真希vs蓮華 蓮華の武装待女デッキ！③　作：はにわ

　
「ーーあたしのターン！ドロー！」

ーー神楽坂邸門前。
真希と蓮華のデュエル。
真希の１ターン目、まずはカードをドローして手札が６枚となる。

（あの『オーレリア』が場にいる限り、あたしはカード効果、特殊召喚が１回ずつしか行えないーー）

蓮華が最初のターンに召喚した『守護待女（ロイヤル・メイド・アームズ）オーレリア』。
その効果により真希は三種類のカード効果の発動、及び特殊召喚が１ターンに１回までという制限が加えられている。

「ーーあいつは厄介だよ。
特に真希のデッキには刺さるねぇ」

「ど、どういうことですか、紅月先輩！」

炎魅子が顔をしかめながら呟くと、千鶴が訊く。

「千歳さんのデッキは速攻魔法と、特殊召喚を重ねての速攻デッキ。
その回数を１度に制限されると、千歳さんのデッキは回転しないんです」

炎魅子に代わって地影が千鶴に応える。
真希は言わば１つの行動に特化したデッキであり、そこを対策されると弱味を見せるのだ。

「ま、あのオーレリアさえ倒しちまえば、制約は消えるけどね」

「簡単にはやらせてもらえないでしょうね。
その自信があるから、召喚したんでしょうしね」

そう、この状況でまず真希が目指すのは、普通ならば炎魅子の言うようにオーレリアの除去。
だがここでも響くのは回数制限。
もし魔法カードによる除去を狙い、それが失敗すればもう魔法カードは使えない。

「・・・あたしは、手札からモンスターを召喚！
『ハーピィ・ウィンガー』！」

真希はまず手札のモンスターを召喚。
現れたのは透き通った青空のような色の髪を持つ女性型モンスター。
身体つきは細くしなやかな女性の肢体そのものだが、手足は鋭く長い獣のような爪を生やしており、また腕からは大鷲のような翼が生えている。

『ハーピィ・ウィンガー』とハーピィの名を冠するそのモンスター。
レベルは４、攻撃力は１６００だ。

「ハーピィ・ウィンガーは、フィールド・墓地に存在する場合、名前を『ハーピィ・レディ』として扱う！」

「・・・ハーピィの殆どがその効果を有しておりましたね。
それを利用して、様々なコンボを可能にするというーー」

カード群、ハーピィの特徴の１つ。
それは自身の名前を『ハーピィ・レディ』にする能力だ。
これによって蓮華が口にしたように、様々な恩恵を受けることが出来るのである。

「そしてハーピィ・ウィンガーの効果を発動！
召喚時にデッキから『ハーピィ』カードを墓地に送ることで、相手モンスター１体を破壊する！」

「おおっ！」

更にハーピィ・ウィンガーの効果の発動。
それを聞いた炎魅子が声を上げる。

「あたしはデッキから『ハーピィ・ライダー』を墓地に送り、オーレリアを破壊します！」

デッキから選んだ『ハーピィ』モンスターを墓地に送り、ウィンガーの効果が発動。
するとハーピィ・ウィンガーは素早く、鋭くオーレリアに迫り、その長く鋭い爪で切り裂こうとする。

「ーーご容赦を。
罠カード発動。
永続罠カード『ロイヤル・メイデン』発動いたします」

「ーー罠カード！」

「『ロイヤル・メイデン』は発動後、私の場の『待女（メイド・アームズ）』モンスターに装備されます。
そして装備モンスターをカード効果の破壊から護ります」

発動された永続罠カードにより、オーレリアは金色に輝く光の『壁』に包まれる。
それに阻まれたウィンガーは、奇襲に失敗。
やむなく、諦めたように真希のフィールドに舞い戻る。

「更に、効果による破壊を無効にする度に、デッキからカードを１枚ドローします」

（やっぱダメか・・・単純は通用しないよね）

ロイヤル・メイデンの追加効果で、カードをドローする蓮華。
それを見て真希は予測済みだったのか、ショックはないようだが、
これでまたオーレリア打倒の道が遠くなったのを知って、ため息をつく。

「ーー墓地の『ハーピィ・ライダー』の効果！
このカードが墓地に存在する限り、場の『ハーピィ』モンスターの攻撃力は２００アップです！」

コストとして墓地に送られた『ハーピィ・ライダー』。
だがそのカードには墓地で発動する永続効果が備わっていて、これによりハーピィ・ウィンガーの攻撃力は１８００となる。

「更に、ハーピィ・ライダーもフィールドまたは墓地に存在する限り、名前を『ハーピィ・レディ』として扱う！」

ウィンガーに備わっていた効果はライダーにもあった。
既にここまで、真希は手札の『あるカード』を見据えて戦略を進めている。

「ーー『ハーピィ・ウィンガー』の効果を使用しましたので、もうこのターン、モンスター効果の発動はご使用になれません」

「はい・・・、あたしはカードを２枚セットして、ターンを終わります」

蓮華の言葉に頷きつつ、真希は手札のカードを２枚場にセットしてターンを終了させた。
ちなみにオーレリアはカードの発動を縛る効果であり、永続効果の適用はその範疇に含まれない。
故にハーピィ・ライダーの効果は問題なく機能している。

「それでは私のターン、始めさせて頂きます。
カード、ドロー」

蓮華のターン、ドロー。
手札が３枚になる。

「ーースタンバイ・フェイズでございます。
この時点でオーレリアの効果は切れますので、制約効果は消滅しました」

真希は頷く。
オーレリアの効果は切れた。
だが、このターンのメインフェイズで、またかけ直す事は可能だ。

「真希の奴、攻撃を誘ってんね」

「誘ってる・・・ですか？」

炎魅子の呟きに千鶴が反応する。

「オーレリアの効果を使うと、蓮華さんはバトルフェイズを行えない。
つまり、真希は蓮華さんにオーレリアの効果を使うか、オーレリアに攻撃させるか、選択を迫ってんのさ」

「そうですね、だから敢えて攻撃力の低いモンスターを立てて、ターンを終えたーー」

「問題は蓮華さんがどちらを選択するかーーか」

炎魅子の言葉に地影が頷きながら言葉を紡ぐ。
攻撃を誘っているという真希。
蓮華はそれにどう応えるか。
炎魅子たちはじっとそれを見守り続ける。

「ーー手札から魔法カード、『ブラックホール』を発動します」

「ぶ、ブラック、ホール・・・っ！」

「フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊いたします」

ーー『ブラックホール』。
有名な除去カードの１つと言えるだろう。
敵味方問わず、全てのモンスターを葬る強力なカードだ。

フィールド上空に現れた黒い渦が稲光を発しながら、耐えようとするハーピィ・ウィンガーの身体を飲み込む。
断末魔の悲鳴を残して、黒い渦の果てに消え去った。

「私のオーレリアはロイヤル・メイデンの効果により破壊はされません。
更に破壊を無効にした事で、カードを１枚、引かせて頂きます」

そう、蓮華のオーレリアには前のターンに装備した破壊耐性が生きている。
しかもカードをドロー。
敵ながら緩みない戦術に、真希は歯噛みする。

「あたしのハーピィ・ウィンガーも効果を使います！
このカードが墓地に送られた時、デッキから『ハーピィ』モンスターを墓地に送る！」

だが真希もここまでは計算の範疇。
ウィンガーの二つ目の効果が発動した。

「あたしはデッキから２枚目の『ハーピィ・ライダー』を墓地に送ります！」

デッキから２枚目となるハーピィ・ライダーを墓地に送った真希。

（これで準備は完了！
あとはこのターンさえ、凌げればーー）

真希の立てた戦略、それは完遂しつつあるものの、今は蓮華のターン。
蓮華の場には攻撃力３０００のオーレリア。
しかも更に増えるかもしれないこの状況を凌がなければ、それも無に帰す。

真希は手に汗を滲ませながら、蓮華の次の行動を待った。
その緊張は炎魅子たちにも伝わり、無意識に握る手に力を込めていたのだった。