真希vs蓮華 蓮華の武装待女デッキ！⑤　作：はにわ

　
ーー神楽坂邸門前。
真希のターン、通常ドロー。
蓮華が操るオーレリアとアリスを如何に打倒するのか。
このドローはこのデュエルにおける、真希にとってのターニングポイントでもあった。

そして彼女は引き当てたそのカードに、強気に笑みを見せる。

「ーー手札から速攻魔法発動！
『逆境の嵐』！」

スタンバイフェイズを飛ばし、即メインフェイズに入った真希はすぐに今、ドローしたばかりのカードをデュエル・ディスクにセットした。

そしてフィールドに現れたカード、『逆境の嵐』。
しかし待ってましたとばかりに、蓮華の場のアリスが片方の機関銃でそのカードを狙い撃ちし、そのカードを破壊してしまう。
アリスは得意気な表情で小さな胸を張る。

「・・・『アリス』の効果により、最初に発動した魔法カードを破壊致します」

「ーーでも、効果を無効にしたわけじゃない！
そうですよね？」

「ーーはい。
ただ、破壊しただけです」

アリスの効果。
相手が発動した魔法・罠カード、更に召喚・特殊召喚した相手モンスターを各１回ずつ破壊するというものだが、あくまで破壊のみであり、発動・起動時に発揮する効果を無効にしたりはしない。
つまり発動済みの逆境の嵐は問題なくその効果を発揮する。

「逆境の嵐の効果！
あたしの場にモンスターが存在せず、相手の場にモンスターが存在する時に発動できる！
相手のモンスター１体をデッキに戻す！」

「デッキバウンス・・・ですか」

「標的は・・・アリスです！」

真希の宣言に合わせて、アリスに向かって突如吹き付ける猛烈な勢いの風。
アリスは自慢の機関銃を斜めに十字に構えて耐えていたが、それも報われず、蓮華のデッキへと押しやられてしまった。

「これで・・・アリスはいなくなった。
リバース・カード、オープン！
『ヒステリック・パーティー』！」

満を持しての発動、『ヒステリック・パーティー』。

「手札からカードを１枚墓地に送って発動！
墓地に存在する『ハーピィ・レディ』を全て特殊召喚します！
あたしは手札から『ハーピィ・レディ１』を墓地に送ってーーっ、
甦れ、ハーピィ・レディ！」

ヒステリック・パーティーは墓地からハーピィ・レディを可能な限り特殊召喚出来るカード。
それは今、コストとして手札から墓地に送った『ハーピィ・レディ１』も例外ではない。
真希の場に『ハーピィ・ライダー』が２体、『ハーピィ・ウィンガー』、『ハーピィ・レディ１』の合計４体のモンスターがそれぞれ特殊召喚された。

首輪を付けた竜に跨がるハーピィ・レディこと『ハーピィ・ライダー』。
その２匹が室内に響くような雄叫びを上げる。

更に元祖とも呼べるハーピィ・レディの姿を持つ『ハーピィ・レディ１』。
彼女は自身をハーピィ・レディとして扱うと同時に、フィールド上に存在する風属性モンスターの攻撃力を３００ポイント上げる効果を持つ。

これにより、ハーピィ・レディ１は攻撃力１６００、『ハーピィ・ウィンガー』は１９００、『ハーピィ・ライダー』は２０００となる。

「ーーでもオーレリアの攻撃力は３０００・・・。
お姉ちゃんのモンスターじゃ勝てない・・・」

外野の千鶴が声を上げる。
確かにヒステリック・パーティーによってモンスターは４体並びはしたが、冷静に考えればそのいずれもオーレリアには遠く及ばない。

また、オーレリアの能力による、このターンの魔法・罠カードの発動、更にモンスターの特殊召喚の制限回数１回を使い切っている。

それらのサポート無しで、更に場を盛り返す次の手を放てるのか。

「あたしは更に、『ハーピィ・ライダー』１体をリリースして、モンスターをアドバンス召喚！
出でよ、『黒翼の担い手 ライガ』！」

更に続く真希の行動。
特殊召喚した４体の内、『ハーピィ・ライダー』１体をリリースしてアドバンス召喚されたのは、黒い翼を背中に蓄えた、精悍な風貌を持つ長髪の雄。
手には剣とも槍とも断じ得ない黒く長い細身の刃物。

レベルは６、攻撃力はレベルの割には低い１４００。

だがハーピィ・レディ１の効果で攻撃力は１７００にアップする。

「『黒翼の担い手 ライガ』の効果発動！
このモンスターの効果は場のこのカード以外の風属性・鳥獣族モンスターの数によって決まります！」

オーレリアの支配下の中、まだモンスター効果は使用できる真希。
ライガを除く場の風属性・鳥獣族モンスターの数は３体。
それによって得る効果はーー。

「召喚時、魔法・罠・モンスターの中から１つを宣言！
宣言した種類の相手のカードの効果を無効にします」

「ーーなるほど、これが狙いですか」

「あたしはモンスターを宣言！
蓮華さんのモンスター効果は無効になります！」

「オーレリアを無力化させられましたかーー」

「これでロックは消えました！」

感心するように頷く蓮華。
オーレリアのロック効果は解除され、真希はこれ以降気兼ねなくカードの効果を発動できるようになった。
そして最後に残しておいた１枚がーー。

「手札から速攻魔法、『女王の大翼』、発動！」

「ーー女王の大翼！
既に握っているとはーー」

「ハーピィ３体をリリースして、デッキから『疾風の女王 ミサギ』を特殊召喚します！」

ヒステリック・パーティーで復活させたハーピィたちを、１体も余すことなく利用した真希が、いよいよ自身のエース・モンスターを降臨させる。
透矢を苦しめた風を司る女王がーー。

「来た来た、ミサギ！
やってくれるねぇ、真希！」

「オーレリアの効果を見事にすり抜けましたね・・・さすが、千歳さん」

外野では炎魅子が熱い気持ちを全面に出すように歓声を上げ、地影は改めて真希の実力を思い知らされる。

ハーピィ３体、風を司るモンスター３体を生け贄に呼び起こされる荒れ狂う竜巻。
その中から不敵な睨みを利かせた女王。

真希の一気呵成の攻撃が始まるーー。