２ｎｄデュエル 流石再び！次元竜の侵攻！　作：はにわ

　
ーー昼休み。
透矢は学食堂で、真希と千鶴、そして仲良くなった友達と共にお昼ご飯を食べていた。
透矢がこのアカデミアにやってきて一ヶ月ほど。
自分から友達を作るのが得意な透矢は男女問わずどんどん輪を広げていた。
特に幼なじみの真希、そして千鶴とはこうして毎日、昼食を共にしている。

「ーー今日は実技試験だな！」

透矢が嬉しそうに切り出す。
その言葉に透矢同様に笑顔で応える者も居れば、憂鬱そうに息を吐く者もいる。

「実技試験かぁ・・・最近引き運が悪いから自信ないぜ」

「俺、実技試験三連敗中・・・今日負けたら泥沼、って感じだな」

「そう言えば遊戦名はここに来て、まだ一回も負けてないんだよな？
マジ、なんかコツがあんなら教えてくれよ」

実技試験は毎週金曜日、本来昼休み後の５限、６時限目を使って行われる。
その内容は生徒同士でデュエルを行い、その勝敗・内容を教諭が評価し、成績に反映する。
基本的にはレッド・イエロー・ブルーの三クラスに別れて行われるが、合同で行われることもある。
また、デッキ構築の際に何らかの制限や特殊なルールが設けられることもあり、その時その時、柔軟に応じる必要はある。

透矢の周りの生徒たちの何人かは調子が悪いらしく、彼に助言を求めてくる。

「やっぱり、自分のデッキを信じること、かな」

「いや、そんな漠然とした答えじゃなくて、もっと具体的にーー」

「だってデッキを信じなきゃ応えてくれないしな？
デッキとの絆なくして、ドローを良くすることなんて出来ないぜ？」

いわゆる透矢の持論、信じれば救われる、という考えだが、
不意に真希の拳が彼の頭を小突いた。

「なーに、カッコつけてんのよ」

「痛て！
んだよ、真希。
じゃお前はどうしたらいいと思うんだよ」

「自分の戦法、コンボの研究、復習。
んで、やっぱり普段からデュエルを重ねて勘を失わないこと、かな」

「ふむ・・・」

「あと自分の弱点を把握して、どれだけカバー出来るか！
それを気にするだけでもだいぶ変わってくるんじゃないかな」

透矢とは違い、具体性がある。
また真希はブルーの生徒、というだけあって言葉の重みが違う。

「わ、私・・・お兄ちゃんとお姉ちゃんが練習してくれたお陰で・・・この間、やっと初勝利出来たの」

千鶴が遠慮がちに口を開く。
千鶴は入学以来全く勝てなかったが、最近めでたく初勝利を上げたという。
顔は伏せているが、その表情はとても嬉しそうだ。

「千鶴ちゃんのデッキ、自分のペースに持ち込んじゃえば、ひっくり返すのは簡単じゃないよ。
逆に言えば序盤が大事、ってことね」

「そうそう、俺もこの間練習で、酷い目に・・・ってあぁあ！！」

真希が千鶴のデッキを１枚１枚めくってカードを確認していると、不意に透矢が声を上げた。

「な、何よ、透矢・・・いきなり」

「そ、そのカード！」

「このカード？」

真希がそのカードをひょいと取り上げる。

「千鶴、そのカード、俺のカードと交換してくれ！」

「はぁ？何言ってんのよ。
このカード、かなりのレアカードよ？」

「うん・・・この前、パックを買った時に当たったの」

「いいなぁ、そのカード、俺のデッキの弱点補強に欲しかったんだよー」

「そうなんだ・・・」

千鶴がたまたまデッキにいれていたそのカードは、透矢が喉から手が出るほど欲しいカードのようだ。

「無茶言ったらダメよ、透矢。
千鶴ちゃん、困ってるじゃない」

「だよな・・・くそ、俺も頑張って当ててーー」

「ううん・・・いいよ、お兄ちゃんにあげる」

真希が透矢を諌めるが、千鶴は意外にもあっさりそのカードを透矢に差し出した。

「ちょ、千鶴ちゃん？」

「マジか、千鶴！」

「うん・・・お兄ちゃん、いつも私の練習相手になってくれてるから、そのお礼だよ」

千鶴が差し出したカードを受け取り、子供のように喜ぶ透矢。
その姿を見て千鶴が嬉しそうに笑い、その千鶴を見た真希が安心したように笑う。

「ちょっと、透矢！
あんたも千鶴ちゃんに何かあげなさいよ」

「おうおう、何でも持ってけ」

「言ったわね？
んじゃ、んーと千鶴ちゃんのデッキに活かせそうなカードは・・・これとこれと・・・」

真希が透矢のデッキを取り上げると、そこから次々にカードを引き抜いていく。

「あぁ、そ、それは駄目だ！
そのカードが無くなったら俺のデッキが機能しなくなるだろ！」

「何よ、あんただってそんな良いカードを貰ったんだから！」

「ダメなものはダメだ、この野郎、返しやがれ！」

「きゃーっ、変態！
へんなところ触んな！」

「おー、おー、始まったよ！
遊戦名と千歳の夫婦漫才だぜ！」

喧嘩を始めた二人を面白そうに眺める、周りの人間。
もはやこのやり取りは彼らを知る者たちにすれば名物となっていたのだった。
千歳も楽しそうに微笑みながらそれを見守っていたのだった。