熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑮　作：はにわ

　
ーー復活したクリムレイズ・シード。
本来の力を取り戻し、その攻撃力は３５００。
しかも罠カード『相見えし宿敵』の効果により、透矢はこのターン、攻撃可能なモンスター全てで攻撃しなくてはならない。
透矢はまだアリアスの攻撃を残しており、このまま攻撃となれば、当然返り討ちとなり、透矢はそのまま敗北する。

炎魅子の反撃が決まったかのように見えたが、彼女は既にデュエルの行方を見切っていた。
すなわちこのデュエル、自分が負けるということをーー。

「ーー墓地に送られた『女帝の聖杖』の効果発動！」

（ーーだよね）

「通常召喚したこのモンスターが墓地へ送られた時、自分フィールド上のＴ・Ｆモンスター１体の攻撃力を２５００ポイントアップさせる！」

女帝が透矢に遺した言葉の意味がこれだった。
自らが倒れても、フィールドに残る戦士にその力の全てを託す。

「俺は『アリアス』を選択し、その攻撃力をアップします！」

透矢がそう宣言すると、墓地から発した白き光がアリアスの背後の地に突き刺さり、
そこに半透明の女帝が姿を現した。

『ーー我が力を受けとれ、アリアス』

語りかけた女帝にアリアスが頷く。
そして腰から抜いた剣に、再び光の存在となった女帝の力が集束した。
すると白い光が紫を交えた光に変わり、小振りの剣を伸ばすかのようにその光が鋭さを帯びる。

女帝の力を受け取ったアリアスの攻撃力は３９００。
クリムレイズ・シードを上回った。

「ーーいいね、遊戦名」

「え？」

「三騎士は同じモンスターを如何に揃えるか、ってのがテーマの１つだけど・・・それ以上に、戦士と戦士がお互いを助け合ってる」

「ーーはい。
だからこのデッキ、俺は使ってて楽しいんっすよ！」

「・・・その力が地影を、水花を、そして今、あたしを倒した、って事だね」

「先輩・・・？」

「頑張んなよ、遊戦名。
デュエル・キラーを止められるのは、あんただけなんだからね」

「止める、ってーー？」

後は透矢の攻撃宣言を待つのみ、という局面で炎魅子は声を掛けた。
既に敗北を宣言したとも取れるその言葉。
またデュエル・キラーの事も口にした炎魅子の意図が、透矢にはまだ測れてはいない。

「ーー来な、遊戦名！
これがこのデュエルのラスト・バトルだよ！
気合いよく宣言しな！」

「は、はい！
アリアスでクリムレイズ・シードを攻撃！
ーー『セイヴ・オブ・ラグナシア』！」

透矢の声が掛かり、アリアスは巨大な敵、クリムレイズ・シードへと迫る。
周りを覆う触手たちを、女帝の力が籠った光の剣で次々に切り裂く。
そして龍が放つ超高温の炎すらその光の剣で切り裂くと、そのまま眼前へと迫る。

そして物静かそうな印象があるアリアスも咆哮を轟かせた。
同時に上から振り下ろされた光の剣が龍の身体を一刀両断に切り裂く。

復活しながら再び倒されたクリムレイズ・シード。
本来なら再び復活するところであろうが、残念ながら炎魅子にその余力はない。
今の攻撃で炎魅子のライフは０。

ーー決着である。

「ーーソレマデ、デスの！
勝者、トーヤ！」

審判、クロエが決着を告げる。
観客席から大歓声が上がった。

透矢は遂に四天王の三人目まで打ち倒したのだ。
中には炎魅子の敗北を惜しむ声もあるが、大半は透矢の健闘を讃える声。

ーー残るは一人。
その一人に勝つことが出来れば、いよいよ会長・刹那との対戦。

透矢は大きな一歩を進めた。