アルフレッドvs流石 竜の支配者！　作：はにわ改

　
ーーそして時は来た。
他の生徒たちのデュエル試験を終わるのを待った後、特設のデュエル場を立ち上げてその両岸に二人のデュエリストが立つ。

１人はこのアカデミアのオベリスク・ブルー１年、流石凌斗。
学業・実技共に優秀な成績を修めていて、将来性が有望視される生徒の１人。

対するはアメリカより来日した、ワシントン・アカデミアの実力者、アルフレッド。
ここまではこのアカデミアのどの生徒とも実戦は行っておらず、その実力は未だ未知数。
しかし遂にそのベールが剥がされ、隠された力が明らかになろうとしている。

ーー本来、自分の試験が終わってしまえば帰宅を急ぐ者も少なくはないが、今日はこの注目の対戦を見届けようと残る生徒たちが多い。

そしてこれは秘密ではあるが、このデュエルは理事長・クロエが特別に組んだもの。
故にその他の生徒たちがデュエルを終えてから、わざわざ特設デュエル場を立ち上げての対決とした。
だがあくまでこれは実技試験、という扱いである。

ーー多くの生徒たちが見守るなか、特設デュエル場に上がり、互いに戦う者の姿を確認する両雄。

「ーーワシントン・アカデミアのトップデュエリストの実力、たっぷり見せてもらうぜ？」

アルフレッドは一応、凌斗の一つ年上になるが、口調・態度共に強気。
透矢に二度敗北し、１度は挫折を味合わされている彼だが、
それでも自分の力に対する自信は失っていない。
だからワシントン・アカデミアのトップデュエリスト、と聞いても決して恐れたりへりくだったりはしないのである。

「ーー君は、このアカデミアの１年で、トップの実力らしいな」

「ああ！
だからどうした？
ひょっとして１年の俺じゃあ不足かー？」

「いや・・・実力者と立ち合えて、嬉しく思ってる。
今日はよろしく頼むよ」

「（・・・ちぇ。
なんだか、先輩とデュエルした時を思い出すな）」

凌斗は少し挑発するような口調で対しているが、当のアルフレッドはポーカーフェイスを崩さず、まるで動じていない。
透矢と戦ったときも、透矢はこちらの挑発にはまるで乗ってこず、むしろその頃はうざったく感じるほど友好的な態度を取られたものだ。

そういう意味ではアルフレッドと透矢は違う人間だが、本質的なところに既視感を感じたようである。

「Ｈｅｙ、リョート？
今日は、期待、してますデスよ！」

「は、はい、クロエ先生！
勝つつもりで、全力全開で行きます！」

クロエの声援に、嬉しそうに応える凌斗。
試験官として付いたクロエが、まさかこのアカデミアの理事長で、このデュエルを組んだ張本人だとは知る由もない。

「ソレでは、互いに、Ｄｕｅｌ，Ｄｉｓｋを構えて・・・Ｐｒｅａｓｅ，ｐｒｅｐａｒｅ（準備してください）！」

クロエの声が掛かり、互いにデッキをディスクに納めると、左腕に取り付けたそれを突き出すようにする。

「Ａｒｅ ｙｏｕ ｒｅａｄｙ・・・？
ソレでは、Ｄｕｅｌ、sｔａｒｔ！」

そしてクロエによって上げられた開幕の狼煙。
日米のアカデミア生徒による対決がいよいよ始まった。

「ーーよし、先攻は俺だ！」

先攻を握るは凌斗。
デッキから５枚のカードをドローし、最初の手札とする。

「俺はまず、『次元竜（アサルト・ドラグーン）レギア』を攻撃表示で召喚！」

召喚されたのは羽を生やした蛇のような細長い体躯を持つ、黒いシルエットのモンスター。
顔の部分、目だけが黄色い光を発していて、何とも奇怪なモンスターであるが、
これが透矢との戦いでも使われた凌斗の操る『次元竜』モンスター。

レベルは３で、攻撃力は１２００と現状は控えめな能力値である。

「更にカードを２枚セットして、ターンを終了する！」

そして２枚のリバース・カード。
１ターン目は当然ながらバトルは行えないため、凌斗はそのままターンを終わらせる。

一見、何気ない平凡な序盤だが、凌斗は既に自らの得意の布陣を作り上げていた。
『次元』といえば、このデュエル・モンスターズでは『除外』を差す言葉でもある。
当初、カードが『ゲームから除外』されれば二度と利用する術のない、本当の意味での『除外』を差していたが、
今ではそれが戦術カテゴリーの１つとなってきている。

そして凌斗はその『除外』戦術を操るデッキを持つ生徒の１人なのだ。
フィールドに出された『レギア』は互いが除外しているモンスターの数に乗じて攻撃力を上げる能力を持っている。

「（俺の手札には既に『エンパイア』が来ている・・・っ！
ここは速攻でケリを付けて、俺のデッキの力をみんなに見せつけてやる！）」

凌斗の手札には既にエース・モンスターが握られている。
『除外』というカテゴリーの中で、無限に攻撃力を高める能力を持ち、透矢を追い詰めたカード。
高い攻撃力の代わりに低い守備力という弱点さえ突かれなければ、透矢を倒していただろうモンスターだ。

「（見てろ・・・先輩！
先輩にリベンジする前に、この留学生を倒して、度肝抜かせてやるからな！）」

ふと透矢がいるあたりを見ながら、不敵な笑みを見せる凌斗。
しかしそんな凌斗の目には、修羅場と化した渦中をさ迷う透矢の姿が映り、
ちゃんと自分の活躍を見てくれているのだろうか、と不安になるのだった。

「・・・俺の、ターン。
ドロー」

余所見をしている凌斗を気にも留めず、静かな調子でカードをドローしたアルフレッド。

果たしてどんな戦術を見せるのか。
既に布陣が整いつつある凌斗に対抗できるのかーー。

皆が注目するアルフレッドのターンが始まったーー。