運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！③　作：はにわ

　
ーー『疾風の女王（ハイソニック・クイーン） ミサギ』。

赤黒い羽根に覆われ、裾が擦りきれたロングコートを羽織る、角を生やした女性。
片側３対の翼を緩やかに羽ばたかせて、デュエル・キラーの頭上に浮く。

「永続魔法『ウインドミルレイジ』の効果でミサギの攻撃力は４００ポイントアップする」

ミサギのレベルは８。
そして攻撃力はウインドミルレイジの効果で上昇し、２９００となる。

「更に！
今、墓地に送られた『ソニック・チャージャー』の効果を発動！
デッキから速攻魔法を手札に加える！」

「抜かりないな・・・！」

「俺が加えるのは『疾風・鋭爪撃』だ」

この効果を見越してソニック・チャージャーを呼び出していたのだ。
消費した手札を補うかのように、デュエル・キラーはその速攻魔法カードを手札に加える。

「ミサギの力・・・味わわせてやろう」

（あいつは・・・ただのモンスターじゃない！
厄介な能力を持ってそうだぜ！）

３体の鳥獣族モンスターを必要とするミサギ。
その召喚条件の厳しさもそうだが、それ以上に見た目の雰囲気からしてただならぬ存在であることは明らかである。

そして何よりまだバトルフェイズは終わっていない。
すなわちミサギの攻撃が許されるということだ。

「ミサギでアリアスを攻撃！
紅き旋風よ！全てを切り刻め！
『ブラッディー・ディスマーダー』っ！」

ミサギに攻撃命令が下される。

手に持つ切っ先が嘴を象った槍を振りかざすと、大気が揺れ、気流が乱れる。
そして切り裂くような風が渦を巻き、ミサギの身体がその中に呑み込まれた。

だが意志を持つその竜巻は蛇のようにうねりながら動き、アリアスへと渦が向かう。

「ーーくっ・・・！
アリアスはこれで４回目の攻撃・・・っ。
もう防ぐことは出来ない、かーー！」

透矢はアリアスを見遣る。
都合、３回の攻撃を防いでくれたアリアスだが、もう限界だ。
次の攻撃を受け止めることは出来ないーー。

「この瞬間！
ミサギの特殊能力発動！」

「何っ？！」

「ミサギが攻撃宣言した時、俺の墓地に存在する速攻魔法１枚につき、相手に３００ポイントのダメージを与え、
更に相手フィールド上に存在するモンスター１体の攻撃力・守備力は１枚につき３００ポイントダウンする！」

「速攻魔法・・・１枚につき？！」

「俺の墓地には速攻魔法が３枚！
よって先ずは９００のダメージを受けるがいい！」

ミサギの能力の１つが開放される。

何処からか、三日月のような形を成した風の刃が透矢とアリアスに幾重にも降り注ぎ、ダメージを与える。

「く・・・っ？！」

３回に渡って切り裂かれた透矢の身体が揺らぐ。
これにより透矢のライフは３１００となった。

そしてアリアスも。
風に切り裂かれて、攻守がダウン。
攻撃力が５００、守備力は２００へと下がってしまった。

「もっとも・・・能力ダウンは必要ないがな！」

風に切り裂かれて痛みに苦しむアリアスに、休む間もなく迫ったミサギの攻撃。
竜巻の中心から繰り出された槍が、彼女の身体を貫き、
アリアスは断末魔の悲鳴を遺して破壊された。

「くそ・・・っ、まさかアリアスが１ターンで倒されるなんて！」

本来、倒すことが難しいはずのアリアス。
しかしデュエル・キラーは苦もなくそれをやり遂げた、という様である。

ただ逆に言えば、アリアスがいたからこそ透矢はこの程度の痛みで済んだのだ。

「アリアス・・・仇は必ずとるからな！」

アリアスの勇姿を胸に刻み、彼女の犠牲を無駄にはしないと誓う。

「ーーメイン２。
ミサギの更なる効果を発動！」

「何っ？！」

「１ターンに１度、墓地の鳥獣族モンスターを除外すれば速攻魔法を、
速攻魔法を除外すれば鳥獣族モンスターをデッキから加えることが出来る！」

アリアスを倒し、竜巻がデュエル・キラーの元へと舞い戻る。
そして四肢を大の字に広げて風を弾き飛ばすと、
新たな効果を発動すべく、槍をデュエル・キラーのデッキに向ける。

そして槍の切っ先が光ったかと思えば、デッキからある１枚が飛び出してデュエル・キラーの手札に加わる。

「墓地の速攻魔法を除外し、俺はデッキから『疾風の担い手 サラサ』を手札に加える」

ミサギの効果でサーチを行ったデュエル・キラー。
ミサギの特殊召喚までに手札を５枚消費し、残り１枚にまでなったが、
３枚まで復活。
手札の消費も激しいが、リカバリーの手段も豊富。
これでは中々、隙を見出だし辛い。

「カードを１枚セットして、ターンを終了する」

（凌いだ・・・か）

ターン終了、の声を聞いて、透矢は思わず息を１つつく。
だがすぐに気持ちを切り替えた。

迂闊にターンを渡せば次のターンを越すことは出来ない。
透矢は常に細心の注意と緊張を以てターンを進めなくてはならないのだ。

「俺のターン、ドロー！」

カードをドロー。
これで手札は６枚。
５枚はサーチした故、情報としてデュエル・キラーに知られているが、これは新たな１枚。

（まずはあの厄介なモンスターを最優先に倒すことを考えないとなーー）

ーー疾風の女王・ミサギ。
苦労して召喚されただけであり、その能力は脅威。
倒すのに長引けば、程なく命の灯火が消え去る。

新たにドローしたカード。
透矢は如何にして攻略するのだろうかーー。