真希vs蓮華 蓮華の武装待女デッキ！⑥　作：はにわ

　
「・・・？
ねぇ、透矢くん。
今、何か外の方で音がしなかった？」

「え？
いや・・・どうだろう？」

「気のせいかな・・・ちょっと様子を見てくるわね」

「じゃあ俺も行くよ」

「ううん、透矢くんは水花を見ててあげて」

不審な耳鳴りを捉えた刹那が立ち上がると、透矢と水花を置いて部屋から出る。
すると扉の前にはまるで見張っているように待女二人が立っていて、刹那は不思議そうに二人を見る。

「ーー桔梗さんに、桜さん？
私のお部屋の前で何してるんですか？」

「い、いえ、それは・・・お嬢様の御用の際に、すぐに動けますよう配備をーー」

「そんなに気を遣わないで。
父や母がいない時は、自分の家だと思ってくつろいでくれて構わないんだから」

「きょ、恐縮です、お嬢様」

理由を尋ねられて、まさか連れ込んだ男が刹那にあらぬ行動に及んだ際にすぐに踏み込めるよう待機していた、とは言えず、
咄嗟に当たり障りない答えでやり過ごした待女二人。

勘が鋭い刹那に生半可な偽りは逆効果である事は二人も知っているが、ここは上手くやり過ごしたようである。

「ところで、今、何か変な音が聞こえませんでした？
それに蓮華さんの姿も見えないようだけどーー」

「更科待女長はーーその、今、取り込んでおりまして」

「取り込んでるーー？」

要領の得ない待女の言葉に、刹那は眉を寄せる。
もちろん表で何が行われているかは刹那は未だ知らない。

しかし不審な物音と、蓮華が立て込んでいるという二つのキーワードに繋がりを感じ取った刹那は、入り口の方に向かって歩き出す。

「あの・・・お嬢様っ」

「桔梗さん、透矢くんにお茶でも入れてあげて下さい。
あと軽いお夜食もお願いします」

「あ、はい、かしこまりました」

「桜さん、桔梗さんのお手伝いをお願いします」

「か、かしこまりました」

止めようとした二人を、用を言いつけながら何気なくあしらって見せた刹那。
刹那は何かが起きている、ということは確信しているようであり、早足で入り口へと向かうのだった。



ーーその頃、玄関先。
真希のエース・モンスターである『疾風の女王 ミサギ』が降臨し、場は一層の高まりを見せていた。

「ーーミサギの効果、発動！
墓地の鳥獣族モンスター１体を除外して、デッキから速攻魔法カードを１枚手札に加えます」

ミサギが早速その能力の一端を見せる。

「墓地の『ハーピィ・ウィンガー』を除外して、デッキから『マイティ・サイクロン』を加えてーーそのまま発動します！」

ミサギの効果によって加えた『マイティ・サイクロン』を、すぐさまデュエル・ディスクにセット。
オーレリアのロックが消えた今、真希は水を得た魚の如く、動きが軽やかである。

「マイティ・サイクロンはあたしの場に鳥獣族モンスターがいる時に発動できる速攻魔法！
相手の魔法・罠カードを１枚破壊して、８００ポイントダメージを与えます！」

「抜かりない・・・ですね」

「破壊するのは、そのセットカード！」

真希が標的に選んだのは、蓮華が１ターン目に伏せた２枚のカードの内の１枚。
１枚は『ロイヤル・メイデン』だったが、もう一方の発動されていない方。
それがカードから発せられた竜巻に呑み込まれ、破壊される。
同時に蓮華にも８００のダメージが与えられ、ライフが３２００になる。

（墓地へ行きましたかーー）

表情に変化のない蓮華。
真希は万全を期し、正体の分からないセットカードを除去したようだが、だがそこに蓮華の張った『罠』が隠されていた。

「ーーよし、ではバトルフェイズ、行きます！
ミサギでオーレリアを攻撃！」

憂いを消して、真希は高々とバトルを宣言する。
現状ミサギの攻撃力は２５００、オーレリアの攻撃力は３０００と負けているが、当然勢い余った暴走ではない。

「ミサギの効果！
攻撃宣言時に、墓地の速攻魔法１枚につき、相手に３００ポイントのダメージを与え、更に同じ数値だけ相手モンスターの攻撃力ダウン！」

ミサギの特殊能力の二つ目があった。
現在、真希の墓地には速攻魔法カードが３枚存在する。
よって蓮華に９００ポイントのダメージを与え、オーレリアの攻撃力が９００ダウンすることになる。

これで蓮華のライフは２３００。
そしてオーレリアの攻撃力は２１００にダウンする。

（出せれば強力なミサギの使い手、千歳真希ーー。
お嬢様が言っていた通り、見事な使い手ね）

「ーー『ブラッディー・ディス・マーダー』！」

荒ぶる竜巻をも味方に付けた風の支配者は、大剣を操るオーレリアに抗う術を与えずに葬る。
その間、蓮華は微動だにせず。
ライフは更に削られて１９００になる。

「更に、『ライガ』でダイレクトアタック！」

続いて『黒翼の担い手 ライガ』にも当然攻撃命令が下される。
黒い羽根を散らしながら鋭く飛翔し、持っていた細長い刃物で蓮華を直接貫く。
ライガの攻撃力は１４００。
蓮華のライフは僅か５００となり、外野の炎魅子たちも声を上げる。

元プロデュエリストの蓮華をこのまま倒せるかもしれない、と。

ーーだが。
蓮華の本領はここからであった。

「ーーこの瞬間、墓地の『麗しき戦線』が効果を発動いたします」

「えっ？！」

「墓地にこのカードが存在する状況で、私が直接攻撃を受けた時に発動致します。
このカードは永続罠カードとして、場に置かれます」

特殊な発動条件の元、フィールドに現れた『麗しき戦線』。

「そ、それは・・・さっきあたしが破壊したーー」

「はい。
このカードは特殊なカードでございまして、普通に伏せただけでは発動できないカードです。
このように特殊な条件を満たして、初めて効果を発揮します」

特殊な条件で発動した特殊な永続罠カード。
こういうものは得てして強力な効果である事が常である。

「ターン、エンドです」

手札ゼロの真希にはこのターン、もうすることはないため、そのままターンを終える。

「ーー互いのエンドフェイズ、『麗しき戦線』の効果が発動します」

「ーーっ！？」

「このターン、墓地へ送られた『待女』モンスターの攻撃力分だけ、ライフを回復いたします」

早速、麗しき戦線の効果が摘要。
このターン墓地へ送られた『待女』はオーレリア。
その攻撃力３０００。
よってその数値分、ライフを回復し、３５００まで取り戻す。

「うぅ・・・っ」

大幅なライフ回復に焦る真希。
もしここまでが蓮華の計算ならば、今のターン自分は踊らされていた事になる。
同時に嫌な予感が真希の心を貫いた。
そしてその予感は当り、蓮華は既に自らのエース・モンスターを手に握っていたのだった。