

「くすくす・・・流石、くんだったかしら？
多分、もう彼のターンは回らないってこと」

「え？！
流石が次のアルフレッドのターンでやられちまうって事か？」

「ま、そういうことかな」

「ま、まさか、そんな・・・なぁ？」

にわかには信じられない、と透矢が類を求めるように周りを見るが、
刹那、炎魅子、地影は揃って厳しい表情。
彼女たちは去年の大会に参加して、アルフレッドのデュエルを知る者。
その３人の誰も透矢に同意してはくれない。
透矢は真希、千鶴と顔を見合わせる。

「ーー透矢くん？
フレッドはワシントン・アカデミアのトップ・デュエリストよ？
その実力を甘く見たら・・・大火傷するわ」

最後に久遠がそう締めくくる。
ワシントン・アカデミアのトップ・デュエリストのアルフレッドの実力。
それが今から垣間見られるということか。

「お、お兄ちゃん・・・流石くん、本当に次のターンで負けちゃうのかな？」

千鶴が不安そうにそう訊いてくるが、透矢は久遠の不思議な説得力に押されて、否定も肯定も出来なかった。

ーーそんな一同が見守る中、アルフレッドの最後のターンが始まる。