３ｒｄデュエル 秀才・地影の堅牢デッキ④　作：はにわ

　
「ーーでは私のターン、ドロー！」

後攻・地影の２ターン目。
ドローして、手札は２枚。
直ぐ様、地影は最初に手にしていた方の１枚を、魔法・罠ゾーンにセットした。

「手札から魔法カード発動！
『奇跡の鉱脈』！」

「何だ！？」

「このカードは私の場の岩石族モンスターを破壊して発動。
デッキからカードを２枚、ドローします。
私は場の守備力が高い方の『守護者（ガーゴイル）の石板』を破壊！」

地影がそう宣言するや、守備力が２１００ある守護者の石板が砕け散る。
その時、再び地影の背後の巨大な石板に『亀裂』が走った。

「カードを２枚、ドロー」

そして２枚引いた地影の手札はこれで３枚。

「リバース・カードをオープン、します。
永続罠カード『土石流』です」

「土石流・・・？」

「このカードは私のメインフェイズ時のみ発動出来るカードです。
デッキの上から３枚を墓地に送り、その中に『岩石族』モンスターが含まれている場合、１枚につき３００ポイントのダメージを与えます」

永続罠カード・『土石流』。
その効果によって、地影はデッキの上から３枚を引いて一瞥したあと、透矢にも見せる。

「墓地に送られる『岩石族』モンスターは２枚。
よって６００ポイントダメージです！」

透矢もそれを確認後、引いた３枚が墓地へ送られた。
すると『土石流』カードから横一直線に吹き出した泥混じりの岩つぶてが、透矢の身体を叩きつける。

「うお・・・っ！」

ソリッドビジョンによる演出に過ぎないとはいえ、まるで本物のような臨場感に、透矢は腕で頭をガードし身を屈める。
これにより透矢のライフは３４００まで減らされた。

「そして、今の効果で墓地に送られた岩石族モンスターの内、１枚は『美神の石板』。
このカードは墓地へ送られた時に、カードを１枚引くことが出来ます」

ダメージだけでなく、ドロー効果も甘味した今の戦術。
これで地影の手札は４枚となった。

「カードを３枚セットします」

４枚の内、３枚をセットする地影。
これで地影の魔法・罠カードゾーンは埋め尽くされた。
３枚のリバースカードの存在。
正体は見えずとも、その存在そのものが相手の動きを牽制させる。

「エンドフェイズ。
奇跡の鉱脈によって破壊された守護者の石板が攻守を入れ替えて復活します」

「あれ、バトルは行わないのか？」

「奇跡の鉱脈を発動したターン、私はバトルを行えません。
・・・ターンを終了します」

墓地から突き出た、奇跡の鉱脈によって破壊された守護者の石板。
するとやはりその石板が砕け散り、そこから黒い悪魔が姿を見せる。
攻守が入れ替わって攻撃力が２１００。
前の透矢のターンに現れた方と合わせて、２枚の悪魔が透矢の前に立ちはだかる。

（まずはこの壁を突破しないと、な・・・）

守護者の石板は２体同時に葬らなければ復活し続ける。
回った透矢のターンでそれを為したいところだが、気になるのは３枚のリバースカード。
これを潜り抜けながらそれを為すのは、きっと容易ではないのだろう。
何故ならば地影はこのアカデミアの四天王の一人ーー。
彼女の織り成す戦略が簡単に切り崩せるものではないはずだ。




「ーー始まったな、朝霧先輩の戦略が・・・」

観客席で凌斗が小さく呟く。
するとその声が聞こえたか、真希が呼応するように頷く。

「あの２体の守護者を壁にし、多めに詰まれた罠カードで更にそれを固めてくる・・・」

真希がそう口にすると、千鶴はただ不安そうにデュエルする透矢を見つめている。

「俺は最後まであの壁を突破できずに・・・徐々に体力を奪われ、そして負けたーー」

「あんただけじゃない。
過去に挑んだ生徒たちは皆、あの布陣を崩せずに負けたのよ」

「ああ・・・じわじわライフを削られてくってのに、こちらが何も出来ないもどかしさ・・・あれは悪夢だったぜ」

離れた位置にいるが、まるでお互いに会話するように真希と凌斗が話す。

（さぁて、先輩？
せいぜい気をつけてくれよな。
迂闊に動くと、朝霧先輩の罠にハマるぜ・・・？）

凌斗は嫌らしく笑いながら、透矢に語りかけるように呟く。
だがその凌斗の瞳はどこか期待の眼差しを秘めてもいた。
自分が崩せなかった布陣を、透矢なら切り崩してくれるーーそんな期待を。