ｖｓＤ・Ｋ！ １ターンキルの恐怖！④　作：はにわ

　
「ーー俺の先攻、だな」

始まった透矢と、仮面の『男』、すなわちデュエル・キラーとのデュエル。
まず先攻を握ったのはデュエル・キラー。
その事に透矢は『何故か』緊張の糸を少し解していた。

（ーー奴の先攻。
てことは、奴はこのターン、バトルフェイズは行えないんだ）

透矢は退学にさせられた生徒たちの話を改めて思い出していた。
あの生徒たちはいずれも１ターンキル、それもデュエル・キラー側が後攻を取り、それを決めていたということを。

だがこのデュエルはデュエル・キラーが先攻。
必然的に最初のドロー及び、バトルフェイズは行えない。
つまり少なくともこのターンでやられてしまうことはないはずで、次の自分のターンが迎えられるということだ。

（・・・１ターンキルなんて決めさせねぇ！
こっちは相手の出方を見て行動が決められるんだ）

後攻の利点。
それは先攻の動きを見て、デッキのタイプを読み取ったり、またそれに合わせた行動ができる可能性がある、ということ。
また後攻は通常ドローが出来る上にバトルフェイズも行える。

透矢はこの先攻のデュエル・キラーの動きを見極め、そしてどう動くかを既に自分の手札と相談していた。

ーー冷静。
透矢の考えを知れば、そう思う者もいるかもしれない。

しかし彼は気付いていない。
その考えが既にデュエル・キラーの戦術に、『呑まれ始めている』ということに。

「ーーメインフェイズ、手札から魔法カード、発動。
『ターン・シフト』」

「魔法、カード？！」

「このカードはメインフェイズ開始時のみ発動可能。
俺はデッキからカードを１枚ドローし、その後自動的にエンドフェイズとなる」

「え、エンドフェイズって・・・」

魔法カード『ターン・シフト』の効果により、デュエル・キラーはカードを１枚引く。
だが同時にこのターンのエンドフェイズを迎えた事となる。

「カードを何も出さずにターンを終える気か？」

エンドフェイズとなってはモンスターの召喚や、魔法・罠カードのセットなど、その一切合切が行えない。
つまり、デュエル・キラーは場をがら空きにしたままエンド宣言することになる。

「『ターン・シフト』の効果には続きがある。
次の相手ターンのバトルフェイズはスキップされる」

「バトルフェイズをーーなるほど、そういうことか！」

『ターン・シフト』の効果。
それは自分のターンをほぼ何もせずに終了させる代償に、相手のバトルフェイズをスキップする効果があった。
モンスターの攻撃によってライフを削る、ビートダウンを主な戦法とする透矢には、次のターンにデュエル・キラーのライフを削る手段を封じられたようなものだ。

（てことは、俺のターンをそうやって安全にやり過ごし、その次の奴のターンでワンキルを決めようってことかーー）

透矢の後攻ターンを跨ぎ、次のデュエル・キラーのターンになれば、通常ドローもバトルフェイズも行える。
それがデュエル・キラーの狙いだ。

（ーーへっ、さすが考えてることがえげつないぜ！）

「ターン、エンドだ」

（だが、そんな思い通りにはいかねぇ、ってことを教えてやる！）

この時、透矢はデュエル・キラーの戦術を全て読みきった気になっていた。
確かに透矢の考えは正しかった。
しかしながら、そうした事で知らず知らずの内に楽観してしまっていた。

「ーー俺のターン、ドロー！」

透矢の後攻。
カードをドローする。

６枚になった手札を見て、彼が考えることはーー。

（先ずは次の奴のターンを乗り切るんだ。
そのためにはまず、守備を固めるーー）

そう、まずは『守る』。
そしてその考えを後押しするように、彼の手札には守りのカードが多く来ていた。
まるでどんどん透矢を泥沼へ引きずり込もうとするように。

「俺はまず『三騎士 白銀の盾』を守備表示で召喚！」

透矢が召喚したのは、白銀の鎧に身を包んだ女戦士。
レベルは４で守備力は１１００。

「白銀の盾のモンスター効果、発動！・・・といきたいところだが、今回は発動しないでおくぜ」

「ほう？」

「白銀の盾は召喚時に、『三騎士』モンスターをデッキトップにおける。
でも、次のターンは必ずそのカードをドローすることになっちまうから、リスクもあるしな」

「ふん・・・慎重だな」

透矢は敢えて白銀の盾の効果は使わなかった。
理由は透矢が言った通り。
１ターン先がどうなるか分からない以上、次のドローを確定してしまうのは危険と見たのだ。

デュエル・キラーも透矢のその判断にはわざわざ口を開いて評した。

「俺はカードを３枚セット！」

そしてリバース・カードを３枚。
伏せたカードは『誘発同盟』、『白銀の護陣』、『轟炎の報復』。
いずれも罠カードであり、特に後の２枚は相手の行動に対しての防御策である。

（白銀の護陣で戦闘破壊を、轟炎の報復で魔法・罠カード破壊に対策してる・・・。
二重の構えで凌いで見せるぜ！）

透矢は頷いた。
更に挙げれば、白銀の盾は１ターンに１度、戦闘では破壊されない。
しかも相手がモンスターを召喚すれば、地影のカード、『誘発同盟』で更にその白銀の盾を呼べる。

ーー鉄壁。
透矢がそう思うのも無理はなかった。

「ターン、エンドだ」

カードを伏せてから少考を経て、そう宣言した。
するとその次の瞬間、デュエル・キラーは身体を震わせる。

「くっくっくっ・・・慎重、というよりは弱気だな、遊戦名。
そんなに俺が怖いのか？」

「な、なに・・・？！」

「１ターンキルされるのが怖いのか、と聞いてる」

デュエル・キラーは笑ったのだ。
何故なら、所詮目の前の者も今まで葬ってきた者たちと何ら変わりはない、と。

そんな透矢に対する嘲り、そして期待してしまった愚かな自分に対する『笑い』だったのだ。