光と闇 会長・刹那の混沌を操る力！④　作：はにわ

　
ーー透矢と言葉を交わしていたため、ターンが中断していた刹那。
しかし『混沌の波動』によって『準備が終わった』と口にしていた刹那。
その意味がこれから明かされる。

「ーー『混沌天使（カオス・エンゼル） リニア』のモンスター効果を発動！
墓地の光属性、または闇属性モンスターを除外することで、除外した属性モンスターにより異なる効果を発動！」

「除外した属性によって・・・？」

「私は墓地から『混沌天使 サミュエル』を除外！
このカードは光属性だけど、『混沌天使』の共有効果により、闇属性モンスターとして除外！」

『混沌天使（カオス・エンゼル）』の共有効果。
それは元々の属性は光でありながら、闇属性としても扱う効果。
つまり混沌天使の種族は、多くのサポートを受けられるだけでなく、自身もサポート・カードの１つとなっているのだ。

「闇属性モンスターを除外した時の効果はーー墓地からレベル４以下の混沌天使モンスターを特殊召喚！
蘇れ、『混沌天使 ステルヴィア』！」

リニアの効果が発動し、墓地から新たな混沌天使が姿を現す。
リニアと比べて二頭身ほど背の高い女性型の姿ではあるが、やはりその背中にはリニアと同じように白と黒の翼が生えている。

レベルは４、攻撃力は１７００だ。

「混沌天使が２体・・・か。
そいつも同じような効果を持ってるわけか？」

「そうね。
でも、リニアの効果で復活した混沌天使は効果が無効になって、攻撃も出来ないの」

「効果が無効で・・・攻撃も出来ない？
じゃ何のためにーーって、そうか！」

「ふふ、そう。
Ｔ・Ｆモンスターの使い手の透矢くんなら知ってるよね？
Ｔ・Ｆ召喚と双璧を為すあの『召喚』をーー」

（刹那の場にはチューナー・モンスターのリニアと、チューナーじゃないステルヴィアーー）

チューナー・モンスターとは特別な部類に属するモンスターであり、刹那の言うある『召喚』に欠かせない必須モンスターである。

（刹那はーー『シンクロ召喚』の使い手か！）

ーー『シンクロ召喚』

チューナー・モンスターを含む２体以上のモンスターを掛け合わせ、そのモンスターのレベルを足し合わせる事で強力なモンスターを生み出すという、革命的な戦術。

そこから生み出される『シンクロ・モンスター』は驚異の能力を持ち、それは透矢が操るＴ・Ｆモンスターと匹敵するか、それ以上の力を持つと言う。

「あ、でもまだよ。
リニアの効果を更に発動！
今度は墓地の『混沌天使 ソニア』を光属性モンスターとして除外。
それにより、リニアのレベルを『４』にする」

墓地に残っていた最後の混沌天使を、再びリニアの効果のコストとして除外することで、もう１つの効果が発動。
リニアのレベルが２から４になる。

「レベルが上がったーー」

「そう。
これで本当に準備は完了よ」

（来るかーーっ！）

「先に見せてあげる。
私が操る『シンクロ召喚』を！」

刹那がはっきりと宣言した。
刹那のデッキから繰り出される力の１つが今、明かされる。

「混沌天使 ステルヴィアに混沌天使 リニアを『チューニング』！」

右手をまっすぐ天に向けて振り上げながら更にそう口にすると、まずリニアが風景に溶け込むようにその姿を消すや、黒い光を放つ球体へと姿を変えた。
一方、目を閉じて上を見上げるようにしたステルヴィアはそのまま上空へと舞い上がると、その全身が目映い光を発するようになる。

「ーー相反する力が虚無への入り口を作り出すーー。
特異点の彼方に封ぜられし天使たちよーー今、ここに降臨せよ！」

光放つステルヴィアに、黒い球体へと姿を変えたリニアが飛来して、その身体に中心に飲み込まれる。
すると二つの相反する力が互いの存在を懸けて衝突し合いーーそして最後は互いに弾け飛ぶ。
その瞬間、鼓膜を突き破るような爆発音と共に、夥しい光と闇のエネルギーの波が解き放たれた。

「ーーシンクロ召喚！
『混沌天使（カオス・エンゼル） ミカエル』！」

開かれた混沌の扉。
そこから姿を現すのは、かつて『四大天使』の一人に数えられながら、虚無の世界へと堕ちた者。
元々備わった光の力に、闇を交えた彼女の恐るべき力。

炎のような揺らめきを帯びた、光と闇の粒子たちが、透矢に向かって吹き荒れていた。