運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑪　作：はにわ

　
「ーーお姉ちゃん、なんでしょ？」

千鶴の不意を突く驚愕の一言に、透矢は一瞬その意味を汲み取ることが出来なかった。
そして言われたデュエル・キラーは何も応えず、やや項垂れるように佇んでいる。

「ちょ、ちょっと待てよ、千鶴！
お姉ちゃん、って・・・真希の、事か・・・？」

確かめるように訊く透矢に千鶴は無言で頷く。

「こいつが、真希だってのかっ？」

「ーーうん」

更に確かめる透矢。
今度は千鶴も返事をしながらはっきりと頷いた。

「い、いや、お前、何でそうなるんだよ？！
こいつが真希のわけないだろ？
だってほら、声も背も、全然違うじゃねぇか！」

透矢も必死に否定しながら内心、気持ちが揺らいでいた。
何故ならここに赴く前、彼自身も１つの可能性として、考えていたからだ。
もっともそんなわけない、と一蹴したが、まさか今この場で、千鶴の口からそれが語られるとは思ってもいなかったのである。

「でも・・・間違いないよ」

「間違いない、ってーー千鶴！」

「ーー『ミサギ』」

「ミサギ？
あのモンスターがどうかしたってのか？！」

「あのモンスターはね、お姉ちゃんが風属性のデッキを使ってたときのエース・カードなの」

デュエル・キラーが真希である、と確信している千鶴。
その理由の１つがミサギ、だと語る。

「それだけでお前はあいつが真希だって言うのか？！」

「お兄ちゃんは、引っ越しちゃったから知らないと思うけどーーお姉ちゃんは、ミサギをデッキに組み込んだ中等部の頃から、ナンバーワン・デュエリスト、ってこの辺りでは有名だったの」

「え・・・っ」

「お兄ちゃん、覚えてないの？
使ってるカードは昔と違うけど・・・デッキの『ベース』は変わってないよ？」

「ベース・・・」

「風属性と速攻魔法を自在に操るお姉ちゃんのデッキは・・・無敵だったの」

透矢もデュエル・キラーのデッキには既視感を持っていた。
だからデュエル・キラーが真希なのではないか、と考えるべくもないことを思考に浮かべたのだ。

確かにじっと、過去を振り返れば、あの時の真希のデッキが思い出される。
確かに風属性と速攻魔法を駆使した足の早いデュエルで、透矢も真希には全く敵わなかったものだ、と。

そして千鶴の話を総合すれば、後に真希はあのミサギを手にいれ、更に強力なデッキに仕立てたのだーー。

「でも・・・そんな！
千鶴、お前！
真希がデュエル・キラーなんて、そんな事をするような奴だって思ってんのかっ？！」

まるで千鶴を叱りつけるように声を放つ透矢。
普段、臆病な千鶴ならばこんな風に言われれば身体を縮ませるところだが、
そうはならず、ただ悲しげに顔を反らす。

「ーーそれは・・・きっと私のせいなの」

「はぁ？お前のせい？」

「お姉ちゃんは・・・きっと、私のせいでーー」

そのまま咳を切るように泣き出す千鶴。
真希がデュエル・キラーなんて真似事はするわけがない。
だがもしそうなら、理由は自分にあるという千鶴。
当然、透矢には何の事だかまるで分からない。

「な、なぁ、あんたも何とか言ってくれよ！
こ、こいつ、なんか勘違いしてるみたいでさ！」

さっきから自分の事について言われているというのに、何も黙して語らないデュエル・キラー。
そうでないなら、一言ぐらい否定してもいいようなものだ。
それが気になった透矢がふと、デュエル・キラー自身に聞いたのだ。
お前の口から勘違いである、と言い聞かせてほしいーーと。

だが。
デュエル・キラーはやはり言葉を伏せたまま何も語らず。

その無言、静寂が、まさかという真実を、より現実味を深めていった。

「ーー知ってたんだ、千鶴ちゃん」

透矢がデュエル・キラーに訊いてから、短いようで長い馬の後。
デュエル・キラーはようやく口を開いた。
しかし、その声は今までの男の声ではない。
透矢にとっても、千鶴にとっても聞き慣れた声だ。

「・・・そうだよね。
でなきゃ、今日あたしにあんな事言ったりしないよね」

更に呟くデュエル・キラー。
聞けば聞くほどに、それは確信へと変わっていく。

「いつかはバレるんじゃないか、って思ってたけどーーまさかこんな早くに気付かれるなんてーーあはは」

透矢もそう認めざるを得なかった。
聞き間違えるはずがない。
その声の正体をーー。

「・・・透矢。
約束だったよね。
ライフを半分にしたら、正体を教えて上げる、って」

「お、お前・・・」

「半分まであと、１００あるけどーーこんな事になっちゃったし。
もういいや」

そう言いながら、まず羽織っていたフードマントを脱ぎ捨てたデュエル・キラー。
そしていよいよその顔を覆い隠す仮面を剥ごうとする。
後頭部に回る３つのベルトを１つ１つ・・・ゆっくりと外し。

そしてーーついにその仮面が外された。

「ーーう、嘘だろ・・・」

「・・・嘘じゃないよ、透矢」

露になったその素顔。

それはまさしく透矢と千鶴の幼馴染みにして、親友以上の大事な人物。

ーー千歳真希、その人だったのだーー。