熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑭　作：はにわ

　
ーー地を裂くヴァルバレアの一撃。
炎を噴き上げながら、地の下から突き上げる凄まじい威力の斬撃が、クリムレイズ・シードへと向かう。

その攻撃力３５００。
この攻撃が通れば、ヴァルバレアの効果と合わせて炎魅子は瀕死に近いダメージを受けることになる。

果たしてーー。

「ーー通すよ」

かくして攻撃は通った。
ヴァルバレアの放った一撃は巨大なクリムレイズ・シードの身体を、中央から真っ二つに切り裂いたのである。

そして最期の叫びを上げる両断された身体は赤き炎に包まれた。
途方もない超高温なのか、燃え盛る炎の中で、クリムレイズ・シードの身体は瞬時に消し炭と化した。

攻撃力の差は２３００。
その数値が炎魅子のライフから削られて、残り１３００となる。

「と、通った・・・？」

「へへ・・・流石の一撃だねぇ」

「ヴァ、ヴァルバレアの効果です！
破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを与えます！」

信じられない、という透矢とは裏腹に、変わらず余裕を失わない炎魅子。
だが透矢がすかさずヴァルバレアの追加効果を口にすると、炎魅子の真下から炎が噴き出した。

「ぁああああっ！」

これには炎魅子も思わず悲鳴を上げた。
これもヴァルバレアの斬撃の余波か。

クリムレイズ・シードの攻撃力１２００がダメージとなり、炎魅子のライフはわずか１００。
首の皮１枚残した、というところか。

「あ、あはは・・・効いたよ、遊戦名。
久しぶりに熱い一発をもらったねぇ」

だが、炎から解放された炎魅子はなお笑っていた。
その笑みの意味は？
今、その答えが明かされる。

「ーーこの瞬間！
墓地へ送られたクリムレイズ・シードが効果を発動！」

「効果？！」

「遊戦名！
墓地から２体、モンスターを選んで特殊召喚しな！
それをコストに、クリムレイズ・シードは復活するよ！」

「ふ、復活ーー？！」

「そうさ。
それがクリムレイズ・シードの最後の能力！
『不死』の力さ！」

クリムレイズ・シードの最後の能力。
それはフィールドから墓地へ送られた際に、何度でも発動する『不死』の能力。
その活力の源はーー。

「俺は・・・『影縫いの微刃』２体を復活！」

「オッケー」

透矢が墓地から選んだモンスター２体。
ヴァルバレアとアリアスの維持を考えて、関係のない影縫いの微刃を選ぶ。

するとフィールドに復活した影縫いの微刃は、なんと全身を根のような触手に捕らわれていたのだ。

「こ、これは・・・」

「その二人は『養分』なのさ。
クリムレイズ・シードにとってのね」

身体を締め付けられ苦しそうにもがく影縫いの微刃。
そして炎魅子の場では、再び『不死』の龍が目覚めようとしていた。

「ーー蘇れ、クリムレイズ・シード！」

熱を帯びた大地を突き破る無数の触手。
恐るべき生命力を持つ龍が再び炎魅子の場にその姿を現す。
もちろん攻撃力は元に戻り、３５００となる。

「ーークリムレイズ・シードの効果発動！
特殊召喚成功時に、相手フィールド上のモンスターを全て破壊！
代わりに『煉華トークン』を特殊召喚する！」

「く・・・っ！」

そして効果が連動。
クリムレイズ・シードの登場と共に 放たれる凶悪なる一撃。

まず触手に捕らわれていた影縫いの微刃二人が、地面からの更なる触手にその身体を貫かれ、復活して間もなく再び倒されてしまう。
代わりに触手を茎として高く咲き乱れる『炎の花』。

「ヴァルバレアは轟炎の剣をデッキに戻して破壊を無効にします！」

ヴァルバレアはＴ・Ｆモンスター共有の破壊耐性を用いて逃れた。
ヴァルバレアの周りに透明な障壁が張られ、触手をはね除ける。
そしてアリアスは自身の効果でやはり破壊されない。

ーーだが。

「女帝の聖杖がーーっ！」

最後の一人、女帝の聖杖にも触手が迫っていた。
彼女には破壊耐性はなく、この一撃からは逃れられない。

『ーー案ずるな、透矢。
“これでいいのだ”
私はただ倒されるわけではない。
“勝つために”倒されるのだ』

「女帝の聖杖！」

『我々戦士は、マスターと認めた者を勝利へと導くため、剣となり、盾となり、魂を捧げる。
我が魂の“力”、受けとるのだ、透矢！』

そう言い残した女帝の聖杖。
構えた盾は突き破られ、彼女もまた犠牲となった。
代わりに咲き乱れる『煉華トークン』。
だが透矢は確かに女帝の最期の言葉を受け取っていた。

「ーーそしてこの瞬間、リバース・カード！
罠カード、『相見えし宿敵』！」

そしてこのタイミングで炎魅子のリバース・カードが発動した。

「相手ターン中に自分がモンスターを特殊召喚している場合、そのバトルフェイズに発動！
相手の攻撃表示モンスターは、特殊召喚したそのモンスターを攻撃しなくてはならない！」

クリムレイズ・シードの復活効果を加味しての罠カード。
つまりこのバトルフェイズ中、透矢はまだアリアスの攻撃を残しているが、
それは自動的にクリムレイズ・シードへの攻撃となる。

しかし双方の攻撃力の差は歴然。
攻撃すれば返り討ちとなり、そのダメージで透矢は負ける。

（ーーなんてね。
無意味なお膳立てだったかもねぇ）

炎魅子が小さく笑う。
それは勝利への確信か、それともーー？