３ｒｄデュエル 秀才・地影の堅牢デッキ②　作：はにわ

　
「ーー俺の先攻だな！
俺はまず手札からモンスターを召喚！
来い、『トライ・サーチャー』！」

透矢の先攻。
先ずは手札からモンスターを守備表示で召喚する。
現れたのは二頭身にデフォルメされた小さな魔法使いのような男の子。
頭に３つの頂点からなるとんがり帽子を被り、黒いローブに小さな杖を持っている。

レベルは３、守備力はわずか４００である。

「『トライ・サーチャー』のモンスター効果発動！
召喚に成功した時、手札の『三騎士』モンスターを相手に見せてーー」

そう言いながら手札の１枚を地影に見せる。
見せたそのカードは『三騎士 蒼き槍迅』。
確認した地影は頷いて応える。

「デッキから見せたカードと同じカードを手札に加えるぜ！」

トライ・サーチャーが杖を上に掲げ、くるくる回す動きを見せる。
微笑ましい光景だが、そこから魔法の力による大小の五芒星が楽譜の上を流れるような演出が始まる。

その力により、透矢はデッキから２枚目の『蒼き槍迅』を手札に加えた。

「カードを１枚セットして、ターンエンドだ！」

一仕事果たしたトライ・サーチャーは杖を盾代わりに守備の体制をとる。
守備力４００では敵の攻撃は到底防げないが、それでもプレイヤーを護る盾には違いない。

「・・・私のターンです。
ドローします」

ターンが回ってきた後攻の地影。
その第一枚目のドローカードを見て、突然『えっ』という声を漏らしながら、驚愕するような表情を見せる。

地影のそんな表情を見るのは初めての透矢は、怪訝な顔つきで地影の動向を見守る。

（いきなりこのカードを引くなんてーー）

地影はすぐに表情を戻していたが、心の中の動揺は収まらない。

（まさか・・・これは一種の啓示・・・なのでしょうか。
遊戦名くんには『あのカード』を使わなければ、勝てないとーー？）

地影は透矢をまじまじと見る。

刹那が今までにない期待を寄せるデュエリスト、透矢。
地影自身、透矢の実力を完全に測れてはいない。

だが『あのカード』を使わなければならない程のデュエリストかーー？

地影はドローしたカードを手にしたまま、考え込むような姿勢を取る。
そのあからさまな態度に不審に思ったのは透矢だけではない。
立会人のクロエ、そして観客席の全員もだ。

（・・・引いてしまった以上、使うしかない、かーー。
『あのカード』が本当に必要になるかどうかは別として、私はこのデュエルに全力を注ぐと決めたのですから）

そう決心した地影はそのドローカードを魔法・罠カードゾーンに表側で置いた。

「て、手札から永続魔法カードを発動します！
『災厄龍の石板』！」

「『災厄龍の石板』ーー？」

地影がそれを発動するや、その背後に現れる頑丈な石で造られた巨大な『板』。
高さはおよそ３メートル、幅は２メートルにもなろうか。
不気味な怪物のような絵柄が刻まれたその石板がフィールドに現れるや、観客席の生徒会メンバーの方で声が上がった。
ーー明らかに驚いたような声。

発動した地影自身、手に力がこもり汗が滲んでいたのだった。




「ーーいきなり、とは驚いたね、刹那」

「そうね・・・。
ーー今までの生徒会大戦においても、地影は『あのカード』を使っていない。
・・・いいえ、使うまでもなかった、が正しいかしら」

ーー観客席。
驚きの声を上げた主、炎魅子がそう口にすると、刹那は下唇を指で弄りながらそう答える。

「・・・見られる・・・？
地影の・・・『龍』が・・・」

「そうね、水花。
フィールドに出たが最後、絶対的な『壁』として立ちはだかる、地影の『龍』がーー」

水花が言葉少なにそう語ると、やはり刹那がそれに応える。
刹那はこのデュエルの行方を想像し、歓喜に奮えるように自然と笑みを溢していた。