運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑮　作：はにわ

　
ーー当初、話ながらデュエルも進行させるはずだったが、知られざる真実を口にする度に、真希も徐々に感極まってきたのだろう。
デュエルの進行は止まりつつあった。

ーー千鶴の入学と引き替えに、生徒会に入った真希。
だが当初は風紀委員という肩書きではなく、一役員、として生徒会の職務を手伝っていただけだそうだ。
だから周りには真希が生徒会に入った、など知られる事もなかったのである。
これも万が一、千鶴の言わば裏口入学が明るみに出ないための、刹那側の配慮だったのだそうだ。

ーーしかし。

「せっかく・・・せっかく、千鶴ちゃんが入学出来たのにーーあいつらが楽しいはずの学園生活を狂わせたのよ！」

「あいつらーー？」

「いじめグループよ！」

「ーーっ！」

「あいつら、千鶴ちゃんをよってたかって、自分たちのストレスのはけ口にしてーーっ！」

「お姉ちゃん・・・っ！」

真希の表情が急激に怒り、そして憎しみに歪む。
千鶴はそれが己のせいである、と悟って、更に悲しみを深めていく。

「あいつら、あたしが何度注意しても聞かなかった！
千鶴ちゃんは一生懸命勉強しようとしてるのに・・・あいつらがそれを邪魔したのよ！
ーー許せなかった、あいつらが憎かった！」

「ーー先生には相談しなかったのかっ？」

「無駄よ・・・あたしが注意しても、先生が注意してもーーほとぼりが冷めればまたあいつらは繰り返した！
時にはクラスの他の連中もグルになってーーっ！」

昨今、学校生活の問題の代表例とも言えるだろう『いじめ』。
気弱な性格の千鶴が標的にされ、思い出すのも嫌になる、『いじめ』が行われていたのだ。

「だから・・・あたしは決めたのよ。
『デュエル・キラー』となって、そいつらを全員、アカデミアから追い出してやるってね！」

「真希・・・っ！」

「最初は抵抗あったけど・・・一人、また一人潰していくに連れて逆にね、気持ちよくなっていったのよ！
千鶴ちゃんを苛めるあいつらを、デュエルで叩き潰すのがね！」

透矢は思わず目を反らしそうになった。
兄弟のように仲の良い幼馴染みが、醜悪とも言える笑みを浮かべたからだ。

「あいつら、弱いくせに、数だけは群れててさ！
この半年間で、何十人潰したか分かりゃしないわ！」

「・・・もういい、真希」

「透矢！
あの流石だって、あんたとあんな事にならなきゃあたしが潰してたよ！
ま、結果的に透矢に負けて、刹那から退学言い渡されて、いい気味だったわ！
あははははっ！」

「ーーもう止めて！お姉ちゃん！」

真希の表情を見たくない透矢が、そして千鶴が必死にその言葉を遮ろうとする。

「もう、いいよ、お姉ちゃん・・・。
私が弱いせいでお姉ちゃんに辛いことさせちゃって・・・」

「千鶴ちゃん・・・」

「でももう、止めて！
たとえ、私がどんなにいじめられても、退学になったとしても、お姉ちゃんにそんなことしてほしくないーー」

「な、何で・・・？
わ、私は千鶴ちゃんを守るためにーー」

「だからもういい、真希っ。
もう、無理をするな・・・っ」

「透矢まで・・・あたしは、あたしはーー」

「俺だって千鶴の立場だったらーーお前がそんなことしてまで、同じアカデミアに居たいとは思わなかっただろうぜーー」

千鶴が頷いた。

千鶴と透矢、二人の言葉が真希の胸を刺す。
何故ならそれは真希の今までの苦労・努力を否定するものだったからだ。

「何でよ！
透矢はあたしや千鶴ちゃんと一緒に・・・今の生活が送れてるのが嫌だってのっ？！」

「そんなわけないだろっ！
だけど・・・そのためにお前が無理してるんなら、俺は悲しいよ」

「無理なんかしてないっ！
あたしは楽しんでやってんのよ！」

「嘘だ！
お前はそんな奴じゃないっ！」

「はん、何よ！
知ったような口利いちゃってさ！
透矢なんか・・・あたしの気持ち、これっぽっちも分かってないくせに！」

「真希の・・・気持ちーー？」

真希は自分が責められているように感じているのか、感情が激昂の一途を辿る。

「あんたなんか・・・あたしを、千鶴ちゃんを置いて、勝手に居なくなったくせにーーっ！」

「真希・・・お前、何言ってーー」

「あんたが引っ越していなくなって・・・あたしは何日も泣いた。
ずっと・・・ずっと、寂しかった！
だから、あんたが帰ってくる、って聞いた時はすごく嬉しかったのに！
また３人一緒にいられるんだ、って！」

「真希・・・っ」

「あんたなんか、何もしてないくせに！
勝手なことばかりいわないでよぉおおっ！！」

錯乱したように真希は叫ぶ。

だがそれは紛れもない真希の真実の気持ちなのだった。

依存とも言える、幼馴染みに対する真希の思い。
だがそれ故にその気持ちの強さは３人の中で最も高い。

「それに何よ！
あんた、千鶴ちゃんをいじめてた流石を守るために必死になっちゃって！
千鶴ちゃんよりもあんな奴の方が大事ってわけ！？」

「ち、違う！真希！」

「あんたが会長になって何が出来るってのよ！
千鶴ちゃんを守れるの？！」

「真希、話を聞け！」

「もういい！
例え、あんたや千鶴ちゃんに何て言われても！
あたしは今の生活を守るためなら何でもやってやる！」

「お姉ちゃん！」

頭に血が昇った真希にはもはや声は届かない。
真希は啖呵を切るようにそう言いきると、不意に手札のカードに手を付けた。

「ーー手札から魔法カード発動！
『絶望のテンペスト』！」

「真希！」

「自分フィールド上のモンスター３体をリリースして発動！
デッキ・手札・墓地から『閃絶龍 ゼルフィム・ハザード』を特殊召喚するわ！」

突如、再開されたデュエル。
発動されたカードは、『ドゥームズ・デイ』によって加えた魔法カード。
『スケープ・ゴート』の『羊トークン』３体を生け贄に、遂に現れる。
『四龍』最後の１枚がーー。

「透矢・・・これがあたしの『龍』よ！」

「ぐ・・・っ！」

フィールドを覆う、凄まじい竜巻。
デュエル・ディスクが見せる高度な演出とはいえ、本当に近付くもの全てを飲み込み、破壊しかねないほどだ。

そしてフィールドに舞い降りた最後の『四龍』。
透矢はいかにその凄まじい力に対抗し、そして真希を『救う』のか。

いよいよ大詰めである。