３ｒｄデュエル 秀才・地影の堅牢デッキ⑥　作：はにわ

　
「ーー私のターン、ドローします」

地影のターン。
ドローして手札は２枚。
地影はこのターンで自分がやることは既に把握しており、それを頭の中で確認したあと、１つ頷いた。

「メインフェイズです！
永続罠カード『土石流』の効果を発動！」

地影の宣言で『土石流』が光を放つ。

「デッキの上から３枚を墓地へ送り、その中の岩石族モンスター１枚につき、３００ポイントダメージを与えます！」

地影はその通りにデッキの上から３枚をめくる。
透矢にとっては注目の瞬間。
最小で０、最大で９００ポイントものダメージになる。
かくしてめくった３枚を見た地影は一瞬、はっと声を漏らした後、そのカードを透矢にも公開した。

「岩石族モンスターは・・・３枚！
よって９００ポイントダメージです！」

「くっ！」

地影の引きの良さが、透矢にはそのまま逆境となる。
地影がめくったカードを墓地へ送ると、再び『土石流』から泥混じりの岩つぶてが吹き出し、透矢に直撃。

これによって透矢のライフは１７００。
半分を切り、崖際に足が近づいてきた。

「『土石流』の追加効果！
今の効果で岩石族３枚が墓地に送られた場合、相手フィールド上のカード１枚を破壊します！」

「げげっ！」

「私が破壊するのは、『トライ・フォース・サポート』！」

『土石流』の追加効果が更に透矢の体力を削ろうとする。
標的は『トライ・フォース・サポート』。
『リューゼリッド』は破壊耐性が備わっているため、対象には不向きと判断したようだ。

「なら、破壊される前に『トライ・フォース・サポート』の・・・え、えーと・・・。
ひ、一つ目の効果を使うぜ！」

透矢は破壊されるぐらいなら、と最後に仕事をさせる。
だが効果は二つ。
どちらを発動するか悩んだ末に１つ目の効果を使うことを決断する。

「リューゼリッドの攻撃力を８００アップ！」

リューゼリッドの攻守は『反転世界』によって入れ替わったまま。
すなわち攻撃力は５００しかないのに、攻撃表示なのだ。
ならば少しでも底上げ、とリューゼリッドの攻撃力を上げたのだ。
これによりリューゼリッドの攻撃力はまたエンドフェイズまで１３００。

役目を果たした『トライ・フォース・サポート』は『土石流』の効果で破壊された。

「更に！リバース・カード、オープン！
罠カード、『カウンター・トリップ』！」

「罠カードか！」

「墓地のカウンタートラップを２枚除外して発動します！
デッキからカウンター罠カードを手札に加えます！」

地影は墓地から『魔宮の賄賂』、『強烈なはたき落とし』を取り出すと、それを除外ゾーンへ送る。
そしてデッキから選び出されたカウンター罠カードはーー。

「私が加えるのは・・・『強烈なはたき落とし』！」

「うげ・・・またあのカードかよ」

『強烈なはたき落とし』は先の透矢のドローカードを潰したカード。
それを加えたということは次のドローも潰されることは間違いない。

「ーー更に、手札から魔法カード発動！
『貪欲な壺』！」

「あれは墓地のモンスターを５枚デッキに戻した後、２枚を引くカード・・・」

地影が頷く。
地影は前と今のターン、『土石流』で墓地に送った岩石族モンスター５枚をデッキに戻してシャッフルした後、カードを２枚引く。
これで地影の手札は４枚。
最初、１枚だったのに、あれよあれよという間に増強されてしまった。

「ーーまだです！
墓地の『奇跡の鉱脈』が効果を発動！
このカードが墓地に存在するとき、自分フィールド上に存在する岩石族モンスターを破壊して、手札に戻すことが出来る！」

「まさか？！」

「そうです・・・私は攻撃表示の『守護者の石板』を破壊し、奇跡の鉱脈を手札に加えます！」

『反転世界』によって攻撃力５００に戻っている攻撃表示の守護者の石板が破壊され、奇跡の鉱脈が墓地から地影の手に舞い戻る。
すると地影の後ろの巨大石板にまた亀裂が走った。

「えっと・・・確か、奇跡の鉱脈は岩石族モンスターを破壊して２枚ドロー出来るんだよな？」

「はい。
ですが今の効果を使用したターンはその効果は使えません」

更に手札を増強するつもりか、と不安になる透矢に、地影はそう答えて思わず胸を撫で下ろす。
しかしこのターン使えないだけで、次のターンで発動されてしまうだろう。
やはり新たなカードを引ける、ドロー増強カードを手にするのは心強いことだ。

「私は・・・カードを３枚セットします！」

「ぐ・・・１枚は『はたき落とし』だとしても残りは・・・？」

再び地影の魔法・罠カードゾーンを埋め尽くすリバース・カード。
透矢はプレッシャーを感じずにはいられない。

対して地影は・・・どこか沈んだ表情を見せていた。




「ーーあーあ、ありゃ駄目かもね、刹那？
完全に地影のペースだよ」

ーー観客席。
炎魅子がもう先は見えた、と言うような声を上げた。

「さすが地影・・・。
あの子のデッキは正に『堅牢の守り』。
ペースに嵌まってしまうと、それを崩すのは至難の業よ」

刹那も難しい表情で語る。

「・・・でも、地影・・・。
元気、ない・・・」

「へ？
なんでだい、水花？
あたしには変わりないように見えるよ」

「ううん、地影、元気ない・・・。
何か・・・迷ってる・・・？」

水花が不意に不思議な事を語りだした。
炎魅子は言われて地影を見るが、変化は感じられず首を傾げるばかりだ。

「そういえばこのターン、地影の語尾に力が入っていたわね。
普段なら淡々とデュエルを進めるあの子がーー」

「そうかい？
たまたまだと思うけどね」

刹那も地影の様子の変化には気づいていたようである。
炎魅子はそう言うが、刹那はある『過去』を思い出していた。

（地影・・・まさか、あなた未だに自分のデッキについて疑問を持っているの・・・？）

一瞬、哀愁に満ちたような刹那の視線。
刹那だけが知る、地影の『苦悩』。
それが地影を思い悩ませているのではないか、と刹那は案じるように地影に視線を送り続けていたーー。