千鶴の決意②　作：はにわ

　
「ーー真希と千鶴がなんで向き合ってるんだ？
少なくとも真希の相手は、同じブルーの生徒のはずだったんじゃ？」

透矢はデュエル場で向き合う二人を見て動揺する。
千鶴に関してはわからないものの、真希の相手は事前に聞いていたようだ。

「私がセッティングしたわ。
それが鳴瀬さんのお願いよ」

「千鶴が会長さんに？」

「うん。
どうしても今日、デュエルしたい、って熱心に訴えてきたから」

「千鶴が・・・真希と？」

「ええ。
だから特別に、ね」

千鶴が望み、刹那に便宜を図ってもらい、実現しようという今日のデュエル。
これと似たような事が記憶に新しい。
それは流石が己の雪辱を晴らすため、刹那に透矢とのリベンジデュエルのセッティングをさせた事。

「ーーまさか、会長さん！
千鶴は首なんて賭けてないっすよね？！」

「心配しないで。
今回は何も賭けてないから」

透矢は安心したように息を吐いた。

流石は己の首を賭け、結果敗北。
それが元で透矢は生徒会大戦に参加しているのである。

もし千鶴まで首を賭けていたなら、透矢は全力でこのデュエルの開始自体を制止していたかもしれない。

「でも千鶴のやつ、なんでデュエル試験の相手に真希を・・・」

「力試し、じゃないかしら？」

「でも、デュエルしたいなら普段いつでも出来るのにーー」

「本気で、デュエルしたいのよ。
デュエル試験の結果は成績に大きく反映されるから、いくら仲が良くても、ある程度本気にならざるを得ないでしょ？」

「それにしたって、わざわざ会長さんに頼んでまでーー」

透矢はそこまで言いかけながら、刹那の表情が気になった。
大事な幼馴染みの事、ということもあり、透矢も感覚が研ぎ澄まされているのか。
刹那の微妙な様子の変化から何かを感じ取った。

「会長さん・・・何か知ってるのか？」

「あら、何を？」

「千鶴がこんなことをした理由を！」

「さあ、何も聞いてないけど」

「じゃあ、どうして千鶴の頼みをそんな簡単に受け入れたんすか！」

「だから、熱心に訴えられたからーー」

「でもデュエル試験の相手を変えるのには、色々大変なんすよね？
他の生徒たちにも迷惑がかかる！
会長さんがろくに理由も聞かず、そんなこと受け入れるとは思えないっす！」

「ふむ・・・なるほど」

透矢の言葉に、刹那は感心するように頷く。

「鋭いのね、透矢くん。
ちょっと意外、かな」

「やっぱり・・・理由を知ってるんすね？」

「勘違いしないで。
鳴瀬さんから直接聞いたわけではないわ。
ただ・・・心当たりはある、けど」

「なんすか、それ！」

「あくまで心当たり、よ。
確信もないのに、話すわけにはいかない、かな」

「会長さん！」

「取り敢えず、デュエルを見ましょ？
私も今は集中したいのだけど」

「ぐ・・・っ」

透矢の読みは外れてはいない。
刹那は何かを知っている。
恐らく、刹那にこんな頼みを聞いてもらったのには、
千鶴の様子がおかしかったことに何か繋がりがある。

だがそこまで。
そこに隠された『真実』までは、読み取ることは出来ない。

悶々とした思いを抱える透矢。
千鶴の決死の思いが分からず、苛立たずにはいられないのだった。